実はクグロフ、毎朝食べ続けると飽きないどころか、朝食がパンよりもリッチに格上げされます。
クグロフとは、フランスのアルザス地方を発祥とする伝統的な発酵菓子です。イースト菌(酵母)を使って生地を発酵させてから焼き上げるため、パンのようなふわふわ感を持ちながら、バター・卵・砂糖をたっぷり使ったリッチなお菓子の顔も持っています。「お菓子とパンの中間」と表現されることも多く、一度食べると独特の立ち位置に納得できます。
材料はシンプルで、強力粉・砂糖・塩・ドライイースト・牛乳・卵・無塩バター・レーズンが基本です。焼き上がりには粉砂糖をふりかけ、白い雪化粧のような見た目に仕上げるのが定番のスタイルです。
クグロフと混同されやすいお菓子に「カヌレ」があります。見た目が似た溝付きの型で焼くためですが、実は全くの別物です。カヌレはフランス・ボルドー地方発祥で、イースト菌を使わず、外側がカリカリ・中がもちもちの食感が特徴です。一方でクグロフはイースト発酵のふわふわ食感。一度食べれば、その違いは明らかですね。
また、クグロフとブリオッシュを混同する方もいます。基本的な材料は似ていますが、クグロフには洋酒漬けのドライフルーツやアーモンドが加わり、専用の「クグロフ型」で焼くことが大きな違いです。ブリオッシュは形が様々であるのに対し、クグロフはあの王冠型が象徴的なアイデンティティになっています。つまり、見た目と型そのものがクグロフを定義するほど重要ということですね。
| お菓子 | 発祥 | 発酵 | 食感 | 特徴的な型 |
|---|---|---|---|---|
| クグロフ | フランス・アルザス | イースト使用 ✅ | ふわふわ | 王冠型(中央に穴) |
| カヌレ | フランス・ボルドー | なし ❌ | 外カリ・中もち | 小型溝付き型 |
| ブリオッシュ | フランス | イースト使用 ✅ | ふわふわ | 型は様々 |
| パウンドケーキ | イギリス | なし(BP使用)❌ | しっとり | 横長型 |
クグロフは、16〜17世紀ごろにヨーロッパで生まれたとされています。現在はフランスの伝統菓子として有名ですが、実はルーツにはオーストリアやドイツ語圏との深い関わりがあります。
最も知られているのが「マリー・アントワネット説」です。フランス王ルイ16世に嫁いだマリー・アントワネットは、オーストリア・ウィーン生まれ。故郷で毎朝食べていたほどのクグロフ好きで、フランス宮廷にこのお菓子を持ち込んだと言われています。その後クグロフはフランス全土に広まり、やがてヨーロッパ各国でも愛される伝統菓子となりました。王妃が愛したお菓子というロマンチックな背景は、現代でもクグロフの魅力のひとつです。
もうひとつ有名なのが「東方の三博士説」です。キリスト誕生を祝うためにベツレヘムへ向かう途中、東方の三博士がフランス・アルザス地方のリボーヴィレという村の陶器職人の家に泊めてもらいました。そのお礼として、帽子の型をした陶器を焼いて贈ったのがクグロフの始まりだという伝説です。この説に従えば、リボーヴィレ村がクグロフ発祥の地となります。
さらに興味深いエピソードもあります。クグロフの生地にラム酒を浸み込ませて改良したところ美味になり、「ババ(Baba au Rhum)」というお菓子が生まれたとも言われています。このように、クグロフは単体のお菓子にとどまらず、ヨーロッパの菓子文化そのものに影響を与えてきた存在なのです。意外ですね。
18世紀以前のクグロフは、現代のドライイーストではなく「ビール酵母」を使って作られていたという記録も残っています。ビール酵母を使っていたころの風味は今とは異なっていたはずで、当時の人々がどんな味を楽しんでいたかを想像すると、歴史のロマンを感じます。
クグロフの起源・歴史・地域ごとの違いについて詳しく解説しているシェフレピの記事はこちら
クグロフの最大の特徴といえば、王冠のようなねじれた溝入りのシルエットと、中央に空いた穴です。この形は単なるデザインではありません。機能的な意味があります。
クグロフ型は背が高く、厚みがあります。もし穴がなければ、外側が焦げて中心まで火が通らないという問題が起きます。中央に筒状の穴を設けることで、外側だけでなく内側からも熱が均一に伝わり、全体をムラなく焼き上げることができるのです。シフォンケーキ型と同じ原理ですね。
型には主に2種類あります。
陶器製は焼き時間の調整が必要ですが、焼き上がりのしっとり感は格別です。アルザスでは「一家にひとつクグロフ型がある」と言われるほど、型は生活に根づいた道具でした。これは知っておくと得する知識です。
ちなみに、型の外側の溝(うねり模様)は帽子の形に由来するという説があります。14世紀のアルザス地方で流行した「グーゲルフエッテ(Gugelhuete)」という帽子に形が似ているとされ、これがクグロフという名前の語源のひとつになったと言われています。形にもちゃんとした理由と歴史があるということですね。
クグロフ型の種類・材質・選び方を詳しく解説しているシモジマの記事はこちら
クグロフは発酵工程があるため「難しそう」と思われがちですが、手順を把握すれば自宅でも十分に作れます。ポイントは発酵の温度管理です。
以下が基本の材料(18cmクグロフ型 / 3〜4人分)です。
作り方の流れは大きく以下のステップです。
発酵時間は季節や室温によって変わります。夏場は発酵が早く進みすぎる場合もあるため、状態をこまめに確認しながら進めましょう。バターが溶けやすい高温(35℃以上)での発酵は生地がべたつく原因になるので、低温でゆっくり発酵させる方が安定して成功しやすいです。これが基本です。
焼き上がり後の保存は、常温で2日・冷蔵で約1週間・冷凍で約2週間が目安です。冷凍保存するときは小分けにしてラップで包み、密閉袋に入れておくと、食べる分だけトースターで温めて楽しめます。
クグロフはそのまま切り分けて食べるのはもちろんですが、食べ方のバリエーションが豊富なのも魅力のひとつです。アルザスでは「少し贅沢な日曜日の朝食」として親しまれてきた背景があり、日常使いのお菓子として活躍しています。
本場流の定番の食べ方は次のとおりです。
波に沿って斜めに包丁を入れるとカットしやすく、断面も美しく仕上がります。
クグロフ型は、実は普通のパウンドケーキやガトーショコラを作るときにも使えます。発酵作業なしで使えるため、「クグロフを作るのはちょっとハードルが高い」という場合でも、型だけ活用してバターケーキや抹茶ケーキを焼いてみるのもおすすめです。焼き上がりの見た目が華やかになり、プレゼントにも喜ばれます。これは使えそうです。
最近では日本でもクグロフを購入できる専門店やカフェが増えており、クリスマスシーズンにはシュトーレンと並んで見かけることが多くなりました。まずは既製品を一度試してから、自宅で作るイメージをつかむのもひとつの方法です。cake.jpなどのオンラインショップでも購入できるため、近くにお店がない場合はぜひチェックしてみてください。