ほうじ茶の500mlペットボトル1本で、カフェインはコーヒー約1.7杯分も入っています。
「ほうじ茶はノンカフェイン」と思い込んでいる方は、意外と多いものです。しかし実際には、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、ほうじ茶には100mlあたり20mgのカフェインが含まれています。これは緑茶(煎茶)やウーロン茶と同じ量です。
ほうじ茶のやさしい味わいは、カフェインが少ないからではありません。茶葉を高温で焙煎することで苦みの元であるカテキンが変性し、独特の香ばしい香りが生まれることによるものです。焙煎の過程でカフェインも一部気化しますが、完全にゼロにはなりません。
飲み物ごとのカフェイン量を確認してみましょう。
| 飲み物 | カフェイン量(100mlあたり) |
|---|---|
| 玉露 | 160mg |
| コーヒー | 60mg |
| 紅茶 | 30mg |
| ほうじ茶 | 20mg |
| 緑茶(煎茶) | 20mg |
| ウーロン茶 | 20mg |
| 玄米茶 | 10mg |
| 麦茶 | 0mg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
コーヒーと比べると3分の1ですが、麦茶や玄米茶よりもカフェインは多い。これが基本です。
さらに、飲む量によってカフェイン摂取量は大きく変わります。コップ1杯(200ml)で40mg、350mlの小ボトルで70mg、よく手に取る500mlペットボトル1本では100mgにもなります。就寝前にほうじ茶のペットボトルをがぶ飲みしている方は、これが積み重なって睡眠に影響することも十分あり得ます。カフェイン量と量の両方に注意が必要です。
参考:ほうじ茶のカフェイン含有量に関する詳細データは以下もご参照ください。
カフェインが睡眠に影響する理由は、脳内の「アデノシン」という物質の働きと深く関係しています。日中に活動するほど脳内にアデノシンが溜まり、それが眠気を引き起こします。カフェインはそのアデノシンの働きをブロックし、眠気を感じにくくさせるのです。これが覚醒作用の正体です。
問題は、カフェインの作用が摂取後もかなり長く続くという点です。カフェインの「半減期」(体内の濃度が半分になるまでの時間)は、日本人の場合3〜7時間と個人差があります。つまり夜20時にほうじ茶を500ml飲んだとすると、100mgのカフェインのうち50mgは深夜1時頃まで残り続ける計算になるのです。眠りにくい方には特に気になるところです。
加えて、カフェインには利尿作用もあります。夜間のトイレ回数が増えると、中途覚醒が起きやすくなります。つまり「眠れない」「夜中に目が覚める」という悩みの原因が、毎晩のほうじ茶にある可能性も否定できません。
医師監修の研究結果によると、就寝8.8時間前から107mgを超えるカフェイン摂取を控えることが推奨されています(Pubmed掲載の研究より)。一般的には、就寝4〜5時間前以降はほうじ茶を控えるのが安心の目安です。カフェインに敏感な方は、さらに早い時間帯からやめることをおすすめします。
参考:カフェインの睡眠への影響について、医師監修の解説はこちらも参考になります。
【医師監修】ほうじ茶のカフェイン含有量は?睡眠への影響と適切な飲み方(koala.com)
ほうじ茶には、カフェインと同時に眠りをサポートする成分も含まれています。それが「ピラジン」と「テアニン」です。これは多くの方がご存知ないポイントで、ほうじ茶が持つユニークな特徴の一つといえます。
ピラジンは、茶葉を焙煎したときに生まれる香り成分です。あの香ばしい香りの源と言えばイメージしやすいでしょう。ピラジンは脳内のGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の分泌を促すことで、興奮状態にある脳を鎮静化し、副交感神経を優位にする働きが期待されています。副交感神経が優位になると、体はリラックスモードに切り替わります。
テアニンは、お茶の旨味成分として知られ、脳のα波を増加させてリラックス状態をもたらします。最近では「睡眠の質改善」を目的としたサプリメントや機能性食品にも使われるほど注目されている成分です。これは使えそうです。
つまりほうじ茶には、眠りを妨げる可能性のある「カフェイン」と、眠りをサポートしてくれる「ピラジン・テアニン」が共存しているということです。少量をゆっくり飲む場合と、大量に飲む場合では、睡眠への影響がまったく変わってきます。飲む量と時間帯の見極めが重要です。
夜にほうじ茶の香りを楽しみたい気持ち、十分わかります。その場合は、カフェイン量を少しでも減らす工夫を取り入れましょう。方法は主に3つあります。
まず「深煎り・茎ほうじ茶(棒茶)を選ぶ」方法です。通常のほうじ茶よりもしっかり焙煎されたものや、茶葉ではなく茎の部分(茎ほうじ茶・棒茶)はカフェインが少ない傾向にあります。石川県の銘産「加賀棒茶」(棒茶)は、カフェイン量が16mg/100mlと一般的なほうじ茶よりわずかに低い製品も存在します。茎にはカフェインが少なく含まれるため、夜向きのほうじ茶として覚えておくと便利です。
次に「水出しで淹れる」方法です。農林水産省の研究によると、冷水でお茶を抽出すると、熱いお湯で淹れたときと比べてカフェインの溶出量が約半分になります。夜に飲みたいほうじ茶の茶葉を水と一緒に冷蔵庫に入れておくだけ。翌日の夜にも使えるように作り置きできます。ただし寝る直前に冷たい飲み物を飲むと体が冷えるので、量は控えめにしましょう。
そして「カフェインレスほうじ茶を選ぶ」方法もあります。水や二酸化炭素を使った安全な製法でカフェインを90%以上除去した商品が、ティーバッグタイプを中心に市販されています。ほうじ茶の香ばしい香りをそのままに、カフェインを大幅にカットできるため、妊娠中の方や子供がいる家庭にも向いています。
淹れ方の小さな工夫も有効です。茶葉を少なめにする、お湯を注いだ後の浸出時間を30秒以内に短くするといった方法だけでも、抽出されるカフェイン量を少し減らすことができます。毎晩の習慣に取り入れやすい工夫です。
参考:水出し茶によるカフェイン低減についての農林水産省の研究報告はこちらをご覧ください。
夜のリラックスタイムを安心して過ごしたい場合は、最初からノンカフェインまたはカフェインの少ない飲み物を選ぶのが最もシンプルな解決策です。主婦の日常にも取り入れやすいものを5つ紹介します。
🌾 麦茶:カフェイン完全ゼロのノンカフェイン飲料の定番です。ミネラルが豊富で水分補給にも向いています。温めると香ばしさが増し、ほうじ茶に近い風味を楽しめます。
🌿 ルイボスティー:南アフリカ原産のノンカフェインハーブティー。甘みがあって飲みやすく、ポリフェノールも豊富です。カフェインゼロなのでお子さんと一緒に飲めます。
🌼 カモミールティー:りんごに似た甘い香りとリラックス効果で有名なハーブティーです。副交感神経を穏やかに整えてくれることが知られています。ただし妊娠中の方は子宮収縮作用の指摘があるため、飲用前に医師に相談しましょう。
🌾 玄米茶:ほうじ茶と比べてカフェインは100mlあたり10mgと半分です。完全ゼロではありませんが、緑茶や煎茶よりずっと少なく、夕食後のお茶としてなら問題なく楽しめます。
🌱 レモンバームティー:ノンカフェインで、消化を助ける効果も期待されるハーブティーです。レモンに似た爽やかな香りで、夕食後のひとときに向いています。
どれを選ぶかは好みや目的次第です。「麦茶やルイボスティーでは物足りない」という方は、カフェインレスほうじ茶からはじめてみるのが自然なステップでしょう。
参考:厚生労働省によるカフェイン摂取に関するQ&Aも参考になります。
食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A(厚生労働省)