輸入レモンで作ったレモン塩は、皮の防カビ剤が塩に溶け出して毎日食べると健康リスクになることも。
NHKあさイチで2014年8月26日に放送され、一気に話題になったのが料理研究家・井澤由美子さんの「レモン塩」です。材料はレモン3個と粗塩500gだけというシンプルさにもかかわらず、完成すると肉・魚・野菜料理まで幅広く使える万能調味料に仕上がります。
実はこのレシピ、もともとモロッコの伝統調味料「プリザーブドレモン」にルーツがあります。現地では塩とレモンのみで作り、羊肉の煮込みやタジン鍋に欠かせない調味料として使われてきた歴史があります。それを日本の家庭料理向けにアレンジしたのが井澤さんのレモン塩です。
作り方の基本ステップは以下のとおりです。
- 下準備:保存容器(1リットル以上)を熱湯消毒してしっかり乾かす。容器内に水気が残っているとカビの原因になるため、ここは丁寧に行う。
- レモンの切り方:レモン3個のうち2個を1cm厚の輪切りに、残り1個を乱切りにする。切り方を変えることで、使うときに量の調節がしやすくなる。
- 層を重ねる:容器の底に粗塩を敷き、レモンと粗塩を交互に重ねていく。最後の層は塩で蓋をするようにする。
- 仕上げ:蓋をしてよく振り、まんべんなく塩が行き渡るようにする。その後は直射日光を避けた常温の冷暗所に置く。
つまり、手順そのものはとてもシンプルです。
1週間後には使い始めることができますが、1ヶ月ほど経つとレモンから水分がしっかり上がってきて、酸味も塩気もまろやかに変化します。これが「本当においしくなるタイミング」とも言われています。常温保存中は1日1回程度、容器を上下に振ってなじませるのがコツです。
【あさイチのレシピ】レモン塩・井澤由美子 - おさらいキッチン(基本の作り方の詳細レシピ)
レモン塩づくりで最もよくある失敗が「塩を減らしすぎてカビが生えた」というケースです。塩を少なくすればヘルシーになりそうと感じるかもしれませんが、これは大きな落とし穴です。
塩の量の基本はレモン重量の20%が目安とされています。レモン1個の重さはおよそ100〜160gほどで、はがきよりやや大きいサイズ感です。仮にレモン3個で合計360gあれば、必要な塩は約72g以上が最低ライン。あさイチのレシピでは粗塩500gとたっぷり使いますが、これは長期間の常温保存を前提にした設計です。塩が防腐剤の役割を果たしているため、分量を下回ると常温では保存できないこともあります。
| 塩の割合 | 仕上がりの特徴 | 保存場所 |
|---|---|---|
| 10% | まろやかな風味 | 冷蔵庫必須・1ヶ月程度 |
| 20% | バランスよく長持ち | 常温可・約1年 |
| 30%以上 | 梅干しのような長期保存型 | 常温・数年単位 |
次に大切なのがレモンの選び方です。レモン塩は皮ごと食べる調味料なので、ここは特に慎重に選ぶ必要があります。
輸入レモン(主にアメリカ・チリ産)は船で長期輸送される際にカビを防ぐため、ポストハーベスト農薬(収穫後農薬)が散布されています。代表的なものはイマザリル・TBZ(チアベンダゾール)・OPP(オルトフェニルフェノール)などです。埼玉県消費生活支援センターの実験では、流水でこすり洗いしても防カビ剤は30〜70%しか除去できないという結果が出ています。つまり、どれだけ洗っても完全には落とせないということです。
これが原則です。皮ごと漬け込む塩レモンには、ノーワックス・防カビ剤不使用の国産レモンを使うこと。スーパーでは11月〜4月頃に国産レモンが多く出回ります。広島県や愛媛県産の国産レモンはこの時期に旬を迎え、香りも豊かです。
輸入レモンと国産レモン。何が違う?どう洗う? - J-organic(防カビ剤の残留データと洗い方の詳細)
もし国産レモンが手に入らない場合、輸入レモンを使うなら熱湯に15分漬けて2回繰り返すと防カビ剤を最大96%除去できるというデータもあります。ただし果肉が傷む場合があるため、国産を選べるなら迷わずそちらを選ぶのがベストです。
レモン塩の味は、熟成期間によって大きく変わります。これが意外と知られていないポイントです。
1週間後は使い始めることができますが、この段階では塩気がまだ立っていて、レモンの皮にもやや硬さが残っています。酸味がはっきりしていてフレッシュ感があるのが特徴です。さっぱりとした風味を活かしたいドレッシングや浅漬けには、この時期のものが向いています。
1ヶ月後になると、レモンから水分が十分に上がり、塩と果汁が完全になじんだ状態になります。酸味と塩味がぐっとまろやかになり、皮の苦味も消えて食べやすくなります。これは塩がレモンの細胞を浸透させることで、ビタミンCや旨み成分が溶け出すためです。肉料理や煮込み料理に加えると、コクと奥行きが増します。これは使えそうです。
保存に関しては以下の点を守れば問題ありません。
- 常温保存期間中(未開封):直射日光を避けた冷暗所に置き、毎日1回上下に振る。
- 開封後:必ず冷蔵庫へ移す。清潔なスプーンで取り出すことが長持ちの条件です。
- 開封後の保存期間:冷蔵庫できちんと保存すれば1年〜2年は使い続けることができます。
1年以上たったものは、液体の部分(エッセンス)が特においしくなります。肉を漬け込む際にはこのエッセンスをもみ込むだけで、驚くほど柔らかくジューシーな仕上がりになります。レモンのクエン酸がタンパク質を分解してくれるからです。長く持つが条件です。
常温保存中にエッセンスに細かい気泡が出てくることがありますが、これは発酵が進んでいるサインです。その場合は蓋を開けてガスを抜いてから冷蔵庫に移しましょう。
レモン塩がここまで人気になった最大の理由は、その汎用性の高さにあります。和洋中を問わず、ほぼすべての料理に使えるというのは他の調味料にはなかなかない特徴です。
肉・魚料理への活用では、塩の代わりにレモン塩を使うだけで風味が格段にアップします。豚肉や鶏肉に下味としてもみ込むと、クエン酸の効果でお肉が柔らかく仕上がります。魚料理に使うと臭みが取れ、爽やかな香りが加わります。
あさイチで紹介された代表的なアレンジレシピをまとめると以下のとおりです。
- 🐔 レモンチキングリル:鶏もも肉にエッセンス(液体部分)をもみ込み、グリルで焼くだけ。しっとり柔らかく仕上がる。
- 🥗 レモン塩ドレッシング:レモン塩1/6個分+甘酒大さじ4+オリーブオイル大さじ1+レモン汁をシェイクするだけ。
- 🧈 レモン塩バター:バターにレモン塩を混ぜるだけで、香りのよい万能バターに。パンやステーキに添えるのがおすすめ。
- 🌶️ レモン胡椒:青唐辛子5本をすり鉢でつぶし、レモン塩の輪切り1枚を加えてさらにすり混ぜる。柚子胡椒の代わりに使える一品。
「レモン胡椒」は特に独自性が高く、市販の柚子胡椒と比べてよりフレッシュな酸味が楽しめます。冷蔵庫で2週間ほど保存でき、作りたては爽やかなフレッシュ感、時間が経つと熟成してまろやかな辛さになるという変化も楽しめます。
また少し意外な活用法として、バスソルトとして使う方法があります。レモンのビタミンCとクエン酸の効果で肌がなめらかになるとされており、余ったエッセンスを少量お風呂に入れるだけで手軽にできます。食べるだけにとどまらない活用法は、知っていると得するポイントです。
レモン塩が広く知られるようになった一方で、そこから発展した「レモン胡椒」はまだまだ知名度が低いのが現状です。しかし、実はこちらのほうが使い勝手の幅がさらに広いと感じる人も多く、作って損はないアレンジです。
レモン胡椒は、九州の郷土調味料である「柚子胡椒」のレモン版とイメージするとわかりやすいです。柚子胡椒は柚子の皮+青唐辛子+塩で作りますが、レモン胡椒はレモン塩+青唐辛子で作ります。
作り方のポイントは3つあります。
1. 青唐辛子(5本程度)はヘタと種を取り除き、すり鉢でよくすりつぶす。
2. そこにレモン塩の輪切り1枚(塩をぬぐったもの)を加えてさらにすり混ぜる。
3. なめらかなペースト状になれば完成。冷蔵庫で2週間保存できる。
これが基本です。
レモン胡椒の活用シーンは幅広く、焼き鳥・冷奴・餃子・鍋のつけだれなど、柚子胡椒を使う場面はほぼすべてレモン胡椒に置き換えることができます。柚子胡椒よりもレモンの酸味が強いため、脂っこい料理との相性が特によく、から揚げや焼き肉のタレとして使うと爽やかにさっぱりと食べられます。
さらに自分で育てた青唐辛子を使えば、辛さの調整も自由自在です。青唐辛子が手に入らない時期は、スーパーで販売されているハラペーニョや万願寺とうがらしで代用することもできます。その場合は辛味が穏やかになり、子どもでも食べやすいレモン風味のソースとして使えます。
| 比較項目 | レモン塩 | レモン胡椒 |
|---|---|---|
| 材料 | レモン+粗塩 | レモン塩+青唐辛子 |
| 保存期間 | 開封後1〜2年 | 冷蔵2週間 |
| 主な使い方 | 下味・調理用調味料全般 | 薬味・タレ・ちょい足し |
| 辛さ | なし | あり(調整可) |
レモン塩を一瓶作っておけば、そこからレモン胡椒、レモン塩ドレッシング、レモン塩バターと次々に派生させることができます。最初の仕込みさえ済ませれば、あとは毎日の料理の幅がどんどん広がるという意味で、「仕込みコスパ最大の保存食」と言えるかもしれません。レモン塩は万能が基本です。
塩レモンの作り方とアレンジレシピ - LIFE.net(スパイスレモン塩・ピクルスなど発展レシピも収録)