毎日料理に使っている生の生姜、実は体を冷やしている可能性があります。
日本女性の約75%が「自分は冷え性だ」と感じているというデータがあります(株式会社セプテム総研・2024年調査)。冷え性は単なる寒がりではなく、血行不良や自律神経の乱れ、消化機能の低下など、さまざまな不調を引き起こす根本原因になることも少なくありません。そこで注目されているのが、中医学の知恵を取り入れた「薬膳」という食事法です。
薬膳の基本となる考え方のひとつが「五性(ごせい)」です。これはすべての食材を、体への働きによって5つの性質に分類したもの。「熱性(ねっせい)」「温性(おんせい)」「平性(へいせい)」「涼性(りょうせい)」「寒性(かんせい)」の5段階があります。
つまり「食べ物それぞれに温め力・冷やし力がある」ということですね。
冷え性の人にとって重要なのは、熱性・温性に分類される食材を積極的に取り入れること。そして涼性・寒性の食材は食べ方を工夫することです。薬膳の面白いところは、「体に良いから食べる」ではなく、「自分の体質に合った食材を選ぶ」という点にあります。一般的に体に良いとされるトマトや豆腐も、冷え性の人にとっては逆効果になりうるのです。
五性をざっくり整理すると、次のようになります。
| 分類 | 体への作用 | 代表的な食材 |
|------|-----------|-------------|
| 熱性 | 強く温める | 唐辛子・シナモン・乾燥生姜 |
| 温性 | 穏やかに温める | 生姜(加熱)・ネギ・にんにく・鶏肉・かぼちゃ・エビ |
| 平性 | 温めも冷やしもしない | 白米・卵・じゃがいも・牛肉・豚肉 |
| 涼性 | 穏やかに冷やす | 大根・ごぼう・豆腐・緑茶 |
| 寒性 | 強く冷やす | きゅうり・トマト・なす・こんにゃく |
冷えやすい体質なら「温性」が基本です。
特別な食材や高価なハーブは一切不要です。普段スーパーで買うネギ・鶏肉・かぼちゃ・生姜といった食材を「温める性質のもの」として意識するだけで、今日の夕食から実践できます。これが薬膳を日常に取り入れる第一歩です。
参考:薬膳の五性・食材分類について詳しく解説(ツムラ 漢方通信)
https://www.tsumura.co.jp/brand/kampo-communication/health-care/medicinal-meal008.html
生姜は薬膳における「温め食材の代表格」として広く知られています。しかし、生の生姜をそのまま食べることが本当に冷え対策になっているかというと、実はそうとも言い切れません。これは意外に知られていない事実です。
生の生姜に多く含まれる成分は「ジンゲロール」です。ジンゲロールには末梢血管を広げて手足の先を一時的に温める働きがありますが、同時に体の深部の熱を末端に逃がしてしまう側面もあります。つまり、手足はぽかぽかに感じても、体の芯は冷えていくという状態になりやすいのです。
体の芯から温めるには「加熱」が鍵です。
生姜を10分以上加熱すると、ジンゲロールの一部が「ショウガオール」という成分に変化します。ショウガオールは消化器系など体の内側(深部)を直接温める効果が高く、継続的な体温維持につながるとされています。養命酒製造の薬剤師・管理栄養士も「冷え改善には加熱した生姜を使うことが重要」と明言しています。
さらに乾燥させた生姜(ドライジンジャー)にすると、ショウガオールの割合がさらに高まります。乾燥生姜は「干姜(かんきょう)」とも呼ばれ、中医学では体の五臓を温める生薬として扱われています。日本最古の医学書『医心方』にも生姜を風邪薬として記した記述があるほど、古くから重宝されてきた食材です。
実際の活用方法としては、次の3つがシンプルです。
- 🍵 生姜湯・スープ:スライスした生姜を10〜15分以上煮込む。ショウガオールに十分変化する。
- 🍚 炊き込みごはん:米と一緒に炊き上げる。加熱と同時に食物繊維ごと摂れる。
- 🫙 乾燥生姜(市販品):紅茶や白湯に溶かすだけ。忙しい朝でも手軽に摂れる。
加熱生姜が冷え改善の基本です。
生の薬味として使いたい場合は、夏のむくみ対策や胃腸の殺菌目的に限定し、冷えが気になる秋冬シーズンはスープや煮物など加熱料理に切り替えるのが賢い使い分けです。ドラッグストアやスーパーでも生姜パウダー(乾燥生姜)が300〜500円程度で手に入りますので、常備しておくと重宝します。
参考:生姜の加熱による成分変化と冷え対策への効果(養命酒 製造株式会社)
https://www.yomeishu.co.jp/health/3741/
薬膳の食材選びは、わざわざ専門店に行く必要はありません。普段使いのスーパーで手に入る食材のほとんどが、薬膳の「温め食材」として活用できます。ここでは食材カテゴリーごとに、温め力の高いものを押さえておきましょう。
これは使えそうです。
まず根菜類についてです。根菜はいわゆる土の中に育つもので、冷え込む冬に旬を迎えるものが多く、薬膳的にも体を温める性質を持つとされています。代表的なものを見てみましょう。
- 🥕 にんじん:平性に近い温性で、血を補い気の巡りを助ける。甘みが強く子どもにも食べやすい。
- 🟤 ごぼう:涼性だが加熱すると冷やす作用が和らぐ。食物繊維が豊富で腸内環境を整える。
- 🌿 れんこん:涼性だが薬膳では肺・胃腸を整える食材。加熱調理が前提。
- 🟠 かぼちゃ:温性。胃腸を温め、気を補う効果が高い。スープや煮物で食べるのが最適。
- 🧅 玉ねぎ:温性。血液サラサラ効果でも知られ、加熱するとさらに体を温める甘みが出る。
次に香味野菜・スパイスです。これらは体を最も積極的に温める「熱性〜温性」の食材群で、薬膳では「辛温解表類(しんおんかいひょうるい)」と呼ばれます。発汗を促し、気血の巡りをスムーズにする働きがあります。
- 🧄 にんにく:熱性。代謝を上げ殺菌効果も高い。1食あたり1〜2かけが目安。
- 🌱 ネギ(長ネギ・葉ネギ):温性。体の表面を温め、鼻づまりや寒気にも有効。
- 🌶 唐辛子:熱性。少量で強く温めるが過剰摂取は胃腸を傷める。週2〜3回程度が目安。
- 🫚 シナモン:熱性。お腹の中心を温め、冷えからくる腹痛や生理痛の緩和にも使われる。
続いてたんぱく質食材です。冷え性改善には、熱を産生する筋肉量を維持するためのたんぱく質摂取も不可欠です。薬膳的にも温性のたんぱく質食材が豊富にあります。
- 🐔 鶏肉:温性。疲労回復と気力補充に優れる。皮つきのもも肉はさらに温め力が高い。
- 🐟 鮭(さけ):温性。血を補い、胃腸を温める。週2回以上食べると冬の冷えに効果的。
- 🦐 エビ:温性。腎の機能を助けて体の根本的な冷えに働きかける。
- 🥩 ラム肉(羊肉):熱性。体を温める食材として薬膳の中でもトップクラス。
これらを組み合わせることが条件です。
例えば「鶏肉・長ネギ・生姜(加熱)・かぼちゃ」を入れた煮込みスープは、薬膳の観点からいえば「最強の温め献立」といえます。特別なレシピを覚える必要はなく、食材の性質を知っているだけで、いつもの献立が温活ごはんに変わります。
参考:働く女性の冷え対策と体を温める食材(厚生労働省 母性健康管理サイト)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/column-18.html
「健康のため野菜をたくさん食べている」という方ほど、このポイントに注意が必要です。薬膳の観点からすると、毎日のように食べている野菜の中に、体を強く冷やす「寒性・涼性」食材が含まれている可能性があります。
意外ですね。
まず知っておきたいのが「夏野菜=体を冷やす食材」というルールです。夏に旬を迎える野菜は、体にこもった熱を冷ます目的で体を涼しくする性質を持つものが多い傾向があります。
| 食材 | 五性 | 注意点 |
|------|------|--------|
| トマト | 涼性〜寒性 | 生食で冷えを悪化させやすい |
| きゅうり | 寒性 | 水分・カリウムが多く体を冷やしやすい |
| なす | 涼性 | 生食は特に注意。加熱で緩和できる |
| レタス | 涼性 | サラダとして生食するケースが多い |
| 豆腐 | 涼性 | 体の熱を冷ます「涼性食品」。冷や奴は特に冷やす |
| 緑茶 | 涼性 | 毎日大量に飲むと内臓を冷やす可能性がある |
特に注意したいのが「白砂糖」です。日常的に使われる白砂糖は薬膳では体を冷やす性質(涼性)に分類されており、ツムラの漢方専門サイトも「白砂糖と三温糖は体を冷やす食材」と明記しています。毎日甘いお菓子や砂糖入りの飲み物を飲んでいると、他の温め食材の効果が台無しになってしまうことも。
これは痛いですね。
改善策は3ステップで実践できます。
- ✅ 白砂糖→黒砂糖・てんさい糖に替える:黒砂糖は薬膳で「温性」に分類。血の巡りを良くして冷えを改善する。生理痛にも効果的とされる。てんさい糖も寒冷地の原料作物から作られるため、温める性質を持つとされる。
- ✅ 寒性野菜は加熱して食べる:きゅうりやトマトも加熱すると冷やす作用が和らぐ。スープや炒め物に変えるだけでOK。
- ✅ 温性の薬味を組み合わせる:豆腐の冷や奴に薬味としてネギと生姜(加熱)を加えると、冷やし過ぎを防げる。
また「冷たい飲み物を大量に飲む」という習慣も内臓を直接冷やすことになります。特に朝一番の冷水や食事中のアイスドリンクは胃腸の働きを鈍らせ、食材からの栄養吸収を妨げる原因になります。冷えを感じる時期は飲み物をすべて常温〜温かいものにするだけで、体の温まり方が大きく変わります。
参考:薬膳の冷え改善と食材の五性・寒性食材の具体例(薬膳で冷え対策)
https://keishin-net.jp/2025/12/08/yakuzen-warm/
薬膳は「特別な日の料理」ではなく、毎日の献立をほんの少し工夫するだけで実践できます。ここでは、検索上位ではあまり紹介されていない「主婦目線の温め献立術」をお伝えします。ポイントは「一品プラス」の発想です。
結論はシンプルです。
いつもの料理に「温め食材」を1種類足すだけでよいのです。例えばこんな感じです。
- 🍜 みそ汁に刻んだ長ネギと生姜をプラス → 内臓を温める温活みそ汁に
- 🥗 ポテトサラダにシナモンをひとふり → 体を温めながら抗酸化効果も
- 🍳 炒め物の仕上げにガーリックパウダーをひとふり → 代謝アップの一品に
季節別に意識したい食材の選び方
春(2〜4月)は、冬に溜め込んだ体内の余分なものを排出して気血の巡りを促す時期です。香りのよい食材(三つ葉・春菊・セロリ・たけのこ)を取り入れながら、まだ寒い日のある春先には温性食材もしっかりキープしましょう。
夏(6〜8月)は、きゅうり・トマト・なすなど寒性・涼性の野菜が旬を迎えます。冷え性の人はこれらの過食に要注意。加熱調理を前提とした献立にして、夏バテ予防と冷え対策を両立させましょう。冷房のかかった室内に長時間いる場合は、生姜入りのスープを意識して摂ることをおすすめします。
秋(9〜11月)は、乾燥から体を守りながら冬に向けて体力を蓄える時期です。かぼちゃ・さつまいも・栗・くるみなど温性の秋の味覚が豊富に揃います。これらを煮物・スープにして週3〜4回取り入れるだけで、冷えにくい体の土台づくりができます。
冬(12〜2月)は、温性・熱性食材を最大限に活用する季節です。豚汁・筑前煮・鮭鍋・参鶏湯(サムゲタン)風ぞうすいなど、根菜と温性たんぱく質を組み合わせた煮込み料理が最適です。
「温め弁当」の作り方
外出先のランチで体を冷やさない工夫も大切です。鶏肉・かぼちゃ・ネギを使った炊き込みごはん、またはシナモン入りのさつまいも煮など、弁当箱に入れても温め効果が持続する薬膳おかずを一品添えるだけで、昼食からも冷え対策ができます。
お弁当に黒砂糖を使った甘辛煮を入れるのも効果的です。白砂糖の代わりに黒砂糖で味付けしたきんぴらごぼうや鶏の甘辛煮は、体を温めながら食べ応えもあるので一石二鳥です。
薬膳的な「一日の食べ方」のポイント
- 🌅 朝:白湯または生姜入りの温かいお茶でスタートし内臓を温めてから食事をとる
- 🌞 昼:温性たんぱく質(鶏肉・鮭など)と根菜を組み合わせたメインで血行を促進
- 🌙 夜:胃腸に優しく消化しやすいスープや煮込み料理を中心に据える
一日の体の温め方が習慣化されると、1〜2ヶ月程度で基礎体温が上がったと感じる人も多いとされています。焦らず続けることが大切ですね。
食材選びよりも「続けること」が原則です。
薬膳の温め効果をさらにしっかり学びたい場合は、国際中医薬膳管理師などの資格取得講座(オンライン受講可能なものも多数)を活用するのも一つの手です。費用は講座によりますが、3万〜10万円程度のものが多く、自分や家族の体質管理に生かせる一生モノの知識が得られます。毎日の食事に迷っているなら、こうした専門的な学びに投資する価値もあるでしょう。
参考:薬膳・季節別の食材選びと食べ方のポイント(養命酒 冬の薬膳レシピ)
https://www.yomeishu.co.jp/health/3368/