頭とワタを取らずに水出しすると、だしが約3倍苦くなります。
いりこだし(煮干しだし)の水出しとは、火を使わずに水に煮干しを浸けておくだけでだしを取る方法です。加熱するだし取りと比べると、澄んだ淡い黄金色のだしに仕上がり、クセや雑味が少ないのが大きな特徴です。
水出しで取れるだしは、グルタミン酸やイノシン酸といった旨み成分がゆっくりと溶け出すため、まろやかでやさしい風味になります。子どもがいる家庭でも食べやすく、味噌汁や茶碗蒸しにも向いています。これは使えそうです。
一方、火入れ(煮出し)法はコクと強い旨みが出やすい反面、アクや苦みも出やすい特徴があります。水出しはその点をカバーできるやり方です。つまり水出しはシンプルながら理にかなった方法です。
なお、「いりこ」と「煮干し」はほぼ同じもので、関西・九州では「いりこ」、関東・東北では「煮干し」と呼ばれることが多いです。地域によって呼び方が違うだけで、素材は同じカタクチイワシが主流です。
水出しをする前にまず確認してほしいのが、いりこの下処理です。頭とワタ(腹わた)を取り除くことで、苦みと臭みを大幅に抑えられます。
下処理の手順はシンプルです。
苦みの主な原因はワタに含まれる消化酵素と脂質の酸化成分です。特に長時間水に浸ける水出し法では、ワタをそのままにしておくとその成分が溶け出しやすくなります。頭とワタを取るのが原則です。
「面倒だからそのままでいいか」と思いがちですが、実は水出しの場合、加熱しない分だけワタの苦みが出やすく、丁寧な下処理がより重要になります。意外ですね。
なお、市販のだし用いりこの中には「頭・ワタ取り済み」と記載されたものもあります。手間を省きたい場合は、そうした商品を選ぶのも一つの方法です。パッケージの表示を一度確認してみてください。
水出しの基本の比率は、水1リットルに対していりこ約30〜40gです。30gというのは、だいたい中サイズのいりこ(体長7〜8cm)で15〜20匹ほどの量に相当します。
浸け時間の目安は以下のとおりです。
| 浸け時間 | だしの特徴 | おすすめの用途 |
|---|---|---|
| 3〜4時間(常温) | 淡めでさっぱり | お吸い物・茶碗蒸し |
| 8〜12時間(冷蔵庫) | 旨みがしっかり | 味噌汁・煮物・うどん |
| 一晩〜24時間(冷蔵庫) | 濃厚でコクあり | 炊き込みご飯・ラーメンスープ |
一般的には「一晩冷蔵庫に置けばOK」といわれますが、使いたい料理の濃さに合わせて調整するのがポイントです。薄めのだしが好みなら4時間程度でも十分おいしく仕上がります。浸け時間が条件です。
常温で浸ける場合は夏場の長時間放置に注意が必要です。気温が高いと雑菌が繁殖しやすくなるため、夏は必ず冷蔵庫を使いましょう。3時間を超える場合は冷蔵庫に入れるのが基本です。
容器はガラスやホーロー製のものを使うと、においがつきにくくおすすめです。ペットボトルでも代用できますが、洗いやすさの面ではやや劣ります。
水出しで作ったいりこだしは、冷蔵保存で2〜3日が目安です。加熱していないぶん、火入れだしより少し短い傾向があります。保存には期限があります。
保存の際は、いりこをだしから取り出してから冷蔵庫に入れることがポイントです。いりこを浸けたまま長時間置くと、旨みを通り越して苦みや臭みが出やすくなります。浸け終わったらすぐに取り出すのが原則です。
冷凍保存も可能です。製氷皿に入れて凍らせ、ジッパー付きの保存袋に移せば約1ヶ月保存できます。1キューブ(約15〜20ml)ずつ取り出せるので、少量だけ使いたいときにとても便利です。これは使えそうです。
保存容器には日付をメモしておくと管理しやすいです。「いつ作ったか分からなくなる」というのは意外とありがちなミスです。日付ラベルを貼る習慣をつけると安心です。
せっかく水出ししただしは、味噌汁・煮物・うどん・炊き込みご飯など幅広く使えます。特に味噌汁との相性は抜群で、水出しのやさしいいりこの風味が味噌のコクを引き立てます。
味噌汁に使う場合は、水出しだしを鍋に入れて弱火で温め、沸騰直前で火を止めて味噌を溶くだけです。沸騰させてしまうと旨みが飛びやすいため、温度管理が大切です。80℃前後が理想です。
だしを取り終えたいりこは、捨てずに再利用できます。以下のような活用法があります。
いりこにはカルシウムが豊富で、100gあたり約2,200mgも含まれています。牛乳100mlのカルシウム量が約110mgであることを考えると、いりこはその20倍以上のカルシウムを含む食材です。だしを取り終えた後のいりこも食べることで、栄養をしっかり摂ることができます。
骨ごと食べられるので、成長期の子どもや骨密度が気になる40〜50代の主婦にも積極的に取り入れてほしい食材です。
参考:煮干し(いりこ)の栄養成分と健康効果についての詳細は文部科学省の食品成分データベースで確認できます。
料理研究家やだし専門店が実践している水出しの工夫を知っておくと、家庭のだしが一段と美味しくなります。知っておくと得する情報です。
裏ワザ①:昆布との組み合わせでグルタミン酸+イノシン酸のダブル旨み効果
いりこだしのイノシン酸と昆布だしのグルタミン酸は、同時に使うと旨みが単独使用の約8倍まで増幅するといわれています(旨みの相乗効果)。水1リットルに対して昆布5g+いりこ20gを同時に水出しするだけで、だしのクオリティが大幅に上がります。
裏ワザ②:焙煎いりこで香りを際立たせる
いりこをそのまま使う前に、フライパンで30秒ほど乾煎りすると、だしの香ばしさが増します。煎り過ぎると苦みが出るので注意。少し温まる程度がポイントです。
裏ワザ③:いりこのサイズ選びでだしの濃さをコントロール
| サイズ | 体長目安 | だしの特徴 |
|---|---|---|
| 小羽(こば) | 3〜4cm | 上品でクセなし・薄め |
| 中羽(ちゅうば) | 5〜8cm | バランスが良く万能 |
| 大羽(おおば) | 9cm以上 | 濃厚でコクが強い |
スーパーでよく見かける一般的ないりこは「中羽」サイズです。より繊細なだしを取りたい場合は「小羽」を、ガツンとしたコクが欲しい場合は「大羽」を選ぶとよいでしょう。サイズ選びが条件です。
豆知識:水の硬度もだしの味に影響する
水出しに使う水は、軟水(硬度60以下)が向いています。日本の水道水の多くは軟水〜中程度の硬度ですが、地域によって硬度が異なります。硬水はミネラルが多くだしの旨みをマスキングすることがあるため、できれば市販の軟水ミネラルウォーターを使うとよりクリアなだしに仕上がります。
参考:だしと水の関係については農林水産省のサイトに和食・だし文化に関する資料が掲載されています。