有機JASマークがついていても、農薬がゼロとは限りません。
スーパーで野菜や加工食品を選ぶとき、緑色の葉っぱのようなマークを目にしたことはありませんか。あれが「有機JASマーク」で、日本における唯一の公的オーガニック認証マークです。太陽・雲・植物をモチーフにしたデザインで、農林水産省が管轄するJAS法(日本農林規格等に関する法律)に基づいて制定されています。
有機JASマークが貼れるのは、農林水産省に認定された「登録認証機関」による審査を通過した事業者のみです。つまり、自分で「うちの野菜はオーガニックです」と言うだけでは通用しません。第三者機関によるチェックが必須ということですね。
日本では、このマークがない農産物・加工食品に「有機」「オーガニック」と表示することは法律で禁止されています。違反すれば指導・改善命令・罰則の対象になります。買い物のときに「なんとなくオーガニックっぽい商品」を選んでいるなら、まずこのマークを探す習慣をつけておくと安心です。
有機JASマークの対象品目は以下のとおりです。
注目ポイントは、2022年10月から「有機酒類」も新たに対象に加わったことです。日本酒やワインにも有機JASマークが貼れるようになりました。意外ですね。
農林水産省による有機食品の検査認証制度の詳細はこちらで確認できます。
「有機JASマーク=無農薬」と思っているなら、それは誤解です。有機JAS規格では、条件を満たした一部の農薬の使用が認められています。
化学的に合成された農薬・化学肥料の使用は原則禁止ですが、天然由来の農薬については使用が許可されているものがあります。除虫菊から抽出した天然殺虫剤・食酢・生石灰・害虫の天敵生物などが代表的な例です。天然物由来でも農薬取締法上の「農薬」である以上、「農薬不使用」とはいえません。これが基本です。
実際に有機JAS規格で使用できる農薬の有効成分数を日本とEUで比較すると、日本が約34種類に対しEUは約59種類という調査結果もあります(農文協・農林水産省資料をもとにした比較)。「EUはもっと厳しい」というイメージを持つ方が多いのですが、使用可能な農薬の種類数ではEUの方が多いのです。意外ですね。
もう一つ重要なのが「転換期間」の概念です。農地を有機JAS認証農地にするには、一朝一夕にはいきません。
つまり、今日から有機栽培に切り替えたとしても、最短でも2〜3年後にしか認証を取得できません。それだけ時間をかけた畑で育てられた野菜ということですね。有機JASマーク付き野菜が通常の野菜より価格が高いのには、これだけの背景があります。
なお、転換期間中の農産物は「転換期間中有機農産物」として別途表示できる制度があり、少しリーズナブルな価格で購入できる場合もあります。「有機JASマーク付き野菜は高くて手が出ない」という場合の選択肢として覚えておくと役立ちます。
農林水産消費安全技術センター「有機JAS Q&A」(農薬・肥料の詳細を確認できます)
輸入食品コーナーで「USDA Organic」や「EUオーガニック」のロゴを見かけることがあります。これらは日本の有機JASとは別の認証ですが、使い方を知っていると買い物の選択肢が広がります。
主要な認証マークを比較してみましょう。
| 認証マーク | 発行機関 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 有機JASマーク🇯🇵 | 農林水産省(登録認証機関経由) | 農産物・加工食品・畜産物・飼料・藻類・酒類 | 日本国内唯一の公的食品オーガニック認証 |
| USDAオーガニック🇺🇸 | アメリカ農務省(USDA) | 農産物・加工食品・化粧品・テキスタイルなど | 原材料の95〜100%がオーガニックの場合に表示可 |
| EUオーガニック🇪🇺 | 欧州委員会 | 農産物・加工農産物・畜産物・ワインなど | オーガニック成分95%以上が条件 |
| GOTS認証 | グローバル・スタンダード非営利組織 | 衣類・タオル・ベッド用品などテキスタイル全般 | 原料の70%以上がオーガニック繊維であること |
| コスモス認証(COSMOS) | 国際非営利組織COSMOS Standard AISBL | 化粧品・スキンケアなど | ヨーロッパ発のオーガニックコスメ国際基準 |
重要なのは「有機同等性」という仕組みです。日本はアメリカ・EU・カナダ・スイス・台湾・英国などと有機同等性の協定を結んでいます。これにより、USDAオーガニック認証を受けた輸入品は、日本でも有機JASと同等とみなして「有機」表示で販売できます。つまり、USDA認証マーク付きの輸入食品は、信頼度が担保されているということです。
海外製品を選ぶとき、USDAやEUオーガニックのロゴがついていれば、少なくとも国際基準をクリアしていると判断できます。これは使えそうです。
一方で、GOTS認証はオーガニックコットン製品(赤ちゃんの服・タオルなど)を選ぶときに役立ちます。繊維製品のオーガニック基準なので食品とは別物ですが、肌に触れるものを選ぶ際の参考になります。
「オーガニックコスメ」を購入するとき、安心して選んでいませんか。実は、日本には化粧品に対する公的なオーガニック認証制度が存在しません。
食品には有機JAS制度がありますが、化粧品・洗剤・パーソナルケア製品はJAS法の対象外です。つまり、日本メーカーが「オーガニックコスメ」と商品名に書いても、それを規制する法律がありません。どういうことでしょうか。
実際のところ、日本で「オーガニックコスメ」とパッケージに書かれている商品のうち、国際的なオーガニック認証を取得しているものと、単なる自称のものが混在しています。消費者が見た目だけでは区別がつかない状況です。厳しいところですね。
では、どう見分ければよいのでしょうか。チェックすべきポイントは以下の2点です。
これらの認証マークが付いているかどうかを確認するのが基本です。認証マークなしの「オーガニックコスメ」を全否定するわけではありませんが、成分表示を確認したり、メーカーの基準を調べる手間が必要になります。
肌トラブルが気になる方や子どものスキンケア製品を選ぶ場合、コスモス認証付きの製品を選ぶ判断基準にすると、余計な混乱を避けられます。コスモス認証付き製品は、日本でも「natural&organic cosme(ナチュラル&オーガニックコスメ)」専門店などで取り扱いが増えています。
阪急食品館「オーガニックとは?日本と海外の認証基準の違いを解説」(コスメの認証問題についても詳しく説明されています)
実際の買い物でどう活かすか。知識を持っていても、店頭で使えなければ意味がありません。
まず現実として、日本の農産物に占める有機JASマーク付き農産物の割合は非常に低いです。野菜は全体の約0.4%、米や麦は0.1%程度しか流通していません。コンビニやスーパーで手軽に手に入るものではないのが現状です。
「有機JASマーク付き野菜が近くのスーパーで売っていない」という場合の選択肢として、食材宅配サービスの利用が広まっています。オイシックスやパルシステム、大地を守る会などは有機JAS認証食材を中心に扱っており、毎週決まったタイミングで届くため選ぶ手間も省けます。「オーガニック食材を継続的に購入したい」という場合に向いています。
なお、「無農薬」という表示はどうなのでしょう。実は、農産物に「無農薬」と表記することは、農林水産省のガイドラインで推奨されていません。栽培中は農薬を使っていなくても、周辺からの飛来農薬や以前の土壌への農薬残留などを完全には否定できないためです。
「無農薬」の表示はあくまで生産者の自己申告であり、第三者による検証を経ていない点で、有機JASマークとは性格が異なります。有機JASマークとの違いを理解した上で選ぶ、これだけ覚えておけばOKです。
有機JAS認証の仕組みを解説(認証機関ACCISによる制度の詳細説明ページ)