上新粉だけで草餅を作ると、翌日には石のように硬くなります。
草餅作りを始める前に、まず「上新粉とは何か」をきちんと理解しておくことが大切です。上新粉はうるち米を水でさらして精製・乾燥させた粉で、スーパーで比較的手軽に入手できます。草餅や柏餅、ういろうなどの和菓子に広く使われており、蒸し上がると歯切れのよいしっかりとしたコシが生まれるのが特徴です。
一方、よく似た米粉に「白玉粉」と「餅粉(もち粉)」があります。白玉粉はもち米を水でさらして乾燥させたもので、冷水で練るとつやのあるもちもちした生地になります。餅粉ももち米が原料ですが、製法が異なり、よく伸びてやわらかい食感に仕上がります。つまり、上新粉はうるち米由来で「歯切れのよさ」が得意、白玉粉・餅粉はもち米由来で「もちもち感・やわらかさ」が得意、という使い分けが基本です。
草餅に上新粉だけを使うと、冷めたときにでんぷんが「老化」して硬くなりやすい点がデメリットです。そこで多くのレシピでは、上新粉に白玉粉または餅粉を加えて使います。
| 粉の種類 | 原料 | 食感の特徴 | 草餅での役割 |
|---|---|---|---|
| 上新粉 | うるち米 | 歯切れがよくコシがある | 生地のベース。風味と形のよさを担う |
| 白玉粉 | もち米(水さらし製法) | つやがあり、やわらかくのびる | 少量加えると冷めても硬くなりにくい |
| 餅粉(もち粉) | もち米(乾式製法) | のびがよく、ふんわりやわらか | 上新粉と合わせてもちもち感を補う |
和菓子の専門的な記述によれば、上新粉(上用粉)と餅粉の割合がおよそ4:6になると食感がやわらかくなり、硬くなるのも遅くなるとされています。また砂糖は粉に対して10%以上加えると、砂糖が水分を抱え込んでくれるため、でんぷんの老化をゆるやかにしてくれる効果があります。つまり砂糖は「甘みのため」だけでなく「柔らかさを保つため」という重要な役割を持っているのです。
プロや和菓子職人のレシピを参考にすると、上新粉75g+餅粉25gの組み合わせが、柔らかさとコシを両立させた黄金比として広く使われています。
粉の割合が基本です。
参考:和菓子粉の種類と特徴について詳しく解説されています。
白玉粉・上新粉・もち粉・だんご粉の違いとは、基本の使い方紹介|TOMIZ(富澤商店)
草餅の香りと色を決める最重要ステップが、よもぎの下処理です。ここを丁寧にやるかどうかで、出来上がりの見た目も香りもまったく変わってきます。
まず生のよもぎを使う場合は、3月下旬〜5月上旬の若い芽を選ぶのが鉄則です。成長が進んだよもぎは繊維が太くなり、蒸してもスジっぽさが残ってしまいます。採れたよもぎは根元から葉先にかけてしごいてみて、ゴワゴワした感触の葉は取り除きましょう。可食部だけを水洗いして使います。
次にゆで方です。大きめの鍋にたっぷりの水(1ℓ程度)を沸かし、重曹を小さじ1加えてからよもぎを投入します。重曹を加えることで繊維がやわらかくなり、鮮やかな緑色が保たれ、すり鉢でペースト状にしやすくなります。これは知っていると大きく差がつくポイントです。
重曹なしだと色がくすんで仕上がる可能性がありますが、重曹ありだと目を引く鮮緑色に仕上がります。ゆで時間は1〜2分が目安で、ゆですぎるとよもぎの香りが飛んでしまうので注意が必要です。ゆで上がったらすぐに冷水にとって色止めし、水を2〜3回替えながらアクを抜きます。
アク抜き後のよもぎは、フードプロセッサーで細かく砕いてからすり鉢でペースト状にします。包丁だけでも作れますが、繊維が多いのでフードプロセッサーを使うと格段に楽です。少しだけ水分を残しておくと空回りしないのでコツとして覚えておきましょう。
下処理したよもぎは、使い切れない場合でも冷蔵庫で3日・冷凍庫で約1カ月保存できます。春に大量に下処理してまとめて冷凍しておけば、夏や秋にも草餅が楽しめるので非常に便利です。
これは使えそうです。
参考:よもぎの葉の下ゆで・アク抜き方法を写真付きで詳しく解説しています。
よもぎの下処理が終わったら、いよいよ生地作りに入ります。ここでは上新粉75g・餅粉25g・砂糖10gを使った基本的な草餅の作り方を紹介します。この割合が、柔らかさとコシをバランスよく両立させてくれます。
まずボウルに上新粉・餅粉・砂糖を入れてよく混ぜ合わせます。砂糖は最初から粉類と一緒に混ぜておくのがポイントで、こうすることで生地全体に均一に砂糖が行き渡り、仕上がりにムラができません。次に熱湯(70ml程度)を少しずつ加えながら、箸や木ベラでよく混ぜます。上新粉は必ず熱湯で練ることが大切です。熱湯で練ることでうるち米のでんぷんが部分的に糊化し、粘りと弾力が生まれて生地がまとまりやすくなります。水では粘りが出にくく、蒸し後もなめらかな食感になりません。
ひとまとまりになったら、耳たぶ程度のやわらかさを目安に仕上げます。かたい場合は少しずつお湯を足して調整しましょう。まとまった生地を薄めに成形して(厚みが均一になるよう意識する)、蒸気の上がった蒸し器に並べます。蒸し時間は約20分が目安です。強火でしっかり蒸気を上げた状態で蒸すことが重要で、火力が弱いと生地の中まで熱が通らずにぼそぼそした食感になります。
蒸し上がったらすり鉢またはボウルに移し、すりこぎでしっかりと突いてなめらかにします。十分に突いてから、ペースト状にしたよもぎを加えてさらに練り込んでいきます。よもぎを後から加えることで、鮮やかな緑色と香りをできる限り保つことができます。
蒸し上がった生地にあんこを包む場合は、1個あたり45〜50gに生地を計量し、直径約10cmの円形に伸ばしてから20〜30gのあんこを包みます。外側の縁を薄めに伸ばすと合わせ目が厚ぼったくならず、見た目よく仕上がります。手に水をつけながら作業すると生地がくっつきにくくなります。
蒸し方が基本です。
草餅が翌日に硬くなってしまう原因は、でんぷんの「老化(β化)」という現象にあります。炊きたてのご飯が冷めると硬くなるのと同じ仕組みで、お餅のでんぷんも時間の経過とともに水分を放出して分子が再結晶化し、食感がぼそぼそになってしまいます。
これを防ぐためのポイントが3つあります。
1つ目は「砂糖を粉の重量の10%以上入れること」です。砂糖は水分保持力が高く、でんぷんが老化するスピードを遅らせる働きがあります。上新粉100gなら砂糖10g以上が目安で、これを守るだけでも翌日の食感がかなり変わります。砂糖の役割は甘みだけではないのです。
2つ目は「白玉粉や餅粉を混ぜること」です。もち米由来のアミロペクチン(粘りのあるでんぷん)が老化しにくい性質を持っているため、上新粉のみで作るよりも格段に柔らかさが長続きします。
3つ目は「保存方法」です。作ったその日に食べ切るのが一番ですが、残った場合は1個ずつラップで包んで常温保存しましょう。冷蔵庫に入れると温度が低くなり、でんぷんの老化がかえって加速してしまいます。冷蔵保存は避けるのが原則です。
| 状況 | おすすめの保存法 |
|------|-----------------|
| 当日中に食べる | ラップで包んで常温保管 |
| 2〜3日以内に食べる | ラップ+密閉袋で常温(冬季) |
| 長期保存したい | 1個ずつラップ→冷凍(約2週間) |
| 硬くなってしまった | 蒸し器で5〜10分再加熱、またはレンジ500Wで10〜20秒 |
なお、硬くなってしまった草餅を復活させるには、蒸し器で5〜10分蒸し直すか、電子レンジ500〜600Wで10〜20秒加熱するのが手軽でおすすめです。これで作りたてに近い柔らかさに戻ります。
冷蔵保存はNGが原則です。
草餅は春のイメージが強い和菓子ですが、乾燥よもぎパウダーを使えば一年中いつでも作ることができます。これを知っている主婦は意外と少なく、「よもぎの季節じゃないから草餅は作れない」と諦めている方も多いのではないでしょうか。
乾燥よもぎパウダーは富澤商店やかわしま屋などの製菓材料店、また一部のスーパーやオンラインショップで購入できます。使い方は簡単で、粉末をお湯(粉末の5倍量が目安)で戻してからよもぎペーストとして使うか、粉類に直接混ぜ込む方法のどちらでも対応できます。
乾燥よもぎの香りは「生よもぎより薄いのでは?」と思いがちですが、品質の良い国産よもぎパウダーは想像以上にしっかりとした香りを持っています。むしろアク抜きの手間が不要で、分量管理がしやすいという点で日常的な草餅作りには向いている面もあります。
よもぎパウダーを上新粉と一緒に使う際の目安は、粉全体の重量の約1%程度(上新粉100gに対してパウダー約1〜2g)が一般的です。少量でも十分な色と香りが出るので、入れすぎると苦みが出ることがあります。まずはレシピ通りの量で試してみるのが安心です。
これが一年中楽しめる秘訣です。
参考:乾燥よもぎパウダーを使ったよもぎ餅レシピが詳しく紹介されています。
草餅を初めて作る方が躓きやすいポイントをまとめました。
Q. 生地がまとまらない・ぼそぼそになる
最も多い失敗がこれです。原因の大半は「水分量の不足」か「熱湯でなく水を使った」ことにあります。上新粉はうるち米のアミロース(粘りの少ないでんぷん)が主成分のため、冷水では十分に水分を吸収できず、粘りが出ません。必ず熱湯(80℃以上が理想)を使い、様子を見ながら少しずつ加えてください。耳たぶほどのやわらかさが生地のちょうどいい硬さの目安です。
Q. 蒸したのに粉っぽさが残る
蒸し時間が足りないか、蒸気が十分に上がっていない状態で蒸したことが原因として考えられます。蒸し器のふたを開けたときに上新粉特有の白さが残っていたら、まだ火が通り切っていないサインです。追加で5分ほど蒸して確認しましょう。
Q. よもぎが均一に混ざらない
蒸した後の生地が冷めてしまうと硬くなり、よもぎが混ざりにくくなります。生地が熱いうちにすりこぎでしっかり突いてなめらかにし、素早くよもぎを加えて練り込むことが大切です。ゴムベラと手を使って、折り畳むように練り込むとムラになりにくいです。
Q. 手に生地がくっついて成形できない
手に水をつけながら作業すれば、生地のくっつきを防げます。また片栗粉や餅とり粉を作業台に薄く敷いておくと、形成がスムーズになります。きな粉を使っても風味がプラスされてよいでしょう。
失敗の原因がわかれば対策も立てやすいですね。一度やり方を覚えてしまえば、草餅作りはそれほど難しくありません。上新粉の扱いに慣れると、草餅以外の和菓子作りにも応用が広がります。ぜひ春の一品として、家庭での手作り草餅に挑戦してみてください。