毎日の献立で、食物繊維は「野菜を食べれば十分」と思っていると、1日に必要な25gの半分以下しか摂れていない可能性があります。
「日本人の食事摂取基準」とは、厚生労働省が国民の健康維持・増進と生活習慣病の予防を目的として定める、エネルギーと各栄養素の摂取量の目安です。2005年以降、5年ごとに改定が行われており、最新版は2025年4月から適用されている「2025年版」です。この基準は病院や介護施設の給食、保健指導など、幅広い現場で活用されていますが、実は毎日の家庭の献立づくりにも深く関係しています。
今回の2025年版は「単なる数字の更新」にとどまらない改定です。重要なのは、これまでの「生活習慣病の予防」という目的に加えて、「生活機能の維持・向上」という視点が強化されたこと。つまり、病気にならないだけでなく、年を重ねても元気に自立した生活を送るための栄養管理が、より重要視されるようになったということです。
2025年版の対象期間は2025年度から2029年度です。これから5年間、家族の食事の「ものさし」となる基準です。
主な改定ポイントは以下の通りです。
これだけ変わっています。「なんとなく知っていた」という人も、内容を正確に把握しておくことが大切です。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書(公式)
食物繊維の目標量は、今回の改定で一部年齢区分において引き上げられました。成人男性(30〜64歳)では22g/日以上、成人女性(18〜74歳)では18g/日以上が目標量です。これは、1日25〜29gの食物繊維摂取が、循環器疾患・糖尿病・大腸がんなどの生活習慣病のリスク低下に寄与するという複数の研究報告を踏まえた見直しです。
ここで重要な事実があります。現在の日本人成人(18歳以上)における食物繊維の摂取量の中央値は、なんと1日13.3gにすぎません。目標量(女性18g/日以上)に対して、約5g近く足りていない計算です。
「5gって少し足りないだけでは?」と感じるかもしれません。
5gの差は意外と大きいです。食物繊維5gは、ごぼう半本(約50g)、または海藻の小鉢1皿分に相当します。つまり毎日1品、意識して加えなければ追いつかない量です。
さらに気をつけたいのが「測定法の変更」です。2025年版では食品成分表の測定法の変更によって、一部の食品で食物繊維の含有量が以前より高く計算されるようになっています。そのため、2020年版の数値と単純に比較することはできません。これは意外と知られていないポイントで、数値だけを見て「大して変わっていない」と思い込んでしまうのは危険です。
では、毎日の献立で食物繊維を増やすには具体的にどうすればよいか、という疑問が浮かびます。
食物繊維が豊富な食品のポイントをまとめました。
「野菜を増やすだけ」では追いつかないこともあります。豆類・海藻・全粒穀物を組み合わせるのが基本です。
参考:食物繊維と生活習慣病の関連についての解説(花王健康科学研究会)
花王健康科学研究会:日本人の食事摂取基準(2025年版)主な変更点
2025年版では、ビタミンDの目安量が18歳以上の男女ともに8.5μg/日から9.0μg/日に引き上げられました。0.5μgの変化は小さいように見えますが、その背景には重要な考え方の変化があります。
2020年版までは、日光による皮膚でのビタミンD産生を考慮し、食事から摂るべき量を少なめに設定していました。しかし2025年版では、骨密度の維持に必要な血中ビタミンD濃度を基準に目安量を算出し、さらに北欧諸国の基準も参照しています。「食事でしっかり摂る」という方針に、明確に舵が切られたわけです。
ビタミンDが不足すると起こることとして、以下が挙げられます。
特に気をつけたいのは、日本人の約7割がビタミンD不足とも言われていることです。インドアでの家事が多い生活スタイルでは、日光から作られるビタミンDも不足しがちです。
食事からビタミンDを摂りやすい食品として、以下が代表的です。
| 食品 | 含有量の目安(可食部100gあたり) |
|---|---|
| 🐟 鮭(サーモン) | 約25〜33μg |
| 🐟 さんま | 約13μg |
| 🐟 いわし(缶詰) | 約10μg |
| 🍄 干ししいたけ(乾燥) | 約17μg |
| 🥚 卵黄 | 約2〜4μg |
鮭の切り身1枚(約80g)でほぼ1日分のビタミンDを補えます。これは使えますね。
週2〜3回の魚料理を意識して献立に入れることで、無理なく目安量に近づけます。また、天気の良い日に15〜30分程度の散歩に出るだけでも、ビタミンDの体内産生を促せます。室内干しではなく布団を外に干すついでに少し日を浴びる、というのも一つの方法です。
ビタミンDはカルシウムと一緒に摂ることで効果が高まります。牛乳・ヨーグルト・小松菜などカルシウムを含む食品と組み合わせるのが原則です。
参考:ビタミンDの働きと摂取量(健康長寿ネット)
健康長寿ネット:ビタミンDの働きと1日の摂取量(公益財団法人長寿科学振興財団)
2025年版の最も大きな「構造的変化」の一つが、骨粗鬆症の対象疾患への追加です。2020年版では、食事摂取基準が対象にしていた疾患は高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病の4つでした。2025年版ではここに骨粗鬆症が加わり、5つになりました。
これは「生活機能の維持・向上」という2025年版の新しい視点を象徴する変更です。骨粗鬆症は日本に推定1,280万人の患者がいると言われており、特に女性は閉経後に急激に骨密度が低下するリスクがあります。「骨折→寝たきり→要介護」という流れを食事の段階から予防しよう、というのが今回の追加の狙いです。
骨粗鬆症と関連が深い栄養素として重要なのが以下の組み合わせです。
ここで注意したいのが「カルシウムさえ摂ればいい」という思い込みです。カルシウムだけをたくさん摂っても、ビタミンDが不足していれば吸収率が大幅に下がります。牛乳を毎日飲んでいるのに骨密度が改善しない、という場合は、ビタミンDやビタミンKの不足が原因である可能性があります。
カルシウムを多く含む食品と、吸収を高める組み合わせの例を紹介します。
| 食品 | カルシウム量の目安 | おすすめの組み合わせ |
|---|---|---|
| 🥛 牛乳(200ml) | 約220mg | ビタミンD強化食品と一緒に |
| 🧀 プロセスチーズ(20g) | 約126mg | 卵料理と組み合わせる |
| 🥬 小松菜(1/2袋・100g) | 約170mg | きのこ炒めにすることでビタミンDも補給 |
| 🐟 さば水煮缶(1/2缶) | 約190mg | カルシウム+ビタミンDが同時に摂れる |
| 🫘 木綿豆腐(1/2丁・150g) | 約180mg | ひじきと合わせて煮物にすると◎ |
骨の健康は「今日から意識する」ことが条件です。骨密度は20〜30代をピークに年齢とともに低下するため、若い世代から取り組むことに意味があります。子どもの給食や家族の食事に、カルシウムとビタミンDを意識的に組み合わせる習慣を取り入れてみてください。
「食事摂取基準が変わった」という情報は目にしても、「実際に何をどう変えればいいのか」が曖昧なままでいる人は多いはずです。ここでは、検索上位の記事では触れられていない実践的な視点から、2025年版の変更を家庭の献立に活かす方法を整理します。
まず、2025年版の変更が家庭の食卓に与える影響を「優先度」で整理すると、以下の3ステップになります。
すべてを一度に変えようとすると続きません。1つずつ取り組むのが基本です。
次に「食物繊維・ビタミンD・骨の栄養素」を一食で同時に補える「合わせ技メニュー」を意識してみましょう。例えば、鮭の塩焼き+小松菜としいたけの味噌汁+納豆ご飯という和食定食は、3つの栄養素をまとめてカバーできる優れた組み合わせです。これは時間がかかるようで、実は一般的な朝食や昼食に少し手を加えるだけで実現できます。
また、2025年版では鉄の耐容上限量が削除されていることも見逃せません。以前は成人女性の鉄の上限量が40mg/日と設定されていましたが、通常の食品からの摂取では過剰摂取のリスクが低いという判断から削除されました。「鉄分サプリを飲みすぎるのが心配」という方も多かったはずですが、食品から摂る分に関しては過度に心配しなくて大丈夫です。
ただし、「推奨量を大きく超える鉄の摂取は控えるべき」という注記も基準書に記載されています。鉄サプリメントの多用には引き続き注意が必要です。
高齢の家族がいる場合は、フレイル予防の観点も重要です。2025年版では65歳以上のたんぱく質目標量の下限(エネルギーの15%以上)が強調されています。「あっさり食べれればいい」という食事が続くと、筋力・骨量の両方が低下するリスクがあります。毎食、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを取り入れることが条件です。
2025年版の変更を「難しい話」と思わずに、身近なことから一つずつ実践してみてください。
参考:2025年版食事摂取基準の変更点を実生活に活かす解説
ウェルネスドア合同会社:【2025年改定】日本の食事摂取基準の変更点とは?専門家がやさしく解説(2026年3月22日確認版)
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