フロマージュという言葉をケーキ屋さんで目にしたとき、「これはチーズケーキのことだ」と思って注文してきた方に知ってほしいことがあります。
フロマージュ(fromage)は、フランス語で「チーズ」のことを意味します。牛乳・羊乳・山羊乳などを原料に、発酵・凝固させて作る乳製品の総称で、モッツァレラもカマンベールもブルーチーズも、すべて「フロマージュ」の一種です。
では、なぜ日本ではチーズケーキとして認識されるようになったのでしょうか。これには命名の歴史が関係しています。フランス語でチーズケーキを表す「ガトー・オ・フロマージュ(gâteau au fromage)」が日本の洋菓子店に広まる過程で、「ガトー・オ(ケーキの)」という部分が省略され、「フロマージュ」だけが商品名として定着していったのです。
つまり「フロマージュ」という言葉自体にケーキという意味はなく、「チーズ」そのものを指します。意外ですね。
日本の洋菓子店では今もなお「〇〇フロマージュ」という名前でチーズケーキが販売されており、それ自体が珍しいことではありません。ただ、本来の意味を知らないまま使うと、フランス旅行でうっかり「フロマージュください」と言ってしまったとき、チーズの盛り合わせが出てきて驚く、ということが実際に起きています。
さらに驚くことがあります。フランスでは、チーズケーキはほとんど食べられていないのです。日本で親しまれているチーズケーキの原型はポーランド系移民がアメリカに持ち込んだ伝統菓子「セルニック」とされており、フランスでもチーズケーキは"外来スイーツ"として「cheesecake(英語読み)」と呼ばれています。チーズが大好きなフランス人でも、チーズをケーキにするという発想はさほど根づいていないのです。
フロマージュ=チーズ、が基本です。
参考情報として、cotta公式の解説記事もご覧ください(チーズケーキとの違い・種類まで詳しく紹介されています)。
「フロマージュ」という名前のついたスイーツには、実はいくつかの種類があり、それぞれ製法も食感もまったく異なります。日本でよく目にする代表的なものを整理しましょう。
ガトー・フロマージュ(Gâteau au Fromage)とは、フランス語で「チーズのケーキ」という意味そのもの。日本でいうベイクドチーズケーキがこれに当たります。クリームチーズを主材料に、卵・砂糖などを混ぜてオーブンで焼き上げます。しっかりとした食感と濃厚なチーズの香りが特徴です。
ドゥーブル・フロマージュ(Double Fromage)は、「2種類のチーズ」という意味をもつフランス語で、北海道・小樽発の洋菓子店「ルタオ」が生み出した看板商品として全国的に有名です。下層はベイクドチーズケーキ、上層はレアチーズケーキという二層仕立てで、口の中でとろけるような食感が特徴です。これは結論は日本発祥のスイーツです。
フロマージュ・スフレ(Fromage Soufflé)は、ふんわりとしたスポンジのような焼きチーズケーキのこと。実は海外ではほとんど見かけない、日本生まれのチーズケーキです。メレンゲを丁寧に混ぜ込むことで、軽くやわらかい独特の食感が生まれます。同様のものが海外では「Japanese cheesecake(日本式チーズケーキ)」として知られるほどです。
タルト・オ・フロマージュはタルト生地にチーズクリームを詰めて焼いたもの。さくさくとしたタルト生地とクリーミーなチーズの対比が楽しめます。また、チーズのパンであるパン・オ・フロマージュなど、菓子パンやサンドイッチ系にも「フロマージュ」の名がつくことがあります。
これは使えそうです。ケーキ屋さんで見かけたとき、名前の意味から中身の食感や味わいを予測できると、選ぶ楽しさも広がります。
| スイーツ名 | 意味 | 食感・特徴 |
|---|---|---|
| ガトー・オ・フロマージュ | チーズのケーキ | しっかり濃厚・ベイクド系 |
| ドゥーブル・フロマージュ | 2つのチーズ | 二層・とろける食感 |
| フロマージュ・スフレ | チーズのスフレ | ふわふわ・日本発祥 |
| タルト・オ・フロマージュ | チーズのタルト | さくさく・クリーミー |
| パン・オ・フロマージュ | チーズのパン | 食事系・香ばしい |
フロマージュの中でも、手作りスイーツやダイエットに関心のある方にぜひ知ってほしいのが「フロマージュ・ブラン(Fromage blanc)」です。フランス語で「白いチーズ」を意味するこのチーズは、ヨーグルトとクリームチーズの中間のような滑らかさと、やさしい酸味を持ちます。
クリームチーズが100gあたり約346kcalであるのに対し、フロマージュ・ブランは約126〜154kcalと、カロリーが半分以下の場合もあります。脂肪分が少なく、さっぱりとした口当たりなので、「チーズケーキは好きだけどカロリーが気になる」という方には代替食材として理想的です。
フロマージュ・ブランはケーキの材料としても活躍します。クリームチーズの代わりにそのまま使えるほか、ヨーグルトのように蜂蜜や砂糖をかけてデザートとして楽しむことも可能です。フランスでは離乳食としても使われるほど食べやすく、クセもほとんどありません。
ただし日本では普通のスーパーに並ぶことが少なく、知名度がまだ低い食材です。業務スーパーの一部店舗や輸入食品店、コストコなどで購入できる場合があります。また、水切りヨーグルトとレモン汁を組み合わせると自宅で近い風味を再現できると言われており、手軽に試せます。
フロマージュ・ブランが条件です。
フロマージュ・ブランとは?特徴・使い方を詳しく解説 | 雪印メグミルク チーズクラブ
フロマージュという言葉の意味を理解したうえで、実際にお家で「ガトーフロマージュ(チーズケーキ)」を作りたいという方のために、失敗しにくいポイントをまとめます。
まず最初のポイントは、クリームチーズを常温に戻すことです。冷たいままのクリームチーズを使うと、生地にダマが残りやすく、口当たりが粗くなります。使う30分〜1時間前に冷蔵庫から出しておくか、電子レンジで約30秒加熱してやわらかくしましょう。これだけで滑らかさが大きく変わります。
次に、湯煎焼きの重要性があります。ベイクドタイプのガトーフロマージュでひび割れが起きる最大の原因は「急激な温度変化」です。天板にお湯を張って蒸し焼きにする「湯煎焼き」にすることで、ゆっくりと均一に熱が通り、表面がなめらかに仕上がります。お湯の量は天板の深さの1〜2cm程度が目安です。
もう一つ大切なのが冷やし時間です。焼き上がったらすぐに型から外さず、常温でしっかりと粗熱を取ったうえで、冷蔵庫で最低2〜3時間は冷やしてください。急いで切ると断面が崩れやすく、食感もまとまらないことがあります。一晩冷やすと、翌日にさらに味が落ち着いておいしくなります。
レアチーズタイプを作る場合は、ゼラチンを溶かすときの温度管理が重要です。ゼラチンは80℃以上の熱湯に入れると固まりにくくなることがあるため、溶かすときは60〜70℃程度のお湯を使うのが適切です。これに注意すれば問題ありません。
手作りの材料費を抑えたいときは、クリームチーズをフロマージュ・ブランや水切りヨーグルトで一部代用するのも選択肢のひとつです。全量置き換えると風味が変わりますが、クリームチーズ半量+水切りヨーグルト半量という組み合わせであれば、カロリーを抑えながらもチーズケーキらしい仕上がりに近づけることができます。
参考として、パティシエ監修のドゥーブルフロマージュのレシピ解説をご紹介します。
パティシエ直伝。おうちで作れる「ドゥーブルフロマージュ」のレシピ・コツ | macaroni
「フロマージュ」と「チーズケーキ」の違いを知ると、日常生活のさまざまな場面で損をしにくくなります。これは意外と大きなメリットです。
まず、ケーキ屋さんでの商品選びが変わります。「フロマージュ」「ガトーフロマージュ」「ドゥーブルフロマージュ」「フロマージュスフレ」という言葉が、それぞれ異なる食感・製法を意味することを知っていれば、苦手な食感の商品を間違って購入してしまうリスクを避けられます。例えば「しっかり食べ応えのあるチーズケーキが食べたい」場合は「ガトーフロマージュ(ベイクド系)」を選べばよく、「とろける食感が好き」なら「ドゥーブルフロマージュ(二層レア系)」を選ぶのが正解です。
フランス1,200種類以上のフロマージュ(チーズ)という事実も、知っておくと食卓が豊かになります。日本のスーパーでもカマンベール・ゴーダ・ゴルゴンゾーラなどのチーズが手軽に買えますが、これらはすべて「フロマージュ」の一種。チーズの種類ごとに料理との相性が違うため、正しく使い分けることで料理の完成度が変わってきます。
また、フランス人のチーズ消費量は1人当たり年間約26kgとされており、これは日本人の約12倍にもなります。日本人がいかにチーズの可能性を活かしきれていないかがわかります。フロマージュを料理に積極的に取り入れることで、カルシウムやたんぱく質の摂取量を効率的に増やせる点も、健康面でのメリットのひとつです。
厳しいところですね、という話ではなく、知ることで得られるメリットが多い分野です。フロマージュという言葉の意味を一つ覚えるだけで、ケーキ選び・手作りスイーツ・チーズの買い物まで、食に関する"判断の精度"が上がります。
さらに、お菓子作りでは「フロマージュ・ブラン」を知っているだけで、ケーキのコスト削減と低カロリー化が同時に実現できます。クリームチーズは200gあたり250〜400円ほどする場合がある一方、水切りヨーグルトや一部代替素材であれば、同量をもっと安価に準備できます。家族分のケーキを手作りする機会の多い主婦の方にとって、これは積み重なると無視できない差になります。
フロマージュに注意すれば大丈夫です。
ドゥーブルフロマージュの二層構造・素材・製法について | 小樽洋菓子舗ルタオ公式