温度計があっても、使わなければただの飾りです。
「温度計がないとシャトルシェフでローストビーフは作れない」と思っている方は少なくありません。ところが、サーモス公式レシピにも採用されているシンプルな方法を使えば、温度計ゼロで温度管理ができてしまいます。それが「水割りテクニック」と呼ばれる方法です。
やり方はとても簡単で、沸騰したお湯(100℃)に対して一定量の常温水を加えるだけ。シャトルシェフの公式レシピでは、「8カップの水を沸騰させたあと、1カップの水を加えると約85℃になる」とされています。割合にすると水の量を約1割加えるイメージです。これはおよそ「お湯8:水1」の比率で混ぜると、85℃前後の温度に落ち着くという物理的な原理を利用しています。
これが使えそうです。
もし完全に沸騰させた湯に対して約10〜15%程度の常温水を加えれば、温度計がなくてもおおよそ80〜85℃の湯温を再現できます。料理用温度計の相場は1,000〜2,000円ほどなので「一本あれば安心」ですが、緊急時やコスト重視の場面では、このテクニックがカバーしてくれます。
ポリ袋への気泡が残ると熱が肉に伝わりにくくなり、仕上がりにムラが出る点にも注意が必要です。袋内の空気はできる限り抜いて、肉がお湯にしっかり浸かる状態にしてから保温容器(シャトルシェフ)にセットしましょう。水圧を使う方法は効果的で、袋を湯に入れながら少しずつファスナーを閉めていくと自然に空気が抜けます。つまり「水割り+空気抜き」が温度計なしのカギです。
サーモス公式シャトルシェフレシピ「ローストビーフ」(温度・保温時間の公式目安)
保温時間は仕上がりを決める最重要ポイントです。シャトルシェフで保温調理したローストビーフの仕上がりは、保温時間によって3段階に分かれます。
| 保温時間 | 仕上がり | 断面の色 |
|---|---|---|
| 30分 | レア | 鮮やかな赤(中心部が生に近い) |
| 45分 | ミディアムレア | きれいなロゼ色(ピンク) |
| 60分 | ウェルダン | 中心までしっかり火が通った灰褐色 |
ただし、これはあくまで牛肉400〜500gを使った際の目安です。肉の重さが異なる場合は時間を調整する必要があります。
また、見落としがちなポイントが「冷蔵庫から出すタイミング」です。冷蔵庫から出したばかりの肉(約4〜5℃)と、常温に30〜60分置いた肉(15〜20℃)では、中心部の温度が10℃以上異なります。この差があると熱が内部まで届くのに時間がかかり、外側だけ固くなりやすい。常温に戻しておくのが原則です。
調理前の常温戻しは夏場なら30分、冬場は60分が目安とされています。キッチンに置くだけでOKですが、「2時間以上の放置」は食中毒菌が増えやすくなるので避けてください。
さらに、もう一つ覚えておきたいのが「肉汁を落ち着かせる工程」です。保温後すぐに切ると肉汁がどっと流れ出てしまい、パサパサな仕上がりになります。取り出したあとは袋に入れたまま30分ほど常温で休ませてから切ると、断面が美しく肉汁も保たれます。これが基本です。
サーモス公式「シャトルシェフの正しい使い方と保温時間の目安」
「ローストビーフは中が赤くて生っぽいから怖い」と感じる方も多いはずです。牛肉のかたまり肉(塊肉)の場合、食中毒菌(大腸菌O157・サルモネラ菌など)は基本的に表面のみに付着しており、肉の内部には存在しないというのが、食品衛生の一般的な考え方です。これはひき肉とは根本的に異なる点で、ハンバーグのひき肉は内部まで菌が入り込む可能性があるため、中心まで75℃・1分以上の加熱が必須です。
塊肉は「表面の焼き色」が食中毒対策の要です。
フライパンをしっかり予熱(強火)して、塊肉の6面すべてに均等に焼き色をつけることが大切です。目安は全面で各1分〜1分半程度。表面の色が白っぽく変わり、少し焦げ目がつく状態が理想です。この工程を省略すると、どれだけシャトルシェフで丁寧に保温しても安全性が担保できません。
厚生労働省の基準では、食中毒菌を殺菌するには「中心温度63℃で30分・70℃で3分・75℃で1分」以上の加熱が必要とされています。ただし、塊肉の場合は中心に菌がいないため、表面さえ高温でしっかり焼けていれば、中心がロゼ色でも問題ないとされています。
意外ですね。
小さなお子さんや高齢者・妊婦さんがいるご家庭の場合は、より慎重な対応として保温時間を60分(ウェルダン)にするか、最後に薄切りにしてフライパンで軽く加熱する方法もあります。安全に注意すれば問題ありません。
和歌山市「肉の低温調理に気をつけましょう!自己流は危険」(食中毒予防の温度基準)
いくら保温調理が完璧でも、下処理で手を抜くと仕上がりがグンと落ちてしまいます。ここでは、主婦が特に見落としがちな3つのポイントをまとめます。
まず大切なのが「水気を拭き取ること」です。牛肉のかたまりはパックに入っているとドリップ(肉汁)が出ていることがあります。これをキッチンペーパーでしっかり吸い取ることで、フライパンで焼くときに水蒸気が発生せず、しっかりとした焼き色がつきます。水気が残ったまま焼くと焼き目がつかず、表面の食中毒菌が十分に死滅しない可能性もあります。
次に、塩・こしょう・にんにくの下味を「焼く前にしっかりすり込む」ことです。肉の表面全体に塩(肉の重量の約1%が目安)と黒こしょう、おろしにんにくをまんべんなく押しつけるようにすり込みます。このとき30〜60分ほど置くと、塩が肉に浸透して旨みが増します。焼く直前に塩をするだけでは浸透しきれません。
そして、シャトルシェフならではのアドバンテージとして「ポリ袋調理」があります。ポリ袋に肉を入れてしっかり空気を抜いた状態で保温すると、肉汁が外に逃げず袋の中に閉じ込められます。この肉汁は、調理後にソースの材料として活用できます。肉汁をフライパンで温め、しょうゆ大さじ1・はちみつ大さじ1・こしょう少々を加えて煮詰め、水溶き片栗粉でとろみをつけるだけで、レストラン風の本格ソースが完成します。これは使えそうです。
クックパッド「本格!旨!シャトルシェフでローストビーフ」(下味・ソースの参考レシピ)
温度計がないとき、「本当に中まで火が入っているか」不安になるのは当然のことです。実は、温度計を使わなくても仕上がりを確認できる方法が3つあります。
① 竹串テスト
肉の中心に竹串を刺して5〜6秒待ち、串を唇の下(唇の裏あたり)にあてます。ほんのりと温かみが感じられればミディアム、しっかり熱ければウェルダンに仕上がっています。冷たく感じる場合はまだ火が通っていないサインです。串の先が唇の下に当たる面積はおよそ直径1cm程度(消しゴムの先くらい)で十分な感度があります。
② 肉汁の色確認
竹串を刺したあとに出てくる肉汁の色を見るだけです。透明〜薄いピンクの肉汁→ミディアムレア、透明な肉汁→ミディアム〜ウェルダン、赤い肉汁→レアという目安になります。赤い肉汁が出ても「塊肉の場合」は安全性が高いですが、不安な場合は再保温を5〜10分追加してください。
③ 切り口の色で判断
これが一番わかりやすい方法です。一番厚い部分をカットして断面の色を確認します。鮮やかな赤→レア、きれいなピンク(ロゼ)→ミディアムレア、灰褐色→ウェルダン。ロゼ色が食卓映えもよく、家族に喜ばれる仕上がりです。
3つのうちどれか1つだけ試せば十分です。
これらのチェック方法を組み合わせることで、温度計がなくても安心して仕上がりを確認できます。失敗した場合の対処法として、「生っぽすぎたと感じた場合」はスライスしてからフライパンで軽く焼くか、電子レンジで1枚あたり10〜15秒追加加熱するだけで問題を解消できます。素材が牛塊肉であれば、多少のロゼ色は安全圏内という点を覚えておけばOKです。
シャトルシェフでのローストビーフは、慣れてしまえば「ほぼ放置で完成」する驚くほど手軽な料理です。温度計がなくても、水割りテクニック・適切な保温時間・表面の焼き色さえ押さえれば、家族が喜ぶご馳走が食卓に並びます。ぜひ一度試してみてください。