茹でた鶏肉の脂でラーメンが劇的においしくなります。
鶏油(チーユ/とりあぶら)とは、鶏の皮や脂身から抽出した黄金色の油脂のことです。ラーメン店ではスープの表面に浮かぶコク深い油として広く使われており、家庭でも近年注目が高まっています。
鶏油を作る方法はいくつかありますが、大きく分けると「茹でる(水を使う)方法」と「炒める(乾式)方法」の2種類があります。茹でる方法は低温でゆっくりと脂を溶け出させるため、焦げのリスクが低く、クセの少ないすっきりとした風味に仕上がるのが特徴です。
炒める方法は香ばしさが出る一方、火力のコントロールが難しく、焦がしてしまうと苦みが出てしまいます。茹でる方法が初心者向けとして選ばれるのは、失敗しにくいからです。
鶏の皮100gから取れる鶏油はおよそ50〜70ml程度です。これはちょうど大さじ3〜4杯分に相当し、ラーメン1杯あたり小さじ1杯(5ml)使うとすれば、10〜14杯分の味付けができる計算になります。つまり少量の材料から十分な量が取れます。
市販の鶏の皮は100g当たり30〜50円程度とコストパフォーマンスも高く、捨ててしまいがちな食材を活用できる点でも家計に優しい調味料と言えます。これは使えそうです。
材料として最も適しているのは「鶏の皮」と「鶏の脂身(腹まわりの黄色い脂)」です。スーパーでは鶏もも肉や鶏むね肉の皮が付いたまま売られていることが多く、調理時に外した皮を集めておくだけで十分な量が確保できます。
皮を使う場合、まず下処理として臭みを取る作業が重要です。鶏の皮は独特の生臭さがあるため、作る前に必ず冷水で洗い、水気をしっかりキッチンペーパーで拭き取っておきます。
さらに効果的なのが「霜降り処理」です。皮をボウルに入れて熱湯をかけ、すぐに冷水にとって洗い流す工程で、臭みの原因となるタンパク質の汚れを取り除けます。この一手間で仕上がりの風味が大きく変わります。
皮についた余分な肉片や血管は、できる限りキッチンバサミで取り除いておくとより清潔な鶏油になります。脂身が多い部位ほど取れる油の量が増えるため、モモの皮よりもムネの皮のほうが若干脂の量が少ない傾向があります。下準備が肝心です。
また、長ねぎの青い部分やしょうがのスライスを一緒に入れると、さらに臭みが軽減されます。これらは茹でた後に取り除くだけでよいので手軽に試せます。
それでは実際の作り方を順を追って説明します。以下の手順を守れば、クリアで香り高い鶏油が完成します。
【基本の材料(作りやすい分量)】
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 鶏の皮(または脂身) | 200〜300g |
| 水 | 100〜150ml |
| 長ねぎの青い部分 | 1本分 |
| しょうが(薄切り) | 3〜4枚 |
【作り方】
1. 鶏の皮を霜降り処理し、水気を拭き取る
2. 鍋に皮・水・長ねぎ・しょうがを入れて中火にかける
3. 沸騰したら弱火に落とし、蓋をせずに20〜30分加熱する
4. 皮が白くカリカリに縮んだら火を止める
5. ザルと細かいキッチンペーパーや茶漉しで丁寧に濾す
6. 容器に入れて粗熱をとってから保存する
火加減は弱火が基本です。強火にすると水分が一気に蒸発し、皮が焦げて雑味が出てしまいます。目安として、鍋の表面がポコポコと静かに対流しているくらいの火加減が理想です。
水を加えることで鶏の皮が焦げつきにくくなり、脂が均一に溶け出してきます。水は加熱中に自然に蒸発するため、最終的にはほぼ純粋な鶏油だけが残ります。水が完全に蒸発する前に火を止めないよう注意が必要です。
濾すときにキッチンペーパーを使うと微細な不純物まで取り除けて、仕上がりが透明感のある美しい黄金色になります。濾した後の皮(鶏皮チップス状)は醤油や塩で味付けするとおつまみとして食べられるので、無駄になりません。
せっかく作った鶏油を正しく保存しておかないと、すぐに品質が落ちてしまいます。保存方法を間違えると劣化が早まります。
冷蔵保存の場合は、清潔なガラス瓶や密閉容器に入れて冷蔵庫で保管します。目安の保存期間は2〜3週間です。常温に戻すと白く固まった脂が溶けてきますが、これは品質に問題ありません。常温では酸化が急速に進むため、使用後は必ず冷蔵庫に戻すことが大切です。
冷凍保存の場合は、小分けにして製氷皿などに流し込んで冷凍すると便利です。1キューブ=約1回分(小さじ1〜2杯)として使えるので、都度必要な量だけ取り出せます。冷凍での保存期間は約1〜2か月が目安です。
保存容器はガラス製が推奨されます。プラスチック容器は油分を吸収して劣化が早まる場合があるうえ、熱い状態の油を入れると変形したり内分泌撹乱物質が溶け出すリスクがあるためです。
冷蔵した鶏油は乳白色または淡い黄色の半固体になります。これは正常な状態です。においを嗅いで酸化臭(古い揚げ油のようなにおい)がしたり、色が茶色く変色している場合は使用を控えましょう。保存期間内でも見た目・においの確認は必須です。
自家製鶏油の最大の用途はやはりラーメンのトッピングです。丼に盛りつけたラーメンに小さじ1杯(5ml)程度をスープの表面に垂らすだけで、店のようなコクとツヤが加わります。これだけで格段においしくなります。
🍜 ラーメンへの使い方
スープが熱いうちに仕上げとして加えるのがポイントです。鶏油は熱で溶けて薄く膜を張り、スープの温度を保つ保温効果もあります。鶏白湯・塩ラーメン・醤油ラーメンとの相性が特に良好です。
🥘 炒め物への使い方
サラダ油やごま油の代わりに鶏油を使うと、チャーハンや野菜炒めの風味が一段と豊かになります。特に「鶏油チャーハン」は香りがよく、パラパラに仕上がりやすいと好評です。油の量はサラダ油と同量でOKです。
🍚 ご飯への使い方
炊き上がったご飯に鶏油を少量(小さじ1/2杯)加えて混ぜると、「香港風鶏油ご飯(チキンライス風)」になります。塩少々・白ごまを加えるだけでごちそうになるので、忙しい日のランチに最適です。
🥗 ドレッシングへの応用
鶏油は常温で液状の植物油よりも香りが強く、ぽん酢や醤油ベースのドレッシングに少量加えると深みが出ます。サラダにかけると中華風のコクのある味わいになります。
鶏油を使いこなすコツは「少量で使う」ことです。1回の使用量は小さじ1杯前後が適切で、使いすぎると重くなりすぎてしまいます。油が主役にならないよう、あくまで風味の底上げとして活用するのが原則です。
鶏油の香りをさらに豊かにしたい場合は、作るときに長ねぎのみじん切りやニンニクを加えて一緒に加熱する「ねぎ油」風のアレンジも人気です。こうしてできた「鶏ねぎ油」は冷やし中華や和え麺との相性も抜群です。
鶏油を作った後に残る茹で汁(下のほうに沈んだ白濁した液体)は、捨てずに活用できます。多くのレシピサイトには書かれていないポイントです。
この茹で汁には鶏のゼラチン質・アミノ酸・旨味成分が豊富に溶け込んでいます。一見すると白く濁った水に見えますが、実はこれを「簡易チキンブロス(鶏出汁)」として使えるのです。茹で汁は旨味の宝庫です。
活用例1:インスタントラーメンのスープを格上げ
インスタントラーメンの湯を沸かす際に、茹で汁を200ml程度加えるとスープのコクが増します。添付の粉末スープだけでは出せない深みが生まれます。
活用例2:炊き込みご飯の水分として使用
白米2合に対して通常の水の代わりにこの茹で汁を使うと、鶏の旨味がご飯全体に広がります。塩少々・醤油少々で味を調えるだけで、シンプルな鶏旨味ご飯が完成します。
活用例3:スープや鍋物のベースに追加
白菜スープや春雨スープの水分として加えると、市販のスープの素を少なめにしても満足感のある味わいになります。塩分摂取量を抑えながらコクを出す手段として有効です。
なお茹で汁は清潔な容器に入れ、冷蔵保存で2〜3日以内に使い切るのが基本です。見た目はゼリー状に固まることがありますが、温めると溶けて問題なく使えます。冷蔵で一晩おくと白い脂の層と透明な出汁層に分離するので、上層の脂だけをすくい取れば鶏油の追加収穫も可能です。
一度の作業で鶏油と鶏出汁の両方が手に入る。この二度取りの効率の良さが、茹でる方法の大きなメリットのひとつです。捨てる部分がほぼゼロになるので、食品ロスの観点からも理想的な方法と言えます。