焼きナスの皮をむくと、ナスニンがほぼゼロになります。
ナスニンとは、ナスの皮に含まれる青紫色の天然色素で、ポリフェノールの一種であるアントシアニン系色素です。「なぜあの鮮やかな紫色をしているの?」と思ったことはないでしょうか。その色の正体こそがナスニンであり、植物が紫外線などの有害な光から身を守るために生み出した成分です。
ナスニンが注目される最大の理由は、その強力な抗酸化作用にあります。抗酸化作用とは、体内で発生する「活性酸素」を取り除く働きのこと。活性酸素は細胞を傷つけ、老化やシミ・シワの原因になるだけでなく、がん・動脈硬化・高血圧など生活習慣病の引き金にもなります。ナスニンはその活性酸素を効率よく除去してくれるのです。
抗酸化力が高い食品として知られるブルーベリーや赤ワインにも同じアントシアニンが含まれていますが、ナスニンはその中でも特に強力な部類に入るとされています。つまり「身近な野菜でしっかりアンチエイジング」が叶う成分です。
ナスニンが期待できる主な効果を整理すると、以下のとおりです。
- 🔴 動脈硬化・高血圧の予防:活性酸素による血管ダメージを抑え、血管の老化を遅らせる
- 👁️ 眼精疲労の改善・視機能サポート:アントシアニンはロドプシンの再合成を促し、目の疲れを和らげる効果が研究で示されている
- 🧠 認知症予防への期待:血中の抗酸化物質レベルが高い人は認知症発症リスクが低いという研究報告がある(米国神経学会)
- 🌞 美肌・紫外線ダメージ対策:シミ・シワ・たるみの原因となる活性酸素を抑制し、肌の老化を遅らせる
- 🦠 免疫力の向上:細胞の酸化を防ぐことで免疫機能をサポート
これだけの効果が「毎日の食卓に並ぶナス1本」に詰まっているとは、意外ですね。
参考:ナスニンの抗酸化作用・視機能改善作用について(管理栄養士監修・シンクヘルスブログ)
https://health2sync.com/ja/blog/eggplant-nutrition/
ナスニンを「食べているつもりで摂れていない」状況に、実は多くの方が陥っています。その原因は、調理法の選択にあります。
まず知っておきたいのが、ナスニンは水溶性だという点です。水に溶けやすい性質があるため、アク抜きで長時間水にさらすと成分がどんどん流出してしまいます。アク抜きするなら、5分以内を目安にするのが鉄則です。それ以上時間をかければかけるほど、ポリフェノールの損失が大きくなります。
では、何が正解の調理法かというと、「油を先にまとわせる」ことです。なすの切り口や皮に少量の油を塗ってから加熱すると、油が皮の表面をコーティングし、ナスニンが水や蒸気に溶け出すのを防いでくれます。炒め物や揚げ物での油調理は、ナスニンの流出防止と抗酸化力の相乗効果の両方が期待できます。
| 調理法 | ナスニン保持 | カロリー | おすすめ度 |
|--------|------------|---------|-----------|
| 油炒め(皮ごと) | ◎ 高い | やや高め | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 蒸す(皮ごと) | ○ 比較的高い | 低め | ⭐⭐⭐⭐ |
| 味噌汁・スープ | ○ 汁ごと飲めばOK | 低め | ⭐⭐⭐⭐ |
| 水にさらす(長時間) | △ 流出あり | 低め | ⭐⭐ |
| 焼きナス(皮をむく) | × ほぼゼロ | 低め | ⭐ |
焼きナスのように直火で焼いたあとに皮をすべてむいてしまうと、ナスニンはほぼ失われます。焼きナスは美味しいですが、皮ごと食べられる別の料理でバランスを取るのがベストです。
また、なすをみそ汁やスープに使う場合は、スープを残さず飲み切るのがポイントです。煮ている間に溶け出したナスニンやカリウムなどの栄養素が、汁に豊富に含まれているからです。油調理が基本です。
参考:なすの調理法によるナスニン保持の違いについて(日本食糧新聞電子版)
https://news.nissyoku.co.jp/hyakusai/ishii20230511063349927
ナスの皮には、果肉の2〜3倍もの抗酸化力があることがわかっています。これは、ナスニンをはじめとするポリフェノールが皮に集中しているためです。皮をむいてしまうと、抗酸化成分をほぼ捨てることと同じになってしまいます。
美肌への効果という観点から考えてみましょう。夏の強い紫外線を浴びると、皮膚に活性酸素が大量発生し、メラニン色素の生成が増えてシミやシワの原因になります。ナスニンの抗酸化作用は、この活性酸素の連鎖を断ち切る役割を果たします。つまり「食べる日焼け止め」ともいえる働きが期待できるのです。
さらに、ナスに含まれるポリフェノールは腸内環境を整え、善玉菌を増やす効果も認められています。腸内環境が整うと皮膚の状態が改善する可能性があることは、多くの研究で示されています。腸内環境を整えることが、美肌への近道ということですね。
皮が固くて食べにくいと感じる場合は、次の工夫を試してみてください。
- 🔪 皮に斜め2mm間隔で浅く切り込みを入れる(食感が格段によくなる)
- 🫙 皮ごと漬物にする(脱水で栄養素が凝縮されてさらに効率よく摂取できる)
- 🫒 炒める前に皮に薄く油を塗る(色鮮やかに仕上がり、食欲もアップ)
なお、皮には食物繊維も豊富に含まれているので、便秘解消効果の面でも皮ごと食べることに大きな意味があります。これは使えそうです。
参考:なすの皮の抗酸化力が果肉の2〜3倍であることについて(FNN PRIME ONLINE)
ナスニンが「目に効く」という話は、あまり広まっていないかもしれません。意外ですね。しかし、アントシアニン系成分には視機能改善作用があることが、複数の研究で明らかになっています。
目の中には「ロドプシン」という視細胞の光感受性物質があり、これが再合成されることで視機能が維持されます。アントシアニンには、このロドプシンの再合成を促進する働きがあると考えられており、眼精疲労の改善や視力維持に寄与するとされています。スマートフォンやパソコンを長時間使う現代の生活では、目への負担が特に大きくなっています。毎日の食事でナスを取り入れることが、目のケアにもつながるわけです。
動脈硬化予防の観点も見逃せません。血管の内側に活性酸素が作用すると、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が酸化されて血管壁に蓄積しやすくなります。これが動脈硬化の大きな原因の一つです。ナスニンはこの酸化LDLの生成を抑制することで、血管を守る効果が期待されています。動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。生活習慣病の予防という点で、ナスの皮ごと食べる習慣は中長期的に大きなメリットになるのです。
さらに近年の研究では、農研機構がナスに含まれるコリンエステル(アセチルコリン)が自律神経に作用し、ストレス性の血圧上昇や気分の低下を改善する効果をヒト試験で確認しています。これは世界初の報告として注目されました。つまりナスは「血圧を下げる可能性がある野菜」としても研究が進んでいるのです。
参考:ナス由来のコリンエステルによる血圧・気分改善効果(農研機構)
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/135283.html
「ナスニンの効果はわかった。でも毎日どう食べ続ければいいの?」という疑問は自然に浮かびますね。継続して摂ることが、効果を実感するための条件です。
ナスの適量は1日1〜2本程度が目安とされています。食べ過ぎると水分の過剰摂取でお腹をこわすこともあるため、コンスタントに1本を食卓に取り入れる感覚でOKです。一般的な中サイズのナス1本の重量は約120gで、はがきを横に並べた大きさをイメージするとわかりやすいでしょう。
日常的に摂取しやすいおすすめの食べ方をご紹介します。
- 🥢 電子レンジ蒸しなす:皮に少量の油を塗ってラップ、600Wで3〜4分。簡単で油の量も最小限
- 🥘 なすの味噌汁:皮ごと乱切りにして汁ごと摂取。水溶性のナスニンもスープと一緒に飲めば無駄なし
- 🫕 なすの炒め物(薄切り):少量の油でさっと炒めるだけ。皮の色が鮮やかなまま仕上がる
- 🍆 なすのポン酢漬け:ゆでた皮つきなすをポン酢に漬けるだけ。作り置きも可能
また、一般にはあまり知られていない活用法として「なすのヘタをスープに入れる」方法があります。なすのヘタやガクに含まれる天然化合物が、子宮頸がん予防を含む幅広いがん予防に有効であることがマウスを使った実験で発見されています(FNNの取材による)。ガクは口に残るので取り除きますが、ヘタ部分はそのままスープや炒め物に加えることができます。
毎日の食卓に取り入れやすくするには、「なすを買ったらすぐ使い切る計画を立てる」ことが大切です。なすは低温障害を起こしやすい野菜で、冷蔵庫の野菜室で保存する場合でも2〜3日以内に使い切るのが理想的です。購入後は1本ずつラップで包んで野菜室に立てて保存すると、鮮度が長持ちします。ナスニンが豊富な新鮮な皮の状態を保つためにも、保存方法に注意すれば大丈夫です。
ナスニンを手軽に補いたい日には、ポリフェノールを含むサプリメントや、アントシアニンを豊富に含むブルーベリー系サプリを併用するという選択肢もあります。ただし、まずは食事からの摂取が基本であり、サプリはあくまでも補助として位置づけると無理なく続けられます。毎日の小さな積み重ねが、健康と美肌への近道になります。
参考:なすの栄養・効果と調理のコツ(農畜産業振興機構)
https://www.alic.go.jp/content/001206097.pdf
参考:ナスの皮の抗酸化力・ヘタの効果について(FNN)