スーパーの薄切り肉でサルティンボッカを作ると、プロより柔らかく仕上がります。
サルティンボッカ(Saltimbocca)という名前は、イタリア語の「saltare(飛ぶ・跳ねる)」と「in bocca(口の中に)」が組み合わさった言葉で、直訳すると「口の中に飛び込む」という意味になります。この名前が示す通り、一口食べた瞬間に旨みが口いっぱいに広がる料理です。
発祥はイタリアの首都ローマで、何百年も前から庶民に愛されてきた伝統的なローマ料理です。現在もローマのトラットリア(大衆食堂)では定番メニューとして提供されており、地元の人々が日常的に食べています。
本来の材料は「仔牛肉・生ハム・セージ」の3つだけです。シンプルな材料ですね。仔牛肉の薄切りに生ハムをのせ、セージの葉を1枚挟んでバターでソテーし、白ワインで仕上げるという、ごくシンプルな調理法が特徴です。
材料が3つだということを覚えておけばOKです。素材そのものの味を活かす、イタリア料理の哲学がそのまま体現されている一皿といえます。日本ではまだ「ちょっと珍しいイタリアン」という印象を持たれがちですが、イタリアでは家庭でも普通に作られる身近な料理です。
| イタリア語 | 意味 |
|---|---|
| Saltare | 飛ぶ・跳ねる |
| in bocca | 口の中に |
| Saltimbocca | 口の中に飛び込む |
サルティンボッカを構成する3つの素材には、それぞれ明確な役割があります。これが重要です。
まず「仔牛肉(ヴィテッロ)」ですが、生後6か月以内の仔牛の肉を使うのが本場のスタイルです。仔牛肉は癖がなく上品な味わいで、厚みは5mm前後の薄切りにして使います。5mmというのはだいたいコインの厚みを10枚重ねたくらいのイメージです。日本では仔牛肉の入手がやや難しいため、豚のロースや鶏むね肉で代用するのが一般的になっています。
次に「生ハム(プロシュット)」です。塩気と旨みを肉に加えるための素材で、加熱することで凝縮した旨みが溶け出します。重要なのは「塩を追加しないこと」で、生ハムだけで十分な塩分が補われます。うっかり塩を振ってしまうと、料理全体がしょっぱくなりすぎてしまいます。
最後に「セージ」というハーブです。シソ科のハーブで、清涼感のある独特の香りが肉の臭みを消し、料理全体に上品な風味を与えます。セージは生のものを使うのが理想ですが、乾燥セージでも代用可能です。生セージ1枚は乾燥セージ小さじ1/4程度が目安です。
この3素材が重なって初めてサルティンボッカの独自の味わいが生まれます。つまり代用するにしても、この3つの「役割」を理解した代用材料を選ぶことがポイントです。
仔牛肉は日本のスーパーではなかなか手に入りません。そのため、豚ロース薄切り肉(1枚あたり80〜100g)を使った家庭向けレシピが広く親しまれています。材料費は2人前で700円前後が目安です。
まず、豚ロース肉をラップに挟んで麺棒で軽く叩き、3〜4mmの均一な厚みにします。叩くことで繊維がほぐれ、焼いたときに縮みにくくなります。これが柔らかく仕上げるための第一歩です。
次に、肉の片面に生ハムをのせ、その上にセージの葉を1枚置きます。つまようじで固定するか、生ハムで巻き込む形にしてもOKです。塩は振らないのが基本です。
フライパンにバター10gとオリーブオイル小さじ1を入れ、中火で熱します。バターだけだと焦げやすいため、オリーブオイルと合わせるのがコツです。生ハム面を下にして入れ、1分半ほど焼いたら裏返します。裏面も1分半で完成の目安です。
焼き上がったら肉を取り出し、同じフライパンに白ワイン50mlを加えて強火でアルコールを飛ばします。バターをもう5g追加してよく混ぜ、ソースを作ります。このソースをかけて完成です。これは使えそうです。
| 手順 | ポイント |
|---|---|
| ①肉を叩く | 3〜4mmに均一化・塩は振らない |
| ②生ハム&セージをのせる | つまようじで固定すると安定 |
| ③焼く | 生ハム面を下に・中火・片面1分半 |
| ④ソースを作る | 白ワイン50ml+バター5gで仕上げ |
家庭でサルティンボッカを作るとき、よくあるミスが3つあります。事前に知っておけば失敗を防げます。
ミス1:塩を振ってしまう
生ハムはそれ自体に十分な塩分があります。そこに塩を加えると、仕上がりが塩辛くなりすぎて食べにくくなります。下味は「塩なし」が原則です。胡椒は少量なら問題ありませんが、控えめにするのが安心です。
ミス2:火を通しすぎる
豚肉を使う場合でも、厚みが3〜4mmであれば片面1分半で十分に火が通ります。長く焼きすぎると肉が硬くなり、本来の柔らかな食感が失われてしまいます。中火の片面1分半が条件です。不安な場合は、肉の端を少し切って断面を確認すると安心です。
ミス3:ソースを省く
「焼くだけでいい」と思って白ワインソースを省いてしまうケースが意外と多いです。厳しいところですね。白ワインとバターのソースは、肉の旨みをフライパンに残った焼き汁ごと回収する大切な役割を担っています。このソースが風味の8割を占めると言っても過言ではありません。白ワインはスーパーで500円前後のものでも十分に美味しく仕上がります。
セージの香りが苦手な場合は、バジルや青じそで代用することもできます。青じそはセージに比べてクセが少なく、子どもにも食べやすくなるため、家族向けにアレンジするときに便利な選択肢です。
サルティンボッカは「特別な日の料理」というイメージを持たれがちですが、実際には調理時間が20分以内で完成するため、平日の夕食にも十分活用できます。意外ですね。
鶏むね肉を使った「チキンサルティンボッカ」は、豚肉バージョンよりもさらにヘルシーで、100gあたりのカロリーが豚ロースの約半分です(鶏むね肉:約116kcal、豚ロース:約263kcal)。ダイエット中や子どもの食事を気にかけている方に向いています。
魚介版として、白身魚(鮭・タラ・鯛など)を使ったアレンジも人気です。白身魚に生ハムとセージを巻き付けてオーブンで焼く方法で、フライパン調理より油が少なくすみます。「アクアパッツァに飽きた」「新しい魚料理が欲しい」と感じているときに試してみる価値があります。
副菜との組み合わせについては、サルティンボッカ自体にバターと生ハムの濃い旨みがあるため、付け合わせはシンプルにするのがおすすめです。
ワインと合わせるなら、辛口の白ワイン(フラスカーティやソアーヴェなど)が鉄板の組み合わせです。ソース作りに使ったワインをそのまま食卓に出せるので、買い物が一本で済むのも主婦には嬉しいポイントです。
普段の食卓に取り入れるコツとしては、「生ハムを買ったときにセージを一緒に買う」という習慣をつけるだけで、思い立ったときにすぐ作れるようになります。スーパーのハム売り場でセージ(生または乾燥)の場所をメモしておくと、次回からの買い物がスムーズになります。