「食品衛生管理者」の資格をとろうとすると、講習費用だけで約28万円かかります。
食品衛生に関連する資格を調べると、「食品衛生管理者」と「食品衛生責任者」という、よく似た2つの名前が出てきます。これを同じものと思っている人は非常に多く、そこが大きな落とし穴になっています。
「食品衛生管理者」は厚生労働省が管轄する国家資格で、ハム・ソーセージ・粉乳・マーガリン・食品添加物など、食品衛生法施行令第13条に定められた特定の食品を製造・加工する施設に専任で置くことが義務づけられています。つまり、大規模な食品製造工場を想定した資格です。
一方、「食品衛生責任者」は都道府県が管轄する公的資格で、一般の飲食店・惣菜店・テイクアウト・食品販売など、私たちの身近な食品ビジネスに必要な資格です。2021年6月の食品衛生法改正により、営業許可・届出対象のすべての食品営業者に設置が義務化されました。
つまり「管理者」が上位の国家資格であり、「責任者」が身近な実務資格です。
| 比較項目 | 食品衛生管理者 | 食品衛生責任者 |
|---|---|---|
| 管轄 | 厚生労働省(国家資格) | 都道府県(公的資格) |
| 対象施設 | ハム・粉乳・添加物等の製造工場 | 一般の飲食店・食品販売店など |
| 取得方法 | 約5ヶ月の講習+修了試験 | 約6時間の講習(1日) |
| 費用(目安) | 約28万円前後 | 約1万円前後 |
| 受講資格 | 高卒以上+実務経験2〜3年以上 | 17歳以上(高校生不可) |
| 合格率 | ほぼ100%(講習修了型) | ほぼ100%(講習修了型) |
主婦の方が飲食店の開業や食品販売を考えている場合、ほぼ確実に「食品衛生責任者」が必要です。これが基本です。
飲食店の開業準備をしている段階で「食品衛生管理者」の取得を調べてしまうと、費用が28万円・受講期間が数ヶ月というハードルに驚いて諦めてしまう人もいます。実際はそこまでの資格は必要ないケースがほとんどなので、まず自分の目的に合った資格を確認することが先決です。
「食品衛生管理者」も「食品衛生責任者」も、どちらも合格率はほぼ100%という点では同じです。どちらも試験による一発勝負ではなく、「講習を修了すれば取得できる」修了型の資格だからです。
しかし、難易度の本質は試験の合否ではなく「受講するための条件」にあります。
食品衛生管理者の受講資格は厳格です。高校卒業以上であることに加え、「食品衛生管理者を置かなければならない施設での衛生管理業務に2年以上従事していること」が受講資格として必要です。さらに、資格を正式に取得するためには最終的に3年以上の実務経験が必要とされています。
主婦の方がゼロから取得しようとすると、まず特定の製造施設に就職し、最低2〜3年間働き続けてから初めて講習を受けるスタートラインに立てる、ということになります。
食品衛生責任者はまったく逆です。17歳以上であれば、学歴・職歴・国籍は問われません。申し込んで当日に会場へ行くだけで、1日(約6時間)の講習修了後にその場で資格証が交付されます。
講習の内容は「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」の3分野で構成されており、食品の知識ゼロでも講師の説明をしっかり聞けば理解できるレベルに作られています。修了証には有効期限もなく、全国で使用でき、更新も不要です。これは使えそうです。
難易度が高いのは勉強内容ではなく「門を開けてもらうための条件」です。自分がどの門を目指すかを最初に確認しておくことが、最も効率的な資格取得への近道になります。
食品衛生責任者の難易度・講習内容・合格率を詳しく解説(PROTRUDE)
食品衛生責任者を取得するための講習費用は、都道府県によって若干の差がありますが、全国的におおむね8,000円〜12,000円程度が目安です。東京都は10,000円、群馬県は12,000円(税込)など、地域差はあるものの「1万円前後」と覚えておけば問題ありません。
講習の流れはシンプルです。
最近では東京都や沖縄県など一部の地域でeラーニング形式の講習も導入されており、自宅から受講できるようになっています。eラーニングの場合も修了証の効力は会場型と同等で、全国で使用可能です。
開業直前に慌てて講習日程を調べると、希望日が満員で数週間待ちになることも実際にあります。人気の日程はすぐに定員に達してしまうケースも珍しくありません。
「開業○ヶ月前には食品衛生協会のサイトで日程確認」を習慣にしておくだけで、こうした時間ロスを確実に防げます。日程の確認は1回の検索で完了するので、今すぐ管轄エリアの食品衛生協会サイトをブックマークしておくことをおすすめします。
食品衛生に関わる資格一覧と講習会情報(公益社団法人 日本食品衛生協会)
食品衛生責任者の養成講習会は、特定の資格を持っている人は「免除」され、講習を受けずに申請だけで食品衛生責任者として認められます。これは意外と知られていないルールです。
免除対象となる主な資格は以下の通りです。
たとえば、以前に調理師免許を取得して現在は主婦をしている方は、あらためて1万円を払って6時間の講習を受ける必要がありません。資格証明書を持参して申請するだけで、食品衛生責任者として任命されます。
ただし1点だけ注意が必要です。講習が「免除」になるだけで、自治体への「申請手続き」は必ず行う必要があります。免除だからといって何もしなくていいわけではない、という点は覚えておきましょう。
また、免除対象の資格の範囲は都道府県によってわずかに異なる場合があります。「自分の持っている資格が免除になるか」は、管轄の保健所や食品衛生協会に1本電話するか、公式サイトで確認するのが確実です。
食品に関わる仕事を始めようとしている主婦の方は、まず「自分は今どんな資格を持っているか」を棚卸ししてみることが第一歩です。知らないと損するルールが、ここに確実に存在しています。
食品衛生責任者の概要と免除対象資格一覧(一般社団法人 東京都食品衛生協会)
「食品衛生責任者」はあくまでも開業・営業のための「ライセンス」ですが、「食品衛生管理者(国家資格)」はキャリアとして本格的な価値を持ちます。この2つのゴールは、目指す方向によって明確に使い分けが必要です。
食品衛生管理者の資格保有者は、食品メーカーや加工食品メーカーから非常に高い需要があります。昇進条件に資格取得を設けている企業も少なくなく、転職の際にも大きな強みになります。ハム・ソーセージ・調整粉乳・食用油脂などを製造する工場では、この資格保有者がいなければ施設の稼働自体ができません。
主婦の方がこの資格を目指すとすれば、たとえば「食品メーカーへの正社員・契約社員転職」や「パートから管理職へのキャリアアップ」を検討している場合に特に意味を持ちます。ただし前述のとおり、受講にはまず該当施設での2〜3年の実務経験が条件です。
一方、「小さなお惣菜屋を始めたい」「週末にマルシェでジャムを売りたい」「子ども食堂を運営したい」といった目的であれば、食品衛生責任者で十分対応できます。目的に応じた資格選びが、時間とお金の節約に直結します。
もし食の仕事をキャリアとして本格的に考えたいなら、まず「食品衛生責任者」を取得して食の現場に入り、経験を積みながら上位資格を目指すという順序が現実的です。焦らずステップを踏むのが原則です。
「食品衛生責任者を取って飲食パートを始める」→「同施設で3年経験を積む」→「食品衛生管理者の講習受講資格を得る」という道筋は、実際に多くの人が歩んでいるキャリアパスのひとつです。
食品衛生管理者のメリット・取得方法・難易度など詳細解説(マイナビ農業)