スーパーでよく見かける日高昆布を使っても、だしのうまみは他の昆布の半分しか出ません。
湯豆腐のだしに使う昆布は、主に「真昆布」「利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」の4種類に分けられます。どれも北海道産ですが、産地によって風味やうまみの強さがまったく異なります。
スーパーの売り場を見てみると、陳列されている昆布のおよそ8割が日高昆布です。一見するとどれも似たような乾燥昆布ですが、だしを引いてみると差は歴然としています。
具体的にどう違うかというと、以下のような特徴があります。
日高昆布は手頃な価格で流通量も多いため、多くの家庭で使われています。しかし湯豆腐のように豆腐のうまみをシンプルに味わいたいときは、利尻昆布か真昆布を選ぶのが基本です。
昆布選びが違うだけで、同じ豆腐・同じ手順でも仕上がりに大きな差が出ます。これが条件です。
まず昆布を変えることから始めてみると、湯豆腐の印象がぐっと変わります。
参考:昆布の産地・種類について詳しく解説されているページです。
「昆布は沸騰前に取り出す」という話を聞いたことがある方も多いと思います。でも、なぜ沸騰させてはいけないのか、その理由まで知っている方は少ないのではないでしょうか。
理由はグルタミン酸の抽出温度にあります。
昆布のうまみ成分であるグルタミン酸は、60℃付近で最も多く溶け出すことが科学的に確認されています。そして80℃を超えると徐々に抽出されにくくなり、沸騰(100℃)に達するとアルギン酸やフコイダンといったぬめり成分、さらに苦みやえぐみの原因物質まで一緒に溶け出してしまいます。つまり、頑張って煮れば煮るほどだしが濁り、味が落ちるというわけです。
これは意外ですね。
正しい手順はシンプルで、以下の3ステップです。
「弱火でゆっくり」というのが鉄則です。
時間がない場合は、前日の夜に水と昆布を鍋に入れて冷蔵庫で水出しするのも有効です。水出しでも十分なグルタミン酸が溶け出し、すっきりした風味のだしになります。料亭の一番だしほどの複雑さはありませんが、毎日の夕食には十分なクオリティです。
水300mlに対して昆布3〜5g(はがきの横幅くらいの長さが目安)が基本の分量として覚えておくと便利です。
参考:昆布を沸騰させない理由を科学的に解説しているページです。
出汁を沸騰させない理由・させる理由 | 和食の旨み(小林食品研究所)
昆布からだしを引くのが理想ですが、毎日の夕食準備で時間がないときもあります。そういう場面では市販のだし素材を上手に使うことで、大幅に手間を省けます。
代表的な代用品の使い方をまとめると次のとおりです。
これは使えそうです。
ただし、めんつゆや白だしには塩分が含まれているため、入れすぎると豆腐のやさしい風味が消えてしまいます。最初は少なめに入れ、味を見ながら調整するのが失敗しないコツです。
また、白だしと水出し昆布を組み合わせると、昆布のグルタミン酸と白だしのうまみが合わさり、シンプルな顆粒だし単体よりも奥行きのある味になります。忙しい日の湯豆腐をワンランクアップさせたいときにおすすめの方法です。
参考:白だし・顆粒だしを使った湯豆腐の作り方が動画付きで解説されています。
手軽で便利!出汁湯豆腐のレシピ動画・作り方 | デリッシュキッチン
湯豆腐を作っていて、豆腐の内部がスポンジ状にブツブツと穴だらけになった経験はないでしょうか。これを「す(鬆)が入る」と言います。一度すが入ると、豆腐本来のなめらかな食感は完全に失われます。
痛いですね。
すが入る原因は温度にあります。豆腐は約9割が水でできており、100℃を超えると内部の水分が気化して膨張し、豆腐を内側から押し広げます。その結果、無数の小さな穴が開き、たんぱく質が凝固してそのまま固まってしまいます。
これを防ぐための具体的なポイントは3つです。
沸騰に注意すれば大丈夫です。
豆腐の種類については、絹ごし豆腐はなめらかさを楽しみたい場合に向いており、崩れにくさを求めるなら木綿豆腐が適しています。湯豆腐の場合、鍋の中で長時間保温することが多いため、木綿豆腐の方が形を保ちやすいというメリットもあります。
なお、切り方も大切です。豆腐を手のひらの上で切ろうとすると絹ごし豆腐は崩れがちになります。まな板の上にふきんまたはペーパータオルを敷いてから豆腐を置き、丁寧に包丁を入れると崩れにくくなります。
参考:豆腐にすが入る原因と防ぎ方をわかりやすく解説しています。
昆布だしで豆腐をただ温めるだけでなく、食用重曹をひとつまみ加えることで、湯豆腐がまったく別の料理に生まれ変わります。これは佐賀県の嬉野温泉名物「温泉湯豆腐」から着想を得た方法です。
嬉野温泉はナトリウムイオンを多く含む「重曹泉」と呼ばれる泉質です。この弱アルカリ性のお湯が豆腐のたんぱく質を分解し、とろとろに溶かしてしまうのです。そして、その原理を家庭で再現できるのが食用重曹というわけです。
つまり、温泉の再現です。
具体的な作り方は次のとおりです。
重曹を加えると、加熱中に炭酸ナトリウムに変化し、強アルカリ(pH11程度)の性質が豆腐のたんぱく質を分解します。その結果、豆腐がとろけるように柔らかくなり、汁自体も豆乳のような白濁したスープになります。油揚げを一緒に入れると、湯葉のようなとろとろ食感になるのも特徴です。
食用重曹はベーキングパウダーの原料としてスーパーの製菓コーナーで手軽に入手できます。1袋100〜200円程度で、少量しか使わないので経済的です。ただし「食用」表示があるものを選ぶようにしてください。
この方法で作ったとろとろ湯豆腐にポン酢をかけると、まろやかな酸味と豆腐の甘みが絶妙にマッチします。薬味は刻みネギと柚子胡椒がとくによく合います。
いつもの湯豆腐に飽きてきたときの気分転換として、ぜひ一度試してみてください。
参考:重曹を使ったとろとろ湯豆腐のレシピと仕組みが詳しく紹介されています。
ほっとあたたまる 重曹でトロトロ湯豆腐のレシピ動画・作り方 | デリッシュキッチン