牛・豚アレルギーの患者にマックターゼを処方すると重篤な禁忌違反になります。
マックターゼ配合錠は、沢井製薬株式会社が製造販売する後発医薬品(ジェネリック)の総合消化酵素製剤です。2010年11月に薬価基準収載・発売が開始されており、医薬品分類番号は2339(消化酵素製剤)に属します。
効能・効果は添付文書上「消化異常症状の改善」と記載されており、胃もたれ・食後のお腹の張り・消化不良症状を呈する患者への処方が想定されています。用法・用量は「通常成人1回2錠を1日3回食後に経口投与」が基本であり、年齢・症状に応じて適宜増減が可能です。つまり、食後投与が原則です。
食後投与が指定されている理由は、消化酵素製剤の役割と直結しています。食事の内容物が胃内に存在するタイミングで酵素を補充することで、栄養素の分解が効率よく進む設計になっているためです。食事終了から時間が経ってしまうと、分解すべき食物が胃・小腸を通過してしまい、薬の効果が大幅に落ちます。これは使えそうな知識ですね。
薬価は1錠あたり5.9円という非常に低コストな設定です。1回2錠×1日3回では1日あたり35.4円、年換算でも約1万2,900円程度に収まります。長期投与が必要なケースでも患者の経済的負担を大きく抑えられる点が、臨床現場で評価される大きな理由の一つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | マックターゼ配合錠 |
| 製造販売元 | 沢井製薬株式会社 |
| 薬効分類 | 総合消化酵素製剤(2339) |
| 効能・効果 | 消化異常症状の改善 |
| 用法・用量 | 成人1回2錠、1日3回、食後 |
| 薬価 | 5.9円/錠 |
| 規制区分 | 該当なし(処方箋医薬品ではあるが、指定なし) |
マックターゼ配合錠の最大の特徴は、5種類の消化酵素を1錠に集約した複合製剤である点です。単一の酵素製剤とは異なり、脂質・蛋白質・炭水化物・食物繊維という4大栄養素すべてに対して酵素活性を発揮できます。
各成分と由来、対応する基質をまとめると次のとおりです。
| 成分名 | 1錠中含量 | 由来 | 分解対象 | 配置部位 |
|---|---|---|---|---|
| ビオヂアスターゼ2000 | 10.0mg | Aspergillus oryzae(麹菌) | でんぷん・蛋白・繊維素 | 胃溶部 |
| ニューラーゼ | 9.0mg | Rhizopus niveus(クモノスカビ) | 蛋白・脂肪 | 胃溶部 |
| セルラーゼAP3 | 5.0mg | Aspergillus niger(クロカビ) | 繊維素(セルロース) | 胃溶部 |
| 膵臓性消化酵素8AP | 26.0mg | ブタ膵臓 | でんぷん・蛋白・脂肪 | 腸溶部 |
| プロザイム6 | 5.5mg | Aspergillus melleus | 蛋白 | 腸溶部 |
この配合に関して非常に重要な製剤設計上のポイントがあります。5種の酵素は「胃溶部(外層)」と「腸溶部(内核錠)」の二層構造に分けて搭載されています。各酵素が至適pHで最大活性を示せるように設計されており、胃溶部の酵素は比較的酸性環境でも機能できる微生物由来酵素、腸溶部の酵素はより中性〜弱アルカリ環境を好むブタ膵臓由来の酵素です。
この二層構造の意義は大きいです。消化管の内腔はpHが胃(約pH1〜3)から十二指腸(約pH5〜7)、小腸(pH7前後)へと大きく変動します。もし全成分を同じ層にまとめてしまうと、胃酸で活性を失う成分が出てきます。二層に分けることで消化管全体で幅広いpH域の効果が期待できるということですね。
消化力試験(in vitro)では、人工消化管モデルを用いた試験において、脂肪・蛋白質・でんぷん・繊維素に対してすべて消化力が確認されています(社内資料)。
安全性の管理において、特に注意が必要なのが禁忌の確認です。添付文書では以下の2つが禁忌として規定されています。
- 禁忌2.1:本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者
- 禁忌2.2:ウシ蛋白質またはブタ蛋白質に対して過敏症の既往歴がある患者
特に禁忌2.2は見落とされやすいリスクがあります。「消化薬だから動物アレルギーは関係ない」と思い込んでいる医療従事者が実際には一定数いますが、これは大きな誤りです。マックターゼの有効成分のうち膵臓性消化酵素8APはブタ膵臓由来であるため、ブタ蛋白質への過敏症既往歴がある患者への投与は絶対禁忌となります。処方前に必ずアレルギー歴を確認することが原則です。
副作用については、添付文書上では「頻度不明」として過敏症(くしゃみ・流涙・皮膚発赤等)のみが記載されています。重大な副作用の項目は設定されておらず、比較的安全性プロファイルはシンプルな薬剤と言えます。ただし、初回投与時には患者の状態を丁寧に観察することが必要です。
妊婦への投与については「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」とされています。授乳婦についても「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること」という記載があります。いわゆる有益性投与の考え方が基本です。
もう一点、臨床現場で意外と忘れられがちな注意点があります。それがPTPシートからの誤飲リスクです。PTPシートのまま誤飲した場合、硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、穿孔から縦隔洞炎等の重篤な合併症に至る可能性があります。薬剤交付時に「PTPシートから取り出して服用するよう指導すること」が添付文書で明記されており、服薬指導の場で必ず伝えるべき内容です。
マックターゼ配合錠が適応となる「消化異常症状の改善」は、臨床的に幅広い場面で処方される概念です。具体的には、食後の胃もたれ・膨満感・吐き気・軟便・腹部不快感などが対象となります。
消化酵素の分泌は加齢とともに低下することが知られています。高齢患者では、食欲低下や胃もたれなどの訴えが増える一因として消化酵素機能の低下が挙げられることがあります。そのような患者層において、消化酵素製剤の補充療法は栄養状態の維持に貢献する手段の一つとなり得ます。
慢性膵炎など、膵外分泌機能が著しく障害されているケースではどうなるんでしょう。この場合、マックターゼのような一般的な消化酵素製剤では酵素活性が不足し、効果が得られない可能性があります。より高力価の膵消化酵素製剤(リパクレオン等)への変更や増量を検討する必要があります。マックターゼは主に「消化機能の軽〜中等度の低下」に適した薬剤という位置づけです。
また、機能性ディスペプシア(FD)の患者に対して消化酵素製剤が処方されるケースも臨床では見られます。ただし、FDの主要な病態は消化管運動障害や知覚過敏であり、消化酵素不足が主因とは言い切れない点に注意が必要です。FDにおいては消化酵素製剤の使用は補助的な位置づけとなります。
服薬のタイミングについて、もう一度整理しておきます。消化薬として最も効果を発揮するのは食物が胃内に存在する時間帯です。「食後30分以内」を目安に服用するのが合理的であり、食事を終えてから1時間以上経過してからの服用では期待する効果が得られにくくなります。これは患者指導でも繰り返し伝えるべき点です。
現在(2025年時点)、医療用消化酵素製剤の選択肢は大幅に減少しています。タフマックE・エクセラーゼはいずれも製造販売中止となり、実質的に処方可能な主要製剤はベリチーム配合顆粒・マックターゼ配合錠・リパクレオン顆粒/カプセルの3品目に絞られています。
| 製剤名 | 薬価 | 剤形 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| マックターゼ配合錠 | 5.9円/錠 | 錠剤 | 5種酵素・二層構造・最低薬価 |
| ベリチーム配合顆粒 | 26.2円/g | 顆粒 | 4種酵素・携帯しやすい顆粒剤 |
| リパクレオン顆粒300mg | 56.4円/分包 | 顆粒 | 高力価・慢性膵炎の膵外分泌不全に特化 |
マックターゼの薬価はベリチームの約1/4以下です。1日3回服用を1年間継続した場合の薬剤費は、マックターゼが約1万2,900円に対してベリチームは約2万9,000円以上となる計算になります(概算)。長期投与患者にとっての経済的メリットは無視できません。
ただし、剤形の違いも考慮が必要です。マックターゼは錠剤であるため、錠剤の服用が困難な嚥下障害患者や小児には不向きです。顆粒剤のベリチームの方が適応できる場合もあります。患者の服薬能力を踏まえた選択が条件です。
リパクレオンは、慢性膵炎における膵外分泌機能不全を主な適応症とする高力価製剤です。保険適用の観点から、慢性膵炎以外の患者への処方が制限されるケースがある点も実務上の注意点です。マックターゼやベリチームのように「消化異常症状の改善」という幅広い適応はリパクレオンには設定されていないため、使用場面が限定されます。
参考リンク(消化酵素製剤の比較・代替薬選択に関する情報)。
ベリチーム代替薬選択の比較検討(薬価・効果・副作用)
https://chigasaki-localtkt.com/berichimudaitaisoseizaihikakukentou/
マックターゼ配合錠の保管方法として、添付文書には「開封後は湿気を避けて保存すること」と記載されています。これは消化酵素という蛋白質系製剤の特性によるものです。酵素は熱・湿気・光に対して失活しやすく、安定性試験でも高湿度(75%RH)条件下では内核が褐変し、硬度が低下することが確認されています。
無包装での保存は酵素活性が急速に低下するため、PTP包装から出した状態での長期保存は避けるよう患者に指導する必要があります。投薬量の管理上、一包化調剤を行う場合は、特に湿気対策を講じた包装材を使用することが望ましいです。
処方時の実務確認フローとして、以下のポイントを押さえておくと安全です。
マックターゼ配合錠の識別コードは「SW 420」(錠剤本体片面およびPTPシートに印字)です。他の白色錠と区別する際の確認に使えます。
また、包装単位はPTP(乾燥剤入り)100錠(10錠×10)または1,000錠(10錠×100)の2種類です。院内採用規格と発注数量を管理する際の基本情報として把握しておく必要があります。
安定性データについて一点追記します。加速試験(40℃75%RH遮光・6ヵ月)において、規格には適合しているものの、6ヵ月後の脂肪消化力は初期値の約92%まで低下が見られています。消化酵素製剤は有効期間内であっても適切な保管が活性維持の条件です。適切な保管なら問題ありません。
情報確認先:沢井製薬株式会社 医薬品情報センター(TEL:0120-381-999)、または沢井製薬医療関係者向け総合情報サイト。
添付文書・インタビューフォーム(PMDA収載)最新版の確認。
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/