嚥下調整食コードときざみ食の違いと正しい選び方

嚥下調整食のコード分類ときざみ食の違いを知っていますか?実はきざみ食はコード分類に含まれておらず、誤った食事提供が誤嚥リスクを高める場合があります。正しい知識を解説します。

嚥下調整食コードときざみ食の違いと正しい選び方

きざみ食は嚥下調整食のコードに含まれていません。


この記事のポイント3つ
🍽️
きざみ食はコード分類外

日本摂食嚥下リハビリテーション学会が定める嚥下調整食コードに「きざみ食」は存在しない。誤用すると誤嚥リスクが上がる場合があります。

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コード0〜4の正しい基準

嚥下調整食にはコード0j〜4まで段階があり、食形態・まとまりやすさ・硬さが細かく規定されています。

家庭でできる正しい対応

コードの基準を理解すれば、家庭での食事介護でも適切な食形態を選ぶことができ、誤嚥性肺炎の予防につながります。


嚥下調整食コードとは何か?分類の基本を理解する


嚥下調整食コードとは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会(日本摂食嚥下リハ学会)が2013年に制定した「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」に基づく食形態の分類体系です。コード0jから始まりコード4まで、段階的に食べやすさや安全性が整理されています。


この分類が生まれた背景には、病院・施設・在宅で「きざみ食」「ソフト食」「ミキサー食」といった呼び名がバラバラで、同じ名前でも施設によって全く異なる形態が提供されていたという深刻な問題がありました。名称が統一されていないと、転院や退院時に「食事の引き継ぎ」ができず、誤嚥事故につながる危険があったのです。


コードは大きく以下のように区分されます。


コード 名称 形態の目安 対象者の例
0j 嚥下訓練食0j(ゼリー状) 均質なゼリー・プリン状 重度嚥下障害、訓練開始直後
0t 嚥下訓練食0t(とろみ状) 均質でとろみがある流動 重度嚥下障害
1j 嚥下調整食1j 均質なゼリー・ムース状 嚥下機能が著しく低下
2-1 嚥下調整食2-1 なめらかなペースト・ムース 嚥下機能低下、口腔処理困難
2-2 嚥下調整食2-2 ソフトで均質なペースト 舌の押しつぶし可能レベル
3 嚥下調整食3 形はあるが舌で押しつぶせる 舌と上顎でつぶせるレベル
4 嚥下調整食4 軟らかい固形物 歯がなくても歯茎でつぶせるレベル


コード4が最も固形に近く、コード0jが最も飲み込みやすい形態です。つまり数字が小さいほど嚥下機能が低い方向けということですね。


重要なのは、この分類では「きざみ食」という区分がどこにも登場しないという点です。きざみ食は食材を包丁で細かく切っただけの状態であり、食べやすさが科学的に担保されているわけではないため、公式コードには組み込まれていません。


家庭で食事介護をしている方にとっては、「コードで食事を選ぶ」という発想自体が初めてかもしれません。ただ、担当の管理栄養士や言語聴覚士(ST)に「今の状態はコードいくつが適切ですか?」と一言聞くだけで、具体的な目標形態が明確になります。これが基本です。


日本摂食嚥下リハビリテーション学会|嚥下調整食分類2021(公式マニュアルPDF)


きざみ食が嚥下調整食コードに含まれない理由と誤嚥リスク

「細かく切れば食べやすい」という考えは、多くの方が自然に持つ発想です。しかし、これは嚥下の観点からは必ずしも正しくありません。


きざみ食が危険とされる最大の理由は「食塊(食べ物のかたまり)のまとまりにくさ」にあります。嚥下の際、口の中で食べ物をひとかたまりにまとめ、喉へ送る動作が必要です。小さく刻まれた食材はバラバラになりやすく、口の中でまとめる前に喉へ流れ込んでしまうことがあります。


これが誤嚥(食べ物が気管に入ること)の原因となります。研究報告によれば、きざみ食を提供された嚥下障害患者において、ペースト食と比較して誤嚥・むせの頻度が有意に高かったという結果も示されています。特に、食材を細かく刻むほど口腔内でのコントロールが難しくなる点は見落とされがちです。


誤嚥性肺炎のリスクは深刻です。誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位に位置しており、75歳以上では肺炎による死亡の約70〜80%が誤嚥性肺炎とされています。


食形態 まとまりやすさ 嚥下難易度 コード該当
きざみ食 低い(バラけやすい) 高め 非該当
ペースト食(コード2-1) 高い 低め ✅ 該当
ソフト食(コード3) 中程度 中程度 ✅ 該当


厳しいところですね。「良かれ」と思って準備したきざみ食が、むしろ危険な状態を作り出してしまう可能性があるわけです。


では、きざみ食を全く使ってはいけないのかというと、そうではありません。嚥下機能には問題がなく、咀嚼(かむ力)だけが低下しているケースでは、きざみ食が有効な選択肢になる場合があります。ただし、その際も「とろみ剤」や「あんかけ」を合わせて使い、食材がまとまりやすい状態にすることが条件です。


つまり「きざみ食+とろみあん」という組み合わせなら問題ありません。単体のきざみ食を嚥下障害のある方に提供するのが問題なのです。


担当の言語聴覚士(ST)に相談し、咀嚼機能と嚥下機能を別々に確認してもらうことが、安全な食形態選びの第一歩になります。


嚥下調整食コード3・4の家庭での作り方と食材選びのポイント

在宅介護でよく求められるのがコード3とコード4の食事です。この2段階は「形はあるが柔らかい」という特徴を持ち、家庭でも比較的再現しやすいレベルです。


コード3の目安は「舌と上顎で押しつぶせる硬さ」です。硬さの数値でいうと、2,000Pa(パスカル)以下が目安とされています。これはどのくらいかというと、絹豆腐をスプーンで軽く押した感触に近いイメージです。一方コード4は「歯茎で噛みつぶせる」硬さであり、28,000Pa以下が基準とされています。


家庭での調理でコード3・4に近づけるための実践ポイントをまとめます。


- 🥕 根菜類:圧力鍋で通常より1.5〜2倍の時間をかけて加熱すると、指でつぶせる柔らかさになります。


- 🐟 魚:白身魚(タラ・ホキなど)は蒸し調理にすると繊維がほぐれやすく、舌でつぶせる食感に近づきます。


- 🍗 鶏肉:ムネ肉よりモモ肉を選び、片栗粉でまとまりを出す「あんかけ仕立て」にするのが有効です。


- 🍳 卵料理:茶碗蒸しはコード3〜4相当の食形態として最適で、具材を細かくすれば誤嚥リスクも下げられます。


- 🌾 ごはん:軟飯(米1:水2〜2.5で炊く)または全粥にすることで、コード3〜4に相当する形態になります。


これは使えそうです。特に茶碗蒸しと軟飯は特別な調理器具がなくても作れるため、介護食の入門メニューとして非常に実用的です。


一方で注意すべき食材もあります。以下はコード3・4の食事に混ぜると危険なものです。


- ❌ 海苔・わかめ:口の中に張り付き、剥がれて誤嚥する危険があります。


- ❌ ひき肉(そぼろ状):パラパラしてまとまりにくいため、あんかけにしない限り単体では不適切です。


- ❌ 皮付きの果物:皮が口腔内に残り、バラバラになりやすいです。


- ❌ ナッツ類・豆類:硬すぎてコード4にも適合しません。


家庭での食形態の管理に役立つツールとして、「スマイルケア食」のマークがついた市販介護食品も参考になります。このマークは農林水産省が定めた規格で、咀嚼・嚥下レベルに応じた商品を選べる目安になっています。


農林水産省|スマイルケア食(介護食品の分類・選び方の参考に)


とろみ剤の正しい使い方と嚥下調整食コードとの関係

嚥下調整食を家庭で準備するとき、とろみ剤は欠かせないアイテムです。ただ、とろみの「濃さ」を間違えると、むしろ飲み込みにくくなる場合があります。


日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「とろみの分類」は3段階に分けられています。


段階 名称 粘度の目安 スプーンでの状態
段階1 薄いとろみ 50〜150mPa・s スプーンを傾けると流れる
段階2 中間のとろみ 150〜300mPa・s スプーンを傾けると糸を引いて落ちる
段階3 濃いとろみ 300〜500mPa・s スプーンを傾けても形を保つ


よくある誤解が「濃ければ安全」という考え方です。実際には、とろみが濃すぎると喉に残留しやすくなり、かえって誤嚥を起こす原因になることが報告されています。「段階3の濃いとろみ」が常に安全というわけではなく、嚥下機能のレベルに合わせた調整が必要です。


とろみ剤は製品によって溶けやすさや風味が異なります。主なポイントをおさえておきましょう。


- 溶かす温度:冷たい飲み物と温かい飲み物でとろみのつき方が変わるため、製品の説明書で確認が必要です。


- 時間経過でとろみが増す:多くのとろみ剤は混ぜてから1〜2分でとろみが安定します。すぐに足さないことが大切です。


- 酸性飲料は薄くなりやすい:オレンジジュース・乳酸菌飲料などはとろみがつきにくい場合があり、同量で比較すると少し多めに使う必要があります。


とろみが条件です。食形態(コード)をどれだけ適切に選んでも、飲み物のとろみが不適切では安全な嚥下は実現しません。


市販のとろみ剤として広く使われているものには「トロメリン」「ソフティア」「つるりんこ」などがあります。これらはドラッグストアや介護用品店で購入可能で、担当のSTや管理栄養士に相談の上で使い始めるとスムーズです。


日本摂食嚥下リハビリテーション学会|嚥下調整食分類2021(とろみ分類ページも収録)


家族介護で嚥下調整食コードを実践するための専門家との連携方法

在宅で嚥下調整食を続けるうえで、一番の課題は「適切なコードを誰が判断するか」という問題です。医療職でない家族が独自に判断することには限界があり、間違った食形態を提供し続けることで誤嚥性肺炎のリスクが蓄積していきます。


正しい食形態を判断できる専門職は主に以下の3職種です。


- 👩‍⚕️ 言語聴覚士(ST):嚥下機能の評価が専門。「嚥下内視鏡(VE)」「嚥下造影(VF)」検査を行い、コードの適正レベルを判断します。


- 👩‍🍳 管理栄養士:コードに合わせた具体的なメニュー提案や栄養計算を行います。


- 🏥 かかりつけ医・歯科医師:口腔機能や全身状態を踏まえた総合的な判断をします。


在宅介護の場合、地域包括支援センターやかかりつけの訪問看護ステーションを通じて言語聴覚士の訪問リハビリを依頼できる場合があります。要介護認定を受けていれば、介護保険の範囲内でSTによる訪問嚥下リハビリを利用できるケースが多いです。


これが重要です。専門家のアセスメントを1度受けることで、「うちの家族は今コード3が適切」という明確な指標が得られ、毎日の食事準備の方向性が定まります。


また、病院から退院する際には「退院時連携シート」に嚥下機能の情報が記載されている場合があります。この書類を受け取っておき、自宅での食事介護の判断材料にすることが大切です。病院から渡されなかった場合は、退院前に「食形態はコードいくつが適切ですか」と担当STまたは看護師に確認するだけで、重要な情報が得られます。


「嚥下調整食コードの一覧表」を印刷して台所に貼っておくだけでも、日々の食事準備に役立ちます。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の公式サイトから無料でダウンロードできます。専門家と連携しながら、毎日の食事を安全に整えていきましょう。


日本摂食嚥下リハビリテーション学会|嚥下調整食分類の資料ダウンロードページ




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