「ミルフィーユ」という名前には千枚もの葉が詰まっているのに、実はパイ生地の枚数は3枚しかありません。
ミルフィーユの名前は、フランス語の「mille(ミル)」と「feuille(フィーユ)」という2つの単語が組み合わさってできています。「mille」は「1000」、「feuille」は「葉っぱ・紙」を意味するので、直訳すると「千枚の葉」になります。
何枚も重なったパイ生地の層が、風に舞う葉っぱに似ていることからこの名前がついたと言われています。つまり「千枚の葉」という意味です。
フランス語での正式な書き方は「mille-feuille」または「millefeuille」のどちらでもOKです。発音については、フランス語では「ミルフイユ」に近い読み方をします。私たちが普段使っている「ミルフィーユ」という日本語読みをフランス人に向けてしてしまうと、「mille filles(ミル・フィーユ)=千人の女の子」という全く別の意味に聞こえてしまうのです。現地でお菓子を注文する際には要注意ですね。
ちなみにフランス語では、たくさんの数や量を表すときに「mille(千)」を使う表現が多くあります。「mille mercis(ミル・メルシ)」は「千のありがとう」という意味で、強い感謝を伝えたいときに使われる表現です。こうした背景からも「千」という言葉がいかに豊かな量感を表すフランス語の言葉かがわかります。
ミルフィーユの語源・歴史・名称についての詳細 – Wikipedia
ミルフィーユの起源をたどると、17世紀のフランスまでさかのぼります。1651年、フランスの料理人ラ・ヴァレンヌが著した料理書にパイ生地を重ねた菓子の原型が登場したのが始まりとされています。この頃はまだ現在のようなクリームをたっぷり挟んだ形ではなく、シンプルな焼き菓子に近いものでした。
現在のミルフィーユの形が完成したのは、1867年のことです。パリ7区バック通りにあった洋菓子店「Seugnot(スニョ)」のパティシエ、アドルフ・セニョが考案したとされています。カスタードクリームをパイ生地の間に挟むスタイルをこのパティシエが生み出したと言われており、150年以上経った現在でも世界中で愛されているのはまさに驚きですね。
また英語圏や北欧では、ミルフィーユは「ナポレオン(Napoleon)」という名前で呼ばれることがあります。「フランスの英雄ナポレオン由来?」と思いたくなりますが、実はそうではありません。イタリアのナポリを表すフランス語の形容詞「napolitain(ナポリタン)」が語源とされており、18世紀にナポレオン皇帝の名前と発音が似ていることから混同されるようになったと言われています。ナポリタン→ナポレオンという変化です。意外ですね。
ミルフィーユが誕生した背景には、フランスのパティシエたちがパイ生地(フィユタージュ)を完成させた技術の積み重ねがあります。発祥の地フランスでは、ミルフィーユはいまでもパン屋さん(ブランジェリー)で気軽に買える定番のカジュアルスイーツとして親しまれています。
ミルフィーユの由来と進化の歴史に関する詳細な解説 – patissieres.com
「千枚の葉」という名前を聞いて、パイ生地が本当に1000枚あると思っている方は多いのではないでしょうか。でも実際に数えてみると、ミルフィーユ1個を構成するパイ生地の「枚数」はたったの3枚です。
ポイントは「3枚×パイ生地1枚あたりの層数」という計算にあります。パイ生地(フィユタージュ)は生地とバターを交互に折りたたむ「折り込み」という作業を繰り返して作られます。3つ折りを6回繰り返すと、生地の内部に729層もの薄い層が生まれる仕組みです。3の6乗で729、3つ折り7回繰り返せばなんと2187層になります。ちなみにA4用紙を6回折ると64枚重ねになりますが、パイ生地はそれをはるかに超える細かさで層が作られていることになります。
「千枚」は正確な枚数ではなく、「非常にたくさんの層」を表す比喩的な表現です。これが原則です。フランス語でも「mille(千)」はしばしば「とても多い数」というニュアンスで使われます。「千人のありがとう」「千の願い」といった表現と同じ感覚です。
ただし、パイ生地の折り込み層が多ければ多いほど良いわけでもありません。製菓の研究によれば、生地の中のでんぷん粒が潰れずに層として機能できる限界は約100層程度とも言われています。繰り返し折り込みすぎると層がつぶれてしまい、逆にサクサク感が失われるのです。これは使えそうです。
ミルフィーユの構造・製法・パイ生地の層についての詳細 – パティシエWiki
「ミルフィーユ」と「ミルクレープ」、名前が似ていてどちらも「ミル」がついているので混同されがちです。どちらも「千」を意味するフランス語の「mille」が使われていますが、全く別のスイーツです。
2つの大きな違いは使う生地の種類と食感にあります。ミルフィーユは小麦粉とバターを折り込んで作った「パイ生地」を使い、サクサクとした軽い食感が特徴です。一方でミルクレープは薄く焼いた「クレープ生地」を何十枚も重ねて作り、しっとり・もちもちした食感になります。また興味深いことに、ミルクレープはフランス発祥ではなく、日本で生まれたスイーツです。フランスにはミルクレープという菓子自体が存在しないとされています。
さらに「ミルフィーユ」という言葉は、スイーツ以外でも使われます。豚バラ肉と白菜を交互に重ねた「ミルフィーユ鍋」がその代表例です。お鍋の具材が何層にも重なった断面が、パイ生地の層のように見えることからこの名前がついています。料理の世界でも、具材を層状に重ねた料理に「ミルフィーユ仕立て」と呼ぶことがあります。つまり「ミルフィーユ」は「層状に重ねた」という意味でも使われているということですね。
| | ミルフィーユ | ミルクレープ |
|---|---|---|
| 使う生地 | パイ生地 | クレープ生地 |
| 食感 | サクサク・軽い | しっとり・もちもち |
| 発祥 | フランス | 🇯🇵 日本 |
| 層の見た目 | 折り込み層(数百〜千層超) | 何十枚ものクレープ |
一口に「ミルフィーユ」といっても、フランスには大きく4つの種類があります。お店でオーダーする際や手土産を選ぶ際に覚えておくと楽しさが広がります。
① ミルフィーユ・ロン(Millefeuille Rond)は、最も一般的な形のミルフィーユです。長方形のパイ生地3枚の間にカスタードクリームを挟み、上面に粉砂糖をふったシンプルなスタイルです。ケーキ屋さんでよく見かけるのがこちらです。
② ミルフィーユ・グラッセ(Millefeuille Glacé)は、表面をフォンダン(砂糖を練ったもの)で覆い、その上にチョコレートで矢羽根模様(シュブロン模様)を描いたエレガントな一品です。「グラッセ」はフランス語で「釉薬がけ・コーティング」という意味を持ちます。見た目の美しさから、贈り物にもよく選ばれます。
③ ミルフィーユ・ブラン(Millefeuille Blanc)は、パイ生地の間にビスキュイ(スポンジ生地)を加えたタイプです。「ブラン」はフランス語で「白」の意味。ふわっとしたスポンジが加わることで崩れにくく食べやすい点が特徴で、子どものおやつにも向いています。
④ ミルフィーユ・オ・フレーズ(Millefeuille aux Fraises)の「フレーズ(fraise)」はフランス語でイチゴのこと。文字通り、イチゴを使ったミルフィーユで、生クリームやカスタードとの組み合わせが定番です。春から初夏にかけてのシーズンに多く登場する人気の種類です。
ミルフィーユを食べるとき、フォークを入れた瞬間にパイがバラバラと崩れてしまった経験はありませんか?実はコツを知っておくだけで、ずいぶんスマートに食べられます。
最も重要なポイントは「縦に切らず、横に倒してから食べる」ことです。ミルフィーユを立てたまま上からフォークを押し込もうとすると、サクサクのパイ生地が圧力で砕けてしまいます。まず、ナイフで手前側のパイ生地を縦に1回だけ優しくカットし、ミルフィーユをそのままお皿の上に横倒しにしてから、ひと口大ずつカットしながら食べるのが基本です。
フォーク1本で食べる場合は、お皿に対して垂直にフォークをあて、パイを「割る」イメージで力を入れると生地が崩れにくくなります。崩れて散らばったパイくずは、クリームとともにお皿の上で絡めるようにして食べればOKです。パイくずを残すのはもったいないですよ。
また、いちごやフルーツのデコレーションがある場合は、最初にフルーツを外してお皿の脇に移動させてから切り始めると、余計な力がかからず崩れにくくなります。切り終わったあとにフルーツを添えて食べると、見た目も美しく仕上がります。
フランスでは、ミルフィーユをパン屋さんで気軽に買って手で持ちながらガブリとかじる食べ方も一般的です。ただし日本では、きれいにフォークで食べる方が場に合っていることがほとんどです。食べ方に正解は1つではありません。状況に合わせて楽しめればそれが正解です。