「国産」と書いてあっても、実は外国の塩が原料になっていることを知っていますか?
まず、スーパーで売られている塩は大きく3つに分けられます。それぞれの違いを理解しておくと、選ぶときに迷わなくなります。
「精製塩(食卓塩)」は、電気分解(イオン膜製法)で海水から塩化ナトリウムだけを取り出した塩です。純度は99%以上で、余分なミネラルはほぼゼロ。料理にキレのある塩辛さを加えますが、まろやかさや旨みは期待できません。製造コストが低いため、価格は1kgあたり100円前後と非常に安価です。
「再生加工塩」は、メキシコやオーストラリア産の工業用天日塩(塩化ナトリウム98%以上)を日本に輸入し、国内でにがりや海水を加えて再結晶させた塩です。伯方の塩や赤穂の塩がこれに当たります。パッケージに「天日塩」という文字があっても、原料として使われる外国産天日塩はミネラルがほぼ取り除かれたもので、国産の天日塩とは別物です。つまり「天日塩使用」は再生加工塩のことも指します。
「天日塩(天然塩)」は、太陽と風の自然エネルギーだけで海水を蒸発・結晶させた塩です。加熱を行わないため、マグネシウム・カルシウム・カリウムなどのミネラルが残りやすく、まろやかな甘みや旨みが生まれます。これが本来の意味での「体にやさしい塩」です。
下の表で3種類の特徴をまとめました。
| 種類 | 主な製法 | 塩化ナトリウム含有量 | ミネラル | 価格目安(1kgあたり) |
|---|---|---|---|---|
| 精製塩 | イオン膜・立釜 | 99%以上 | ほぼなし | 約100円 |
| 再生加工塩 | 溶解・立釜 | 約93〜95% | 少量(添加) | 約400〜600円 |
| 天日塩(国産) | 天日・平釜など | 約85〜87% | 豊富(自然由来) | 1,000円以上 |
ミネラルが豊富という点が基本です。天日塩を選ぶ最大の理由はここにあります。マグネシウム・カリウムなどは体の調子を整える働きを持ち、精製塩にはほぼ含まれていません。日常的に使う調味料だからこそ、塩の「質」が積み重なって体への影響につながります。
参考:天然塩の成分・種類・見分け方について詳しく解説されています。
天然塩の見分け方とからだにいい天然塩の選び方 – 無添加ごはん
じつは、パッケージに「天然塩」「自然塩」と書くことは、食用塩公正取引協議会(塩公取協)の規約によって現在は禁止されています。理由は「それ以外の塩が不健康であるかのような誤解を与えるから」とされています。そのため、どんなに丁寧につくられた塩であっても、パッケージに「天然塩」とは書けません。これは意外ですね。
では、どこを見て判断すればいいのでしょう?ポイントは「工程」と「原材料」の2箇所です。
「無添加」かどうかは、原材料欄に「海水」以外の記載がないかを確認するだけで判断できます。炭酸マグネシウムや乾燥剤などの添加物が入っている場合は、厳密には「無添加」とはいえません。添加物なしが条件です。
海外産の天日塩について一点補足しておきます。メキシコやオーストラリアの天日塩は、大量生産の工業的プロセスを経るため、塩化ナトリウム98%以上になってしまい、ミネラルがほぼ残っていません。これは海の精株式会社の公式ページでも明記されており、「大量生産の天日海塩とは成分がまったく違います」と説明されています。国産の天日塩が「外国産天日塩の0.5%以下」に対して、「4%以上のミネラルを含む」という大きな差があります。
参考:塩のパッケージ表示ルールと「天然塩」という表現が使えない理由について解説されています。
参考:国産天日塩「海の精 ほししお」の成分と、外国産天日塩との差異について詳しく記されています。
国産・無添加の天日塩は種類が限られています。その中からとくに信頼性が高く、家庭料理でも使いやすい商品を3つ紹介します。
| 商品名 | 産地 | 製法 | 特徴 | 向いている料理 |
|---|---|---|---|---|
| 海の精 ほししお | 伊豆大島(東京) | 天日のみ | 甘みがあり、コクとキレのバランスが秀逸。日本初の国産天日塩(1977年誕生) | お吸い物、飾り塩、天ぷらのつけ塩 |
| 粟国の塩 | 沖縄・粟国島 | 独自タワー式天日 | まろやかで素材の旨みを引き出す。1万5千本の竹枝を使った独自製法 | おにぎり、汁物、梅干し、味噌 |
| 土佐の塩丸(青丸) | 高知県 | 完全天日 | 満潮時の海水を使い火を一切使わず結晶。五味バランスが良好 | 浅漬け、焼き魚、下味全般 |
料理への使い方も知っておくと、塩選びがより楽しくなります。天日塩の粒は精製塩よりも大きめで溶けがゆっくりです。そのため、仕上げの「パラリとひとふり」や「つけ塩」として使うと、塩の旨みが素材に重なって本来の味が引き立ちます。
下ごしらえ(肉・魚への下塩など)は量を多く使う場面なので、コストを抑えるために再生加工塩を使うという家庭も多くあります。これは問題ありません。「仕上げ・食卓用に高品質な天日塩、下ごしらえには価格の手頃な塩」という使い分けが、無理なく続けられる現実的な方法です。
また、粒の細かさによる使い分けも覚えておくと便利です。
国産天日塩は日本国内の気候上、製造が非常に難しく生産量が限られています。そのため価格は高めですが、1食あたりに使う量はほんのひとつまみ(約1〜2g)です。240gパックを1,000円で買った場合、1回の使用コストは約8〜16円程度。毎日使ってもコーヒー1杯分にも満たない差額です。コスト面で躊躇している方は、まずこの計算をしてみてください。
天日塩に含まれるミネラルは、主にマグネシウム・カルシウム・カリウムの3種類です。それぞれが体の中でどんな役割を果たしているか、簡単に整理します。
ただし、注意点もあります。天日塩はあくまで「ミネラルをあわせて摂れる塩」であって、塩分(ナトリウム)の量は精製塩と大きな差はありません。世界保健機関(WHO)やアメリカ心臓協会(AHA)は「天然塩と精製塩の健康効果に差はない」とも述べており、過剰摂取のリスクは同様に存在します。これが条件です。
「天日塩を使えば塩分をとっても大丈夫」という考えは誤りです。あくまで適量を守ったうえで「同じ量の塩を使うなら、ミネラルも一緒に摂れる天日塩のほうが有益」という話です。厚生労働省が推奨する塩分摂取量の目安(女性1日6.5g未満、男性7.5g未満)は、天日塩を使う場合でも同様に守る必要があります。
一方で、精製塩から天日塩に変えた人からは「料理の味がまろやかになった」「少量でも満足感がある」という声が多く聞かれます。これはミネラルによる「味の奥行き」が生まれるためと考えられ、結果として使う量が自然に減るという効果も期待できます。
参考:天然塩と精製塩の違いを医師が解説したコラムです。健康効果や摂取量の考え方について詳しく載っています。
天然塩と精製塩の違いを医師が解説|高血圧を防ぐ「適塩生活」と健康 – きだ内科クリニック
せっかく国産・無添加の天日塩を購入しても、保存方法を間違えると品質が落ちたり、固まって使いにくくなったりします。ここは盲点になりやすい部分です。
天日塩がべたつく・固まる原因は、ニガリ成分(主に塩化マグネシウム)が空気中の湿気を吸収する「潮解性」によるものです。精製塩にはこの成分がほぼないためサラサラしていますが、ミネラル豊富な天日塩はどうしても湿気を引き寄せます。湿気に注意すれば大丈夫です。
賞味期限についても知っておくと安心です。塩は無機物のため腐敗せず、法律上「賞味期限の表示義務がない」食品のひとつです。砂糖やグルタミン酸ナトリウムと同じ扱いで、適切に保存すれば半永久的に品質を保てます。期限を気にせず使えますね。
コスト面での工夫として、「使いきりやすいサイズから試す」というやり方もあります。たとえば海の精 ほししおは120gのスタンドパックで464円(税込)から購入可能です。いきなり大容量を買うのではなく、少量で味を確かめてから、気に入ったらまとめ買いや定期購入を検討するのが経済的です。
また、インターネット通販(Amazon・楽天市場)では、複数種類を少量ずつセットになった「飲み比べ・食べ比べセット」が販売されています。国産天日塩をはじめて試す方には、こうしたセット商品から入るのが味の違いを実感しやすく、おすすめの方法です。