亜硝酸ナトリウムは、ハムやソーセージなどの食肉加工品に広く使われている食品添加物です。化学式はNaNO₂で、主に発色剤としての役割を担っています。食品に含まれる色素と結合することで、食品本来の色を保ち、新鮮な見た目を消費者に提供します。
この添加物には単なる見た目の改善以上の機能があります。ボツリヌス菌という非常に危険な食中毒菌の増殖を強力に抑制する作用があり、これが亜硝酸ナトリウムが食肉製品に必須とされている理由の一つです。また、肉に含まれるたんぱく質と反応することで、加工肉特有の深い風味を生み出す効果もあります。
添加物というと負のイメージを持つ方も多いかもしれませんが、亜硝酸ナトリウムは食品衛生法で厳格に使用基準が定められており、一日摂取許容量(ADI)は「0.06㎎以下×体重(kg)/日」と設定されています。
食品衛生法では、亜硝酸ナトリウムの使用が認められている食品を明確に限定しています。以下の食品が該当します。
食肉製品
魚肉製品
魚卵製品
これら以外の食品への使用は禁止されており、もし見つけた場合は違法添加です。特に学校給食やお弁当に用いられるハムやウインナーにはほぼ確実に含まれていると考えられます。親御さんが子どもの食事管理をするうえでは、これらの食品がどのような目的で添加されているのかを理解することが重要です。
亜硝酸ナトリウムの安全性については、国際機関による複数の評価があります。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は1995年と2002年に安全評価を行い、「亜硝酸ナトリウムの摂取と発がんリスクとの間に関連はない」と報告しています。
日本の厚生労働省も、亜硝酸ナトリウムを指定添加物として認可し、食品衛生法により使用基準を厳格に定めています。ハムやソーセージなどの食肉製品には1kg当たり最大70㎎までの使用が許可されていますが、実際の製造現場ではこれより低い濃度で添加されています。
一方で、国際がん研究機関(IARC)は亜硝酸塩を「グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類しています。しかし重要なポイントとして、野菜などの天然食材に含まれる亜硝酸塩の量は、食品添加物として使用される量よりもはるかに多いという事実があります。野菜に含まれる硝酸塩は体内で亜硝酸塩に変化するため、むしろ日常的に摂取する亜硝酸塩の大部分は食品添加物ではなく野菜から由来しているのです。
亜硝酸ナトリウムの摂取をできるだけ少なくしたいと考えるご家庭は、調理方法で対応できます。特に効果的なのが加熱処理です。
国内の研究論文によると、ハムを熱湯で加熱するだけで亜硝酸ナトリウムが著しく減少することが報告されています。具体的には、スライスハムであれば20~30秒間の加熱で約40%の減少が期待でき、厚切りハムの場合は1分程度の加熱が目安です。
実際の調理法としては、朝食前にハムを軽く下茹でしてから使用する、スープやみそ汁に入れる前に加熱するなどの方法が考えられます。この方法により、栄養価や風味をほぼ損なわずに亜硝酸ナトリウムの摂取量を削減できるという利点があります。
ただし完全に除去することはできないため、特に幼い子どもがいるご家庭では以下の「無塩せき商品の選択」という選択肢も並行して検討する価値があります。
亜硝酸ナトリウムの摂取を最小化したい場合、最も確実な方法は「無塩せき」と表示された商品を選ぶことです。これらの商品には亜硝酸ナトリウムをはじめとした発色剤が一切使用されていません。
無塩せき商品の見た目は、発色剤を使用した一般的なハムやソーセージとは異なります。色が比較的薄く、やや自然な肉の色に近いのが特徴です。また、保存性が劣るため、消費期限が通常商品より短く設定されていることが多いです。このため販売価格も若干高めになる傾向にあります。
パッケージの原材料表示をよく確認することが重要です。「無塩せき」と表示されていても、他の食品添加物が含まれている場合があるためです。塩、砂糖、香辛料程度に限定された商品を選ぶと、より安全性が高まります。
国産ブランド豚を使用した無塩せき商品も増えており、食の安全性と質に両立したハムやウインナーを選択することも可能になってきました。これらは食卓で使用する際に、特に幼い子どもや妊婦さんがいるご家庭で選ばれることが増えています。
参考リンク:亜硝酸ナトリウムの安全性について、厚生労働省による摂取量実態調査結果が掲載されています。
厚生労働省 食品添加物の摂取量実態調査
参考リンク:野菜に含まれる亜硝酸塩とニトロソアミン類の関連性について、農林水産省のリスク分析情報が参考になります。
農林水産省 ニトロソアミン類リスク分析
これで必要な情報が十分に収集できました。記事を作成します。