生ハムだと思って買っていたものが、実はプロシュートではないかもしれません。
プロシュートという言葉を聞いたとき、「生ハムと同じものでしょ?」と思う方は非常に多いです。実は、日本語でひとまとめに「生ハム」と呼ばれているものの中に、プロシュートもそうでないものも混在しているため、混乱が起きやすい状況になっています。
「プロシュート(Prosciutto)」はイタリア語で、ラテン語の「perexsuctum(乾いたもの)」を語源とする言葉です。つまり語源の時点で、「乾燥・熟成させた肉」という意味を持っています。イタリアでは豚のもも肉を塩漬けにして乾燥・熟成させたハム全般を「プロシュート」と呼び、加熱していないものをプロシュート・クルード(Prosciutto crudo)、加熱したものをプロシュート・コット(Prosciutto cotto)と区別しています。
日本で「プロシュート」といえば、燻製をしていないプロシュート・クルードを指すのが一般的です。これが重要なポイントです。
| 種類 | 製法 | 特徴 |
|---|---|---|
| プロシュート(クルード) | 塩漬け→乾燥→長期熟成(燻製なし) | ジューシーで肉の旨味が凝縮、マイルドな塩味 |
| 生ハム(ドイツ系など) | 塩漬け→乾燥→低温燻製 | 燻製香があり、しっかりした塩味 |
| プロシュート・コット | 塩漬け後に加熱処理 | 日本のロースハムに近い食感 |
一番わかりやすい違いは、「燻製するかしないか」という点です。プロシュートは燻製をしない分、豚肉そのものの旨味と風味がしっかり残り、柔らかくしっとりとした食感が生まれます。一方、スーパーなどで「生ハム」として売られているドイツ系のラックスハムなどは、燻製工程を経ているものが多く、燻製の香りが特徴的です。
つまり「プロシュートは生ハムである」という言い方は正確ですが、「生ハムはすべてプロシュートである」とは言えません。プロシュートは生ハムの一種、というのが正しい理解です。
プロシュートには複数の種類があります。その中でも特に知名度が高く、家庭でも手に入れやすいのが「プロシュート・ディ・パルマ」、通称「パルマハム」です。
パルマハムはイタリア北部、エミリア・ロマーニャ州のパルマ近郊の限られた地域でのみ生産が認められており、EU(欧州連合)のDOP(原産地呼称保護)認証を1996年に取得した最初の食品のひとつです。DOP認証とは、簡単にいうと「この地域で、この製法で作られたものしかこの名前を名乗れない」という厳格な品質保証制度のこと。ワインでいえば、ボルドーやシャンパーニュのような格付けに相当します。
パルマハムの原料は豚のもも肉のみで、添加物は一切使用されません。使用が認められているのは豚肉と塩だけ。亜硝酸塩や硝酸塩といった保存料も不使用です。これが原則です。
熟成期間は最低でも12ヶ月以上、高品質なものになると24ヶ月以上にもなります。熟成が進むと重量が1/4以上も減少し、その分だけ旨味が凝縮されます。熟成を終えた本物のパルマハムには、パルマハム協会が認定した「王冠マーク」が烙印として押されます。この王冠マークがないものはパルマハムを名乗ることができません。
もうひとつの銘柄として有名なのが「プロシュート・ディ・サン・ダニエーレ」です。イタリア北東部、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のサン・ダニエーレで作られ、パルマハムと並ぶイタリア最高品質の生ハムとして知られています。パルマハムよりも甘みが強く、きめ細かな食感が特徴です。
| ブランド名 | 生産地 | 熟成期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| プロシュート・ディ・パルマ(パルマハム) | イタリア・エミリア=ロマーニャ州 | 12〜24ヶ月以上 | マイルドで甘みのある塩味 |
| プロシュート・ディ・サン・ダニエーレ | イタリア・フリウリ州 | 13ヶ月以上 | 甘みが強く繊細な風味 |
これは使えそうです。ふたつのブランドの違いを覚えておくだけで、料理の選択肢がぐっと広がります。
参考:パルマハム公式サイト(DOP認証や製法の詳細が日本語で確認できます)
https://parmaham.org/preparation-of-parma-ham/
実はいま、日本市場では「本物のプロシュート(イタリア産)」をスーパーで購入することがほぼできない状況が続いています。これは多くの消費者が知らない、非常に重要な情報です。
2022年1月、イタリアの北西部ピエモンテ州でアフリカ豚熱(ASF)が確認されたことを受け、日本政府はイタリアからの豚肉・豚肉製品の輸入を全面停止しました。アフリカ豚熱とは、豚や野生のイノシシにとって致死率が高い感染症で、人には感染しませんが、一度発生すると畜産業に甚大な被害をもたらすため、日本の防疫措置として輸入が止まったのです。輸入停止です。
イタリア産が入ってこなくなってからは、スペイン産の生ハム「ハモン・セラーノ」や「イベリコハム」が代替品として普及しました。しかし2025年11月28日、今度はスペインの野生イノシシでもアフリカ豚熱が確認され、スペイン産豚肉・生ハムの輸入も全面停止となりました。かつて輸入量の7割近くを占めていたイタリア産が止まり、その代替を担っていたスペイン産まで消えるという「生ハムショック」が起きています。
では、今スーパーで「生ハム」として売られているものは何なのかというと、国内メーカーが製造した国産の生ハム風ラックスハムや、チェコ・ポーランドなどのヨーロッパの別地域産のものが主流になっています。厳しいところですね。
主婦の立場で生ハムを購入するとき、パッケージの「原産国」や「原産地」の表示をチェックする習慣をつけておくと、期待どおりの風味のものを選べます。「国産」と書かれているものはプロシュートではなく、生ハム風の製品であることがほとんどです。
参考:イタリア産・スペイン産生ハム輸入停止の経緯と代替品についての詳しい解説
https://www.inshokuten.com/supplier/knowledge/detail/209
プロシュートや生ハムを買う際に、意外と見落とされがちなのが塩分量の多さです。
生ハム(長期熟成タイプ)の食塩相当量は100gあたり約5.6g前後、プロシュートでも約4〜5.8g程度とされています。これがどれくらいの量かというと、成人女性の1日の食塩摂取目標量(厚生労働省推奨)が6.5g未満ですから、プロシュートを100g食べるだけでその日の塩分のほぼ9割近くに達してしまう計算になります。
生ハムは薄くスライスされているので、つい何枚も食べてしまいがちです。1枚あたり約7gとすると、食べすぎの目安とされる50gは7〜8枚にあたります。意外と少ないですね。おいしさに任せて食べ続けていると、知らずに塩分を摂りすぎている可能性があるため注意が必要です。
また、妊娠中の方は特に注意が必要です。プロシュートを含む生ハム類は非加熱食肉製品に分類されます。妊婦に注意が必要とされているのは主に2つの菌で、リステリア菌とトキソプラズマです。リステリア菌は塩分にも強く、冷蔵庫内(4℃程度)でも増殖できるという特性があります。妊娠中にリステリア症にかかると、流産や早産、新生児への感染リスクがあるため、厚生労働省はリスクの高い食品として生ハムを挙げています。妊婦さんにとっては食べないことが原則です。
どうしても食べたい場合は、75℃以上で1分以上加熱することで菌を殺菌できます。加熱調理してパスタやソテーに使うのが安全な選択肢です。
参考:母子栄養協会による妊娠中の食の安全に関する情報
プロシュートの魅力を最大限に引き出すには、シンプルな食べ方が一番です。
本場イタリアでは、薄くスライスしたプロシュートをそのまま、または果物と組み合わせて前菜として食べるのが定番です。特にメロンやイチジクとの組み合わせは「プロシュート・エ・メローネ」として有名で、塩気と甘みが絶妙なバランスをつくります。チーズはパルミジャーノ・レッジャーノとの相性が抜群です。
家庭での活用場面を整理すると、次のような料理に向いています。
開封後の保存方法も大切です。生ハム・プロシュートは乾燥に非常に弱く、空気に触れると急速に風味が落ちます。開封後は1枚ずつラップで密着させて包み、密閉袋に入れて冷蔵保存するのが基本です。開封後の賞味期限は2〜3日程度と短めなので、食べきれない分は冷凍保存が可能です。冷凍する場合は、ラップで1枚ずつ包んでからアルミホイルでさらに包むと、約1ヶ月保存できます。冷凍したものを解凍する際は、冷蔵庫でゆっくり自然解凍することで食感の変化を最小限に抑えられます。
なお、本来は非加熱で食べるものですが、加熱調理に使う場合はフライパンで軽く炒めるか、料理の仕上げに合わせる程度にとどめるとしっとり感を保てます。加熱しすぎるとパリパリになりますが、それはそれでクリスピーな食感として使える場面もあります。これが応用の基本です。
参考:パルマハム公式サイトによる味わい方・料理への使い方
https://parmaham.org/preparation-of-parma-ham/
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