赤レンズ豆を茹でると、鉄分の吸収率がむしろ下がってしまいます。
赤レンズ豆は、正式名称を「ヒラマメ(扁豆)」といい、マメ科ヒラマメ属の植物の実です。皮をむいて半割りにしたものが「赤レンズ豆(レッドレンティル)」として市販されています。形がカメラの凸レンズに似ていることから「レンズ豆」と呼ばれると思われがちですが、実際は逆で、光学レンズのほうがレンズ豆に形が似ているとして名づけられたのだそうです。これは意外ですね。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、赤レンズ豆(全粒・乾燥)100gあたりの主な栄養素は以下のとおりです。
| 栄養素 | 赤レンズ豆(乾燥100g) | 比較対象 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 23.2g | 大豆:約34g(脂質は大豆の約1/13) |
| 鉄分 | 9.0mg | ほうれん草(生):2.0mg → 約4.5倍 |
| 食物繊維 | 16.7g(水溶性1g+不溶性15.7g) | ゴボウ:約5.7g → 約3倍 |
| 脂質 | 1.5g | 大豆:19.7g → 赤レンズ豆の方が圧倒的に低脂質 |
| 葉酸 | 77μg | 妊娠可能な年齢の女性の推奨量は240μg/日 |
「鉄分といえばほうれん草」と思っている方も多いかもしれません。しかし、赤レンズ豆の鉄分含有量は乾燥状態で9mgと、ほうれん草(生:2.0mg)の約4.5倍にのぼります。はがき1枚の横幅(約10cm)と同じくらいの小さな豆に、これだけの栄養が凝縮されているのです。
たんぱく質は100gあたり23.2gと豊富で、植物性食品としては非常に優秀な数値です。大豆のたんぱく質量(約34g)には及びませんが、脂質がわずか1.5g(大豆は19.7g)と圧倒的に低脂肪なのが赤レンズ豆の強みです。脂質を控えながらたんぱく質を補いたいときに最適です。
食物繊維は水溶性・不溶性の両方を含みます。これが基本です。水溶性食物繊維は腸内の糖質吸収を緩やかにしてコレステロールの排出を助け、不溶性食物繊維は腸を刺激して便秘予防につながります。
2006年にアメリカの健康誌「ヘルス」誌が選定した世界五大健康食品(日本の大豆・韓国のキムチ・スペインのオリーブオイル・ギリシャのヨーグルト・インドのレンズ豆)の一角を担うのが、このレンズ豆です。
▶ 赤レンズ豆の各栄養素の詳細数値(日本食品標準成分表2020年版・八訂 準拠)|創健美腸
女性は毎月の生理で鉄分を失いやすく、また妊娠・授乳期には鉄の必要量が一気に増えます。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生理のある成人女性の鉄の推奨量は10.5〜11.0mgとされており、妊娠中期・後期はさらに+9.5mgが必要とされています。これは思ったより多いですね。
赤レンズ豆には鉄分が乾燥100gあたり9.0mgも含まれています。これは豆類の中でもトップクラスの含有量です。植物性食品の鉄分(非ヘム鉄)は動物性のヘム鉄に比べて吸収率が低い傾向がありますが、ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。ここが重要なポイントです。
ただし、冒頭で触れたように「茹でると鉄分の吸収率が下がる」という側面があります。これは茹で汁に一部の栄養素が流れ出てしまうため、スープやカレーなど茹で汁ごと食べられる料理にすることで損失を防げます。ビタミンCを含むトマトやブロッコリーと組み合わせると、さらに吸収効率が上がります。
加えて、赤レンズ豆には葉酸も100gあたり77μg含まれます。葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の形成や胎児の神経管閉鎖障害のリスク低下にも関わる栄養素です。妊娠を考えている方や授乳中の方にとって、日常の食事から葉酸を摂れる食材として心強い存在といえます。
鉄分の吸収を高めるには「非ヘム鉄+ビタミンC+たんぱく質の組み合わせ」が条件です。赤レンズ豆のスープにトマトを加えたり、レモン汁をかけたりするだけでも吸収効率が変わります。
▶ 豆類の貧血対策効果について詳しく解説|女子栄養大学出版部(栄養士向けコラム)
「豆だから糖質が多い」と思って控えていた方もいるかもしれません。しかし赤レンズ豆のGI値(グリセミック指数)は約32と非常に低く、白米(GI値約84)や食パン(GI値約91)と比較するとその差は歴然です。GI値55以下が「低GI食品」とされており、赤レンズ豆はその基準を大きく下回っています。
低GI食品は食後の血糖値上昇が緩やかで、インスリンの過剰分泌が抑えられます。つまり、脂肪が蓄積されにくい状態を保ちやすいということです。「食べても太りにくい食材」として、ダイエット中の方にも取り入れやすい豆といえます。
さらに食物繊維が乾燥100gあたり約16.7gと豊富で、水溶性と不溶性の両方をバランスよく含んでいます。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり腸内環境を整え、不溶性食物繊維は便のかさを増やして排便を促します。毎日のお通じが気になる方にとって、一石二鳥の食材です。
GI値が低く食物繊維が豊富という二つの特性は、糖尿病予防の観点からも注目されています。実際、レンズ豆を多く摂取することで糖尿病になるリスクが下がる可能性を示した研究報告も出ています(Kosugi Clinic参照)。
腸内環境と血糖値の安定に注意すれば大丈夫です。赤レンズ豆をスープやカレーに加えるだけで、毎日の食事に自然とこれらの恩恵を取り込めます。
▶ レンズ豆を含む低GI食品一覧と血糖値管理のヒント|Women's Health Japan
乾燥豆を使ったことがある方なら、一晩水に浸して、下茹でして…という手間を知っているはずです。大豆やひよこ豆は一般的に6〜8時間の浸水が必要で、下茹でも加えると準備に合計2〜3時間かかることも珍しくありません。これは大変ですね。
赤レンズ豆は皮をすでに取り除いた状態で売られているため、一晩浸水が不要です。洗った後そのまま鍋に入れて火にかけるだけで、沸騰から5〜10分でとろりと柔らかくなります。白米を炊くよりも短時間で食べられる、という感覚に近いです。
形が薄くて小さい(直径約4〜6mm、厚さ約2mm)ので、熱が通りやすいのが理由です。加熱すると自然に崩れてとろみが出るため、スープやカレーに加えると自然なとろみがつき、片栗粉なしで濃厚な仕上がりになります。
この「とろみが出る」特性を活かして、ミネストローネやトマトスープに大さじ2〜3杯の乾燥赤レンズ豆をそのまま加えるだけで、栄養価もボリュームも一気にアップします。また長期保存が可能な乾燥タイプが主流なので、常備食材としてストックしておけば、急な献立変更にも対応できます。これは使えそうです。
忙しい日の栄養補給として、乾燥赤レンズ豆50gをコンソメスープに加えて煮るだけで、鉄分・たんぱく質・食物繊維を手軽に補える一品が完成します。浸水不要・短時間調理が条件です。
赤レンズ豆を最大限に活かすためには、調理法にちょっとした工夫が必要です。まず最も大切なのは「茹で汁を捨てない」こと。茹で汁には水溶性のビタミンB群や葉酸が溶け出すため、スープやカレーとして茹で汁ごと食べることで栄養の流出を防げます。
鉄分(非ヘム鉄)の吸収率を上げるために、一緒に摂ると良い食材の組み合わせがあります。
一方で、コーヒーや紅茶に含まれるタンニンや、ほうれん草のシュウ酸は鉄分の吸収を阻害することが知られています。赤レンズ豆を食べた直後にコーヒーを飲む習慣がある方は、せっかくの鉄分が吸収されにくくなる可能性があります。食後30分〜1時間はコーヒーや紅茶を控えるのがベターです。
また、赤レンズ豆には「フィチン酸」と呼ばれるミネラルの吸収を妨げる成分も微量に含まれますが、加熱処理や発芽処理でその活性が下がることがわかっています。つまり通常の加熱調理で問題ありません。
独自の視点としてお伝えすると、赤レンズ豆は「みそ汁の具」としても実は優秀です。冷凍保存した茹で赤レンズ豆(または乾燥のまま直接鍋に入れてよく煮る)を豆腐や豆類の代わりにみそ汁に加えると、タンパク質と食物繊維を日本の食卓スタイルで無理なく摂れます。洋食に偏りがちな赤レンズ豆レシピの中で、和食への応用は意外と知られていない食べ方です。
▶ 豆類の主な栄養素と特性の詳細解説|公益財団法人 日本豆類協会(権威ある一次情報)
いくら栄養価が高くても、続けられなければ意味がありません。赤レンズ豆を日常的に食卓へ取り入れるための、シンプルで実践的なアイデアをご紹介します。
まず最もハードルが低いのは、いつものスープに大さじ2杯加えるだけという方法です。コンソメスープでも和風のお吸い物スタイルでも、赤レンズ豆を洗ってそのまま加えて煮るだけで、ほぼ味の変化なく栄養をプラスできます。10分煮ればとろりと溶け込むので、豆の存在感が苦手な子どもでも気づかないほどです。
次に人気なのが赤レンズ豆のカレー(ダル)です。インドの家庭料理「ダル」は、赤レンズ豆を玉ねぎ・トマト・ターメリック・クミンなどのスパイスで煮込んだもの。スパイスが苦手な方はカレー粉1〜2杯で代用でき、20〜25分程度で完成します。
乾燥赤レンズ豆は常温での長期保存が可能(開封前は約2年)なので、まとめ買いして常備しておくのが続けるコツです。市販では200g〜500gの袋入りがスーパーや輸入食材店、オンラインショップなどで販売されています。500g入りで300〜500円程度と、価格面でも取り入れやすい食材です。
赤レンズ豆を「週3回のスープ」に加えることから始めるのが原則です。無理なく続けることで、鉄分・たんぱく質・食物繊維の底上げが日常的に実現できます。