給食のサーモンチャウダーは、牛乳より豆乳で作ると子どもの野菜嫌いが4割減るという報告があります。
サーモンチャウダーは、全国の小中学校の給食献立に定期的に登場する人気メニューです。東京都清瀬市立第五中学校では「エビピラフ+サーモンチャウダー+わかめサラダ」という献立で提供され、練馬区立旭町小学校でも「ガーリックフランス+サーモンチャウダー」のセットとして登場しています。
チャウダーという名前は、フランス語の「大鍋・煮込み料理」を意味する言葉に由来します。アメリカに渡って広まった料理で、白いクリームスープ仕立てが「ニューイングランド風」、トマトベースが「マンハッタン風」、澄んだスープが「ロードアイランド風」と、地域によって異なります。給食で親しまれているのは、ニューイングランド風のクリームタイプです。
クラムチャウダー(あさり・ハマグリ使用)が有名ですが、鮭を使うとDHAやEPAが豊富に摂れることから、学校栄養士の間では「サーモンチャウダー」が選ばれる機会が増えています。つまり、給食で採用されるには栄養面の理由があるということです。
板橋区の学校給食レシピ(公式PDF)では、カナダの代表的食材「サーモン」を使った国際理解食育の一環として提供されており、料理を通じて食文化を学ぶ狙いもあることが紹介されています。
給食で人気が高い理由は、クリーミーで食べやすく、野菜や魚が苦手な子でも比較的口に入れやすい点にあります。いいことですね。子どもが「給食のあれ、また食べたい」と言い出すのも、自然なことと言えます。
参考:板橋区立学校 公式給食レシピ(サーモンチャウダー4人分・詳細手順掲載)
いたばし学校給食レシピ(板橋区教育委員会)
板橋区の公式給食レシピをベースに、4人分の材料と手順を整理します。家庭で再現するときの参考になります。
| 材料 | 分量(4人分) |
|---|---|
| 🐟 サーモン(1.5cm角切り) | 90g |
| 🥓 ベーコン(短冊切り) | 1枚(20g) |
| 🧄 にんにく(みじん切り) | 1/2かけ |
| 🥕 にんじん(1cm角切り) | 2/3本(100g) |
| 🥔 じゃがいも(1cm角切り) | 中2個(220g) |
| 🍄 しめじ | 約1/2袋(40g) |
| 🧅 玉ねぎ(1cm角切り) | 大1個(280g) |
| 🌾 小麦粉 | 大さじ2 |
| 🥛 牛乳 | 265ml(約1と1/3カップ) |
| 🫙 豆乳 | 65ml(約1/3カップ) |
| 💧 水(または鶏ガラスープ) | 1と1/2カップ程度 |
| 🧂 塩・こしょう・バター・油 | 各少々 |
| 🌿 パセリ(みじん切り) | 少々 |
作り方の手順
まずサーモンに白ワイン(または酒)を振り、フライパンに油小さじ1を熱してにんにく・ベーコン・にんじん・じゃがいも・しめじを炒めます。そこにサーモンを加えてさっと炒めておきます。
別の鍋に油大さじ1とバターを熱し、玉ねぎを火が通るまでじっくり炒めます。そこへ小麦粉を振り入れ、弱火でしっかり炒めてから、牛乳と豆乳を少しずつ加えてのばしていきます。
先に炒めておいたサーモン・野菜を加え、混ぜながら煮込みます。水(または鶏ガラスープ)でかたさを調整し、塩・こしょうで味を整えたら完成です。
水のかわりに鶏ガラスープを使うのが学校給食の本来の作り方です。
参考:クックパッド 栄養士のアリス「大人の給食☆米粉のサーモンチャウダー」
大人の給食 米粉のサーモンチャウダー by 栄養士のアリス(クックパッド)
サーモンが給食に使われるのは、味だけでなく栄養面に明確な理由があります。主に注目すべき成分は3つです。
① DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは脳の神経細胞の構成成分で、情報伝達をスムーズにする働きがあります。記憶力や集中力の維持に関わる成分であり、成長期の子どもに特に重要です。母乳にも含まれる成分で、子どもの脳の発達をサポートすることが研究でも確認されています。
② EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAは血液の流れを良くし、コレステロールや中性脂肪を下げる働きがあります。子どもの場合は冷え性や疲労感の軽減にも効果的とされ、成長期の活発な活動をサポートします。
③ アスタキサンチン
鮭の身が赤いのは「アスタキサンチン」という色素成分のためです。これは非常に強い抗酸化力を持ち、体内の細胞をダメージから守ります。ビタミンEの約1,000倍ともいわれる抗酸化力は、疲労回復・免疫力アップにつながります。
この抗酸化成分が豊富な天然食材は非常に少なく、サーモンは特別な存在です。
鮭にはさらに、骨を強くするビタミンD、良質なたんぱく質も豊富に含まれています。チャウダーにすることで牛乳のカルシウムも一緒に摂れるため、一皿でカルシウム×ビタミンDという「骨づくりの黄金コンビ」が完成します。これは使えそうです。
参考:鮭の栄養・子どもへの効果(トライアル マガジン)
鮭の栄養は健康・美容に効果的!おすすめの食べ方を紹介(トライアル)
家庭でサーモンチャウダーを作るとき、最も失敗しやすいのが「ダマができる」と「牛乳が分離する」の2点です。給食の調理現場でも気をつけているポイントなので、しっかり把握しておきましょう。
ダマを防ぐための基本
小麦粉がダマになる原因は、でんぷんの「糊化(こか)」が混ざりきる前に始まるからです。糊化は60℃前後から始まり80℃以上で急速に進むため、牛乳を加える前に小麦粉をバターや油でしっかり炒めることが鍵になります。よく炒めることで粉に油がコーティングされ、牛乳と均一に混ざりやすくなります。
牛乳は一気に加えるとダマになりやすいため、最初は少量ずつ加えて伸ばしながら混ぜるのが基本です。
牛乳が分離しないコツ
牛乳を加えたあとは、強火は禁物です。高温で一気に沸騰させると脂肪分が分離してしまいます。弱火でゆっくり温めながら混ぜるのが原則です。
温め直しの際も、沸騰させないことが条件です。
米粉を使う方法もある
小麦粉のかわりに米粉を使うと、ダマになりにくく扱いやすくなります。栄養士がクックパッドで公開している「大人の給食☆米粉のサーモンチャウダー」もこの方法を採用しており、「ダマになりにくく作りやすい」とコメントされています。グルテンが気になるご家庭にも向いています。
参考:ホワイトソースのダマ防止・温度の仕組み(日本経済新聞)
生のサーモン(鮭)は切り身1切れ(約100g)で200〜300円程度ですが、鮭の水煮缶は200g前後で120〜200円ほどで手に入ります。価格で見ると缶詰の方が経済的で、骨も処理済みのため調理時間も短縮できます。
鮭缶の大きな利点は「汁ごと使える」点です。缶の汁には鮭のうま味成分が溶け出しており、鶏ガラスープの代わりにもなります。捨てずに丸ごとスープに加えることで、コクが増します。
ただし、味の仕上がりには若干の違いがあります。生鮭を使った場合は食感がふんわりとして食べごたえがあり、給食のチャウダーにより近い質感になります。鮭缶はほぐれやすく、スープに溶け込みやすい点で「スープの一体感」が出やすい一方、食感のボリューム感は生鮭に劣ります。
給食に近い仕上がりを目指すなら「生鮭」が基本です。
一方で、忙しい平日の夕食や「今日は手間をかけたくない」という日の献立には、鮭缶+じゃがいも+玉ねぎ+牛乳のシンプル構成でも十分においしく仕上がります。冷蔵庫にストックできる缶詰は、1缶備えておくと重宝します。
スーパーやネット通販では「鮭水煮缶」が1缶あたり100〜180円前後で購入でき、6缶セットなどのまとめ買いがさらにお得です。子どもが風邪をひいた日やもう一品欲しいときのお助け食材として活躍します。
給食のサーモンチャウダーをそのまま再現するだけでなく、家庭ならではのアレンジを加えると、より食卓が豊かになります。給食で見られるレシピのバリエーションや家庭向けアレンジをまとめました。
① 豆乳置き換えで脂質オフ
牛乳の一部(約1/4程度)を豆乳に変えることで、コクを保ちながらカロリーを抑えられます。板橋区の給食レシピでも実際に牛乳+豆乳の組み合わせが採用されており、豆乳由来の植物性たんぱく質も追加できます。
② きのこをたっぷり加える
しめじ・しいたけ・エリンギなど、きのこを2〜3種類入れると食物繊維がアップし、うま味も増します。給食ではしめじが定番ですが、家庭では冷凍きのこミックスを使うと時短になります。
③ ほうれん草・ブロッコリーで彩りプラス
仕上げにほうれん草やブロッコリーを加えると、鉄分やビタミンCが補えます。加熱しすぎると色が悪くなるため、食べる直前に加えてさっと温める程度にするのがコツです。
④ パンと合わせる給食スタイル
清瀬市の給食例にあったように、エビピラフや黒砂糖パンなどと合わせると、より給食らしい献立になります。家庭では食パンをトーストするだけでも、子どもが「学校みたいだ!」と喜んでくれることがあります。
⑤ 翌日のリメイクはリゾット風に
残ったサーモンチャウダーにご飯を加えて煮込むと、クリームリゾット風になります。水分が飛んでもったりしたものは牛乳少々を足してのばすと元の状態に戻りやすくなります。食材を無駄にせず使い切れるのは主婦にとって助かる知識です。
給食のサーモンチャウダーは、一見シンプルに見えて、栄養バランス・食材の組み合わせ・調理の技術が詰まった一品です。学校栄養士が考えた献立をヒントに、家庭の食卓でも積極的に取り入れてみてください。