「チリ料理」という名前を聞いて辛そうと思ったあなた、実はチリ料理は8割以上の料理が辛くありません。
チリ料理の名前は、そのほとんどがスペイン語や先住民の言葉に由来しており、料理の見た目や内容を直接的に表しています。名前の意味を知るだけで、料理への理解がぐんと深まります。
まず代表格である「カスエラ(Cazuela)」という言葉は、もともと「土鍋・キャセロール」を意味するスペイン語です。フランス料理の「ポトフ」に相当するチリ版の煮込み料理で、鶏肉バージョンは「カスエラ・デ・アヴェ」、牛肉バージョンは「カスエラ・デ・レス」と呼び分けられます。具材はジャガイモ・玉ねぎ・人参・カボチャ・トウモロコシとほぼ決まっていて、クミンやオレガノなどのハーブが隠し味になっています。
「エンパナーダ(Empanada)」は、スペイン語の「empanar(パン生地で包む)」が語源です。チリで最もポピュラーな種類は「エンパナーダ・デ・ピノ」で、牛ひき肉・玉ねぎ・オリーブ・ゆで卵を包んで焼き上げたもの。本場では1個が約20cm(ハガキの横幅2枚分ほど)もある大きなサイズです。毎年9月18日のチリ独立記念日には、全国でエンパナーダが食べられる習慣があります。
「パイラ・マリーナ(Paila Marina)」は「パイラ(土器の器)」と「マリーナ(海)」を組み合わせた名前です。つまり「海の恵みを土器で出す料理」という意味になります。
つまり料理名=そのまま調理法や器の説明、ということですね。
「パステル・デ・チョクロ(Pastel de Choclo)」は「チョクロのケーキ」という意味で、チョクロとはスペイン語圏南米の言葉で「収穫したての新鮮なトウモロコシ」を指します。トウモロコシのペーストで肉や卵を覆ってオーブンで焼き上げる、甘みと塩気が共存する不思議なおいしさの料理です。
料理名の意味を知っておくと、旅行先やレストランのメニューを見たときにも迷わず選べます。これは使えそうです。
チリ料理には数十種類の料理が存在しますが、その中でも特に家庭でよく作られ、国民に愛されている定番料理を5つ押さえておくと、チリの食文化全体が見えてきます。
① カスエラ(Cazuela) はチリの国民食と言っても過言ではありません。肉と大ぶりの野菜をシンプルに煮込んだ料理で、味付けは塩とクミン・オレガノが基本。見た目はとても地味ですが、時間をかけて煮込むことで野菜の甘みと肉の旨みが溶け合い、温かくほっとする一椀が完成します。
② エンパナーダ(Empanada) はチリ全土で食べられているミートパイです。生地はラードを使うサクサク系で、具材は牛ひき肉・玉ねぎ・オリーブ・ゆで卵が入る「デ・ピノ」が主流。チーズだけを包んだ「デ・ケソ」も人気があります。
③ パイラ・マリーナ(Paila Marina) はチリが太平洋に面した細長い国であることを象徴する、海鮮シチューです。アサリ・ムール貝・エビ・白身魚など複数の魚介が入り、オレガノとコリアンダーで香りを付けます。土器のボウルに入れて熱々で提供されるのが正式なスタイルで、貝の出汁が凝縮した濃厚なスープが特徴です。
④ コンプレート(Completo) はチリ版ホットドッグです。細長いパンにソーセージを挟み、アボカドをたっぷり載せたものが「コンプレート・イタリアーノ」と呼ばれ、特に人気。海外の有名グルメサイト「Taste Atlas」では世界第4位にランクインしたこともある実力派のファストフードです。
⑤ パステル・デ・チョクロ(Pastel de Choclo) はトウモロコシのミートグラタンです。器は土鍋が使われることが多く、オーブンで焼くと表面が美しいきつね色になります。甘みのあるトウモロコシペーストと肉の塩気が絶妙なバランスです。
この5種類が基本です。旅行や外食でチリ料理を選ぶ際のガイドとして活用してみてください。
チリは南北約4,300km(東京から北海道を約20往復した距離に相当)に細長く伸びる国で、その海岸線はほぼすべて太平洋に面しています。この地形のおかげで水産資源が非常に豊富で、マグロ・サーモン・ウニ・アワビ・アサリなどが日本にも大量輸出されているほどです。
海鮮料理が豊富なのは自然な流れですね。
チリ料理の中でも特に有名な海鮮料理の名前と特徴を整理すると、次のようになります。
| 料理名 | スペイン語の意味 | 主な食材 |
|---|---|---|
| パイラ・マリーナ | 海の土器鍋 | アサリ・ムール貝・エビ・白身魚 |
| カルディージョ・デ・コングリオ | コングリオのスープ | コングリオ(穴子に似た魚) |
| チュペ・デ・マリスコス | 海鮮のチュペ(濃厚スープ) | 海老・貝類・野菜 |
| エリソス | ウニ | ウニ(生またはレモンがけ) |
| セビッチェ | 魚介のマリネ | 白身魚・ライム・コリアンダー |
パイラ・マリーナを日本の家庭で再現するには、アサリ・ムール貝(なければ帆立)・冷凍エビ・タラなどを組み合わせるのがおすすめです。出汁は砂抜きした貝を白ワインで蒸した汁をそのまま使います。オレガノとコリアンダー(パクチー)が本場の風味を出すカギで、最後にレモンを絞ると一気に本格感が増します。
特にカルディージョ・デ・コングリオは、チリの詩人パブロ・ネルーダが「Oda al Caldillo de Congrio(コングリオのスープへの頌歌)」という詩を書いたほど愛された料理です。コングリオは日本では入手が難しいですが、アナゴや白身魚で代用できます。
給食レシピ集「パイラ・マリーナ」:学校給食で使われる本格レシピ、材料と分量が具体的に確認できます
チリの海鮮料理は味付けがシンプルな分、食材の鮮度が味の9割を決めます。鮮魚コーナーでその日の新鮮な魚介を選ぶのが一番の近道です。
チリ料理は、一見難しそうに見えますが、実際には日本の家庭にある食材で多くの料理が再現できます。特にカスエラとエンパナーダは、特別な食材がほぼ不要です。
カスエラの基本を覚えておけばOKです。作り方のポイントは3つです。1つ目は「大ぶりにカットすること」。野菜は煮崩れを防ぐために、じゃがいもは半分、にんじんは5cm幅ほどの大きめカットが本場スタイルです。2つ目は「クミンとオレガノを入れること」。この2つのハーブがあるだけで、一気にチリらしい香りになります。クミンは100円ショップの調味料コーナーでも手に入ります。3つ目は「肉は骨付きを使うと旨みが増すこと」。鶏の手羽元や骨付きのスペアリブを使うと、スープに深みが出ます。
エンパナーダに関しては、本場の皮はラードを使った強力粉生地ですが、日本では冷凍パイシートや餃子の皮で代用できます。宮城県加美町の公式サイトでは、餃子の皮を使ったエンパナーダ・デ・ピノの簡単レシピを無料公開しています。具材は牛ひき肉・玉ねぎ・ゆで卵・オリーブというシンプルな構成です。
加美町公式:チリ料理レシピ集(エンパナーダ・ソパイピジャスなど無料PDFあり)。餃子の皮で作る簡単アレンジレシピも掲載されています
エンパナーダは焼いても揚げてもOKです。フライパンで蓋をして弱火で焼くと、皮がサクサクに仕上がります。
| 料理名 | 必要な特殊食材 | 代替品 | 調理難易度 |
|---|---|---|---|
| カスエラ | クミン・オレガノ | カレー粉の一部で代用可 | ★☆☆(簡単) |
| エンパナーダ | ラード・強力粉生地 | 冷凍パイシート・餃子の皮 | ★★☆(普通) |
| パイラ・マリーナ | 複数の魚介類 | シーフードミックスで簡略化可 | ★★☆(普通) |
| ポロトス・グラナードス | インゲン豆・チョクロ | 缶詰の豆・冷凍コーン | ★☆☆(簡単) |
| コンプレート | なし | ホットドッグ用パンで完全再現可 | ★☆☆(簡単) |
最も手軽に始めやすいのはコンプレートです。ホットドッグパンとソーセージ、アボカド、マヨネーズがあれば今夜にでも作れます。
チリ料理の名前を学ぶだけでは、食文化の半分しか見えていません。もう一つ知っておくと面白いのが、チリ独特の食事スタイル「オンセ(Once)」です。
スペイン語で「オンセ」は「11」という意味ですが、チリでは「夕食代わりの軽食」という意味で使われています。時間帯は夕方から夜にかけてで、パン・チーズ・ハム・ジャム・ケーキなどが並ぶ軽めの食事です。家族や友人が集まり、その日の出来事を語り合いながら食べる、チリの大切な日常の風景です。
「11」という名前で夕食、という組み合わせは意外ですね。
なぜ「オンセ(11)」と呼ぶのかについては、イギリスの「イレブンシス(午前11時の軽食)」の習慣が起源という説が有力です。かつてチリにはイギリスからの移民が多く、その文化が時間帯を変えながら根付いたとされています。
オンセの時間帯に食べるものとして有名なのが、チリのデザート「モテ・コン・ウエシージョ(Mote con huesillo)」です。これは乾燥した桃(ウエシージョ)をシナモンと砂糖で煮たシロップに、茹でた小麦(モテ)を入れた飲み物兼デザートで、夏の屋台で1杯約105円(700チリペソ)ほどで売られています。また「ソパイピジャス(Sopaipillas)」はカボチャ入りの揚げパンで、冬のオンセに欠かせない定番のおやつです。
これらの「名前のある料理たち」は単なるメニューではなく、チリの人たちが毎日積み重ねてきた生活文化の一部です。料理名の意味を知り、背景を理解することで、食卓の話題がぐっと豊かになります。
ナショナルジオグラフィック日本版:チリの庶民料理の特集記事。エンパナーダやカスエラの現地での食べ方・文化的背景が詳しく紹介されています
チリ料理を一度試してみると、その素朴さとしっかりした旨みに驚くはずです。スーパーで手に入る食材でほとんどが作れるので、週末の夕食に南米の風を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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