カムジャタンの「カムジャ」は実は「じゃがいも」ではなく、豚の脊髄骨を指す言葉だと知っていたら食卓が丸ごと変わります。
カムジャタンは韓国を代表するスープ料理のひとつで、豚の脊髄骨(背骨)を長時間煮込み、じゃがいも・えごまの葉・ねぎ・コチュジャンなどを加えた辛みのある鍋料理です。日本でも韓国料理店でよく見かけるようになりましたが、その名前の意味を正確に知っている人は意外と少ないのが現状です。
「カムジャ」は韓国語で「じゃがいも(감자)」を意味します。しかし一方で、「カムジャ」は豚の脊髄骨の付け根にある軟骨部分の俗称でもあるという説があり、どちらが語源かは韓国国内でも議論が続いています。「タン(탕)」はスープや鍋を意味する漢字語です。つまり「カムジャタン」とは直訳すれば「じゃがいも鍋」ですが、実態は豚の脊髄骨を使った骨付き肉の辛みスープというのが正確です。
この料理の歴史は意外と古く、朝鮮時代にまでさかのぼるとされています。当時は農業や肉体労働に携わる庶民の栄養補給食として、安価に手に入る豚の骨をじっくり煮て食べたのが始まりとされています。豚の脊髄骨は精肉に比べてコストが低く、長時間加熱することで骨の周りのコラーゲンや髄が溶け出し、非常に濃厚なスープになります。庶民の知恵が生んだ料理です。
現在では韓国全土で食べられていますが、特に전라도(チョルラド、全羅道)地方がカムジャタンの本場とされており、エリアによってスープの濃さや辛さ、使う香辛料の種類が微妙に異なります。ソウルの屋台や専門店では深夜から早朝にかけて営業する店も多く、韓国では「飲んだ後の締め」や「疲れた日の夕食」として親しまれています。深夜に食べる文化が根付いているのです。
カムジャタンの主役は豚の脊髄骨です。日本では「豚背骨」「豚スペアリブ(背骨部分)」として精肉店や業務用スーパーで入手できます。1人前あたり300〜400g(骨込みの重量)が目安で、だいたい鶏むね肉1枚分くらいの量です。骨の周囲に薄く筋肉がついており、煮込むほどに骨からほろほろとほぐれてくるのがカムジャタンならではの食感です。
味の決め手はえごまの葉(들깻잎、トゥルケンニプ)です。これが入るかどうかで風味が大きく変わります。えごまの葉はシソに似た外見ですが、ゴマに近い独特の香りがあり、スープに入れると独特のコクと爽やかさが同時に出ます。日本のスーパーでは「えごまの葉」として販売されていることもありますが、韓国食材店やオンラインショップのほうが品質・価格ともに安定しています。えごまの葉は必須です。
その他の主な材料は以下の通りです。
- じゃがいも:煮崩れしにくいメークインが向いていますが、ほくほく感を出したいなら男爵も使われます。1人あたり中1個が目安です。
- コチュジャン・粉唐辛子:辛みのベースになります。コチュジャンだけだと甘みが強くなるため、粉唐辛子(コチュガル)で辛さを調整するのが本場流です。
- にんにく・生姜:臭み消しと風味付けに使います。おろしにんにく大さじ1〜2が目安です。
- ねぎ・えごまパウダー(들깨가루):えごまパウダーを仕上げに加えるとスープに濃厚さとナッツのような風味が増します。
- テンジャン(된장):韓国みそです。少量加えることで塩味と深みが出ます。
スープの色は赤みがかった茶褐色で、辛さの中にほんのりとした甘みと骨から出たコクが重なる複雑な味わいです。辛さレベルは店や家庭によってかなり差があり、コチュジャンと粉唐辛子の量で調整できます。辛さが苦手な場合は、コチュジャンを少なめにするのが基本です。
カムジャタンを家庭で作るとき、最も大切な工程が豚の脊髄骨の下処理です。ここを省くとスープが臭くなり、せっかくの料理が台無しになってしまいます。下処理は必須です。
最初に行うのが「血抜き」です。骨付き豚肉を水に1〜2時間浸して、余分な血液を抜きます。水は途中で1〜2回取り替えると効果的です。水の色が薄いピンク色から透明に近くなれば完了のサインです。この工程だけで臭みが大幅に軽減されます。冬の寒い日は室温でも大丈夫ですが、夏場は必ず冷蔵庫で行いましょう。
次に「下茹で」を行います。たっぷりの水と生姜(薄切り2〜3枚)、日本酒または清酒(大さじ2程度)を入れた鍋に骨付き肉を入れ、強火で10〜15分沸騰させます。この工程で表面のアクと余分な脂肪が浮き出てきます。茹でた後はザルにあけ、流水で骨の表面をよく洗います。骨の隙間に詰まった赤い部分(血合い)も指や竹串でかき出すとよりきれいになります。
ここが丁寧なほど、最終的なスープの透明感と風味が変わります。これは覚えておいて損はありません。下処理に使う時間は合計で約2〜3時間(浸水込み)ですが、うち実際の作業時間は30分程度です。前日の夜に血抜きまで済ませておくと当日の調理がスムーズです。
じゃがいもの下処理も重要です。皮をむいて一口大にカットし、水に10分ほどさらしてデンプンを洗い流しておくと、スープが濁りにくくなります。カムジャタンは長時間煮込む料理なので、じゃがいもを最初から入れると煮崩れしてしまいます。じゃがいもは煮込みの後半(残り30分前後)に加えるのが基本です。
カムジャタンは見た目の辛さから「刺激物」のイメージが先行しがちですが、栄養面では非常に優れた料理です。特に注目されるのがコラーゲンの豊富さです。豚の脊髄骨を長時間煮込むことで、骨の周囲の軟骨や結合組織に含まれるコラーゲンがスープに溶け出します。1食あたりのコラーゲン含有量は市販のコラーゲンサプリメント数粒分に相当するとも言われており、美容を気にする方にとっても見逃せない料理です。
栄養が豊富ですね。加えてじゃがいもはビタミンCの供給源として優れており、加熱しても壊れにくいという特性があります。一般的な野菜のビタミンCは加熱で失われやすいのですが、じゃがいものビタミンCはデンプンに守られているため、加熱後も約70〜80%が残ると言われています。煮込み料理でもビタミンが摂れるのは、カムジャタンならではの利点です。
えごまの葉にはβカロテン・ビタミンK・ロスマリン酸などが含まれ、抗酸化作用が高いことが注目されています。また、えごまパウダー(えごまの実を粉末にしたもの)にはオメガ3脂肪酸(αリノレン酸)が豊富で、100gあたりの含有量はアマニ油に匹敵するとされています。ただしえごまパウダーは酸化しやすいため、開封後は冷暗所または冷蔵庫保存が推奨されています。保存方法に注意が必要です。
一方で注意したいのが塩分量です。本場のカムジャタンは1食あたりの食塩相当量が4〜6gに達することもあり、成人女性の1日の塩分目標値(6.5g未満/厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)の大部分を占めてしまいます。家庭で作る場合はテンジャンやコチュジャンの量を控えめにし、スープを飲み干さない工夫が有効です。スープの飲み過ぎには注意しましょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html(ナトリウム・カリウムの食事摂取基準など栄養素の目標量が確認できます)
日本の家庭でカムジャタンを作る際に最もハードルが高いのが「豚の脊髄骨の入手」です。一般的なスーパーではなかなか見かけませんが、業務用スーパー・韓国食材専門店・ネット通販では比較的安定して購入できます。価格は冷凍品で500g・200〜400円程度が相場です。豚ロース肉と比べると非常にリーズナブルです。
豚の脊髄骨が手に入らない場合は、スペアリブや豚バラブロックで代用できます。ただしスープの風味と骨の周りをほぐして食べる醍醐味は再現しにくいため、「カムジャタン風」と割り切るのが正直なところです。骨から出るコクが命です。
基本的な手順を整理すると以下のようになります。
- 1日目(前日):豚骨を1〜2時間水に浸けて血抜き → 下茹で10〜15分 → 流水で洗って保存
- 当日①:水1.5〜2L・おろしにんにく大さじ2・生姜スライス・日本酒を入れた鍋で豚骨を1〜1.5時間弱火で煮込む
- 当日②:コチュジャン大さじ2・粉唐辛子大さじ1〜2・テンジャン大さじ1・塩少量で味付け
- 当日③:じゃがいも(メークイン・2〜3個)を加えてさらに30分煮込む
- 仕上げ:えごまの葉・ねぎ・えごまパウダーを加えて完成
辛さを抑えたい場合はコチュジャンを大さじ1に減らし、粉唐辛子はなしにしても成立します。子どもがいる家庭では辛くない「白カムジャタン」という派生レシピもあり、辛み調味料を使わずに牛乳またはソジュ(韓国焼酎)少量を加えてまろやかに仕上げる方法も試す価値があります。
仕上げのえごまパウダーはスープに溶かすことで、とろみと独特のナッツ香が加わります。このえごまパウダーは日本でもオンラインで500g・600〜1,200円程度で購入できます。一度開封したら小分けにして冷凍保存すると、酸化を防いで約3ヶ月保存可能です。保存は冷凍が安心です。
カムジャタンは「時間がかかる料理」というイメージが強く、平日の夕食には向かないと思われがちです。しかし圧力鍋を使うと、通常1〜1.5時間かかる豚骨の煮込みを約20〜25分に短縮できます。時間が大幅に変わります。
圧力鍋での手順は通常の鍋と基本的に同じで、下処理済みの豚骨と水・調味料を入れて高圧で20分加圧し、自然減圧後にじゃがいもを加えてさらに蓋なしで10〜15分煮るだけです。骨の周りの肉がほろほろに仕上がり、通常の鍋以上の柔らかさになる場合もあります。電気圧力鍋(アイリスオーヤマ・シロカなど)でも同様に作れ、予約タイマー機能を使えば外出中に下煮が完了するので非常に便利です。
コスト面でも魅力があります。豚の脊髄骨500g(200〜400円)・じゃがいも3個(約80円)・えごまの葉ひとつかみ(韓国食材店で約100円)・調味料合計(約50円)で計算すると、2〜3人分のカムジャタンが約430〜630円で作れます。外食で食べると1人前1,200〜1,800円程度が相場なので、家庭調理は3分の1以下のコストです。節約効果は大きいです。
作り置きにも向いています。カムジャタンのスープと豚骨は冷蔵で3〜4日保存可能で、時間が経つほどスープが骨に染みて旨味が増します。2日目・3日目のほうがおいしいという声も多いです。ただしじゃがいもは保存中に崩れやすいため、食べる分だけ加えるほうが管理しやすいです。
さらに응용(応用)として、食べた後に残ったスープにご飯・えごまパウダー・刻みのりを加えてぐつぐつ煮ると「コムタン風リゾット」になります。スープを無駄なく使い切れる一品で、骨の旨味がご飯に染み渡るしめのメニューとして家族にも好評です。残りのスープも立派な料理になります。
参考:農林水産省「大豆・えごまの食文化と栄養」関連情報(えごまの産地や栄養成分について詳しく記載されています)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/
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