寛解期に「食事制限ゼロ」を続けると再燃リスクが50%を超えます。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる難病です。2023年時点の国内有病者数は約31.7万人(東邦大学調べ)で、8年間で1.4倍に増加しています。特定難病の中でも最多クラスの患者数を持つこの病気は、症状が出る「活動期」と落ち着く「寛解期」を繰り返すのが特徴です。
食事療法は、病気を直接「治す」ものではありません。あくまで腸への負担を減らし、症状の悪化を防ぐための補助的な役割です。ただ、その補助的な役割がとても大きい。食べたものが腸に直接影響するため、食事の内容次第で腹痛・下痢・血便の悪化が起こることがあります。
基本のルールは「低脂肪・低残渣(低食物繊維)・低刺激」の3つです。この3原則が基本です。
ただし、潰瘍性大腸炎は個人差が非常に大きい病気でもあります。「本に書いてあるNG食材でも平気な人」「OKとされる食材で悪化する人」の両方がいます。食事管理の最終目標は、自分の体に合う「マイ食材リスト」を作ることだと理解しておくと、気持ちが楽になります。
| 基本原則 | 意味 | 具体的なポイント |
|---|---|---|
| 低脂肪 | 脂肪が腸を刺激して下痢を悪化させる | 揚げ物・脂身の多い肉・生クリームを避ける |
| 低残渣 | 不溶性食物繊維が腸壁を傷つけやすい | 生野菜・きのこ・海藻・根菜の硬い部分を控える |
| 低刺激 | 香辛料・アルコール・カフェインが腸粘膜を刺激する | キムチ・カレー・アルコール・コーヒーを避ける |
参考:潰瘍性大腸炎の食事管理と基本方針が詳しく説明されています(持田製薬・監修:北里大学医学部)
Enjoy Food編 Chapter 1 潰瘍性大腸炎の食事の基本 – 持田製薬
活動期は腸の粘膜が炎症でただれている状態です。ちょうど肌が荒れているときに刺激の強い化粧品を使うのと同じで、少しの刺激でも症状が一気に悪化します。この時期は「腸を休ませる」ことが最優先です。
✅ 活動期に食べていいもの(おすすめ食材一覧)
| カテゴリ | 食べていいもの | ポイント |
|---|---|---|
| 主食 | 白粥、うどん、そうめん、白いやわらかいパン(バターなし) | 精製された穀類で消化吸収が速い |
| たんぱく質 | 鶏ささみ、鶏むね肉(皮なし)、白身魚(たら・かれいなど)、豆腐(絹ごし)、半熟卵 | 脂質が少なく腸への負担が小さい |
| 野菜 | にんじん・かぼちゃ・大根・白菜・じゃがいも(すべて柔らかく加熱) | 繊維が少ない・皮をむいて長時間加熱する |
| 果物 | バナナ、すりおろしリンゴ、桃の缶詰 | 食物繊維が少ない・常温で食べる |
| 汁物 | 具なし味噌汁、ポタージュスープ(具を裏ごし) | 水分補給にもなり腸に優しい |
| お菓子・飲料 | プレーンヨーグルト(無糖)、ゼリー、和菓子のこしあん系 | 脂質が少ないものを少量ずつ |
❌ 活動期に避けたいもの(NGリスト)
活動期は「少量を回数多く食べる」ことも大切です。一度にたくさん食べると腸に負担が集中してしまいます。食事量は一般的な1食分の半量程度を1日4〜5回に分けるイメージが目安です。
参考:活動期・寛解期別の食事ポイントと食材選びについて医師が詳しく解説しています
【医師監修】潰瘍性大腸炎の食事で気をつけることは?食べて良いもの一覧 – リペアセルクリニック
症状が落ち着いている寛解期に入ると、食事の制限を大きく緩めることができます。これが意外ですね。厚生労働省の調査では、潰瘍性大腸炎の約50%が「再燃寛解型」、つまり良くなったり悪くなったりを繰り返す経過をたどると報告されています。
寛解期の目標は「栄養状態を整えて再燃を防ぐ」こと。過度な食事制限を続けると、栄養不足や体力低下が起こり、かえって再燃しやすくなる可能性があります。それだけ覚えておけばOKです。
✅ 寛解期に取り入れやすい食材
| カテゴリ | 取り入れやすい食材 | 注意点 |
|---|---|---|
| 主食 | 白米、雑穀米・玄米(少量から)、パスタ、パン | 玄米・全粒粉は少量ずつ試す |
| 肉類 | 鶏むね肉・ももも可能に、赤身の牛・豚肉(少量) | 脂身は取り除く。焼くより蒸す・煮るを選ぶ |
| 魚類 | サーモン・さばなどの青魚(オメガ3脂肪酸が多い) | 炎症を抑える働きが期待できる |
| 発酵食品 | ヨーグルト(無糖)、納豆、味噌、ぬか漬け(少量) | 腸内フローラを整えるが個人差あり |
| 野菜 | 食物繊維の多い野菜も加熱すれば少しずつ可能 | 生食は体調を確認しながら再開する |
寛解期であっても、暴飲暴食や刺激物の過剰摂取は再燃のきっかけになります。「ゆるく続ける」感覚が長続きのコツです。アルコールは「少量ならOK」という意見もありますが、個人差が大きいため、主治医と相談して判断するのが安全です。
参考:寛解期の食事の広げ方と食事制限の考え方について
潰瘍性大腸炎患者さんの食事/食生活での注意点とQ&A | IBD LIFE
食材を選ぶのと同じくらい大切なのが「調理法」です。たとえば同じ鶏肉でも、から揚げにすれば活動期NGですが、塩ゆでにすれば問題ありません。調理法が基本です。
おすすめの調理法トップ3は、「煮る」「蒸す」「茹でる」です。この3つは食材をやわらかくしながら脂質の添加が少ないため、腸への負担を大幅に減らすことができます。一方で「揚げる」「炒める」は脂質が一気に増えるため避けましょう。
脂質を減らす調理の具体的な工夫を以下にまとめます。
また、家族と同じ食卓で「別メニュー」を作る負担を減らす工夫も重要です。たとえば、鍋料理ならベースの出汁・素材の部分は共用にして、締めのラーメンや辛味噌だけ自分は別盛りにする、という方法が現実的です。煮物や蒸し料理は家族にも出しやすく、腸に優しい調理法としておすすめです。
外食やコンビニでは、栄養成分表示を確認する習慣が役立ちます。脂質と食物繊維の量を確認する、これが原則です。1食あたりの脂質が15g以下を目安にすると選びやすくなります。
食事の管理中でも、おやつや飲み物を一切我慢するのはかえってストレスになります。ストレスが再燃の引き金になることもあるため、選び方さえ知っていれば無理なく楽しめます。これは使えそうです。
✅ 比較的食べやすいお菓子・おやつ
❌ 避けたいお菓子・飲み物
武田薬品工業が患者向けに「IBDreamお菓子図鑑」というリスト(IBDステーション掲載)を無料公開しており、市販のお菓子の中から比較的食べやすいものを一覧で確認することができます。腸の状態と相談しながら少量ずつ試す、というのが基本的な考え方です。
参考:IBD患者向けにおすすめの市販お菓子をリスト化した図鑑
IBDreamお菓子図鑑(2025年版)– IBDステーション(武田薬品工業)
どれだけ正確な食材一覧があっても、「自分の体に合うかどうか」は試してみないとわからないのが潰瘍性大腸炎の難しさです。同じ食材でも、量が多いと具合が悪くなることもあります。個人差が大きい病気です。
そこで、日常的に実践しやすい方法として「食事日記(フードダイアリー)」があります。兵庫県立尼崎総合医療センターも「カレンダーに記録したり、写真を撮って保存することもおすすめ」と公式に紹介しています。
食事日記で記録しておくといい内容
スマートフォンアプリの「IBDサポート®」(EAファーマ提供・無料)は、食事内容と体調をまとめて記録・管理できる機能を持ち、IBD患者専用に設計されています。毎回ノートに書かなくても、写真を撮るだけで記録できるため、忙しい主婦にも使いやすい設計です。
記録が2〜3週間分たまると、「この食材を食べた翌日に症状が出た」というパターンが見えてきます。そのデータを主治医や管理栄養士に持参すると、食事指導の精度がぐっと上がります。
主治医に相談するだけでなく、管理栄養士への相談窓口を持つ医療機関を選ぶのもひとつの選択肢です。潰瘍性大腸炎の専門クリニックでは、医師と管理栄養士が連携して食事指導を行っているところもあります。症状が安定していても、定期的な通院を続けながら「食事管理+薬物療法」を両輪で進めることが、長期的な寛解維持のカギになります。
参考:潰瘍性大腸炎の食事・生活での注意点を医師監修でQ&A形式で解説
潰瘍性大腸炎の食事について – 兵庫県立尼崎総合医療センター(栄養管理部監修)