生地を寝かせないと、クレープが破れて1時間分の努力が台無しになります。
ミルクレープを作るときに「材料が多くて難しそう」と感じる方は多いですが、実は基本の材料はとてもシンプルです。クレープ生地に使うのは、薄力粉50g・強力粉40g・グラニュー糖20g・卵2個・牛乳250cc・無塩バター20gです。クリームは生クリーム250cc(乳脂肪分40%)とグラニュー糖大さじ1と1/2杯だけで作れます。
ここで一つ押さえておきたいのが、強力粉を混ぜる理由です。薄力粉だけで作るとクレープ生地は破れやすくなります。強力粉を加えることでグルテンが程よく形成され、もちもちとした食感と破れにくさの両方が実現します。薄力粉のみで作った生地は引っ張るとすぐに裂けますが、強力粉を2〜3割加えた生地はある程度の弾力が生まれるのです。これは意外と知られていないポイントです。
下準備として忘れてはならないのが、卵を常温に戻すことです。冷蔵庫から出したばかりの冷たい卵だと、溶かしバターを加えたときにバターが冷えて固まってしまい、生地にムラができます。卵は焼く30分前には冷蔵庫から出しておくのが基本です。
また、牛乳も少し温めると生地がなめらかになります。電子レンジで牛乳の半量を40秒ほど温め、40℃程度(お風呂より少し冷たいくらい)にしてから混ぜると、バターと牛乳が均一に混ざります。つまり温度管理が成功の鍵です。
ホットケーキミックスを使う方法もあります。市販のホットケーキミックス200gに卵2個・牛乳400cc・バター大さじ1を混ぜるだけで生地ができ、計量の手間が半分以下になります。お菓子作りに不慣れな方はホットケーキミックスからスタートするとよいでしょう。ただし、ホットケーキミックスにはベーキングパウダーが含まれているため、ふんわりした食感になり、本格的なミルクレープと比べると生地が少し厚めに仕上がる傾向があります。
| 材料 | 分量(6号1台分) | 役割 |
|---|---|---|
| 薄力粉 | 50g | 生地のベース |
| 強力粉 | 40g | もちもち食感・破れ防止 |
| グラニュー糖 | 20g | 甘みと焼き色 |
| 卵(常温) | 2個 | 生地のつなぎ |
| 牛乳(少し温める) | 250cc | 生地をのばす |
| 無塩バター | 20g | 風味・しなやかさ |
参考:生地を休ませることとグルテンの関係について詳しく解説されています。
【クレープ生地を寝かせる意味とは】理由はグルテンにあり!? - atelier-epice
「生地は混ぜてすぐ焼けばいい」と思っていませんか?実はこれが一番多い失敗の原因です。生地を休ませないと、焼いたときにクレープが縮んで厚みが不均一になり、ひっくり返したときに破れやすくなります。
生地を寝かせることにはグルテンの働きと深い関係があります。小麦粉を水分(牛乳や卵)と混ぜると、グルテンというタンパク質が網目状に形成されます。混ぜた直後のグルテンは「ピーンと張った輪ゴム」のような状態で弾力が強く、フライパンに流し入れても生地が弾いてしまいうまく広がりません。30分〜1時間休ませると、このグルテンが緩んで「柔らかく伸びるシリコンシート」のような状態になり、フライパンの上でスルッと広がります。
最低でも30分以上、できれば1時間は冷蔵庫で休ませるのがおすすめです。さらに一晩(8時間以上)冷蔵庫で寝かせると、牛乳などの水分がデンプンに完全に吸収され、もちもち感と香りが格段にアップします。前日の夜に生地だけ作っておく方法は、時間のある主婦の方に特におすすめです。これは使えそうです。
ただし、長時間休ませた生地は底に粉が沈殿することがあります。焼く前に必ず底からしっかり混ぜ直すことをお忘れなく。混ぜ直さずにそのまま焼くと、最初の数枚は薄くなって後半の生地が急に濃くなり、仕上がりにムラが出ます。
生地を休ませるときは、ラップをボウルに密着させて貼ります。乾燥すると表面にかたい膜ができ、混ぜ直したときにダマの原因になります。ラップをかけた生地は冷蔵庫に入れ、使うときは常温に10分ほど置いてから混ぜると生地がさらになめらかになります。
参考:生地の休ませ時間による仕上がりの違いを比較実験した記事です。
「クレープを薄く焼くのが難しい」というのは実は誤解です。薄く焼く技術より、生地の状態とフライパンの温度管理のほうが仕上がりに大きく影響します。正しい手順を守れば、料理が苦手な方でもきれいに焼けます。
まず、フライパンは直径15〜20cmのテフロン加工のものを使います。大きすぎると生地が薄く広がりすぎて扱いが難しく、小さすぎると枚数が増えすぎます。15cmのフライパンで14枚前後焼けるのが目安です。
焼き方の手順は以下のとおりです。
ポイントはステップ3の「濡れ布巾に当てる」操作です。フライパンが熱すぎると生地を流した瞬間に端が固まり、全体に広げる前に焼けてしまいます。濡れ布巾で一瞬冷やすことで、生地を広げる2〜3秒の時間が確保できます。このひと手間で成功率が大幅に上がります。
また、ひっくり返しのタイミングを見極めることも大切です。端の生地が乾いて少し浮き上がり、表面の光沢がなくなったら裏返しのサインです。早すぎると生地が破れ、遅すぎると焦げてしまいます。最初の1〜2枚は失敗しても大丈夫。フライパンが生地になじんでくる3枚目以降はずいぶん焼きやすくなります。焼けた生地はしっかり冷まします。温かいうちにクリームを塗るとクリームが溶けて崩れてしまうので、これは必須です。
スーパーの乳製品コーナーには生クリームがいくつか並んでいますが、パッケージをよく見ると「乳脂肪分35%」「乳脂肪分40%」「乳脂肪分47%」などと書かれています。ミルクレープにはどれが向いているのでしょうか?
結論から言うと、乳脂肪分35〜40%が最もバランスが良いです。乳脂肪分が低い(35%以下)と泡立てるのに時間がかかり、クリームが柔らかくて層が崩れやすくなります。反対に45%以上の高脂肪クリームはコクが出ますが、泡立てすぎると分離してボソボソになりやすく、初心者には扱いが難しいです。
乳脂肪分40%の生クリームは「デコレーションに最適な脂肪分」とされており、泡立てやすく、塗りやすく、形も保ちやすいです。スーパーで手に入りやすいタカナシ乳業の生クリーム40%や明治フレッシュクリーム40%などが候補です。
生クリームを泡立てるときの注意点は以下のとおりです。
クリームを塗るときは、1枚あたり約30gを目安にします。30gというのは大さじ2杯分ほどです。端まで均一に薄く広げることを意識し、中央だけ厚くなるのを防ぎましょう。端が薄くなるとカットしたときに端の部分だけクリームがなく、見た目も食感も残念になります。パレットナイフがなければ、スプーンの背やゴムベラでも代用できます。
カスタードクリームと合わせる「ディプロマットクリーム」にすると、よりお店のような本格的な味に仕上がります。カスタードクリームは卵黄40g・砂糖50g・薄力粉20g・牛乳200gで作り、急冷してから泡立てた生クリームと合わせます。風味豊かなクリームが一度食べるとやみつきになりますね。
参考:生クリームの乳脂肪分による泡立ちや味の違いを詳しく解説しています。
生クリームの基本と選び方|乳脂肪分とは?ホイップとの違い - プロフーズ
「ミルクレープは何枚重ねればいいの?」と迷う方も多いはずです。「ミル(Mille)」とはフランス語で「千」を意味しますが、実際には15〜20枚が家庭での適切な枚数です。10枚以下だと断面の層が少なくて見た目が物足りなく、20枚超えると高さが出すぎてカットしたときに崩れやすくなります。
重ねるときは、クレープ生地をまな板や平らなバットの上に1枚置き、クリームを塗って次の生地を重ねる、という作業を繰り返します。このときに大切なのが「生地が完全に冷めていること」と「クリームの厚さが均一であること」の2点です。温かい生地の上にクリームを乗せると溶けて液状になり、重ねたときにすべてのクリームが中央に集まってしまいます。これが原因で断面がキレイにならないことが多いです。
全て重ね終わったら、ラップでしっかり包んで冷蔵庫で最低2時間、できれば一晩(8時間以上)冷やします。冷やすことで生クリームが固まり安定するだけでなく、クリームの水分が生地にゆっくりと染み込んでいきます。これによって生地とクリームがなじみ、断面を切ったときに層がくっきりと現れます。出来立てをすぐ切ると、生地とクリームが分離してしまいきれいな断面になりません。一晩冷やしてから切るのが原則です。
カットするときは、温めた包丁を使うのがプロの技です。包丁をお湯で温めてから(または湯煎にかけて)、前後に小刻みに動かしながら切ります。押しつけるように切ると層が崩れてしまいます。1カットごとに包丁を拭いてから次を切ると、断面がより美しく仕上がります。
基本のミルクレープを作れるようになったら、アレンジに挑戦してみましょう。アレンジといっても難しい技術は不要です。生地やクリームに少し手を加えるだけで、見た目も味も大きく変わります。
最も人気の高いアレンジがいちごや桃などのフルーツ入りです。クリームと一緒にスライスしたフルーツを挟むだけで、カットしたときの断面が華やかになります。フルーツは水分が多いと生地がべたつくため、キッチンペーパーで水分を拭き取ってから挟むのがコツです。いちごは0.5cm程度の薄いスライスにし、均等に並べると層が整います。桃の缶詰を使うと1年中作れて経済的です。意外ですね。
抹茶生地は少し苦みのあるおとなの味が楽しめます。基本の生地の薄力粉の一部(約10g)を抹茶パウダーに置き換えるだけで作れます。抹茶は生地に溶けにくいため、先に少量の牛乳と合わせてペースト状にしてから加えると均一な色に仕上がります。抹茶生地にはホイップした生クリームと粒あんを組み合わせると和風スイーツとして完成度が高まります。
ホイップチョコクリームを使うアレンジも人気です。生クリームを泡立てる前に溶かしたチョコレート(生クリームの10〜15%の量)を加えると、ほんのりチョコ風味のクリームになります。生地を通常の配合で焼き、チョコクリームを挟むだけで市販のケーキに近い味わいが楽しめます。
また、あまり知られていない方法ですが、紅茶の茶葉(アールグレイ)を生地に加えると香りが格段に豊かになります。牛乳を温めるときに茶葉小さじ1杯を加えて5分ほど浸出させ、こしてから生地に使います。焼き上がりに紅茶のやさしい香りが漂い、特別感のある一品に仕上がります。ティータイムのおもてなしにもぴったりです。
参考:基本のミルクレープレシピとアレンジのバリエーションが豊富に掲載されています。