ビーツを薄く切ってオーブンで焼くと、栄養がそのまま残り色鮮やかなチップスになります。市販品より安く作れるのに、栄養価は驚くほど高いのです。
ビーツを美味しいチップスに仕上げるには、焼く前の下処理が仕上がりの8割を決めると言っても過言ではありません。
まず、ビーツは皮付きのまま水でしっかり洗います。泥がついていることが多いので、野菜ブラシを使うと便利です。皮は薄くむいてもよいですが、皮ごとスライスすることで食感にアクセントが生まれます。皮ごとが基本です。
次に、スライスの厚みをそろえることが最重要工程です。厚みが不均一だと、薄い部分が先に焦げ、厚い部分は水分が残ってしなしなになります。厚みは1.5〜2mmを目安に、スライサーを使うと均一に仕上がります。これは使えそうです。包丁だけでそろえるのは難しいため、100円ショップのスライサーでも十分役立ちます。
スライス後の「塩もみ」も重要なポイントです。スライスしたビーツを軽く塩もみし、10〜15分置くと余分な水分が出てきます。この工程を省くと、オーブン内で水蒸気が発生し、チップスがサクサクになりにくくなります。出てきた水分はキッチンペーパーでしっかり拭き取ってください。
塩もみ後はオリーブオイルを薄くまぶします。油の量はビーツ100gに対してティースプーン1杯(約5ml)程度が目安です。多すぎると油っこくなり、少なすぎると焼きムラの原因になります。油の量に注意が必要です。
| 工程 | ポイント | 目安時間 |
|---|---|---|
| 洗い・皮むき | 野菜ブラシ使用、皮ごとでもOK | 5分 |
| スライス | 1.5〜2mm均一、スライサー推奨 | 5〜10分 |
| 塩もみ・水分除去 | 軽く塩もみ→10〜15分放置→拭き取り | 15〜20分 |
| オイルまぶし | 100gあたり5ml(ティースプーン1杯) | 2〜3分 |
ビーツの色素(ベタレイン)は水溶性なので、水に長時間さらすと色が抜けてしまいます。塩もみ後はすぐに拭き取り、水洗いは最小限にするのが鮮やかな赤紫色を保つ秘訣です。
オーブンの温度設定は、多くの方が「高温で短時間」と思いがちですが、ビーツチップスは低温でじっくりが正解です。
推奨温度は100〜120℃、焼き時間は90〜120分です。一般的なお菓子やパンの焼き温度(170〜200℃)と比べると、かなり低いことがわかります。低温が原則です。この温度帯は「乾燥焼き」と呼ばれ、水分をゆっくり飛ばしながら焦がさずに仕上げる技法です。
高温(160℃以上)で焼いてしまうと、ビーツに含まれる糖分(100gあたり約7g)が焦げやすく、苦味が出ます。また、鮮やかな赤紫色が茶色く変色し、見た目も悪くなります。意外ですね。
オーブンによって庫内温度のクセがあります。同じ設定温度でも実際の温度は±20℃ほど差が出ることも珍しくありません。焼き始めて60分後に一度扉を開けて状態を確認し、端の部分が乾いてきたら残り時間を調整するのがおすすめです。
途中で天板の前後を入れ替えると、焼きムラを防げます。特に家庭用の小型オーブンは後ろ側が高温になりやすいので、60分を目安に向きを変えると均一に仕上がります。これだけ覚えておけばOKです。
焼き上がりの目安は「端の部分がカリッとして持ち上げたときにしなしなしない状態」です。中心部はまだ少し柔らかく感じても、庫内で余熱を使いながら10分ほど追加乾燥させると、全体がサクサクになります。
基本の塩味だけでなく、少しアレンジするだけでビーツチップスのバリエーションは一気に広がります。
まず覚えておきたいのは、味付けのタイミングです。焼く前に塩・スパイスをまぶす方法と、焼いた後に振りかける方法の2種類があります。焼く前にまぶすと味が馴染みやすく、焼いた後に振ると香りが立ちやすいという特徴があります。どちらも正解です。
人気の味付けアレンジをいくつか紹介します。
注意したいのは「砂糖系の味付け」です。ビーツ自体に糖分が多く含まれているため、はちみつやメープルシロップを加えると焦げやすくなります。甘みを出したい場合は、焼いた後に少量をかける程度にとどめましょう。焦げに注意が条件です。
塩の量はビーツ100gあたり小さじ1/4(約1.5g)が目安です。塩が多すぎると乾燥後に塩辛さが凝縮され、食べにくくなります。塩分は控えめがちょうどよいのです。
ローズマリーやタイムなどのハーブを使う場合、乾燥ハーブを焼く前にまぶすと焦げにくく、生ハーブを使うと香りがより豊かになります。生ハーブは焼き上がり後に飾る程度にすると、見た目もおしゃれに仕上がります。
せっかく手間をかけて作ったビーツチップスも、保存方法を間違えると翌日にはしなしなになってしまいます。
最大の敵は「湿気」です。ビーツチップスはオーブンで水分を飛ばして仕上げているため、空気中の水分を再吸収しやすい性質があります。焼いた後は完全に冷ましてから密閉容器に入れることが絶対条件です。温かいまま容器に入れると、蒸気で湿気が生じてサクサク感が失われます。完全冷却が原則です。
保存容器は乾燥剤を入れたジップロックや密閉できるガラス瓶が最適です。シリカゲルの乾燥剤(お菓子の箱に入っているもの)を1〜2個一緒に入れると、常温でも3〜5日はサクサク感を保てます。
| 保存方法 | 賞味期限の目安 | 食感の維持 |
|---|---|---|
| 常温・密閉容器(乾燥剤あり) | 3〜5日 | ◎ サクサク維持 |
| 常温・密閉容器(乾燥剤なし) | 1〜2日 | △ 湿気りやすい |
| 冷蔵保存 | 1週間程度 | △ 水分を吸いやすい |
| 冷凍保存 | 1ヶ月程度 | ○ 解凍後に再加熱でサクサク復活 |
冷蔵保存はビーツチップスに向いていません。冷蔵庫内の湿度がチップスに水分を与え、しなしなになりやすいからです。長期保存したい場合は冷凍が最善です。
冷凍から使うときは、凍ったまま110℃のオーブンで15〜20分再加熱すると、サクサク感がほぼ復活します。これは使えそうです。電子レンジは水分を飛ばす力が弱く逆に湿らせることがあるため、再加熱にはオーブンかトースターを使うのがおすすめです。
なお、手作りのビーツチップスには防腐剤が入っていないため、常温での長期保存は避けてください。見た目に変化がなくても、5日を超えたら安全のために廃棄するのが無難です。
ビーツチップスは「おやつ」としてだけでなく、積極的に摂りたい栄養素の宝庫です。ただし、調理方法によって栄養の残り方が大きく変わります。
ビーツの最大の特徴は、硝酸塩(一酸化窒素の前駆体)が豊富なことです。この成分は血管を拡張し、血圧を下げる働きがあることが複数の研究で示されています。2012年にイギリスのエクセター大学が発表した研究では、ビーツジュースを飲んだグループは2週間で収縮期血圧が平均4〜5mmHg低下したというデータもあります。血圧が気になる方には注目の食材です。
オーブンでの調理は、ゆでる調理法と比べて水溶性の栄養素(葉酸・ビタミンC)の流出が少ない点も見逃せません。ゆで調理ではビーツの栄養の一部が茹で汁に溶け出してしまいますが、オーブン調理では流出が最小限に抑えられます。オーブン調理が栄養面でも有利です。
一点、注意が必要な方もいます。シュウ酸を比較的多く含むため、尿路結石の既往歴がある方は過剰摂取に注意が必要です。1日の摂取量はチップスで30〜50g程度(生のビーツ換算で100〜150g相当)を目安にすると安心です。
また、ビーツを食べた後に尿や便が赤くなることがあります。初めて見たときは驚きますが、これは「ビーツ尿症(ベタニンによる着色)」と呼ばれる無害な現象です。健康に問題はありません。覚えておけば慌てずに済みます。
ビーツチップスは市販品だと1袋(約30g)で400〜600円程度しますが、生のビーツは1個(約200g)で200〜300円ほどで手に入ります。自分で作れば市販品の半額以下でより新鮮なチップスが楽しめます。コストパフォーマンスの面でも自家製は大変魅力的です。