昆布に切り込みを入れると、雑味とぬめりが増えて味が落ちます。
夕飯の準備中に「昆布だしがない!」と気づいた経験は誰にでもあるものです。そんなときに頼りになるのが、沸騰させたお湯を使った「止め火10分法」です。
まず鍋に水を入れて火にかけ、完全に沸騰させます。次に必ず火を止めてから昆布を投入し、そのまま10分間放置するだけ。これだけで使える昆布だしが完成します。
なぜ「火を止めてから」なのかというと、昆布のうま味成分であるグルタミン酸は約60〜70℃で最も効率よく溶け出す性質があるからです。沸騰しているお湯(約100℃)に昆布を入れ続けると、えぐみや濁りの原因となる成分まで一緒に出てしまいます。火を止めてから入れることで、お湯は自然に70℃前後まで下がり、旨味だけをうまく引き出せるという仕組みです。これが基本です。
| 方法 | 所要時間 | 旨味の濃さ | 向いている料理 |
|---|---|---|---|
| 止め火10分法(急ぎ) | 約10〜15分 | ★★★☆☆ | 味噌汁・煮物 |
| 煮出し法(基本) | 約30〜40分 | ★★★★☆ | 汁物・炊き込みご飯 |
| 水出し法(一晩) | 約8〜10時間 | ★★★★☆ | 吸い物・湯豆腐 |
| 炊飯器保温法(旨味最大) | 約60分 | ★★★★★ | 全般・おもてなし |
日高昆布を使う場合は、約10cmの長さにはさみでカットしておくと、より短時間で旨味が出やすくなります。カットは繊維に沿ってではなく、短く切るイメージで構いません。
昆布の表面についている白い粉を見て「汚れている」と感じ、水で洗い流してしまう方が非常に多いです。しかしこれは大きな失敗です。
あの白い粉の正体は「マンニット(マンニトール)」と呼ばれる甘味成分で、昆布のうまみを構成する大切な物質です。昆布が乾燥する過程で内部から染み出し、表面で結晶化したものです。水洗いするとこのマンニットが全部流れてしまい、せっかく取るだしの旨味が大幅に損なわれてしまいます。旨味の損失は防げます。
汚れが気になる場合は、固く絞ったぬれ布巾でやさしく表面を拭く程度にとどめましょう。白い粉はそのまま残しておくのが正解です。
また、昆布に切り込みや切れ目を入れる方法を推奨しているレシピも多いですが、注意が必要です。切り込みを入れると旨味が出やすくなる反面、ぬめりや雑味の原因となる成分も一緒に溶け出しやすくなります。特に利尻昆布などは粘りが強く、切れ目を入れるとだしが濁ってしまうことがあります。すっきりした風味を求めるなら、切り込みなしが基本です。
急ぎのときに使える方法として、実は炊飯器の保温機能が最も優秀です。意外ですね。
2002年に行われた研究で「昆布のグルタミン酸は60℃で1時間加熱することで最大限に抽出される」という事実が科学的に証明されました。産経ニュースの検証でも、各種の抽出方法の中で最もグルタミン酸が多く含まれていたのは「60℃・1時間」の方法だったと報告されています。
炊飯器の保温機能の設定温度は、メーカーによって差はありますが、おおむね60〜70℃前後に設定されています。つまり、炊飯器の保温機能はそのまま「理想的な昆布だし抽出装置」として使えるのです。これは使えそうです。
作り方は非常にシンプルです。沸騰させたお湯と同量の水道水を混ぜると約60℃のお湯ができます(やけどに注意)。それを昆布と一緒に炊飯器の内釜に入れ、保温スイッチをオンにして1時間放置するだけです。終わったらザルや紙タオルで漉せば完成。蓋はしないほうが磯臭みが飛びやすいですが、炊飯器の場合は蓋をしたままでも問題なく出来上がります。
料理中に炊飯器が空いていることも多いはずです。次の夕飯の仕込みを昼間に炊飯器でセットしておくだけで、帰ってきたときには上質な昆布だしが出来上がっています。
参考:昆布のうま味抽出と温度の関係に関する科学的解説はこちらでも読めます。
昆布の種類によって、急ぎのときに向き不向きがあることを知っておくと、毎日の料理が格段に変わります。
日本の市場に流通している主なだし用昆布は、日高昆布・真昆布・利尻昆布・羅臼昆布の4種類です。
急ぎのシーンでは日高昆布か羅臼昆布が特に使いやすいです。日高昆布はアクセスのしやすさ、羅臼昆布は短時間でも旨味が出る点が強みです。
一方、料理用の「早煮昆布」や「長昆布」はだしがほとんど出ません。パッケージに「だし用」「だし昆布」と書いてあるものを必ず選んでください。「出汁用」かどうかが条件です。
参考:昆布の種類別の特徴と選び方についての詳細はこちらをご覧ください。
昆布だしの取り方〜基本の昆布だし(こんぶネット・日本昆布協会)
毎回急ぎながらだしを取るのではなく、週1回まとめて作っておく習慣をつけるのが、最も賢い時短法です。結論はまとめ取りです。
昆布だしの保存期間は、冷蔵庫で約3〜4日、冷凍で約2週間が目安です。冷蔵保存は手軽ですが、2〜3日で使い切れない場合はすぐに冷凍に切り替えましょう。風味が落ちる前に冷凍するのがポイントです。
冷凍するときは製氷皿に入れて小分けにするのが最もおすすめです。1マス=約大さじ2杯(約30mL)になるので、味噌汁を1杯作るなら3〜4マス分(約90〜120mL)を解凍するだけで済みます。ジッパー付きのフリーザーバッグに移し替えて冷凍すれば、冷凍庫の場所も取らず管理もしやすくなります。
冷凍した昆布だしの使い方は簡単です。
週末や休みの日に1〜1.5Lのまとめ取りをしておくと、平日5日間の料理に余裕で対応できます。炊飯器保温法と組み合わせれば、「ほったらかし60分→製氷皿で冷凍」という流れだけで、毎日の夕飯準備がスムーズになります。
参考:昆布だしを含む各種だし汁の保存方法と期間の詳細はこちらが参考になります。
出汁の保存は密閉容器で冷凍2週間!冷蔵は3日以内(小林食品株式会社)