「保温モードのまま6時間放置すると、食中毒菌が増殖しやすい温度帯になるリスクがあります。」
アイリスオーヤマのスロークッカー(PSC-20K-W)には、温度設定として「強」「弱」「保温」の3段階があります。公式仕様書には厳密な温度表記がされていませんが、各種ユーザーレビューや実測データから、おおよその温度帯は以下のとおりです。
| モード | 消費電力 | 目安温度(約) |
|-------|---------|-------------|
| 強 | 175W | 約98℃ |
| 弱 | 115W | 約90℃ |
| 保温 | 60W | 約80℃ |
「強」モードでも最高で約98℃どまりであり、沸騰(100℃)には達しません。これが意味するのは、フタをしていても煮崩れしにくいということ。長時間コトコト煮込んでも野菜やお肉が形を保ちやすく、ビーフシチューや豚の角煮でもきれいな仕上がりになります。つまり見た目のきれいな煮込み料理が得意です。
「弱」モードの約90℃もかなりの高温です。一見「弱いから低い温度では?」と思いがちですが、90℃という温度は食材を十分に加熱できる温度帯。長時間じっくりと素材の芯まで火を通すのに向いています。弱モードなら問題ありません。
「保温」モードは約80℃に設定されており、調理後の食品を温かいまま保つ目的で使います。ただし、後の項目でも触れますが、この「保温モードを使い方次第で危険な使い方をしてしまうリスク」については、特に注意が必要です。
なお、アイリスオーヤマには「低温調理器スロークッカー LTC-01」という別モデルも存在します。こちらは25〜95℃まで0.5℃単位で細かく温度設定ができるスティックタイプ(サーキュレーター型)です。PSC-20Kとは構造がまったく異なります。PSC-20Kがシンプルな鍋型なのに対し、LTC-01はお湯を循環させながら一定温度を保つタイプです。結論は、機種が異なれば温度管理の精度も変わります。購入前にどちらのモデルなのか確認しておくことが大切です。
スロークッカーはほったらかしでOKな調理器具として人気ですが、「温度設定さえすれば安全」という思い込みが、実は食中毒リスクにつながることがあります。これを知らないと、家族の健康に関わる大きなリスクを招きかねません。
食品安全委員会のデータによると、鶏肉を低温調理する場合、63℃のお湯に入れてから肉の内部温度が63℃に達するまでに平均68分かかります。さらにそこから30分の加熱維持が必要です。つまり鶏むね肉300gなら合計約100分の加熱が最低限必要ということになります。
肉の中心温度が63℃に達するのに必要な最低加熱時間は次のとおりです。
- 🐔 鶏肉(約300g):63℃到達まで約68分+そこから30分維持=合計約100分
- 🥩 牛モモ肉(約300g):63℃到達まで約94分+30分維持=合計約130分
- 🐷 豚肉:基本的に同様の基準が適用される
ここで大切なのは「お湯の温度」ではなく「肉の中心温度」がポイントだという事実です。スロークッカーのモード設定は鍋全体の温度であり、食材の中心はもっと低い温度のまましばらく続きます。「弱モードで90℃だから大丈夫」という判断は、実は正しくありません。
特に危険なのが、生の鶏肉を使うとき。カンピロバクターという食中毒菌は、鶏肉の調理で最も多く発生する菌の一つです。加熱不足のままでは死滅せず、嘔吐・下痢・発熱を引き起こします。見た目ではほぼ区別がつかないため、時間管理が必須です。中心温度計を1本用意しておくと安心です。
内閣府食品安全委員会も「低温調理は、皆さんが思っている以上に時間がかかります」と警告しています。温度と時間の両方を守るのが原則です。
肉の低温調理の安全な加熱条件について、食品安全委員会の公式情報を参考にしてください。
肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします! | 内閣府 食品安全委員会
温度設定の特性をきちんと理解すると、スロークッカーの使い方の幅がぐっと広がります。各モードにはそれぞれ「向く料理・向かない料理」があります。これを知っておけばレシピ選びがラクになります。
「強(約98℃)」モードが向く料理:
- 🥘 豚の角煮、ビーフシチュー(短時間で仕上げたいとき)
- 🍲 根菜の煮物(にんじん、大根などの火の通りにくい野菜)
- 🍗 鶏の煮込み(カレーや筑前煮)
「弱(約90℃)」モードが向く料理:
- 🫘 おでん(じっくり味を染み込ませる)
- 🥣 かぼちゃの煮物、肉じゃが
- 🫕 ポトフや洋風スープ
「保温(約80℃)」モードが向く場面:
- ✅ 調理後に食事まで時間がある場合の保温
- ✅ ヨーグルト作り(40℃前後には別の手段が必要なため注意)
- ❌ 生の食材からスタートする調理には使わない
特に初心者が陥りやすいのが「保温モードで最初から調理をスタートしてしまう」パターンです。80℃は確かに高温ですが、食材が冷たい状態からだと中心部がなかなか温まらず、食中毒菌が増殖しやすい「危険ゾーン(5〜55℃)」にしばらく留まり続けます。生の食材は必ず「弱」か「強」からスタートするのが原則です。
また、スロークッカーPSC-20Kにはタイマー機能がついていません。これは意外と見落とされがちなポイントです。長時間放置しすぎると具材が焦げたり煮崩れしたりするため、調理開始時間と終了予定時間を自分でメモしておくか、スマートフォンのアラームを活用する方法をおすすめします。
スロークッカーを使うことで電気代が心配という声もよく聞きます。でも実際のところ、消費電力はかなり低めに設定されています。安心していいポイントです。
アイリスオーヤマのスロークッカーPSC-20Kの消費電力は次のとおりです。
| モード | 消費電力 | 1時間あたりの電気代(目安)|
|-------|---------|--------------------------|
| 強 | 175W | 約5.4円 |
| 弱 | 115W | 約3.6円 |
| 保温 | 60W | 約1.9円 |
※電力単価を31円/kWhで計算した場合の目安
6時間「弱」モードで煮込んでも電気代は約21円。ガスコンロで1時間煮込む場合と比べても格段に安く済みます。つまり長時間調理なら電気代は心配不要です。
電気代をさらに節約するポイントとして、鍋に入れるお水をあらかじめ沸騰させたお湯にしておくと、設定温度に達するまでの時間が短縮され、その分の電力消費が抑えられます。特に「弱」モードで調理を始める際には、予め沸かしたお湯を使うだけで20〜30分ほど時短になることもあります。
また、アイリスオーヤマのスティック型スロークッカー「LTC-01」の場合、定格消費電力は1,000Wと高め。2時間使用すると電気代は約62円になります。こちらはPSC-20Kより消費電力が高い分、温度精度と立ち上がり速度に優れています。用途に応じて機種を選ぶのが節約への近道です。
保温調理のもう一つのメリットとして、余熱も活用できる点があります。「強」モードで一定時間加熱した後、「保温」に切り替えることで、食材に熱を余分に加えすぎず、電力も抑えられます。角煮やポトフなど長時間煮込む料理では、強→保温の切り替えをうまく使うと光熱費も時短も両立できます。
アイリスオーヤマのスロークッカーPSC-20Kには、陶器製(土鍋素材)の内鍋が使われています。この素材選びには明確な理由があります。陶器は遠赤外線を放射しながら熱を伝えるため、食材の表面だけでなく芯から温めることができる特性があります。じっくり煮るほどうま味が増すのはそのためです。
ただし、陶器製の内鍋には「熱衝撃に弱い」という特性もあります。実際に起きやすい失敗の一つが、熱い内鍋を冷たい台の上に直置きしてしまうケースです。急激な温度変化によってヒビが入ることがあります。取り出した後は必ず鍋つかみで布の上に置くようにしましょう。これは必須の習慣です。
温度設定に関するよくある失敗をまとめると、以下のようなケースが目立ちます。
- ❌ 冷凍肉をそのまま入れる:内部温度が上がりにくく、危険ゾーン(5〜55℃)に長く留まる
- ❌ 蓋を頻繁に開ける:温度が下がり、調理時間が大幅に延びる(蓋を1回開けると温度回復に約15〜20分かかることも)
- ❌ 調理容量を少なくしすぎる:水分が少なすぎると内鍋が焦げつく場合がある(0.5L以上が推奨)
- ❌ みりん・料理酒を未加熱のまま使う:アルコールが飛ばないため、子どもが食べる料理には注意が必要
一方で、陶器製内鍋を使った独自の活用法として、「保温性を利用した夜間調理」があります。就寝前に「弱」モードでスタートして朝に完成させる使い方で、おでんや黒豆の煮込みなどに適しています。ただし、生の鶏肉や豚肉を使う場合は就寝前に開始するのは安全上おすすめできません。完全に加熱が終わった後の保温に使うか、あらかじめ下茹でした食材を使うのが安心です。
スロークッカーは「入れたら放置」できる便利さが売りですが、「どの食材を」「どの温度で」「何時間加熱するか」という3つの条件を押さえておくことで、安全においしい料理が毎日作れます。温度と時間だけ覚えておけばOKです。

アイリスオーヤマ 電気圧力鍋 圧力鍋 4L 3~4人用 低温調理可能 卓上鍋 予約機能付き 自動メニュー90種類 ガラス蓋付き レシピブック付き ブラック PMPC-MA4-B