一般的なスーパーで売っている豚肉と比べ、TOKYO Xは加熱しても重量が約40%も縮みにくいです。
TOKYO Xとは、東京都が開発した純国産のブランド豚「トウキョウX」が食肉になった際の商品名です。正式名称は「トウキョウX(Toukyou X)」で、アルファベット表記の「TOKYO X」はそのブランド豚肉としての呼称になります。つまり、豚そのものを指す「トウキョウX」と食肉としての「TOKYO X」は、同じ存在を指す異なる表記だと理解しておくといいでしょう。
この豚が産声を上げたのは、現在の公益財団法人東京都農林水産振興財団 青梅畜産センター(旧東京都畜産試験場)です。開発スタート時、担当者が「未知の豚を作るんだね。Xだね」と話したことが名前の由来になっているというエピソードがあります。おいしい肉質の豚をかけあわせた「クロス(×)」の意味と、未知の可能性を秘めた「X(エックス)」の二つの意味が込められているわけです。
使われた品種は3種類です。
- 北京黒豚:良質な脂肪を持ち、口どけのよい脂身が特徴
- バークシャー種:いわゆる「黒豚」。細かい筋繊維でやわらかな肉質が持ち味
- デュロック種:豊富な脂肪交雑(サシ)が入り、ジューシーさに優れる
この3品種のいいとこどりをするために、7年以上の歳月をかけて系統造成が行われました。そして1997年(平成9年)、旧日本種豚登録協会(現・日本養豚協会)から正式に新系統豚として認定されました。つまり、TOKYO Xは単なる「掛け合わせ豚」ではなく、遺伝子が固定された独立した品種として認められているのです。これはブランド豚250種類以上の中でも、遺伝子を固定した品種として認定されている非常に珍しいケースです。
TOKYO X 生産組合 公式サイト:TOKYO Xの誕生の背景と生産者情報
TOKYO Xの味を一言で表すなら「ほのかな甘みとさっぱりした脂」です。意外かもしれませんが、脂がたっぷり入っているにもかかわらず、食べた後のしつこさがないという点が最大の魅力になっています。
その理由はデータからも確認できます。株式会社味香り戦略研究所が行った調査によると、TOKYO Xのうまみは国産一般豚と比べて10%高いという結果が出ています。さらに、黒豚(バークシャー種)との官能評価の比較では、やわらかさ・旨味・噛み心地・香り・総合評価のすべての項目でTOKYO Xが上回っています。
| 評価項目 | TOKYO X | バークシャー種 |
|---|---|---|
| やわらかさ | 3.96 | 2.44 |
| 旨味・コク | 3.84 | 3.12 |
| 噛みごこち | 3.64 | 2.40 |
| 香り・風味 | 3.72 | 2.76 |
| 総合評価 | 4.16 | 2.88 |
※5点満点評価(味香り戦略研究所・調べ)
この美味しさを支えているのが、脂肪の融点の低さです。TOKYO Xの筋肉内脂肪(サシ)の融点は約30.9℃で、一般的なLWD(三元交雑豚)の33.7℃と比べて約3℃低くなっています。口の中に入れた瞬間に体温(約37℃)ですっととろける感覚が生まれるのは、この融点の低さのおかげです。
特徴をまとめると次の3点に整理されます。
- 🌸 上質な香り:肉特有の臭みが少なく、鼻に抜ける甘い香りがある
- 🍯 ほのかな甘み:脂肪の甘みが口の中に広がり、後味がさっぱりしている
- 💧 さっぱりとした脂肪:オレイン酸を豊富に含み、口どけがよい
オレイン酸はオリーブオイルにも多く含まれる脂肪酸で、悪玉コレステロール(LDL)を下げる働きがあるとされています。脂っこい豚肉がちょっと気になる方にも、比較的安心して取り入れやすい脂質構成といえます。
東京ブランド豚 公式サイト:TOKYO Xの肉質関係データ・官能試験結果
「幻の豚」と呼ばれる理由は希少性にあります。
TOKYO Xの年間出荷頭数は約8,000〜8,500頭とされています。これがどれほど少ない数字かというと、日本全国では年間約1,600万頭の肉豚が出荷されています。TOKYO Xはその約0.05%程度しか流通していないことになります。東京タワーの高さ約333mに例えるなら、TOKYO Xの流通量はそのうちわずか20cm分にも満たないイメージです。
希少な理由は生産の難しさにあります。TOKYO Xは一般的な三元交雑豚と異なり、品種の遺伝子を維持しながら生産を続ける必要があります。そのため産子数が少なく、大量生産が難しい構造になっています。実際、東京都農林水産振興財団の資料でも「産子数が少ないことが生産数不足の原因の一つ」として明記されています。
価格帯はスーパーの一般豚と比べると割高です。通販での目安は以下のとおりです。
- 切り落とし(100g):約700〜800円前後
- ロース肉(100g):約900〜1,200円前後
- 肩ロースブロック(1kg):約8,000〜10,000円前後
一般的な国産豚のロースが100g当たり200〜300円程度で販売されていることを考えると、3〜4倍前後の価格設定です。これは高い、と感じるかもしれません。ただ、後のセクションで解説しますが、加熱しても縮みにくいという特性があるため、実際に口に入る量で比較すると割高感がかなり和らぎます。
流通の大半は東京都内の百貨店、指定精肉店、飲食店が中心です。主な産地は東京都の町田市・八王子市・青梅市で、生産農家が増えてきたことで宮城・茨城・群馬・山梨でも生産されるようになりました。
とうきょうの恵みTOKYO GROWN:TOKYO X生産農家 澤井保人さんの生産現場レポート
せっかく取り寄せたTOKYO Xを家庭で調理するとき、一番もったいないのが「過加熱」です。これが基本です。
TOKYO Xの最大の特長の一つは、加熱による重量損失率の低さです。一般的なLWD(三元交雑豚)の重量損失率が約23%なのに対し、TOKYO Xは約13.5%にとどまります。つまり、同じ100gの豚肉を焼いたとき、一般豚では23gほど重量が失われるのに対し、TOKYO Xは約13.5gしか失われないということです。これは「縮みが約40%少ない」ということですね。
この特性を生かすには、弱〜中火でじっくり火を通す方法がおすすめです。強火で一気に焼くとドリップ(肉汁)が失われ、TOKYO Xの持ち味であるジューシーさが半減してしまいます。
家庭でのおすすめ調理法は次のとおりです。
- 🥩 ポークソテー:バターで中火1分→蓋をして弱火2分のシンプルな焼き方でOK
- 🫕 生姜焼き:肉を先に焼いて取り出し、タレを煮詰めてから肉を戻す手順で旨みを逃さない
- 🍲 しゃぶしゃぶ:薄切りをさっとくぐらせるだけで脂の甘みが際立つ
- 🥣 豚バラ大根:煮込み料理でも縮みにくいので、食べごたえが損なわれない
調理の際に一つだけ覚えておきたいのが「室温に戻す」ことです。冷蔵庫から出してすぐに焼くと中心まで火が通りにくく、外が焦げて中がレアになりやすいです。焼く15〜20分前に冷蔵庫から出しておくだけで、均一に火が入りやすくなります。
なお、TOKYO Xのレシピは「TOKYO X アソシエーション」の公式サイトに、家庭で簡単に作れるものが多数掲載されています。生姜焼き・ミラノ風カツレツ・豚バラ大根など幅広く揃っており、「高級肉だから難しい調理法が必要」というわけではありません。気軽に普段の家庭料理に取り入れられます。
TOKYO X アソシエーション:ご家庭で作れるTOKYO Xレシピ一覧
TOKYO Xを入手する方法は大きく分けて「店頭購入」と「通販」の2つです。
店頭で購入する場合は、東京都を中心とした「TOKYO X アソシエーション認定店」を利用します。百貨店では三越・伊勢丹などの精肉コーナーで取り扱いがある場合があります。また、京王ストアなど一部のスーパーでも取り扱いがあります。ただし、すべての店舗で常時在庫があるわけではありません。購入前に直接店舗へ確認するのが確実です。取扱店一覧はTOKYO X アソシエーションの公式サイト(tokyox-association.jp/shop)から確認できます。
通販で購入する場合のほうが、全国どこからでも手軽に取り寄せられます。主な購入先は以下のとおりです。
- 🛍️ 楽天市場:「東京X」で検索すると130件以上の商品がヒット。レビューを見て選びやすい
- 🛍️ Yahooショッピング:切り落とし(100g×2P)や食べつくしセット(1.6kg)などバリエーション豊富
- 🛍️ ミート・コンパニオン公式通販:TOKYO Xの流通を手がける専門業者の直販サイト。部位ごとの品揃えが充実
初めての方には「切り落とし」か「食べつくしセット」がおすすめです。切り落としは炒め物や豚汁など普段使いに最適で、コストを抑えながら試せます。食べつくしセットは肩ロース・バラ・モモなど複数部位が入っており、TOKYO Xの食べ比べができます。
初回購入のポイントをまとめると次の通りです。
- ✔️ 生鮮品のため、発送日指定が可能かを確認する
- ✔️ 送料無料の商品や大容量商品をうまく活用するとコストを抑えられる
- ✔️ 賞味期限が短い場合があるため、届いたらすぐに使う or 冷凍保存の計画を立てておく
- ✔️ 購入前にレビューで「臭み」「やわらかさ」「コスパ」のコメントを確認すると失敗が少ない
特別な日のメインディッシュとして、あるいはご自宅での「ちょっとプレミアムな晩ごはん」として取り入れてみてください。普段使いの豚肉との違いを一口で実感できるはずです。
TOKYO X アソシエーション公式:TOKYO X 取扱店舗一覧(全国対応)