生のまま炒めると、尿路結石になるリスクが上がります。
「オーガニックだから安心」と思い、有機ほうれん草を生のまま炒めたり、洗っただけでサラダに入れたりしている方は少なくありません。しかし、有機栽培かどうかに関係なく、ほうれん草には「シュウ酸」と呼ばれる成分が豊富に含まれています。これが、生食を避けるべき最大の理由です。
シュウ酸とは、植物が虫や動物から身を守るために作り出す防御物質の一種です。生のほうれん草100gあたり、シュウ酸は約600〜970mgも含まれています。これを体内に取り込むと、カルシウムと結びついて「シュウ酸カルシウム」という結晶を形成します。この結晶が腎臓や尿路に蓄積すると、尿路結石を引き起こすリスクが高まります。健康診断では異常なしでも、じわじわとダメージが蓄積されるのが怖いところです。
尿路結石は「人生三大激痛」のひとつとも言われます。腰から脇腹にかけての激しい痛みで救急搬送されるケースも多く、決して他人事ではありません。しかも、ほうれん草を含む食事から発症した尿路結石の約8割がシュウ酸カルシウム結石だというデータもあります。
つまりシュウ酸の問題です。
では、「生炒め」はどうでしょうか。フライパンで直接炒めるだけでは、シュウ酸はほとんど除去されません。なぜなら、シュウ酸は「水溶性」の物質で、お湯の中に溶け出す性質を持っているからです。炒めるだけでは水分が不足し、シュウ酸は野菜の中に残ったままになります。
結論はシンプルです。有機ほうれん草であっても、生のまま食べる・炒めるのは避けるのが基本です。
参考:シュウ酸と尿路結石のリスクについての詳細はこちら
ホウレン草(シュウ酸)と尿路系結石 – ふたばクリニック
シュウ酸のリスクを大幅に下げるには、「茹でこぼし」が最も効果的な方法です。正しい手順を一度覚えてしまえば、毎回迷わずに済みます。
まず、生の有機ほうれん草を流水でしっかり洗います。根元の泥が残りやすいので、根に十字の切り込みを入れてから水の中で振り洗いすると効果的です。次に、大きめの鍋にたっぷりの湯(目安は2L以上)を沸かし、塩を小さじ1杯ほど加えます。根元を先に30秒ほど湯に浸けてから、全体を沈めて1〜2分茹でます。茹でたらすぐに冷水に1〜2分さらし、水気をしっかり絞れば完了です。
この「茹でこぼし」により、シュウ酸を約37〜72%除去できるとされています。研究機関のデータでは、100℃で120秒茹でることでシュウ酸の除去率が最大72%に達することも確認されています。3分以上茹でると除去率はさらに高まりますが、同時に栄養素も流れ出しやすくなるためバランスが大切です。
時間がない日には、電子レンジを活用する方法もあります。1cm幅に切った有機ほうれん草を600Wで2分加熱した実験で、58%のシュウ酸が除去されたとするデータもあります(出典:ピエトロラジオ)。ただし、レンジ加熱だけではシュウ酸除去が不完全なため、加熱後に必ず冷水にさらす工程が必要です。
これは使えそうです。
また、有機ほうれん草が生食できる品種「サラダほうれん草」とは別物であることも確認しておきましょう。サラダほうれん草は生食向けに品種改良された品種で、シュウ酸が少なく茎が細くて柔らかいのが特徴です。スーパーでパッケージに「サラダ用」と書いてあれば、生のまま食べられます。それ以外の有機ほうれん草はすべてアク抜き必須だと思ってください。
アク抜きが基本です。
参考:農研機構によるシュウ酸除去の最適条件に関する研究
ルテイン含量の保持とシュウ酸除去のバランスを考慮した調理条件 – 農研機構
有機ほうれん草を大量に購入したとき、使い切れずに傷ませてしまうのはもったいないですね。冷凍保存をうまく活用すれば、鮮度を保ちながら最長1か月ほど使い続けられます。ただし、冷凍の仕方によって品質に大きな差が出ます。
生のまま冷凍する場合は、まず流水でしっかり洗い、水気をキッチンペーパーで拭き取ります。3〜4cm幅にカットして、冷凍用保存袋に平らに並べて空気をしっかり抜いて密封するだけです。凍ったままスープや炒め物に加えられるため、使い勝手がよいのがメリットです。保存期間の目安は約2〜3週間です。
ただし、生のまま冷凍した場合はシュウ酸が残った状態です。使うときは必ず加熱+水さらしの工程を入れることを忘れないようにしましょう。
一方、下茹でしてから冷凍すると、保存期間が約1か月まで延び、シュウ酸も除去できて一石二鳥です。水気をしっかり絞ってから1〜2食分ずつラップで小分けにし、保存袋に入れて冷凍します。凍ったまま味噌汁に入れたり、解凍してお浸しにするだけで簡単に使えます。
冷蔵保存の場合は3〜4日が限界です。有機ほうれん草は乾燥に弱いため、湿らせたキッチンペーパーに包んでからポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で「立てて」保存するのがコツです。横に倒すと傷みやすくなります。
保存方法のポイントは乾燥防止です。
まとめると、買ったらその日か翌日中に下茹でして冷凍するのがベストな選択です。忙しい主婦にとって、週末にまとめて下処理しておくと平日の調理がぐっとラクになります。週に1度の「まとめ下茹で」習慣を試してみてください。
有機ほうれん草は、緑黄色野菜の中でも特に栄養価が高い野菜のひとつです。主な栄養成分には、βカロテン、ビタミンK、葉酸、鉄分、カリウム、ビタミンCなどが含まれます。特に鉄分と葉酸は貧血予防に欠かせない成分で、妊娠中や授乳中の方にも積極的に摂ってほしい栄養素です。
注目したいのが、旬の時期による栄養価の変化です。冬に採れたほうれん草のビタミンCは100gあたり約60mgですが、夏に採れたものはわずか20mgと、約3倍もの差があります(日本食品標準成分表2020年版八訂より)。旬の冬に有機ほうれん草を積極的に食べるだけで、自然と栄養摂取量が大幅に上がるということです。
いいことですね。
ただし、茹でるとビタミンCは生の状態の約半分(100gあたり19mg)に減ってしまいます。これはビタミンCが水溶性で、茹で湯に溶け出してしまうためです。βカロテンや鉄分、葉酸なども同様に茹でることで若干の損失が生じます。「栄養をできるだけ守りたい」という場合は、電子レンジ加熱が有効です。水に浸けずに加熱できるため、水溶性ビタミンの損失を最小限に抑えられます。
新鮮な有機ほうれん草の選び方も覚えておきましょう。
- 葉の色が濃い緑でツヤがあり、しなびていないものを選ぶ
- 茎が適度に太くハリがあり、折れにくいものが新鮮
- 根元の赤みが鮮やかなものは、ミネラルが豊富で甘みが強い傾向がある
- 葉が密集しているもの、束としてボリュームがあるものを選ぶ
有機ほうれん草は、農薬や化学肥料を使わずに育てられており、有機JAS認証を受けた農産物です。栄養成分そのものは通常栽培のほうれん草と大きな差はないとされていますが、除草剤・殺虫剤などの化学物質の残留リスクが低い点が安心感につながります。生で使う場面が多い家庭ほど、有機栽培を選ぶメリットは大きいといえます。
旬のものを選ぶのが条件です。
参考:農林水産省による冬野菜の栄養についての解説
冬に旬を迎える野菜って? – 農林水産省
アク抜きを徹底することが大前提ですが、実はもうひとつ「カルシウムとの同時摂取」という強力な予防策があります。これはシュウ酸の吸収を腸内で抑える方法で、栄養学的に注目されている考え方です。
シュウ酸は、体内でカルシウムと結合すると「シュウ酸カルシウム」という形になります。これが腎臓や尿路に蓄積すると結石の原因になるのですが、この結合が「腸の中」で起きれば話は変わります。腸内でシュウ酸とカルシウムが先に結合してしまうと、そのまま便として排泄されるため、血液中にシュウ酸が吸収される量が減るのです。
意外ですね。
具体的には、ほうれん草を使った料理にカルシウムを多く含む食材を合わせることがポイントです。例えば、豆腐や牛乳・チーズを使ったグラタン、小魚入りのごま和えなどが挙げられます。牛乳コップ1杯(約200ml)でカルシウムが約220mg摂れるため、ほうれん草のシチューや牛乳でのばしたスープにするのも実用的です。
1日に必要なカルシウムは成人女性で650〜700mg程度とされています。ほうれん草を食べる食事には意識的にカルシウム食材を加えるようにすると、シュウ酸の吸収リスクが自然と下がります。
ただし、注意点があります。カルシウムをサプリメントで補う場合は、必ず食事中に一緒に摂ること。空腹時にカルシウムサプリを飲んでも、腸内でシュウ酸と出会う機会がなく、この予防効果は期待できません。食事と一緒に摂るのが条件です。
また、ほうれん草と一緒に避けてほしい食べ合わせもあります。ベーコンとの組み合わせは代表的な例です。ほうれん草に含まれる硝酸が体内で亜硝酸に変化し、ベーコンのタンパク質分解物と反応することで、発がん性物質が産生されるリスクが指摘されています。これはシュウ酸とは別の問題ですが、知っておいて損はない情報です。
ほうれん草の炒め物にベーコンをよく使う方は、豚こま肉や鶏胸肉への置き換えを検討してみましょう。有機ほうれん草の栄養を安心して活かすために、食べ合わせの工夫まで意識できると完璧です。
参考:シュウ酸とカルシウムの関係・食品との上手な組み合わせ方
シュウ酸と食品の関係:腎臓結石予防のための実践ガイド – 本田内科クリニック