米ぬかをそのまま畑に撒くと、野菜が1カ月間まったく育たなくなることがあります。
米ぬかの肥料成分は、窒素(N)が約2〜3%、リン酸(P)が約4〜6%、カリウム(K)が約1〜1.5%という割合です。「窒素:リン酸:カリ=2:5:1」というバランスで、リン酸が群を抜いて多いのが最大の特徴です。
リン酸は「花肥・実肥(はなごえ・みごえ)」とも呼ばれ、植物の花付きや実付きを良くする成分です。つまり、トマトやナス、キュウリなど実を収穫する野菜との相性が特に良いといえます。これは使えそうです。
肥料の三要素(窒素・リン酸・カリ)以外にも、米ぬかにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルが含まれています。さらに、タンパク質が約13%、脂質が約20%、糖類が約28%、食物繊維が約20%とバランスよく含まれており、土壌微生物にとっては非常に優秀なエサになります。
化成肥料と比べると、米ぬかの肥料成分の数値は決して高くはありません。ただし、土の中の微生物を増やして「生きた土」を育てる力は、化成肥料にはない大きな強みです。微生物が増えれば、土の中に眠る養分が分解されて植物が吸収しやすい形になります。つまり、米ぬかは「肥料成分を直接届ける」よりも「土の働きを底上げする」資材といえます。
また、玄米の栄養素の約8割が米ぬかに集中しているという事実も見逃せません。白米として食べる部分(2割)よりもはるかに多くの栄養が、精米時に削り取られる薄い粉の中に詰まっているのです。
| 成分 | 含有量(目安) | 植物への主な働き |
|---|---|---|
| 窒素(N) | 約2〜3% | 葉・茎の成長を促す |
| リン酸(P) | 約4〜6% ⭐最多 | 花付き・実付きを良くする |
| カリウム(K) | 約1〜1.5% | 根の発達・耐病性を高める |
| タンパク質 | 約13% | 微生物のエサになる |
| 糖類 | 約28% | 微生物の活動エネルギーになる |
参考:米ぬかの成分・窒素やリン酸の含有量について詳しく解説されています。
発酵の力を土作りに役立てる!「米ぬか」徹底活用術【マイナビ農業】
「栄養豊富な米ぬかを庭の畑にそのまま撒けばよさそう」と考えてしまいがちです。ところが、生の米ぬかを未発酵のまま土に混ぜ込むと、思わぬトラブルが続出します。
まず起こるのが「窒素飢餓」です。生の米ぬかが土に入ると、糖質やタンパク質をエサとして土の中の微生物が爆発的に増殖します。問題はここからで、その微生物たちが増殖するために土の中にもともとあった窒素を大量に使ってしまうのです。その結果、植物に届くはずの窒素が一時的に底をつき、野菜の葉が黄色くなる・成長が止まるといった「窒素飢餓」の症状が現れます。これは痛いですね。
次に怖いのが虫の問題です。生の米ぬかには脂質やビタミンが豊富で、コバエ・ナメクジ・ゴキブリが好んで卵を産みに来ます。特に夏の暑い時期に生の米ぬかを使うと、カビによる急速な発酵が進み、害虫の温床になりやすいとされています。家庭菜園で虫が大量発生すると、せっかく育てた野菜が台無しになるだけでなく、近隣への迷惑にもなりかねません。
さらに、発酵の過程では「熱」と「有害ガス(アンモニア・メタンガスなど)」が発生します。植物の根が近くにある状態でこれが起きると、根腐れや酸素欠乏を引き起こします。植え付け直後に生の米ぬかを土に混ぜた場合、1カ月ほど野菜が正常に育たないケースも珍しくありません。
生の米ぬかをそのまま使うのはNGが原則です。撒くとすれば、土とよく混ぜ込んで、植え付けの少なくとも1カ月以上前に行うことが条件です。
参考:生の米ぬかをそのまま使ったときのリスクと注意点が詳しくまとめられています。
生の米ぬかを安全に使うために最もおすすめなのが「ぼかし肥料」にして使う方法です。ぼかし肥料とは、有機物を事前に発酵・分解させた肥料のことで、施用後すぐに植え付けでき、追肥にも使いやすいのが特長です。
基本的な配合の一例として、米ぬか7kg・鶏ふん1.5kg・もみ殻5kgを混ぜ合わせると約50リットルのぼかし肥料ができます。プランター2〜3個分の家庭菜園で使いやすい量です。完成品の成分は窒素:リン酸:カリウム=約1:1.5:0.6(%)程度になり、リン酸がやや多めの緩効性肥料になります。
【簡単なぼかし肥料の作り方】
完成したぼかし肥料は発酵済みなので、急激なガスや熱の発生がなく、植え付けの直前や追肥として安心して使えます。これが大きなメリットです。
なお、コイン精米所では米ぬかを無料でもらえる場合がほとんどです。鶏ふんも100円ショップや園芸店で手軽に入手できるので、材料費をほとんどかけずに自家製の有機肥料を作ることができます。
米ぬかを直接畑に施用する場合、適切な量は「1平方メートルあたり100〜200グラム」が目安とされています。これは畳1枚分(約1.8㎡)に対して、ご飯茶碗1〜2杯分(約180〜360g)相当の量です。少なすぎると効果が薄く、多すぎると先ほど説明した窒素飢餓や害虫発生のリスクが高まります。量に注意すれば大丈夫です。
連作障害(同じ場所に同じ科の野菜を続けて作ることで出る生育不良)に悩んでいる場合にも、米ぬかは強力な助けになります。夏に米ぬかの成分と太陽の熱を組み合わせた「太陽熱土壌処理」という方法が特に効果的です。
【太陽熱土壌処理のやり方】
米ぬかの発酵熱と太陽の熱が合わさり、地温が50〜60℃に上昇します。この温度になると病原菌や根を傷めるセンチュウの多くが死滅し、雑草の種も発芽できなくなります。一方で、植物に有益な発酵菌は高温にも耐えられるものが多く、有用な土壌環境が守られます。
連作障害で毎年悩んでいる場合、夏の閑散期(7〜8月)にこの処理をしておくと、秋の植え付けシーズンに向けて土壌をリセットできます。除草の手間も大幅に省けるという嬉しいおまけ付きです。
参考:連作障害への米ぬかを使った具体的な手順と量が解説されています。
実は米ぬかには「生の米ぬか」と「脱脂米ぬか(だっしこめぬか)」の2種類があり、成分と使い方が大きく異なります。これを知らずに使い分けていない人は少なくありません。意外ですね。
生の米ぬかは、コイン精米所などで無料または低価格でもらえる、精米直後の米ぬかです。脂質が約20%と多く含まれるため、土に撒くと微生物がその脂質を猛烈に分解しようとします。前述の窒素飢餓や害虫問題が起きやすいのはこの脂質が主な原因で、生の米ぬかはそのまま肥料にするより「発酵促進剤」「ぼかし肥料の材料」として使うのが正しい使い方です。
一方の脱脂米ぬかは、生の米ぬかから油分を搾り取った後の残りです。肥料売り場で「米ぬか肥料」として販売されているのはほとんどがこちらです。脂質が少ないので土の中での分解が比較的緩やかで、播種(種まき)の2〜3週間前に土に混ぜ込む「基肥(もとごえ)」として使えます。
| 種類 | 入手方法 | 脂質 | 主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 生の米ぬか | コイン精米所・米屋(無料〜低価格) | 多い(約20%) | ぼかし肥料の材料・発酵促進剤 |
| 脱脂米ぬか | ホームセンター・園芸店(有料) | 少ない | 基肥・土壌改良材として直接使用可 |
ホームセンターで市販されている米ぬか肥料を購入したのに効果が出ない、というケースでは、施用のタイミングが原因のことがあります。脱脂米ぬかであっても、植え付け直前ではなく2〜3週間前には土に混ぜ込んでおくことが条件です。
また、窒素の多い野菜(小松菜・ほうれん草・キャベツなどの葉物)には、米ぬか単体では窒素が不足しがちです。そういった場合は、油かすや鶏ふんと組み合わせることで栄養バランスを補えます。これだけ覚えておけばOKです。
参考:生の米ぬかと脱脂米ぬかの違いや用途の比較が詳しく解説されています。
米ぬかを肥料としてそのまま使えるか、使う場合の注意点【農家web】