チェコのビールは、現地では水より安く買えることが多いです。
チェコ共和国はヨーロッパのほぼ中央に位置する内陸国で、国土は日本の九州とほぼ同じ面積です。海に面していないため、魚料理よりも肉料理が圧倒的に発達してきた歴史があります。豚肉・牛肉・鶏肉はもちろん、鴨やガチョウ、ウサギ、シカなど多彩な肉が食卓に並びます。
チェコ料理の最大の特徴は「シンプルでボリュームがある」ことです。フランス料理のような複雑な調理技術ではなく、素材の旨みを活かした煮込みや焼き料理が中心。肉を長時間じっくり煮込んで柔らかく仕上げるスタイルが基本です。
また、チェコ人の国民一人あたりの年間ビール消費量は約148.8リットルで、1993年から32年連続で世界第1位(キリンホールディングス調べ)です。これは500ml缶に換算すると、1人が1年間に約298本飲む計算になります。料理の味付けも自然と「ビールに合う濃厚なもの」が好まれてきました。これが料理文化の基本です。
じゃがいももチェコ料理には欠かせない食材で、付け合わせ・主食・スープの具と大活躍します。素材感を大切にする調理スタイルは、毎日の献立に悩む主婦にとって参考になる部分も多いでしょう。
まずはチェコを代表するメイン料理を一覧で紹介します。名前が覚えにくいと感じるかもしれませんが、料理の内容を知るとどれも親しみやすいものばかりです。
| 料理名 | チェコ語表記 | どんな料理? |
|---|---|---|
| グラーシュ | Guláš | 牛肉・玉ねぎ・パプリカをじっくり煮込んだシチュー。日本のビーフシチューに近い |
| スヴィチコヴァー | Svíčková | 牛テンダーロインを根菜クリームソースで煮込み、クランベリージャムを添えた国民食 |
| ジーゼク | Řízek | 豚肉や鶏肉を薄くのばして揚げた料理。日本のとんかつやチキンカツとほぼ同じ |
| ヴェプショクネドロゼロ | Vepřo knedlo zelo | ローストポーク・クネドリーキ・ザワークラウトの三点盛り。最も典型的なチェコ料理 |
| ローストダック | Pečená kachna | ハーブで香りづけした鴨のロースト。赤キャベツの煮込みとクネドリーキを添えて食べる |
| タタラーク | Tatarák | 生の牛肉をみじん切りにしてスパイスと混ぜた料理。揚げパンにのせて食べる |
なかでも注目は「スヴィチコヴァー(Svíčková)」です。チェコを訪れた人がほぼ必ず食べると言われる国民食で、牛肉をにんじん・セロリ・パセリなどの根菜と生クリームで作ったソースで煮込みます。仕上げにホイップクリーム・レモンスライス・クランベリーソースを添えるのが正式スタイルで、甘酸っぱさが濃厚な牛肉と絶妙にマッチします。
「グラーシュ(Guláš)」は元々ハンガリー料理の「グヤーシュ」が起源とされていますが、チェコに伝わる過程でシチュー状に進化しました。パプリカパウダーとキャラウェイ(チェコ語でクミン)が風味の決め手で、フォークでほぐれるほど柔らかくなった牛肉がポイントです。つまり、隣国との歴史が味にも刻まれています。
「ジーゼク(Řízek)」は日本のとんかつにそっくりで、初めてチェコ料理を食べる方にも取っつきやすい一品です。これは使えそうです。オーストリアのウィンナーシュニッツェルと同じ系統の料理で、中欧全体に広がる揚げ物文化の代表例といえます。
チェコ料理を語るうえで、主食の「クネドリーキ(Knedlíky)」は絶対に欠かせません。これはゆでパン、または蒸しパンで、厚さ約2センチにスライスしてほぼすべてのメイン料理に添えられます。チェコ料理を食べる機会があれば、必ずといっていいほど登場します。
クネドリーキは大きく3種類に分かれています。
クネドリーキの魅力はソースとの組み合わせにあります。グレービーソース(肉の焼き汁)やクリームソースをたっぷりかけてちぎりながら食べるスタイルは、パンでスープをすくう感覚に近く、日本人にも直感的に理解しやすい食べ方です。
日本でクネドリーキを自宅で作る場合、薄力粉と強力粉を混ぜてドライイーストで発酵させ、棒状に成形して約10分間ゆでるだけで作れます。材料はシンプルです。レシピサイト「Nadia(ナディア)」にも日本語の作り方が掲載されており、初めての方でも挑戦しやすいでしょう。
チェコの定番料理、茹でて作るクネドリーキ(レシピサイトNadia)
チェコではスープは「メインの脇役」ではなく、「食卓の主役」として扱われています。日本でも汁物は毎日の食事に欠かせませんが、チェコでは量も種類も日本をはるかに上回ります。コクと深みのあるスープが食卓を彩ります。
代表的なスープの一覧はこちらです。
前菜やおつまみとして人気なのが「ナクラーダニーヘルメリーン(Nakládaný hermelín)」です。カマンベールチーズをオイルと玉ねぎ・スパイスでマリネしたもので、ビールのお供として定番です。食べごろになるまで数日間マリネするので、自宅でも挑戦できます。意外ですね。
「ウトペネッツ(Utopenci)」はソーセージを酢漬けにしたもので、日本でいうピクルスのソーセージ版です。チェコのパブでは瓶に入って常備されており、軽くつまみながらビールを飲む定番スタイルです。
また、オープンサンドの「フレビーチキ(Chlebíček)」は、薄切りのパンの上にハム・チーズ・卵・ピクルスなどをきれいに盛り付けたもので、昼食や来客時のおもてなし料理として親しまれています。見た目が華やかなため、パーティーやお弁当にも応用できるアイデアです。
「チェコ料理はこってりした肉料理ばかり」と思われがちですが、実はスイーツ文化も豊かです。旅行者を中心に人気が高まっているチェコのお菓子を一覧で紹介します。
なかでもトゥルデルニークはSNS映えすることから日本でも注目度が急上昇しており、東京・麻布十番などにもチェコのお菓子を扱うお店が登場しています。ただし、現地の食文化に詳しい人からは「トゥルデルニークは観光地向けに広まった商品であり、本来はチェコ発祥ではなく、ハンガリーのお菓子が起源」という指摘もあります。食の歴史の奥深さを感じますね。
パラチンキは薄力粉・卵・牛乳で生地を作るだけなので、日本でも材料を揃えやすい一品です。子どもと一緒に作るおやつとしても楽しめます。フルーツジャムとホイップクリームを使えば見た目も華やかになるので、ホームパーティーのデザートにも最適です。
チェコの食文化を自宅で手軽に体験するなら、まずはパラチンキかクネドリーキから始めてみるのがおすすめです。
チェコ料理研究家・村田祐生子氏によるチェコ料理レシピ集(czechfriend.jp)|パラチンキ・グラーシュなど本格レシピが掲載されています
チェコ料理を日本の家庭で再現するときに最も困るのが「見慣れないスパイスや食材の調達」です。でも、実は多くの食材は日本でも手に入ります。
チェコ料理でよく使うスパイスの一覧と、日本での代替品を整理すると以下のとおりです。
グラーシュは日本で作る場合、牛バラ肉・玉ねぎ・パプリカパウダー・キャラウェイ・水またはブロスという基本材料だけで再現できます。市販のビーフシチューに近い材料感ですが、トマトをほとんど使わずパプリカで色と風味をつけるのがポイントです。調理時間は2〜3時間が目安ですが、圧力鍋を使えば約30分に短縮できます。これは使えそうです。
業務スーパーでは、ザワークラウトの缶詰やサワークリームに近い発酵クリームが取り扱われているケースがあります。チェコ料理を試したい方はまず業務スーパーをチェックするのが一番の近道です。また、東京・新宿区にある「チェコ料理専門店」などでは本格的なチェコ料理を外食で楽しめるので、初めてチェコ料理を体験したい方にも参考になります。
チェコ料理のレシピを調べるなら、在日チェコ料理研究家・村田祐生子さんが運営する「czechfriend.jp」が充実しています。グラーシュ・スヴィチコヴァー・クネドリーキなど主要料理の日本語レシピが揃っており、材料の代替品についても丁寧に解説されています。
チェコの定番料理「牛肉のグラーシュ」の作り方(urquell.timez.jp)|日本語で材料・手順を詳しく解説しています