やわらか食ムース食違いと介護食種類区分選び方

噛む力や飲み込む力が低下した方に提供される介護食。やわらか食とムース食はどう違うのでしょうか。それぞれの特徴、食形態の違い、適した方の状態を詳しく解説します。介護食選びの参考になりますか?

やわらか食ムース食違い

この記事のポイント
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やわらか食とムース食の違い

やわらか食は食材の形を保ちながら柔らかく調理、ムース食はペースト状にして成形した介護食

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嚥下機能に合わせた選び方

咀嚼力と嚥下機能のレベルによって、適切な介護食の種類が異なります

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介護食選びの注意点

過度な調整は食欲低下を招くため、その方の状態に合った食事形態の選択が重要

やわらか食の基本的な特徴

やわらか食とは、加齢や疾患により咀嚼・嚥下が困難な方のために、食材を柔らかく食べやすくした介護食です。最大の特徴は、食材の形状をそのまま残すことで食欲がわきやすく、残食率を低める効果が期待できる点にあります。舌や歯ぐきで簡単につぶせる状態になるまで煮る、蒸す、固めるといった調理・加工を施し、プリンの食感に近づけられるように調理されます。
参考)やわらか食 - Wikipedia

調理方法は食材の種類によって異なり、加熱してやわらかくなる食材は煮込み、口の中でまとまりづらい食材はすりつぶしてペースト状に加工する場合もあります。凍結含浸法という特殊技術を用いると、食材の本来の形を保ったまま酵素の作用で食物を軟化させることも可能です。ユニバーサルデザインフードの区分では、歯ぐきでつぶせるやわらかさで区分2が目安となっています。
参考)【比較】やわらか食(ソフト食)とは?メリットデメリット・他介…

通常食と同様の味わいや色を楽しめるため、視覚的にも食事を楽しむことができ、噛む力が弱まっている方に適した食事形態といえます。
参考)柔らかい介護食(やわらか食)とは?メリットやデメリットを解説…

やわらか食ムース食の調理法の違い

ムース食は通常の食事や食材をペースト状にして、増粘剤で固め、ムース状にした介護食です。作り方の大きな違いは、やわらか食があくまで柔らかく調理して提供するのに対し、ムース食は一度すり潰してからゼラチンなどの増粘剤を加えて成形する点にあります。
参考)https://kaigosyoku-lab.benesse-palette.co.jp/blog/2025/05/post-13.html

具体的な調理工程として、ムース食は通常の食事に出汁や水分を加え、フードプロセッサーやミキサーにかけてペースト状にすりつぶした後、ゼラチンなどを加えて作ります。再び食材の形を作るため、通常の食事と同じように見た目・味・香りが楽しめるのが特徴です。水分には必ずとろみをつけ、プリンくらいの固さになるように固めることがポイントとなります。
参考)介護食の「ムース食」とは?特徴・作り方まで解説

やわらか食は食材をやわらかくするための調理を行いますが、必ずしもきざむとは限らず、形状保持を重視します。一方、ムース食は粒がなく均一な状態である点が最大の特徴で、切り分けることができ、切った際にある程度角が残せるなど程よい硬さを持ちます。
参考)「ムース食」とは?~嚥下食の分類と解説~ href="https://sengakuhisai.com/engesyoku-muusu-towa/" target="_blank">https://sengakuhisai.com/engesyoku-muusu-towa/amp;#8211; S…

やわらか食ムース食の嚥下機能レベル

やわらか食とムース食では、対象となる嚥下機能のレベルが異なります。嚥下調整食分類2018における副食の分類では、通常食に近いほうから「軟菜」「まとまりマッシュ」「ムース」「まとまりペースト」の4つがあり、ムース食は比較的障害が重度の人向けです。
参考)【初心者向け】ムース食とは?特徴や作り方・おすすめ保存方法 …

やわらか食は歯ぐきでつぶせるやわらかさで、噛む力が弱い方でも食べられる食事形態です。ユニバーサルデザインフードの区分では区分2に相当し、飲み込みやすさのレベルは3となっています。これに対しムース食は舌で押しつぶせる程度のやわらかさで、区分3から区分4に該当し、飲み込みやすさのレベルは1です。
参考)【歯医者が解説】ユニバーサルデザインフードって知っていますか…

ムース食はソフト食やミキサー食に比べてより飲み込みやすく、嚥下機能がより低下した方向けの食事となります。舌でつぶせて口の中でまとまりやすいため、食べやすく飲み込みやすいのが特徴で、噛む力・嚥下機能の低下が進んできた方に適しています。若干の食塊保持能力、つまりすぐに飲み込むのではなく口の中で食物をキープできる力が必要となります。​

やわらか食ムース食の見た目と食欲への影響

見た目の違いも両者の重要な特徴です。やわらか食は食材の形状を保っているため、通常の食事と同様の外観を持ち、視覚的に食欲を刺激しやすいという利点があります。食欲がわきにくく、食べにくいために残食率の高い刻み食と異なり、食材の形状をそのまま残すことで、意欲を持って食事をし、残食率を低める効果が期待できます。​
ムース食も型やとろみ剤などを使い成形することで、本来の食材やメニューと同じ形を再現することが可能です。すりつぶした後、再び食材の形を作るため、通常の食事と同じように見た目・味・香りが楽しめます。いろいろな形に固められるのが大きなメリットで、調理の手間はかかりますが、おいしそうな見た目に仕上げることができます。
参考)介護食の種類を解説!ミキサー食とペースト食の違いは?|ナリコ…

ただし、食材をペースト状に加工した場合、食材本来の食感や形が損なわれるため、見た目がよくなるように工夫することが大切です。必要以上に調整をして、噛みごたえがなかったり、味・形態に変化がなかったりすると、食事への意欲が低下し、十分な栄養が摂取できなくなる可能性があります。
参考)嚥下調整食と学会分類について|お役立ち栄養コラム|森永乳業ク…

やわらか食からムース食への移行タイミング

介護食は咀嚼力と嚥下機能の低下の程度に合わせて段階的に移行していくことが推奨されます。通常食やソフト食が難しくなってきたからと、すぐに流動食やミキサー食に移行してしまうと噛む機能はますます衰えてしまいます。少しでも食べる力が残っているのであれば、ムース食を検討してみることが重要です。​
やわらか食からムース食への移行を検討するタイミングは、歯ぐきでつぶせる程度の柔らかさでも食べにくくなってきた時です。ムース食は咀嚼する力や飲み込む力が弱っているだけでなく、食べ物を口の中でうまくまとめられない方にもおすすめです。ほとんど噛めない方はミキサー食やペースト食にしたほうが良いかもしれませんが、少しでも咀嚼できるのであれば、ムース食で様子をみるのも選択肢の一つになります。​
ムース食は流動食・ミキサー食に進む前の食形態として位置づけられ、舌による押しつぶし運動を促す役割も持っています。医師や管理栄養士など専門家に相談し、嚥下機能が低下に合わせた食事姿勢や一口の量などにも配慮するとよいでしょう。​

やわらか食とユニバーサルデザインフード区分

ユニバーサルデザインフードは、日本介護食品協議会が定めた基準に基づいて製造された食品で、噛む力や飲み込む力が弱くなっても安全に美味しく食事ができるように開発されています。食べやすさのレベルに合わせて4つの区分があり、区分1「容易にかめる」、区分2「歯ぐきでつぶせる」、区分3「舌でつぶせる」、区分4「かまなくてよい」に分類されます。
参考)「ユニバーサルデザインフード」を知ってますか?|SDGs情報…

やわらか食はユニバーサルデザインフードの区分2が目安となっており、歯ぐきでつぶせるやわらかさです。具体例として、柔らかいごはん、煮魚、やわらかい肉料理などが該当します。一方、ムース食(ソフト食)は区分3または4が目安で、舌でつぶせる程度からかまなくてよい状態までを含みます。​
パッケージには区分が明記されているため、本人や家族の状態に合わせて選びやすくなっています。硬さや粘度などが規格化されており、商品選びの指標として活用できます。ユニバーサルデザインフード認定マークがついた商品は、日本介護食品協議会が取り決めた規格に適合していることを示しています。
参考)ユニバーサルデザインフードとは?特徴や参入するメリット、企業…

やわらか食ムース食の栄養管理の重要性

介護食では食べやすさだけでなく、栄養管理も極めて重要です。適切な食形態での食事は、低下した摂食嚥下機能を代償し、誤嚥などのリスク管理につながりますが、栄養摂取量にも注意を払う必要があります。​
やわらか食やムース食は調理過程で水分を多く含むため、同じ量を食べても通常食に比べて栄養価が低くなる傾向があります。ムース食では1食あたりの栄養量を適切に設定することが重要で、例えば嚥下食レベル2では500ml、300kcalを基準とする場合があります。
参考)嚥下食の基礎知識|6.「嚥下食ピラミッド」の概要|嚥下食ドッ…

食材をペースト状にすることで、野菜、根菜類、魚肉類などのさまざまな食材を使って作れるため、生クリームや油脂などを食材に加えることで栄養価を高めることも可能です。必要以上に調整をして食事への意欲が低下すると、十分な栄養が摂取できなくなる可能性があるため、その方の状態に合わせた適切な食形態の選択が大切です。​
専門家に相談しながら、嚥下機能だけでなく栄養状態も考慮した食事計画を立てることが推奨されます。個人の咀嚼力と嚥下機能に合わせて、適切な介護食を選ぶことで、安全性と栄養摂取の両立が可能になります。
参考)管理栄養士監修