黄身の色が濃いブランド卵ほど、栄養価が高いわけではありません。
スーパーで毎日のように手に取る卵。そのほとんどは「ケージ飼い」と呼ばれる方式で育てられた鶏の卵です。狭い檻の中で効率よく産まれるため、価格が安く安定しています。一方、ブランド卵とは、鶏の飼育環境やエサにこだわりを持たせた、付加価値の高い卵のことを指します。
では、具体的に何が違うのでしょうか?主な違いは「飼育方法」「エサの内容」「産地・鶏の品種」の3点です。
ただし、ここで一つ大切なことを確認しておく必要があります。黄身の色の濃さは、エサに含まれるカロテノイドという色素の量によって変わるだけで、栄養価の高さとは直接の関係がありません。農林水産省や複数の研究でも「黄身の色と栄養価は無関係」と明言されています。つまり、黄身の色だけを見てブランド卵の品質を判断するのは誤りです。
また、赤玉と白玉についても同様の誤解が多く見られます。赤玉は産む鶏が体の大きい品種であることが多く、エサをたくさん食べるためコストが高くなる、というのが価格差の本当の理由です。栄養価はほとんど変わりません。つまり「赤い卵のほうが体にいい」という考え方は原則として誤りです。
そういった誤解を正しく理解した上で、以下の一覧を参考にブランド卵を選んでみてください。
参考:卵の黄身の色に関する農林水産省の見解
農林水産省「卵の黄身の色がいつもより濃いのは、どうしてですか」
日本国内のブランド卵は、実に4,000種類以上あるといわれています。これはスポーツチームのユニフォームが数千種あるのと同じくらい、驚くほど多様な世界です。ここでは、特に知名度が高く、スーパーや通販でも手に入りやすい代表的なブランド卵を一覧形式で紹介します。
| ブランド名 | 産地 | 鶏の品種・特徴 | 価格の目安(1個) |
|---|---|---|---|
| 名古屋コーチンの卵 | 愛知県 | 日本三大地鶏のひとつ。桜色の殻に白い斑点が特徴。黄身が濃厚で舌触りなめらか。 | 約100〜200円 |
| 蘭王(らんおう) | 大分県 | ミネラル豊富な飼料で育てた卵。臭みがなく艶やかな黄身が特徴。子どもにも食べやすい。 | 約80〜120円 |
| 比内地鶏の卵 | 秋田県 | 日本三大地鶏のひとつ「比内地鶏」の卵。コクと旨みが強く、生食に最適。 | 約100〜180円 |
| 烏骨鶏(うこっけい)の卵 | 全国各地 | 週に1個程度しか産まない希少な卵。卵黄が大きく、濃縮されたコクと栄養価が特徴。 | 約200〜500円 |
| アローカナの卵 | 全国各地 | チリ原産の鶏が産む淡いエメラルドグリーンの殻が目を引く。一般鶏の半分しか産まない希少品種。 | 約150〜400円 |
| 岡崎おうはん(おかざきおうはん)の卵 | 全国各地 | 純国産鶏種。鮮紅色の卵殻で卵黄が大きく、甘みがある。平飼い・有精卵も多い。 | 約60〜100円 |
| 太陽卵(特選) | 長崎県 | 30種の無添加素材を配合した独自飼料で育成。一般卵の約10倍のビタミンEを含む。 | 約100〜150円 |
| かっぱの健卵 | 北海道 | 自然由来のエサと清潔な飼育環境で育てた卵。生臭みがなく、黄身が非常に濃厚。卵かけご飯に最適。 | 約80〜100円 |
日本三大地鶏のひとつ「名古屋コーチン」の卵は、1個あたり100〜200円と高価ですが、その分だけの品質と味わいがあります。産卵数が一般鶏より少ないため、希少価値も高い卵です。
烏骨鶏の卵は特に珍しく、週にわずか1個程度しか産まないほど産卵数が少ないため、1個あたり200〜500円することも珍しくありません。その分、卵黄の凝縮感と栄養の豊かさは格別です。これは食べるというよりも、スペシャルな体験に近い感覚です。
アローカナの卵はエメラルドグリーンの殻という見た目のインパクトだけでなく、レシチンを多く含むことでも知られています。年間に一般鶏が約300個産むのに対し、アローカナは約150個しか産みません。つまり希少性が価格に直結している卵です。
参考:ブランド卵の種類と特徴(たまご博物館)
たまご博物館「特殊卵コーナー(ブランド卵一覧)」
ブランド卵を初めて選ぶとき、種類が多すぎてどれを選べばいいか迷う方は多いはずです。選ぶ基準を絞ることが重要です。「用途」「予算」「こだわりの方向性」という3つの軸で考えると、自分に合ったブランド卵が見つかりやすくなります。
まず、用途で選ぶ場合は以下のように考えてみましょう。
予算については、1個あたりの価格を目安にすると整理しやすいです。日常使いなら1個50〜80円台のブランド卵から始めるのが現実的です。1パック(10個)で500〜800円前後が入門ラインになります。
また、認証マークの確認も重要なポイントです。農場の衛生管理が適切かどうかを示す「JGAP認証」を取得している農場の卵は、品質管理の面で安心感があります。パッケージや商品ページで確認してみましょう。
参考:JGAP認証について(農林水産省)
農林水産省「JGAPについて」
高いお金を出して買ったブランド卵も、保存方法を間違えると品質がすぐに落ちてしまいます。これは大きな損失です。鮮度を守る保存方法と、新鮮な卵の見分け方を押さえておきましょう。
まず、卵の鮮度を見分けるシンプルな方法として「水に入れて浮き沈みを確認する」というものがあります。産みたての新鮮な卵は内部の空気が少ないため水の底に沈みますが、時間が経つにつれて殻の気孔から空気が入り込み、立ち上がったり浮いたりするようになります。2週間ほどで卵が立ち始め、1か月経つと完全に浮くといわれています。
割ったときに確認する方法も覚えておくと便利です。新鮮な卵は白身がぷっくりと高く盛り上がり、白濁しています。これは産みたての卵に含まれる炭酸ガスが原因です。黄身のハリが強く、つまんでも崩れにくいものが鮮度の高い証拠です。
保存方法については、10℃以下の冷蔵保存が原則です。冷蔵庫のドアポケットは開閉のたびに温度変化にさらされるため、できれば冷蔵庫の奥側で保存するほうが品質が安定します。また、卵の丸い方(気室のある側)を上に向けて保存すると、黄身が中央を保ちやすく鮮度が長持ちします。
賞味期限については、「生で食べられる期間」を示しています。つまり、賞味期限を過ぎた卵は生食を避け、十分に加熱した上で使用しましょう。冷蔵保存していれば期限後数日以内であれば加熱調理で食べることが可能ですが、早めに使い切ることが大切です。
せっかく選んだブランド卵の風味を最大限に活かすためにも、保存方法はきちんと守ることが基本です。
ブランド卵といえば「卵かけご飯」のイメージが強い方は多いと思います。確かに生食でそのコクを味わうTKG(卵かけご飯)は最高です。ただ、ブランド卵の魅力はTKGだけにとどまりません。
半熟ゆで卵にすることも、ブランド卵の実力を確認するのにうってつけの方法です。一般的な卵と同じ時間・温度でゆでても、ブランド卵のほうが黄身のとろみと甘みがはっきりと異なると感じるケースが多く報告されています。黄身の膜の強さ(卵膜の張り)が品質の指標の一つであり、高品質な卵ほど半熟にしたときのとろりとした食感が際立ちます。
また、プリンやカスタードクリームなどのお菓子作りに使うとブランド卵の個性が際立ちます。黄身の色が濃ければプリンの色もリッチな黄色に仕上がり、見た目からも贅沢感が出ます。ただし、前述のとおり「色が濃い=栄養が高い」ではない点は念頭に置いておきましょう。味のコクは、黄身の色ではなく飼料と飼育環境の質で決まります。
お米を飼料として育てた鶏の卵は、黄身が白っぽいクリーム色になります。これは色素成分が少ないためです。この「白い黄身の卵」は、白いロールケーキや白いプリンを作る際に重宝されており、製菓の世界では意外なほどの需要があります。見た目の白さにこだわるお菓子を作りたい方にとっては、むしろ狙い目のブランド卵といえるでしょう。
そのほか、ふわふわのオムレツを作るときには卵白の質が重要になります。新鮮なブランド卵は白身の水分量が少なく密度が高いため、泡立てたときの気泡が安定しやすい傾向があります。フレンチオムレツのように卵白の力を最大限に活かす料理こそ、ブランド卵の真骨頂が発揮される場面ともいえます。
普段と同じ料理でも、卵を変えるだけで驚くほど仕上がりが変わることがあります。これは使えそうです。ブランド卵の選び方を知った今、一度は料理の違いを実感してみてください。
参考:全国のブランド卵一覧(たまごかけごはん研究所)
たまごかけごはん研究所「取り扱いたまご一覧」