発がん性物質一覧と含まれる食品や対策方法

日常的に摂取している食品の中には、発がん性が懸念される物質が含まれているものがあります。国際がん研究機関(IARC)の分類や各物質の特徴を知ることで、がんリスクを下げることはできるのでしょうか?

発がん性物質一覧と分類

発がん性物質の分類と特徴
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グループ1(発がん性がある)

ヒトにおいて発がん性の十分な根拠がある物質。120種類が確認されており、アスベスト、ベンゼン、カドミウム、加工肉、アルコールなどが該当します。

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グループ2A(おそらく発がん性がある)

動物実験で発がん性が証明され、人への証拠も限定的ながら存在する物質。81種類が確認されており、赤肉、アクリルアミド、65℃以上の熱い飲料などが該当します。

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グループ2B(発がん性の可能性がある)

発がん性の証拠が限定的な物質。311種類が確認されており、漬物、ワラビ、鉛、クロロホルムなどが該当します。

世界保健機関(WHO)の一機関である国際がん研究機関(IARC)は、発がん性物質を人に対する発がんリスクの可能性に応じて4段階に分類しています。最も注意が必要なのはグループ1に分類される物質で、ヒトにおいて発がん性の十分な根拠が確認されています。
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発がん性物質には遺伝毒性発がん物質と非遺伝毒性発がん物質の2種類が存在します。遺伝毒性発がん物質はDNAに直接結合して遺伝子の突然変異を起こすもので、その疑いがある場合は使用が禁止されています。一方、非遺伝毒性発がん物質はがん細胞の増殖を促進する物質で、食品での使用が認められているものもあります。
参考)発がん物質と食品について

国際がん研究機関による分類は、物質の発がん性の強さや暴露量に基づくリスクの大きさとは無関係であり、あくまで科学的証拠の確実性を示すものです。そのため、グループ1に分類されているからといって必ずしも高リスクというわけではなく、摂取量や暴露頻度も重要な要素となります。
参考)がんから身体を守るための基礎知識〜発がん性物質を知ろう〜

発がん性物質一覧グループ1の食品

グループ1には、ヒトに対して発がん性が明確に証明されている120種類の物質が含まれています。食品関連では、ハム・ソーセージ・ベーコンといった加工肉がニトロソアミン、硝酸塩、亜硝酸塩により発がん性があるとされています。これらの加工肉は大腸がんのリスクを高めることが知られており、できる限り摂取を控えることが推奨されます。
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ビール・ワイン・蒸留酒などのアルコール飲料もグループ1に分類されており、アセトアルデヒドが発がん性の原因となります。過度の飲酒は食道がん、口腔がん、肝臓がん、乳がんなどのリスクを上昇させるため、適量を守ることが重要です。​
カビの生えた穀物やナッツに含まれるアフラトキシンB1は、天然物の中で最も強い発がん物質として知られています。日本国内で生産された食品からの検出例はありませんが、輸入品では注意が必要です。高温調理された肉類に含まれるヘテロサイクリックアミン(HCA)や多環芳香族炭化水素(PAH)も、グループ1の発がん性物質です。
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発がん性物質一覧グループ2Aの食品

グループ2Aには、動物実験で確実な発がん性が証明されているものの、人に関しては限られた証拠しかない81種類の物質が分類されています。牛・豚・羊などの赤肉は、ヘム鉄やヘテロサイクリックアミン(HCA)により発がん性があるとされ、1週間で500g以内に抑えることが推奨されます。​
ポテトチップスやフライドポテトなどの高温で揚げられた食品に含まれるアクリルアミドも、グループ2Aに分類されています。アクリルアミドは炭水化物を多く含む食品を120℃以上の高温で加熱した際に生成され、じゃがいもを常温保存する、水にさらすなどの対策で低減できます。
参考)Vol.137(2) 特集「加熱時に生じるアクリルアミドの食…

お茶やコーヒーなど65℃を超える温度で摂取される飲料全般も、熱による物理的な損傷により食道がんのリスクを高めるとされています。飲食物は適温まで冷ましてから摂取することで、このリスクを避けられます。
参考)がんの予防と食事

発がん性物質一覧グループ2Bの食品

グループ2Bには、発がん性がある可能性があるとみなされている311種類の物質が分類されています。ピクルスや漬物といった発酵食品は、高塩分やカビ毒により発がん性の可能性があるとされています。塩分摂取量は1日あたり男性7.5g未満、女性6.5g未満を目安にすることが推奨されます。
参考)国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価方法

ワラビに含まれるプタキロサイドも、グループ2Bに分類される発がん性物質です。日本では伝統的な食材として知られていますが、適切な下処理を行うことで毒性を低減できます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5919061/

アロエ抽出物の一部にも発がん性の可能性が指摘されています。これらの食品は完全に避ける必要はありませんが、過剰摂取は控え、バランスの良い食事を心がけることが大切です。​

発がん性物質一覧に含まれる添加物の種類

食品添加物の中にも発がん性が懸念されるものがあります。亜硝酸ナトリウムは発色剤として使用され、ハム、ベーコン、ウインナー、たらこ、明太子などに含まれています。亜硝酸ナトリウム自体に発がん性はありませんが、肉や魚卵に含まれるアミン類と反応してニトロソアミン類を生成し、これがグループ2Aの発がん性物質となります。​
人工甘味料のアスパルテームは、砂糖の約200倍の甘さを持ち、低カロリー飲料、ゼリー、チューインガム、チョコレートなどに使用されています。2023年にIARCによってグループ2Bに分類されましたが、通常の摂取量であれば発がんリスクは低いとされています。​
赤色3号、赤色102号、青色1号などのタール色素は合成着色料として使用され、福神漬け、紅しょうが、お菓子類、かまぼこ、ジュース類などに含まれています。すべてのタール色素に発がん性があるわけではありませんが、動物実験などから一部には懸念があります。​

発がん性物質一覧から見る独自の健康管理法

発がん性物質への暴露を完全に避けることは不可能ですが、日常生活での工夫により摂取量を減らすことは可能です。調理方法の工夫として、肉や魚を必要以上に長時間加熱しない、高温で加熱しないことでヘテロサイクリックアミンやアクリルアミドの生成を抑えられます。​
じゃがいもを常温で保存し、切った後に水でさらすことで、アクリルアミドの原因となる還元糖やアスパラギンを減らせます。実際に、事業者の努力により市販のポテトチップスのアクリルアミド濃度は2006〜07年度と2017〜18年度を比較すると、平均値が1.1mg/kgから0.53mg/kgへと約半分に減少しています。
参考)第5回 アクリルアミドともやし炒め〜リスク評価のその後は?

発がん性物質によって最もがん化が起こりやすいのは肺で、次に鼻腔や喉頭といった頭頸部、膀胱にも発症しやすいとされています。これは発がん性物質が皮膚や口と接触することで体内に吸収されるためで、接触しやすい部位ほどがん化リスクが高まります。そのため、喫煙や受動喫煙を避けることは、グループ1に分類される発がん性物質への直接的な暴露を減らす最も効果的な方法の一つです。​
バランスの良い食事を心がけ、野菜や果物を1日あたり野菜350g、果物50g、合わせて400gを目安に摂取することで、ビタミンA、ビタミンC、カロテン、葉酸、食物繊維、ミネラルなどがんを予防する栄養素を十分に取り入れられます。単一の食材に偏らず、多様な食品から栄養素をまんべんなく摂取することが、がん予防には最も重要です。​
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