母乳をやめればすぐに赤ちゃんの症状が治ると思って断乳したのに、下痢が2週間以上続いた——そんな経験をしたママが実は少なくありません。
乳糖不耐症とは、母乳やミルクに含まれる「乳糖(ラクトース)」を分解する酵素「ラクターゼ」が不足または欠乏しているために、消化がうまくいかない状態のことです。赤ちゃんに症状が出る場合、最も多く確認されるのが「水っぽい下痢」で、1日に10回以上排便することもあります。
症状は消化器系に集中しやすいのが特徴です。具体的には以下のようなサインが現れます。
これらの症状は他の疾患とも重なりやすいです。たとえばロタウイルスやノロウイルスによる感染性胃腸炎でも同様の下痢が起きるため、見た目だけで判断するのは難しい場面があります。
重要なのは「授乳との関連性」を確認することです。授乳のたびに症状が出て、絶食(哺乳停止)状態で症状が治まる場合は乳糖不耐症が強く疑われます。乳糖との関係性が確認できれば診断の大きな手がかりになります。
乳糖不耐症は一種類ではありません。赤ちゃんに見られるタイプは主に3種類に分類されます。これを知っておくと、対処の方向性が大きく変わります。
まず「先天性乳糖不耐症」は、生まれつきラクターゼが全くないか、ほとんど作られない非常にまれな遺伝疾患です。新生児期から激しい下痢と体重増加不良が現れ、早期の医療介入が不可欠です。日本では発症頻度が非常に低く、数万人に1人とされています。
次に「発育性(生理的)乳糖不耐症」は、早産児(特に在胎32週未満)でよく見られます。腸のラクターゼ活性は妊娠後期から急上昇するため、早く生まれた赤ちゃんはラクターゼが少ない状態でスタートします。これは時間とともに自然に改善することが多いです。
最も多いのが「続発性(二次性)乳糖不耐症」です。ロタウイルスやノロウイルスなどによる感染性胃腸炎にかかると、腸の粘膜が傷つきラクターゼが一時的に減少します。胃腸炎が治った後も下痢が2〜4週間続く場合、この続発性乳糖不耐症が原因であることが多いです。
つまり「胃腸炎が治ったはずなのにまだ下痢が続く」という状況は、続発性乳糖不耐症のサインです。この場合、母乳やミルクを完全に止める必要はなく、ラクターゼを補助する方法で対応できるケースがほとんどです。腸の粘膜が回復すれば症状は自然に消えるため、過度に心配しなくても大丈夫です。
参考:乳糖不耐症のタイプ分類と病態について(日本小児科学会の関連情報)
日本小児科学会 公式サイト
「赤ちゃんが乳糖不耐症かもしれないから、母乳をやめなければ」と判断するのは早計です。実際、続発性乳糖不耐症の場合、多くの医師は母乳育児の継続を推奨しています。
母乳には免疫物質(分泌型IgAなど)が豊富に含まれており、腸粘膜の回復を助ける働きがあります。むしろ断乳することで、腸の回復に必要なサポートを失うリスクがあります。母乳は続けるのが基本です。
続発性乳糖不耐症への対処として有効なのが、「ラクターゼ酵素製剤」の活用です。授乳前に母乳に少量のラクターゼを添加することで、乳糖をあらかじめ分解してから赤ちゃんに与えることができます。海外では「Colief(コリーフ)」などの製品が広く使われており、日本国内でも一部の薬局やネット通販で入手可能です。
ミルク育児の場合は、「無乳糖ミルク(ノンラクトースミルク)」への切り替えが選択肢になります。国内では「森永ノンラクト」「明治エレメンタルフォーミュラ」などが代表的です。これらは乳糖を除去または分解処理したミルクで、消化器への負担を大きく軽減できます。
ただし、ノンラクトースミルクへの変更は医師の指示のもとで行うのが安全です。先天性乳糖不耐症や他疾患との混同を避けるためにも、自己判断だけで長期間続けるのは避けましょう。症状が2週間以上改善しない場合はかかりつけの小児科を受診するのが条件です。
自宅での対処で様子を見られるケースもありますが、必ず受診すべきサインがあります。見落とすと体重減少や脱水が進行するリスクがあります。これは必須の知識です。
以下のいずれかに当てはまる場合は、速やかに小児科を受診してください。
| 受診すべきサイン | 理由・リスク |
|---|---|
| 体重が1週間で100g以上減少している | 栄養不足・脱水の進行が疑われる |
| 血液や粘液が混じった便が出る | 腸炎・腸重積など別の疾患の可能性 |
| 排便が1日8回以上で2週間以上続く | 続発性乳糖不耐症の長期化・他疾患の混在 |
| おしっこの回数が極端に減る(1日6回未満) | 脱水症状の典型的なサイン |
| 嘔吐が激しく授乳できない状態が続く | 哺乳不足・低血糖のリスク |
| 新生児期(生後1ヶ月以内)から症状が出ている | 先天性乳糖不耐症の可能性があり早期対応が必要 |
「様子を見ていれば治るだろう」と思っていると、脱水が進んで入院が必要になるケースもあります。脱水に注意すれば大丈夫です——ではなく、脱水が疑われた時点でためらわず受診することが大切です。
特に新生児期に症状が現れた場合は先天性乳糖不耐症の可能性があり、放置は危険です。早期診断で食事療法を開始すれば健全な発育が期待できるため、迅速な行動が求められます。
参考:小児の下痢症・脱水症の診断と対処(国立成育医療研究センター)
国立成育医療研究センター 公式サイト
乳糖不耐症の赤ちゃんが離乳食を始める時期になると、新たな注意が必要です。これは意外と見落とされがちなポイントです。
離乳食初期(生後5〜6ヶ月ごろ)に使う食材の中にも、乳糖を含むものが潜んでいます。たとえばバター、チーズ、ヨーグルト、市販の離乳食の一部(クリーム系フレーバーのもの)には乳糖が含まれているため、続発性乳糖不耐症が回復しきっていない時期に与えると症状が再燃することがあります。
発酵食品(ヨーグルト)は例外的に扱われることがあります。ヨーグルトは発酵の過程で乳糖の一部が乳酸に変換されており、乳糖含有量が通常の牛乳より少なくなっています。腸の回復が進んできた段階であれば少量から試せる場合もありますが、必ず医師に相談してから進めましょう。
市販のベビーフードを選ぶ際は「無乳糖」「乳・乳製品不使用」の表示を確認する習慣をつけると安心です。アレルギー表示の確認と合わせて行うと一度の確認で済みます。これは使えそうです。
また、乳糖不耐症が完全に回復した後(多くの場合は胃腸炎発症から4〜6週間後)は、通常のミルクや乳製品に徐々に戻していくことが可能です。一気に通常量に戻すのではなく、少量から始めて腸の反応を確認しながら進めるのが原則です。
参考:乳幼児の食物アレルギー・不耐症に関するガイドライン(厚生労働省)
厚生労働省 子どもの食と栄養 関連ページ