冷凍パイシートでも、ふっくらサクサクに仕上がります。
ショーソン・オ・ポム(Chausson aux pommes)は、折りパイ生地の中にりんごのコンポートを包み、半月型に焼き上げたフランスのパイ菓子です。フランス語で「ショーソン(chausson)」はスリッパを意味し、「ポム(pommes)」はりんごを指します。直訳すると「りんごのスリッパ」という、少し笑えるような名前ですね。
料理の分類としては、フランスのパン菓子「ヴィエノワズリー(Viennoiserie)」に分類されます。クロワッサンやパン・オ・ショコラと同じカテゴリです。ブーランジェリー(パン屋)に必ず置かれている定番品で、スイーツでもあり、軽食でもある存在として位置づけられています。
日本でいうアップルパイとよく比較されますが、形と食べ方が大きく異なります。日本やアメリカのアップルパイは丸い型で焼いてカットして食べる形式が主流です。一方、ショーソン・オ・ポムは1人分のサイズに成形された個食タイプで、手で持ってそのまま食べられるスタイルが特徴的です。
つまり「個食パイ」という理解が基本です。
| 比較ポイント | ショーソン・オ・ポム | 日本式アップルパイ |
|---|---|---|
| 形 | 半月型(個食) | 丸型(ホール) |
| 生地 | 折りパイ生地(層が多い) | 折りパイ/練りパイ(多様) |
| 食べ方 | 手で持って食べる | フォーク・ナイフで切る |
| フィリング | りんごのコンポートのみ | スライスや煮りんごなど様々 |
| 主な販売場所 | ブーランジェリー・パティスリー | ケーキ屋・カフェ・家庭 |
ショーソン・オ・ポムの歴史は古く、17世紀前半にフランスで誕生したとされています。諸説ありますが、ブルターニュ地方で作られ始めたという説が有力です。当時から「救済のパン」として庶民に親しまれていたという記録もあり、その根強い人気がわかります。
フランスでは今もなおブーランジェリーの不動の定番商品として愛されています。2016年にフランスの権威ある新聞「ル・フィガロ」が「パリのベスト・ショソン・オ・ポム」コンクールを開催したほどで、1位に輝いたのはマカロンで有名な老舗菓子店「ラデュレ」でした。パリでは「デュ・パン・エ・デ・ジデ」というパン屋さんのショソン・オ・ポムも名物として知られており、コンポートではなく皮付きのりんごをそのままフィリングする独自スタイルで人気を集めています。
いいことですね。歴史が長い分だけ、今も進化し続けているということです。
日本では近年、パティスリーや製菓材料店を通じてレシピが広まり、自宅でも作られるようになりました。コストコでの販売(15個入りの大容量パック)が話題になったこともあり、主婦層を中心に認知度が高まっています。フランス菓子の中では比較的材料がシンプルで、挑戦しやすい点が人気の理由のひとつです。
参考:りんご大学によるショソン・オ・ポムの詳細解説(フランスでの位置づけ・歴史・現地のパン屋事情)
りんご大学 – Vol.22 人気者の菓子パン「ショソン・オ・ポム」
ショーソン・オ・ポムをおうちで作る際に必要な材料はとてもシンプルです。
りんごの品種選びが仕上がりを左右します。
コンポートの作り方は、皮をむいて1cm角にカットしたりんごを鍋でグラニュー糖・レモン汁とともに中火で煮詰めるだけです。水分が飛んで全体がくたっとしたら火を止め、バットで完全に冷ましてから使います。ここで重要なのは「完全に冷ます」という点です。温かいコンポートをパイ生地に乗せると、バターの層が溶け出してサクサク感が損なわれます。
成形後は冷凍庫で約20分冷やし固めてから型抜きし、塗り卵を塗ったら再度冷蔵庫で30分休ませます。200℃のオーブンで25分ほど焼き、仕上げにシロップを塗れば完成です。
参考:cottaによる冷凍パイシートを使った詳細レシピ(材料・手順・ポイント写真付き)
「焼いたらべちゃっとした」「生地がうまく膨らまなかった」という失敗は、ほぼ全て生地の扱い方に原因があります。サクサクに仕上げるためのコツは3点に絞られます。
① 伸ばしたあと必ず冷蔵庫で休ませる
パイ生地を伸ばしてすぐ成形・焼成すると、焼き縮みの原因になります。冷凍パイシートを解凍して伸ばしたら、一度冷蔵庫で最低30分休ませましょう。これはグルテンのコシを緩めるためと、バターを再び冷やして層を守るためです。急ぎたい気持ちはわかりますが、この工程は省けません。
② コンポートの水分をしっかり飛ばす
コンポートの水分が多いまま包むと、焼き上がりに生地が湿ってしまいます。煮詰める際は「果汁がほぼ飛んで全体がくたっとしている」状態まで加熱することが重要です。目安として、鍋底に汁だまりがない状態を確認してください。
③ 高温でしっかり焼き色をつける
パイ生地のサクサク感は「高温で水分を一気に蒸発させる」ことで生まれます。190〜200℃のオーブンでしっかり焼き色がつくまで焼き切ることが大切です。表面が白っぽいまま取り出すと、冷めた後にしなっとした食感になってしまいます。
これら3点に注意すれば大丈夫です。
時間が経ってサクサク感が落ちてしまった場合は、トースターで2〜3分リベイクすると復活します。その際、表面が焦げやすい場合はアルミホイルをかぶせて加熱するのがおすすめです。
参考:パイのサクサク食感の仕組みと保ち方についての詳細解説
ONE BAKERY – パイのサクサク食感を保つ方法とは
ショーソンはりんごのみのお菓子だと思われがちですが、実はパイ生地+フィリングを包む「技法の名称」でもあります。スイーツ系ではカスタードクリームやジャム、シナモンシュガーを組み合わせたバリエーションが多いですが、実はフランスでは惣菜系のフィリングを使うショーソンも存在します。
クックパッドなどのレシピプラットフォームでも「小海老とにしん山椒漬けのショーソン」のような変わり種のレシピが見られます。料理系のフィリングとして向いているのは次のようなものです。
惣菜系ショーソンにする場合、りんごのコンポートと同様に「フィリングの水分をしっかり切る」ことが重要です。炒めた具材は粗熱を取り、できれば一晩冷蔵庫で置いてから使うと水分が安定します。
主婦にとってのメリットは大きいです。冷凍パイシートを常備しておけば、冷蔵庫の残り物野菜でおかずにもなるパイを素早く作れます。「スイーツとして作るもの」という固定観念を外すだけで、ショーソンは日常の献立にも活用できるアイテムになります。
ショーソン・オ・ポムで余ったパイ生地の端切れはそのまま捨てずに、砂糖をまぶしてオーブンで焼けばパイのお菓子として再利用できます。食品ロスを防ぎながら、もう一品楽しめるのも主婦目線でのうれしいポイントです。
フランスの伝統菓子という響きから「難しそう」と感じる方も多いですが、ショーソンは材料3〜4種類のシンプルさが魅力です。冷凍パイシート1枚から始められるので、週末のおやつや手みやげにぜひ取り入れてみてください。
参考:阪急フード「フランス菓子の種類と歴史をプロが解説」(ヴィエノワズリーの位置づけ・各菓子の特徴)
HANKYU FOOD – 知れば楽しい!伝統的なフランス菓子の種類や歴史をプロが解説