糖尿病食事療法と食品交換表の正しい使い方と献立のコツ

糖尿病の食事療法に欠かせない食品交換表。1単位80kcalの仕組みや6つの表の分類、献立への活用法を主婦向けにわかりやすく解説します。野菜なら何でも食べていいって本当に正しいの?

糖尿病食事療法と食品交換表の基本から献立への活用まで

野菜は毎日どれだけ食べてもOKだと思っていたら、かぼちゃ90gがご飯と同じ1単位(80kcal)で血糖値を上げます。


この記事のポイント3つ
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食品交換表の仕組みを理解する

食品交換表は1単位=80kcalを基準に6つの表で食品を分類するツール。主治医から指示されたエネルギー量を単位に換算して毎日の献立に使います。

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野菜=自由に食べてよいは誤解

かぼちゃ・じゃがいも・れんこんは「表1」に分類される炭水化物の多い野菜です。ご飯と同じグループなので、食べすぎると血糖値が上がります。

🍽️
交換できるのは同じ表の中だけ

表1のご飯を表3の肉・魚と交換することはNGです。同じ表の中でだけ交換可能。この原則を守ることで栄養バランスが自然に整います。


糖尿病食事療法で食品交換表が必要な理由と役割


糖尿病の治療は「食事療法・運動療法・薬物療法」の3本柱で成り立っています。その中でも食事療法は、薬を使っている人も含め、すべての糖尿病患者さんが必ず取り組む基本中の基本です。


では、なぜ「食品交換表」というツールが必要なのでしょうか?


毎日の食事で「これは何kcal?」と一つひとつ計算するのは、専門知識がないと難しく、継続するのも大変です。そこで日本糖尿病学会が作成した「糖尿病食事療法のための食品交換表」を使うと、エネルギー計算を簡単に行いながら、栄養バランスの取れた献立を組み立てることができます。つまり「計算の手間を大幅に減らすためのツール」です。


食品交換表は1965年に初めて発刊され、現在は2013年に改訂された「第7版」が使われています。約60年の歴史があり、日本糖尿病学会が根拠に基づいて改定を重ねてきた信頼性の高いテキストです。


食事療法をしないまま薬だけに頼ると、血糖値のコントロールが乱れ、低血糖や高血糖を繰り返す原因になります。「食品交換表があれば食事管理が楽になる」という意識を持って、まず仕組みを理解することが大切です。


参考:食品交換表の分類や使い方の基本については日本糖尿病学会公式ページで確認できます。


糖尿病食事療法のための食品交換表|一般社団法人日本糖尿病学会


糖尿病食事療法の食品交換表・6つの表の分類と特徴

食品交換表の核心は、食品を「主に含まれる栄養素」によって6つのグループ(表)に分類している点です。意外ですが、この分類をきちんと理解していない方は多く、それが食事管理の失敗につながることがあります。


各表の分類を整理すると、以下のようになります。


| 分類 | 含まれる主な食品 | 主な栄養素 |
|------|-----------------|-----------|
| 表1 | ご飯・パン・麺・芋・炭水化物の多い野菜(かぼちゃ・れんこん・じゃがいも等) | 炭水化物 |
| 表2 | 果物全般 | 炭水化物(果糖)・ビタミン |
| 表3 | 肉・魚介類・卵・チーズ・大豆製品 | たんぱく質 |
| 表4 | 牛乳・乳製品(チーズを除く) | カルシウム・たんぱく質 |
| 表5 | 油脂・バター・ベーコン・豚バラ・ゴマ・ピーナッツ等 | 脂質 |
| 表6 | 野菜(炭水化物の多いものを除く)・海藻・きのこ・こんにゃく | ビタミン・ミネラル |


ここで特に注意が必要なのが「表1」に含まれる野菜です。


かぼちゃ・じゃがいも・れんこん・さつまいも・とうもろこしなどは、炭水化物(糖質)を多く含むため、表6ではなく表1に分類されます。これが原則です。つまり、これらの野菜はご飯やパンと同じグループで管理する必要があります。


かぼちゃ90gはご飯50g(小茶碗半杯分)と同じ1単位(80kcal)です。「野菜だから大丈夫」と思って煮物にたっぷり使うと、知らずに炭水化物の単位をオーバーしてしまいます。これは痛いですね。


一方、ほうれん草・小松菜・ブロッコリー・トマトなどは表6に分類され、1日300〜350gを目安に積極的に摂ることが推奨されています。食物繊維を含むため、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果も期待できます。


参考:食品の分類と栄養素の関係については大阪糖尿病食事ページが詳しいです。


食品交換表の紹介|糖尿病を予防・治療する食事(大阪糖尿病専門医監修)


糖尿病食事療法の1単位・指示エネルギーの計算方法と単位配分

食品交換表の基本単位は「1単位=80kcal」です。80kcalが基準になっているのは、日本人が日常的によく食べる量がちょうど80kcalかその倍数になっているからです。これが基本です。


まず自分の「1日の指示エネルギー量」を主治医から確認します。その数値を80で割ると、1日の単位数が出ます。


$$\text{1日の単位数} = \frac{\text{指示エネルギー量(kcal)}}{80}$$


たとえば指示エネルギーが1,600kcalなら「1,600÷80=20単位」です。これを朝・昼・夕の3食に振り分けて使います。


指示エネルギーの目安は、標準体重×身体活動量で求めます。


$$\text{標準体重(kg)} = \text{身長(m)} \times \text{身長(m)} \times 22$$


例えば身長160cmの方なら「1.6×1.6×22=約56kg」が標準体重です。身体活動量は主婦など軽い労作の場合は1kgあたり25〜30kcalが目安で、計算すると「56kg×28kcal=約1,568kcal」となります。これはあくまでも目安であり、実際の指示エネルギーは主治医に確認するのが原則です。


単位配分の具体例として、1日20単位(1,600kcal)の場合の配分表を示します。


| 表 | 1日の単位 | 朝食 | 昼食 | 夕食 | 間食 |
|---|-----------|-----|-----|-----|-----|
| 表1(主食) | 11単位 | 3 | 4 | 4 | — |
| 表2(果物) | 1単位 | — | — | — | 1 |
| 表3(肉魚卵) | 4単位 | 1 | 1.5 | 1.5 | — |
| 表4(牛乳) | 1.5単位 | 1.5 | — | — | — |
| 表5(油脂) | 1単位 | — | — | 1 | — |
| 表6(野菜) | 1単位 | 0.3 | 0.3 | 0.4 | — |
| 調味料 | 0.5単位 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | — |


表2・表4・表6・調味料は指示エネルギーが変わっても量がほぼ変わらないのが特徴です。単位の調整は主に表1(主食)と表3(おかず)で行うということですね。


参考:指示エネルギーの計算方法や単位配分については国立循環器病研究センターの情報が詳しいです。


食事療法について|国立循環器病研究センター


糖尿病食事療法の食品交換表を使った具体的な献立の立て方

単位配分の仕組みを理解したら、実際の献立を作ってみましょう。食品交換表の目的は「毎日続けられる食事療法」を実現することです。複雑に考えすぎず、4つのステップで進めるのがコツです。


ステップ1:主食(表1)の量を決める


ご飯なら1単位=50gです。食パン(6枚切り1枚)は60gで2単位に相当します。1日20単位・昼食に4単位割り当てた場合、ご飯200g(小茶碗2杯分)が目安になります。主食は「目で見ての判断」ではなく、最初はデジタルキッチンスケールで量る習慣をつけることが大切です。


ステップ2:主菜(表3)を選ぶ


肉・魚・卵・豆腐・大豆製品から選びます。鮭なら1単位=60gです。1.5単位なら90gになります。調理法はホイル焼き・蒸し物・煮物など、油を使わない方法を選ぶと表5の単位を節約できます。


ステップ3:副菜(表6)を組み合わせる


ほうれん草・キャベツ・玉ねぎ・わかめなどを組み合わせ、1食あたり野菜100g以上を目標にします。野菜を先に食べると食後血糖値の上昇が緩やかになる効果もあります。これは使えそうです。


ステップ4:調味料・油脂を確認する


1日の調味料上限は0.5単位です。砂糖4g(0.2単位)、味噌12g=みそ汁1杯分(0.3単位)でほぼ1日分に相当します。しょうゆ・塩・酢・こしょうはエネルギーをほぼ無視できますが、塩分の摂りすぎには引き続き注意が必要です。


外食が多い場合は、「600kcal以下の弁当を選ぶ」「幕の内弁当のような材料が多いものを選ぶ」「ラーメンや丼ものなど主食中心の一品料理は避ける」という3点だけ覚えておけばOKです。


糖尿病食事療法で見落としがちな果物・間食・アルコールの単位管理

食品交換表では果物・間食・アルコールの扱いで誤解が多く、これが血糖コントロールの乱れにつながることが少なくありません。


果物(表2)の落とし穴


「果物はビタミンが豊富だから体に良い」というイメージを持っている方は多いですが、糖尿病の食事療法では果物の量に明確な上限があります。1日に食べてよい果物は1単位(80kcal)が基本ラインです。


たとえばみかんなら2個分(200g)、バナナなら1本(100g程度)、りんごなら半個(150g)が1単位に相当します。果物1日1個だから安全と思っていても、大玉のりんごを丸ごと1個食べると2単位(160kcal)を超えてしまいます。しかも果物に含まれる果糖は中性脂肪として蓄積されやすい特性があるため、食べすぎると血糖値だけでなく肥満・脂質異常症のリスクも高まります。食べるタイミングは朝食後か昼食後が望ましく、夜の間食での果物は控えるのが原則です。


間食の正しい意味


食品交換表における「間食」は「お菓子を食べてもよい時間」ではありません。1日の指示単位の中で、果物(表2)や牛乳(表4)を食事の合間に配分して血糖値の急激な変動を避けるための仕組みです。コーラ500ml1本には砂糖が約50g含まれており、これは血糖値を一気に急上昇させます。スポーツ飲料(500ml)でも砂糖が約22g入っています。「ちょっと一杯」が積み重なると、毎日の単位管理が崩れていきます。


アルコールの注意点


アルコールはインスリンの作用を低下させる一方、薬を使用中の方は低血糖リスクも上がります。日本糖尿病学会は血糖コントロールが良好(HbA1c 6.5%以下)・肥満なし・合併症なし・薬なしなどの条件を満たす場合のみ、1日2単位(ビール350ml缶1本相当)まで許可しています。条件を1つでも満たさない場合は禁酒が原則です。アルコールは食品交換表の他の表との交換ができない点も重要です。


参考:果物の適量については下記で詳しく確認できます。


みんな大好き果物ですが…|桂川町(糖尿病管理栄養士監修資料)


糖尿病食事療法の食品交換表・主婦が陥りやすい5つのNG習慣と対策

食品交換表を正しく理解していても、日常の食習慣の中にはコントロールを崩す「落とし穴」が潜んでいます。主婦に多いNG習慣を具体的に紹介します。


NG①:野菜料理を「自由枠」と思って大量に使う


かぼちゃの煮物・肉じゃが・れんこんのきんぴら・とうもろこしなど、家庭料理でよく登場する野菜が実は表1に入っています。かぼちゃ90gはご飯50g(小茶碗半杯)と同じ1単位です。煮物1人前にかぼちゃ200〜250g使う場合、それだけで2〜3単位(160〜240kcal)になることがあります。野菜全般が自由に食べられるわけではない、これが原則です。


NG②:食べ残しがもったいないから全部食べる


家族の残りものをついつい食べてしまう。これは主婦の方に多いパターンです。1日の指示エネルギーを超える食事は、体重増加と血糖値悪化に直結します。盛り付けの段階で自分の分を別皿にとり分けて管理する習慣をつけると、食べすぎを防げます。


NG③:主食を極端に減らせば血糖値が下がると思っている


糖質制限が話題になって以降、「ご飯を抜けば血糖値は下がる」と思っている方がいますが、薬を使っている人が主食を急に大幅カットすると低血糖のリスクが生じます。また、炭水化物が不足するとたんぱく質・脂質が相対的に増え、腎機能や脂質代謝への悪影響が出る場合があります。日本糖尿病学会は炭水化物を総エネルギーの50〜60%の範囲で摂ることを推奨しています。食品交換表を無視して独自の糖質制限に走るのは、特に合併症のある方には危険ですね。


NG④:表が違うのに「同じカロリーだから交換できる」と思う


80kcal同士であっても、異なる表の食品は交換できません。たとえば表4の牛乳(180ml=1.5単位)が嫌いだからといって、表2の果物で補うことはできないのです。これは栄養素の種類(カルシウム・たんぱく質vs果糖・ビタミン)が異なるためです。同じ表の中でだけ交換可能、これだけ覚えておけばOKです。


NG⑤:早食い・まとめ食いで血糖値を急上昇させる


食事を始めてから満腹感を感じるまでには15〜20分かかります。早食いをすると満腹を感じる前に食べすぎてしまいます。また朝食を抜いて昼にまとめて食べる「ため食い」は、血糖値の急激なスパイクを招きます。1日3食・できるだけ同じ時間に食べることが、血糖値を安定させる大前提です。


食事管理をより手軽に続けたいなら、スマートフォンのアプリ「カロミル」や「あすけん」などのカロリー管理アプリも便利です。食品名を入力するだけで単位に換算できる機能を持つものもあり、外食時の単位確認にも役立ちます。主治医や管理栄養士の指導のもとで、ツールを活用しながら無理なく続けることが長期的な血糖コントロールの鍵になります。


参考:糖尿病の食事療法全般については糖尿病ネットワークのセミナー資料が参考になります。


食事療法のコツ(基礎)|糖尿病セミナー|糖尿病ネットワーク






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