長く煮出すほどおいしいだしが出ると思っているなら、実は料理が生臭くなる原因を自分で作っています。
スーパーの売り場で「混合削り節」と書かれたパックを手に取ったとき、「かつお節と何が違うの?」と感じたことはないでしょうか。実は、この2つには味わいの面で大きな差があります。
混合削り節とは、2種類以上の魚の削り節をブレンドしたものです。日本農林規格(JAS規格)では「削りぶしのうち、2種類以上の魚類のふし、かれぶし、煮干し又は圧搾煮干し(さばに限る。)を削って混合したものをいう」と明確に定義されています。つまり、種類を問わず混ぜてあればすべて混合削り節です。
代表的な組み合わせとして、「さば+むろあじ」「かつお+さば」「かつお+宗田鰹+さば」「いわし+かつお+宗田鰹+さば」などがあります。それぞれ味のプロフィールが少しずつ異なります。
かつお節単体のだしが「上品でさっぱりとした香り」を持つのに対し、混合削り節のだしは「コクのある力強い風味」が特徴です。味噌や醤油といった濃い調味料と合わせる料理に特に向いていて、みそ汁・煮物・めんつゆ・筑前煮・おでんなどの料理に使うと素材の味が引き立ちます。
一般的なスーパーで手軽に入手できるのは「さば+むろあじ」の組み合わせです。むろあじのコクのある風味に、さばのまろやかな香りが重なって、毎日の家庭料理にちょうどよい濃さのだしになります。
| 種類 | 主な組み合わせ | 向いている料理 |
|---|---|---|
| さば+むろあじ | 定番の家庭用 | みそ汁・煮物全般 |
| かつお+さば | 香りとコクのバランス型 | みそ汁・めんつゆ |
| かつお+宗田鰹+さば | プロ仕様の万能型 | 蕎麦つゆ・煮物・みそ汁 |
| いわし+かつお+宗田鰹+さば | 濃厚でパンチがある | おでん・濃い煮物 |
選び方のポイントは、原材料表示を見て魚の種類と産地を確認することです。国産素材を使用した製品は品質が安定しており、臭みも出にくい傾向があります。
参考:混合削り節の定義とJAS規格についての詳細はこちら
混合削り節とは?混合削り節の定義とおいしいだしの取り方 – 和食の旨み倶楽部
混合削り節のだしとりで最も多い失敗が「煮出し時間の間違い」です。結論が先です。
煮出しは弱火で2〜6分が基本です。これだけ覚えておけばOKです。
【基本の煮出し手順】
ここで絶対に避けたい操作が2つあります。ひとつは「削り節をかき混ぜること」、もうひとつは「こすときに絞ること」です。どちらも苦みや生臭さが出る原因になります。コーヒーをドリップするときのように、重力に任せてゆっくり落とすイメージでこすのが正解です。
火加減についても注意が必要です。沸騰の目安は「グラグラと激しく煮立てる」ではなく、「気泡がポコポコと静かに湧いている状態」です。激しく沸騰させ続けると削り節が踊り、余分な雑味が出やすくなります。
また、鍋のフタをするのも避けてください。フタをすると魚の生臭さが蒸気として閉じ込められてしまい、だしに戻ってしまいます。フタなしで煮出すことが大切です。
煮出し時間の違いによるだしの変化は次の通りです。
薄削りの混合削り節の場合は長く煮出すと生臭さが出やすいため、2分程度で切り上げるのが鉄則です。濃いだしが必要なめんつゆや煮物には、最初から中厚削りや厚削りのタイプを選ぶと失敗がありません。
参考:ヤマキによる混合だしの基本手順はこちら
混合だしの取り方 – ヤマキ
「毎朝だしをとるのは面倒…」という方に、特に活用してほしい方法があります。これは使えそうです。
水出し法は、冷蔵庫に入れておくだけでだしが完成するやり方です。前の夜に仕込んでおけば、翌朝は鍋に注いですぐ使えます。火を使わないので吹きこぼれの心配もなく、忙しい朝にぴったりです。
【水出しだしの作り方】
お茶パック(不織布タイプ)に削り節を入れてからポットに入れると、こす手間が省けてさらに楽になります。
水出しだしの保存期間は冷蔵で2〜3日が目安です。まとめて作っておけば1本でみそ汁2〜3回分のだしが準備できます。
煮出し法と比べると、水出しのだしはよりあっさりとしてクリアな味わいになります。味噌汁の風味を柔らかくしたいとき、素材の味を活かしたい炊き込みご飯や茶わん蒸しなどには、水出しだしの方が向いている場合もあります。
一点注意があります。削り節を長時間(12時間以上)入れっぱなしにすると、今度は雑味が出てくる場合があります。ひと晩(8〜10時間以内)を目安にして、翌朝には削り節をすぐ取り出しましょう。
参考:水出しだしの詳しい作り方はこちら
忙しい人のための水出し法(時短テクニック) – まいにち、おだし。
混合削り節で取っただしに、ある1つの素材をプラスするだけで、うまみが最大7〜8倍になる科学的な仕組みがあります。意外ですね。
これは「うまみの相乗効果」と呼ばれる現象です。うまみ成分には大きく分けて、魚のだしに豊富な「イノシン酸」と、昆布に豊富な「グルタミン酸」があります。この2種類を組み合わせると、単体で使ったときよりもうまみが飛躍的に強くなることが科学的に証明されています。イノシン酸とグルタミン酸を合わせると、うまみは7〜8倍にもなります。
さらに、干ししいたけに含まれる「グアニル酸」を加えると、相乗効果は最大30倍になるとも言われています。
混合削り節のだしにこの相乗効果を活かすなら、「昆布との合わせだし」にする方法がもっとも手軽でおすすめです。
【混合削り節+昆布の合わせだし手順】
昆布を長く煮すぎると昆布特有の粘り気と苦みが出て、だしが濁ってしまいます。沸騰前に取り出すことが原則です。
このような合わせだしは、プロの和食の現場でも使われる基本技術であり、家庭で取り入れることで毎日の料理が格段においしくなります。日本料理の「一番だし」との違いはここにあります。
参考:うまみの相乗効果についての科学的解説はこちら
うま味倍増!イノシン酸・グルタミン酸・グアニル酸の相乗効果とは – 和食の旨み倶楽部
だしを取り終えたあとの削り節を、そのままゴミ箱へ…という方は少し立ち止まってください。
実は、だしがらにはもともとのたんぱく質の約85%、うまみ成分であるグルタミン酸にいたっては約94%が残っています(文部科学省食品成分データベースをもとにした理論値)。だしをとった後でも、栄養もうまみもたっぷり残っているわけです。
だしがらは大きく3つの使い方に分けられます。
ただし、薄削りのだしがらは繊維がやわらかく、そのまま刻んでも問題ありません。一方、厚削りや中厚削りタイプのだしがらは繊維が太くて固いため、一度冷凍してから半解凍状態でみじん切りにすると包丁が入りやすくなります。厚削りのだしがらはかき揚げが特におすすめです。
なお、だしパックのだしがらは量が少なく調味料も含まれているため、料理への応用が難しい場合があります。その場合は、だしを取る前の未使用状態のだしパックを調味料として煮物に加える使い方が一番効率的です。
毎日のだしとりがもったいなくないことは、この数字が証明しています。食費の節約と食材の無駄ゼロに、だしがら活用は直接つながります。
参考:だしがらの栄養と活用法の詳細はこちら
だしがらは栄養豊富!残った鰹節のだしがらを有効活用する方法 – 和食の旨み倶楽部