カレー派の主婦が知らずに損している事実があります。実はハヤシライスはカレーより約200kcalも高カロリーです。
ハヤシライスとは、薄切り牛肉と玉ねぎをデミグラスソースで煮込み、白いご飯の上にかけた料理のことです。カレーライスと同じように食卓に並ぶことが多い定番の洋食ですが、じつはカレーとはまったく異なるルーツを持っています。
「洋食」というジャンルに分類されているため、フランスやイギリスなどヨーロッパ生まれの料理だと思っている人も少なくありません。ところが実際には、ハヤシライスは日本で独自に生まれた料理です。海外でそのまま「Hayashi rice」と注文しても通じないのは、まさにそのためです。
デミグラスソースや赤ワインを使った濃厚な煮込みが特徴です。地域によっては牛肉の代わりに豚肉を使うこともあり、マッシュルームを加えるアレンジも広く親しまれています。市販のルーを使えば家庭でも手軽に作れる料理として、日本の家庭料理に深く根ざしています。
「洋食なのに和食の食卓に馴染む料理」ということですね。ご飯に合うソースとして、日本人の口にあわせて進化を遂げた点が、ハヤシライスを語る上で欠かせないポイントです。
| 項目 | ハヤシライス | カレーライス |
|---|---|---|
| ベースのソース | デミグラスソース・トマトソース | カレー粉・スパイス |
| 主な具材 | 牛肉・玉ねぎ・マッシュルーム | 肉・じゃがいも・にんじん・玉ねぎ |
| 味のイメージ | まろやか・酸味・コク | スパイシー・辛み |
| カロリー(1食分目安) | 約984kcal | 約798kcal |
| 発祥 | 日本(明治時代) | インド→イギリス経由で日本へ |
参考:ハヤシライスとカレーライスの栄養・カロリー比較について詳しく解説しているページです。
〈ダイエットクイズ〉カレーライスとハヤシライス、太りやすいのはどっち? – Yoga Journal JAPAN
ハヤシライスの由来として最も広く知られているのが、丸善(まるぜん)の創業者・早矢仕有的(はやし ゆうてき)にまつわる説です。早矢仕有的は1837年9月8日生まれ。明治2年(1869年)に書店「丸善」を創業した人物で、医師としての顔も持っていました。
この説には大きく2つのパターンがあります。ひとつは、横浜で医師として働いていた早矢仕氏が、栄養価の高い病院食として牛肉と野菜のごった煮を患者に提供したというもの。もうひとつは、丸善の丁稚(見習いの若者)のために夜食として考案したというものです。
どちらの説も、「あり合わせの肉と野菜を煮込んでご飯にかけた」という共通点があります。つまり原型は「豪華な料理」ではなく、身近な素材で作るシンプルな一皿だったということですね。この逸話は1935年発行の『早矢仕有的傳』と、1980年発行の『丸善百年史』に掲載されており、ある程度の信頼性を持つ記録に残っています。
さらに現在、丸善のカフェ(MARUZEN café)では「早矢仕ライス」という名前でこのハヤシライスを提供しています。東京・日本橋の丸善店内で食べられるもので、由来を知った上で食べると感慨深い一皿です。
早矢仕有的の誕生日9月8日は「ハヤシの日」として日本記念日協会に登録されています。2016年に丸善ジュンク堂書店によって制定されました。
参考:丸善ジュンク堂書店コーポレートサイトによる「ハヤシの日」についての公式解説です。
9月8日は「ハヤシの日」 – 丸善ジュンク堂書店コーポレートサイト
早矢仕有的説と並んで有力なのが、英語の「Hashed Beef with Rice(ハッシュドビーフ・ウィズ・ライス)」が訛って「ハヤシライス」になったという説です。この説は、言語学者の楳垣実(うめがき みのる)が1944年の著書『日本外来語の研究』の中で詳しく論じています。
「Hashed」とは英語で「細かく刻んだ」という意味です。牛肉の薄切りを細かくして煮込む料理のことを指し、それが「ハッシ」「ハイシ」と訛り、さらに明治時代に「こまかく切る」という意味の古語「はやす」と音が重なることで「ハヤシ」という呼び名が定着したと考えられています。
意外ですね。「ハヤシさんが作った」というわかりやすいエピソードの影に、こんなに複雑な言葉の変化が隠れていたわけです。
1888年に出版された日本の料理書『軽便西洋料理法指南』には「ハヤシビフ」という料理名がすでに登場しており、この頃からHashed Beefが日本語化されて使われていたことが確認できます。また1907年3月10日付の朝日新聞には「固形ハヤシライスの種」という商品広告が掲載されており、明治中期にはすでに「ハヤシライス」という名称が広く使われていたことがわかります。
まとめると2つの有力説が存在するということです。どちらが「正解」なのかは、現在もはっきりしていません。エスビー食品などのメーカーも「諸説あり、定かではない」と公式回答しています。
参考:ハヤシライスの語源について言語学的観点から詳しく解説している記事です。
ハヤシライスの「ハヤシ」って何? 巷に広まる「人名説」を一蹴する – urbanlife metro
日本でカレーライスが初めて食べられたのは明治4年(1871年)頃とされています。一方、早矢仕有的が肉と野菜のごった煮をご飯にかけていたのは、丸善の創業が明治2年(1869年)であることを考えると、それ以前からの習慣だったと見る研究者もいます。
つまりハヤシライスはカレーライスより歴史が深い料理である可能性があるということです。「カレーの方が老舗」というイメージを持つ主婦も多いと思いますが、実はその逆かもしれないというのは驚きですよね。
さらに意外な事実があります。ハヤシライスの原型となった料理は、早矢仕氏が最初に作った当時はデミグラスソースで煮込んだものではありませんでした。デミグラスソースが日本に伝わったのは明治30年代(1897年以降)のこと。丸善の広報担当者は「当初は醤油か味噌の味付けだったのではないか」と推測しています。
つまり原型は和風に近い煮込みだったということです。それが時代とともに西洋の技法と融合し、現在私たちが知るデミグラスソースのハヤシライスへと進化を遂げました。日本の家庭料理が150年以上をかけて洗練されてきた歴史を、一皿のハヤシライスから感じ取ることができます。
また、煉瓦亭(銀座)はデミグラスソースを使ったハヤシライスの元祖を名乗っており、上野精養軒も発祥の地として知られています。日本全国に「元祖」を名乗る店が複数存在すること自体、ハヤシライスがいかに多くの場所で愛され、独自に発展していったかを物語っています。
参考:朝日新聞デジタルによる「ハヤシライス誕生秘話」の記事です。カレーライスとの歴史比較についても詳しく書かれています。
ハヤシライスとハッシュドビーフ、この2つを混同しているご家庭は少なくありません。見た目も味も似ているため、「同じもの?」と思う人も多いですが、厳密には違いがあります。
一般的な区別としては、ハッシュドビーフはデミグラスソースをベースにした濃厚でやや大人向けの味わい、ハヤシライスはトマトソースやケチャップもベースに使い、甘みがあって家族みんなが食べやすい親しみやすい味、とされています。ただし市販品や飲食店によって定義は曖昧で、明確な区分はないのが実情です。これが条件です。
家庭で作るハヤシライスをワンランクアップさせたいときは、隠し味の選び方がポイントになります。
市販ルーを使って手軽に作ることが多い主婦の方でも、最後に醤油を小さじ1程度加えるだけで、味がぐっと引き締まります。これは使えそうです。
ハヤシライスは1食あたり約984kcalと、カレーライス(約798kcal)より約200kcal高めです。デミグラスソースやバターなど脂質の多い素材を使うためです。ダイエット中の方が「ヘルシーそうだから」とハヤシライスを選ぶのは注意が必要です。具材に緑黄色野菜を加えたり、ご飯の量を調整したりすることで、栄養バランスを整えるひと工夫をしてみましょう。
ハヤシライスには玉ねぎが多く使われることもあり、玉ねぎに含まれる「ケルセチン」や「硫化アリル」には、免疫力アップや血液サラサラ効果が期待されています。由来を知った上で、栄養まで意識して作ると、一皿の価値がさらに上がりますね。
参考:ハヤシライスの栄養と健康効果9選について詳しく書かれている記事です。
健康にいい!ハヤシライスに含まれる栄養と健康効果9選 – はてなブログ