「減塩」と書いてある食品なら、特別用途食品と同じだと思っていませんか?
「低ナトリウム食品」という名称は、かつて特別用途食品の病者用食品の一区分として、国の許可制度のもとで存在していました。これは昭和27年に栄養改善法のもとで始まった制度で、高血圧・腎臓病・心臓病などでナトリウム摂取の制限を医師から指示された患者が使う食品として、厚生労働大臣の許可を必要としていました。
厚生労働省が公開している旧基準によれば、低ナトリウム食品として特別用途表示を受けるには、「通常の同種の食品のナトリウム含量の50%以下であること」が条件でした。しょうゆについては例外規定があり、製品100g中のナトリウム量が3,550mg(食塩として9g)以下とされていました。この数字はごく一部の専門家以外にはほとんど知られていない基準です。
ところが2009年(平成21年)の制度改正を機に、大きな変化が起きました。重要です。低ナトリウム食品・低カロリー食品・高たんぱく質食品などの許可基準型病者用食品は、「栄養強調表示の基準が既に定められていることから、特別用途食品の制度対象から外れる」方向に整理されたのです。
消費者庁の「特別用途食品制度の主な変遷について」(2023年)にも明確に記載されており、低ナトリウム食品はその後、一般食品の栄養強調表示(「低塩」「減塩」「塩分○%カット」など)で代替的に対応する形になっています。つまり現在では、特別用途食品の許可マークが付いた「低ナトリウム食品」は市場にほぼ流通していないのが実態です。
現在の特別用途食品の中で引き続き許可基準型として存在するのは、低たんぱく質食品・アレルゲン除去食品・無乳糖食品の3種類が中心となっています。
消費者庁「特別用途食品について」(最新情報・許可品目一覧あり)
スーパーの棚に並ぶ「減塩しょうゆ」や「塩分50%カット」といった商品と、特別用途食品の「病者用食品」は、まったく別の制度に基づいています。ここを混同している方がとても多いです。
特別用途食品として販売するには、消費者庁長官の個別の許可が必要です(健康増進法第43条第1項)。許可を受けた食品には専用の許可マーク(許可標章)が付けられ、パッケージの区分欄に「病者用食品」などと表示されます。さらに、低ナトリウム食品であれば「医師にナトリウム(食塩の)摂取量の制限を指示された場合に限り用いる旨」が必ず表示されます。これが条件です。
一方、スーパーやコンビニで手軽に買える「減塩」「低塩」「塩分ひかえめ」といった商品は、食品表示基準に基づく「栄養強調表示」に該当します。国の個別許可は不要で、一定の基準(例:100g当たりナトリウム120mg以下で「低塩」表示可)を満たせばメーカーが自主的に表示できます。
| 比較項目 | 特別用途食品(病者用) | 一般の栄養強調表示(減塩など) |
|---|---|---|
| 国の審査・許可 | 個別に消費者庁長官の許可が必要 | 不要(基準適合で自主表示) |
| 販売・流通方法 | 病院提携薬局・医師紹介による通販等 | スーパー・コンビニ等で一般販売 |
| 対象者 | 医師から食塩制限を指示された病者 | 健康維持・増進を希望する一般消費者 |
| パッケージ表示 | 許可マーク+「病者用食品」の区分表示 | 「減塩」「低塩」等の強調表示のみ |
この違いを知らずに「スーパーで買える減塩食品は特別用途食品と同じはず」と思い込んでいると、食事療法のレベルを誤解するリスクがあります。実際、特別用途食品の許可基準型病者用食品は、医師や管理栄養士の指導のもとで使用することが前提の食品です。意外ですね。
厚生労働省「病者用単一食品の許可基準・表示事項」(詳細な許可基準一覧)
塩分を気にしている主婦は多いものです。カリフォルニア・レーズン協会が30〜70代の主婦500名を対象に行った調査(2016年)によると、約75%が食事の塩分量を「いつも」または「時々」気にしていると回答しました。ところが、1日の食塩摂取目標量を正しく知っていたのはわずか全体の3.4%だったという結果が出ています。これは痛いですね。
では実際の目標量はどのくらいか。厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」では、成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満が目標です。高血圧の治療中の方は日本高血圧学会が1日6g未満を推奨しています。しかし令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査では、日本人の食塩摂取量の平均は9.8g(男性10.7g、女性9.1g)という結果が出ており、目標を大きく上回っています。
6gという数字が日常でどれくらいかを例えると、味噌汁(1杯あたり塩分約1.5〜2g)をおよそ3杯飲むだけで達してしまう量です。しょうゆを食卓でかけたり、漬物を食べたりすると、あっという間に超えてしまいます。
特別用途食品の低ナトリウム食品が必要となるのは、主に以下の疾患です。
- 高血圧:ナトリウム摂取が多いと血圧が上昇し、脳卒中・心臓病のリスクが高まる
- 腎臓疾患(慢性腎臓病など):腎機能低下でナトリウムを排出しにくくなる
- 心臓疾患(心不全など):塩分の過剰摂取がむくみや症状悪化につながる
医師から「ナトリウム制限」を指示されている家族がいる場合、スーパーで「減塩」と書かれた商品を選ぶだけでなく、主治医や管理栄養士に「どの程度の塩分制限が必要か」を確認することが最初のステップになります。一般の「減塩」食品は1日の食塩摂取目標が7〜8g程度の健康な人向けに設計されたものが多く、医師が指示する1日6g未満や4g未満の食事療法には対応しきれない場合があります。
国立循環器病研究センター「減塩食について」(疾患別の塩分制限の考え方)
食品パッケージの栄養成分表示を見るとき、「ナトリウム」と「食塩相当量」の違いを把握しているでしょうか。これを混同したまま食品を選んでいると、実際の塩分量を大幅に誤る可能性があります。知らないと損します。
2015年の食品表示基準の改正により、現在は加工食品に「食塩相当量」の表示が義務付けられています。以前は「ナトリウム量(mg)」のみが記載されていた商品も多く、消費者が自分で換算する必要がありました。その計算式は「食塩相当量(g) = ナトリウム量(mg) × 2.54 ÷ 1000」です。これが原則です。
つまり、ナトリウム量 800mg と表示されていた場合、食塩相当量は約2gになります。現在は食塩相当量が直接記載されているので計算不要ですが、輸入食品やラベルが古い食品では「Sodium(ナトリウム量)」表記のみのこともあります。この場合は上記の換算が必要になります。
家庭での低ナトリウム食品の選び方として実践しやすいポイントをまとめます。
- 「食塩相当量」の数値で選ぶ:1食あたり2g以下を目安にすると、1日6〜7g以内に収めやすい
- 「減塩」表示の定義を知る:食品100gあたりナトリウム低減量が120mg以上、かつ比較対象品より25%以上低減されていること(食品表示基準)
- 「低塩」表示の定義を知る:食品100gあたりナトリウム量が120mg以下のこと
- 調味料は1回使用量あたりで計算する:しょうゆ小さじ1杯(5ml)でおよそ食塩相当量0.9gほどになる
ラーメンのスープを全部飲むと1杯で食塩6〜8gになる場合があります。これは1日の目標量を一度に超えてしまう量です。外食や加工食品の比率が高い家庭では、特に注意が必要です。栄養成分表示を日々チェックする習慣が、もっとも手軽で効果的な対策になります。
日本高血圧学会「減塩食品の紹介(食塩含有量の少ない食品)」(具体的な基準と数値)
「減塩が必要なのは、高血圧の家族だけ」と思っていませんか。これは多くの主婦に共通する思い込みです。
滋賀医科大学の研究によると、家庭での食塩摂取量が多いと、その家族全員が将来の心臓病・脳卒中などの循環器病を発症しやすくなり、死亡リスクが高くなるという調査結果が2019年に報告されています。つまり、一人のための「治療食」として減塩食を作ると、家族全員の将来の健康リスク管理にも直結するわけです。これはいいことですね。
また、先述の調査では、減塩に取り組まない人の30.5%が「自分や家族に減塩が必要かどうかわからない」ことを理由として挙げていました。この「わからない」という状態が、実は最もリスクの高い状態です。高血圧は自覚症状がないまま進行する「サイレントキラー」とも呼ばれ、日本人の約3人に1人が罹患していると言われています。
家族全員で取り組む減塩の実践ポイントを以下に示します。
| 場面 | 実践ポイント |
|---|---|
| 調理 | だしをきかせて薄味に仕上げる、仕上げの塩・しょうゆは最後に少量だけかける |
| 買い物 | 食塩相当量の表示を確認し、1食あたり2g以下を目安に選ぶ |
| 外食 | ラーメン・定食のスープは残す、ドレッシングは別添えで少量にする |
| 子育て | 子どもの頃から薄味に慣れさせる(大人になってからの高血圧予防になる) |
なお、家族の食事管理で手軽に塩分量を把握したい場合は、消費者庁が推奨する「食品表示の読み方」に関する資料を活用するか、管理栄養士が在籍している保健センター・かかりつけ医への相談も有効です。一度管理栄養士に相談するだけで、家族全員向けの具体的な献立アドバイスを受けられます。
糖尿病ネットワーク「高血圧に家族ぐるみで対策する必要が」(滋賀医科大学研究の詳細)