梅干しを買いに来て、気づかぬうちに「別の梅の梅干し」を買っていることが約7割のケースで起きています。
梅干しを買おうとすると、スーパーでも通販サイトでもまず目に入るのが「南高梅」です。和歌山県を中心に全国シェアの約6割を占め、梅のスタンダードとして定着しています。では、十郎梅は何が違うのでしょうか。
十郎梅は神奈川県小田原市の曽我梅林で昭和40年頃に発見・選抜されたオリジナル品種です。当時の小田原市長・鈴木十郎氏が「小田原独自の良質の梅干しを作ろう」と提唱したことに由来し、名前にも地域への誇りが込められています。品種特性として最大の特徴は「果肉の厚さ」にあります。種が小さく可食部が多いため、梅干し用品種の最秀品として農家や梅好きの間では知られた存在です。
南高梅と比べると、香りの違いも際立ちます。南高梅がすもも・杏に近い甘酸っぱい香りをもつのに対し、十郎梅はバナナやマンゴーを思わせる濃厚で甘い香りが特徴です。これは完熟時に一段と強くなるため、樹上でしっかり熟させた十郎梅で漬けた梅干しは、食べる前からフルーティーな香りが漂います。
一方でデリケートな面もあります。皮が非常に薄く破れやすいため、収穫は一粒ずつ手もぎでしか行えません。土用干し(天日干し)でひっくり返すときも手作業が必須です。つまり十郎梅は「手間がかかる分だけ、価格にそのコストが反映されにくい品種」でもあり、農家の生産意欲低下という課題も実際に生じています。これが通販で入手しにくい理由の一つです。
| 比較項目 | 十郎梅 | 南高梅 |
|---|---|---|
| 主な産地 | 神奈川県小田原市(曽我梅林) | 和歌山県(みなべ町など) |
| 果肉の厚さ | 非常に厚い・種が小さい | 厚い |
| 皮の薄さ | 非常に薄く破れやすい | 薄い(十郎梅より強め) |
| 香り | 濃厚・バナナ・マンゴー系 | 甘酸っぱい・すもも・杏系 |
| 市場流通量 | 希少(全国流通は少量) | 全国シェア約60% |
| 収穫方法 | 手もぎのみ | 手もぎ・ネット受け両方 |
南高梅が「買いやすい梅」なら、十郎梅は「出会えたら幸運な梅」といった立ち位置です。通販でも「十郎梅使用」と明記された商品数は南高梅のおよそ10分の1以下で、希少性の高さが分かります。
十郎梅を通販で手に入れる方法は大きく「生梅(梅干し・梅酒仕込み用)」と「加工済み梅干し」の2種類に分かれます。それぞれ購入できる場所や時期が異なるため、まず目的を決めてから探すと迷いません。
農家直販サイト(生梅・梅干し両対応)として代表的なのが、神奈川県小田原市曽我別所に農園を構える「和(なごみ)園(jyuurouume.com)」です。梅農家が直接運営する直販サイトで、完熟十郎梅干しの秀品・優品1kg袋から800g〜1800g入りの樽まで複数サイズで販売しています。生梅は収穫から1〜2日以内に発送してくれるため鮮度が高く、梅干し仕込みを自分でやってみたい方にも向いています。
同じく小田原の「昇珠園(umehana.com)」も農家直販の老舗で、完熟十郎梅干しのほか、うす塩仕立て・はちみつ梅・紫蘇漬けなど加工バリエーションが豊富です。三年漬や五年漬といった熟成梅干しも販売しており、こだわりのある方にはとくに魅力的です。
産直プラットフォームでは「食べチョク」や「ポケットマルシェ(ポケマル)」で十郎梅が出品されています。生産者プロフィールやレビューを確認してから購入できる点が安心です。食べチョクでは10kg単位の予約販売が掲載されており、1kgあたり約900円〜1,000円が相場となっています。
楽天市場・Yahoo!ショッピングでも十郎梅梅干しは検索可能です。ただし注意が必要なのは、「小田原産・十郎梅100%使用」であることを確認する必要がある点です。「十郎梅」という名称が商品名に含まれていても、ブレンドや他産地の梅が混入しているケースもゼロではありません。購入前に原材料欄と産地表示を必ず確認してください。
ちなみに老舗梅専門店「ちん里う本店(chinriu.co.jp)」では「小田原十郎梅ロゴマーク」付きの梅干しを販売しています。このロゴマークは小田原市産の十郎梅を100%使用した商品にのみ付けられる公式認証です。確かな品質のものを求めるなら、このマークを一つの基準にするとよいでしょう。
参考リンク(小田原市の十郎梅ブランド化の公式説明・ロゴマークについて):
小田原十郎梅のブランド化に取り組んでいます|小田原市公式サイト
十郎梅の旬は短い。これが通販購入で一番大事な前提知識です。
生梅の出荷時期は毎年6月上旬〜6月下旬の約3週間〜4週間に限られています。梅雨の時期と重なり、完熟した実が短期間に一気に収穫されます。しかも十郎梅は南高梅よりわずかに早生のため、「6月中旬前後」がピークになります。
問題は、この期間より前に「予約が完売してしまう」ことです。実際に食べチョクや産直アウルのような産直サイトでは「予約分は完売」となっているページが毎年5月末〜6月初旬には出始めます。人気農家の生梅を確実に手に入れたいなら、5月中に予約を完了しておくのが鉄則です。
時期ごとの行動チェックリストはこちらです。
- 2月〜3月:お気に入り農家のサイトや産直プラットフォームをチェック。昨年販売があったかを確認する
- 4月〜5月初旬:予約受付が開始される時期。メルマガ登録や農家フォローで情報を逃さない
- 5月中旬まで:予約注文を確定。5月末を過ぎると完売リスクが高まる
- 6月上旬〜下旬:生梅が順次発送される。到着後は速やかに仕込みに取り掛かること
また、一年を通じて購入できる梅干し加工品については、季節を問わず注文可能です。旬の制約がなく、贈り物やストック用にも使いやすい点がメリットです。ただし農家直販サイトは在庫数が限られているため、人気商品は早期に売り切れることもあります。気になる商品があれば早めに手配するのが賢明です。
なお、2024年の小田原地区の梅収穫量は天候不順の影響で例年比4割減という記録的な不作でした。気候変動の影響で不作年が続く可能性もあり、今後ますます希少性が高まることが予想されています。
参考リンク(十郎梅の生梅・梅干し通販・農家直販情報):
和(なごみ)園 十郎梅干し・生梅の直販ページ|小田原市曽我別所の梅農家
「梅干しは体にいい」という言葉は昔からありますが、十郎梅の梅干しにはとくに注目すべき点があります。
まず栄養面では、梅に豊富に含まれるクエン酸の存在が大きいです。クエン酸は体内で疲労の原因となる乳酸の蓄積を抑える働きがあり、疲労回復のサポートに役立ちます。クエン酸はまた、カルシウムの吸収を助ける「キレート効果」も持つため、骨の健康維持にも貢献します。暑い夏に梅干しを食べると元気になる感覚は、このクエン酸の働きによるものです。
十郎梅は完熟度が高いほど果実内でリンゴ酸がクエン酸へと変化するため、完熟させた十郎梅の梅干しはとくにクエン酸含有量が高いとされています。つまり完熟品であることが、健康効果の高さにも直結しているということですね。
さらに重要なのが「無添加」かどうかという点です。市販の梅干しの中には、甘味料・酸味料・調味料(アミノ酸等)・着色料などが添加された「調味梅干し」が多く存在します。見た目は似ていても、成分表示を見ると違いは一目瞭然です。十郎梅の農家直販商品の多くは「梅・塩」のみの2成分で作られた本来の白干し梅干しです。添加物ゼロが基本です。
塩分濃度は商品によって異なりますが、農家直販の白干し梅干しは18〜20%程度のものが多く、長期保存が可能です。減塩タイプ(うす塩・はちみつ梅など)は塩分が8〜13%程度に抑えられており、塩分が気になる方にも選びやすくなっています。ただし減塩タイプは保存期間が短くなるため、開封後は冷蔵保存が原則です。
神奈川県がまとめた農業関連の資料でも、小田原の十郎梅農家が作る梅干しが「化学調味料不使用・梅と塩のみ」の健康食品として評価されている記録があります。こうした背景が、近年の無添加・本物志向ブームと重なり、十郎梅の需要を後押ししています。
参考リンク(神奈川県による十郎梅の健康食品としての研究資料):
「医食農同源」への取り組み〜梅のクエン酸・十郎梅の紹介|神奈川県公式PDF
生梅を通販で手に入れたら、自宅で梅干しを仕込んでみましょう。十郎梅は皮が薄いため少しコツが必要ですが、基本さえ押さえれば初めてでも成功できます。
まず届いた生梅の状態を確認します。完熟の十郎梅は薄黄色〜黄色で、桃のような甘い香りがします。青みが残っている場合は、段ボール箱やザルに広げて風通しのよい場所に1〜2日置き、追熟させます。追熟が終わったらその日のうちに仕込むのが大切です。放置しすぎると柔らかくなりすぎて皮が破れる原因になります。
仕込みの手順は次の通りです。
- 🫧 アク抜き(水洗い):生梅を優しく水洗いし、30分〜1時間ほど水につけてアクを抜く。十郎梅は皮が薄いので強くこすらない
- 🌿 ヘタ取り:竹串やつまようじを使ってヘタをていねいに取り除く。ここを省くと梅干しが苦くなる
- 💧 水分を拭く:清潔なキッチンペーパーや布巾で一粒ずつ水分を拭き取る。水分が残るとカビの原因になる
- 🧂 塩漬け:塩分濃度は梅の重量に対して18〜20%が基本。1kgの梅なら180〜200gの塩を使う。瓶や漬け物袋に梅と塩を交互に入れ、重しをする
- ☀️ 土用干し:梅雨明け後(7月下旬〜8月上旬)の晴れた日に3日間天日干しする
十郎梅で特に注意したいのが土用干しです。皮が薄く柔らかいため、ひっくり返すときに破れやすい点があります。無理にひっくり返さず、梅がある程度乾いてから優しく動かすのがコツです。また干しすぎると硬くなるため、夕方には取り込むリズムを保ちましょう。
梅干しが完成したら、陶製や琺瑯の容器に入れて冷暗所で保存します。最低でも3ヶ月、できれば1年以上寝かせると味がまろやかになり、十郎梅本来のとろけるような食感が生まれます。農家によっては3年漬・5年漬を販売しているほどで、熟成の深みは格別です。
梅干し仕込みに必要な道具(清潔な大瓶・漬け物袋・重し)は、百円均一や通販でも揃えられます。初めての方は2〜3kg程度から挑戦するのがおすすめです。
参考リンク(十郎梅を使った梅干しの詳細な仕込み情報):
生梅の通販・購入ガイド|昇珠園(小田原の梅農家)