焼肉屋さんで「ミスジ」と頼んだお肉が、実はカルビより約150kcal低い希少部位だったと知らずに損していませんか?
ミスジとは、牛の肩甲骨の内側にぴったりとくっついている「ウデ肉」の一部です。牛の「ウデ」とは、前足首から肩甲骨のあたりまでの広い範囲を指します。人間でいえば腕から肩の付け根あたりにあたる部分ですね。
その中でも、ミスジは肩甲骨の骨の内側・裏側に位置しており、隣り合う「トウガラシ」や「クリ(肩三角)」といった希少部位と合わせて、業界用語で「杓子(しゃくし)」と総称されています。
「肩・腕まわりってよく動くのでは?」と思われるかもしれません。それがポイントです。ウデ全体はよく動く部位ですが、肩甲骨の内側に貼りついているミスジは、その骨に守られるような形で大きな運動をほとんどしません。運動量が少ない筋肉ほど柔らかくなるため、ミスジは「ウデ肉の中では最も霜降りが多く柔らかい部位」として知られています。
つまり、ウデ肉の仲間なのに柔らかい、それがミスジの特別な理由です。
ちなみに英語では「Top Blade Muscle(トップ・ブレードマッスル)」または「Blade Steak(ブレードステーキ)」と呼ばれ、アメリカではコストコでも人気の定番ステーキ肉として流通しています。関西では形状から「ハゴイタ」という別名もあります。
牛の平均体重は約700kgで、そこから取れる精肉は約300kg程度。その中でミスジは片側(片腕)からわずか1〜1.5kgほど、両腕合わせても約2〜3kgしか取れません。300kgのうちの3kgですから、全体の約1%以下という計算になります。これが「希少部位」と呼ばれるゆえんです。
参考:ミスジを含む牛の部位構成について
東京都中央卸売市場「牛・豚の基礎知識 部位別の名称」
「ミスジ」という名前を聞くと、なんとなく「筋(すじ)」が関係しているのかな、と感じる方は鋭いです。漢字で書くと「三筋」となり、この部位の断面に3本の大きな筋が入っていることが名前の由来です。
断面を見ると、真ん中に1本のはっきりとした筋(中筋)があり、その上下にも筋があります。合計3本の筋で挟まれた形が、この「三筋=ミスジ」の名称の正体です。
スーパーや焼肉店で提供される際は、上下の2本の筋はあらかじめ取り除かれていることがほとんどです。真ん中の中筋だけが残った状態のものが、私たちが目にするミスジです。
この中筋、実はそこから葉脈のように左右へ細かい霜降り(サシ)が広がる構造になっています。葉っぱの葉脈のように美しいサシが入るのが和牛ミスジの大きな特徴であり、断面の見た目から「葉っぱのような形」と表現されることもあります。
中筋は硬いのでは?と思われがちですが、焼肉用の薄切りや適切な厚みのステーキ用ならほとんど気になりません。口当たりはむしろプルッとした食感のアクセントとして感じられるほどです。気になる場合は焼く前に中筋に沿って包丁を入れてカットすれば、食感が均一になります。
なお、ミスジの断面は細長い三角形〜葉っぱ形をしており、小さいほうの先端がより柔らかく霜降りが美しい部分です。スーパーの売り場でパックを比較するとき、大きいほうがお得に見えますが、小さいものほど良質なミスジである場合が多いです。覚えておくと得です。
「カルビとどう違うの?」という疑問は、ミスジについて調べる多くの方が持つ疑問です。大きな違いの一つはカロリーと脂質のバランスです。
以下で主な部位と比較してみましょう。
| 部位 | カロリー(100gあたり) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 🥩 ミスジ | 約201〜250kcal | 赤身と霜降りのバランスが良い |
| バラ(カルビ) | 約381kcal | 脂身が多く高カロリー |
| サーロイン | 約313kcal | ジューシーで霜降り豊富 |
| 肩ロース | 約295kcal | 赤身と脂のバランスが良い |
| ランプ | 約234kcal | 柔らかい赤身 |
| ヒレ | 約177kcal | 最も低カロリー・低脂質 |
カルビ(バラ肉)の約381kcalと比べると、ミスジは100gあたりで130〜180kcal近く低いことになります。これは意外な事実です。
ミスジはサシが入っているにもかかわらず、カルビのような「くどさ」をあまり感じません。その理由は脂肪の入り方の違いにあります。カルビは脂身そのものが大きな塊として入っているのに対し、ミスジは細かい霜降りとして赤身の繊維の間に分散しています。脂が細かく分散しているほど口当たりが柔らかくなり、後味も軽くなるのです。
つまり、ジューシーだけど後味がさっぱりしている、それがミスジです。
また、ミスジには糖質がほとんど含まれておらず(100gあたり約0.3g)、タンパク質も豊富に含まれています。牛肉に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれ、ほうれん草などの野菜に含まれる鉄分に比べて体への吸収率が2〜3倍高いとされています。貧血気味の女性にとっても、実は積極的に取りたい食材です。
ダイエット中でも、100g程度を目安に週1〜2回取り入れることは十分に可能です。気になる方は、揚げ物ではなく網焼きやしゃぶしゃぶで調理すると余分な脂が落ちてさらにヘルシーに食べられます。
最近ではスーパーでもミスジを見かける機会が増えてきました。せっかく買うなら美味しいものを選びたいところです。ここでは、売り場で役立つ具体的な選び方を紹介します。
まずチェックしたいのが「霜降りの入り方」です。中心の筋から左右に、葉脈のように細かい霜降りが広がっているものが良質なミスジです。白い脂肪がゴロッと塊で入っているものではなく、赤身の中に細かく分散しているかどうかを確認しましょう。
次に「筋の太さと肉のサイズ」です。パック内の肉が大きいほどお得に見えますが、ミスジは先端に向かうほど柔らかく霜降りが多い性質があります。なるべく小ぶりなものほど、質が良い部分が多い傾向にあります。筋が細くてまっすぐなものを選ぶのがポイントです。
「国産牛・和牛」と「輸入牛(アメリカ産など)」では、味も価格も大きく違います。この違いを知っておくと買い物で後悔しにくくなります。
和牛と輸入牛の価格差は、同じミスジでも4〜8倍以上になることがあります。おうち焼肉をちょっと贅沢に楽しみたいなら国産牛・和牛、ステーキや煮込み料理で食べるなら輸入牛でも十分美味しく仕上がります。
なお、色合いにも注目しましょう。赤身と霜降りの色がグラデーション状になっているものが美味しいと言われています。赤と白がくっきり分かれているものよりも、なじんでいるもののほうが肉質が均一でおすすめです。
スーパーでミスジを買ってきたものの「固くなった」「パサパサした」という経験はありませんか。ミスジが硬くなる最大の原因は「焼きすぎ」です。これさえ守れば大丈夫です。
【フライパンで焼くときの手順】
ミディアムレアが基本です。焼き色はついているが中はほんのりピンク色、これが一番美味しく食べられる状態です。
ミスジには、一般にあまり知られていない意外な活用法があります。それが「煮込み料理」です。真ん中の筋にはコラーゲンが豊富に含まれており、じっくり煮込むとゼラチン質に変化して、お肉全体がとろとろになります。ビーフシチューや赤ワイン煮込みにすると、筋が逆にとろみと旨みの源になるのです。
家庭での使い方を整理すると、薄切り(焼肉用)はそのままフライパンかホットプレートでさっと焼く焼肉スタイルが一番手軽です。厚切り(ステーキ用)は上の手順で焼けばお店の味に近づきます。塊肉が手に入ったときは、ローストビーフや煮込み料理に挑戦すると、コストパフォーマンスが高くなります。
肉の表面についた筋(白い膜状のもの)が気になる場合は、細い包丁を使って筋に沿ってそぎ取るとより食べやすくなります。ただし、スーパーで売られている薄切りのミスジはすでにトリミング済みのことがほとんどなので、特別な下処理は必要ありません。
参考:ミスジのスーパー向け焼き方と選び方
「スーパーのミスジが高級店の味に!フライパンで絶対失敗しない焼き方」