魚を毎日食べているのに、気づかず水銀を摂りすぎていて胎児の神経発達に影響が出ることがあります。
ペスカタリアンとは、「魚介類・野菜・卵・乳製品は食べるが、牛・豚・鶏などの肉類は食べない」食生活スタイルのことです。正式名称は「ペスコ・ベジタリアン(Pesco-Vegetarian)」といい、菜食主義の一種に分類されます。
語源はイタリア語の「Pesce(魚)」と英語の「Vegetarian(菜食主義者)」を組み合わせた造語です。つまり「魚を食べる菜食主義者」という意味ですね。言葉自体は1900年代初頭に生まれており、決して新しい概念ではありません。
日本では「ペスカタリアン」のほか「ペスカトリアン」とも呼ばれることがあります。英語圏では "Pescatarian" または "Pescetarian" と表記されます。どちらも同じスタイルを指しているので、呼び方の違いは気にしなくてOKです。
近年、健康志向の高まりや環境意識の変化を背景に、国内でも注目度が急上昇しています。芸能人では小籔千豊さんがペスカタリアンを実践していることで知られており、一般の人々にも広まりつつあります。
参考:ペスカタリアンの意味・定義についての詳細はこちら
ペスカタリアン(ペスコ・ベジタリアン)とは・意味 | IDEAS FOR GOOD
「何が食べられて何がダメなのか?」これがペスカタリアンを理解するうえで最初の壁になります。下の表で一気に整理しましょう。
| カテゴリ | 食べてOK ✅ | 食べないもの ❌ |
|---|---|---|
| たんぱく源 | 魚・貝・エビ・イカ・タコ・卵 | 牛・豚・鶏・ラム・鴨などの肉 |
| 乳製品 | 牛乳・チーズ・ヨーグルト(人による) | とくになし(個人差あり) |
| 野菜・穀物 | すべての野菜・果物・豆・穀物・ナッツ | とくになし |
| 加工品・出汁 | かつお出汁・いりこ出汁・昆布だし | 鶏ガラスープ・豚骨・ラード・牛脂・肉エキス入り食品 |
| クジラ・イルカ | ❌(哺乳類のためNG) | クジラ・イルカの肉 |
注目してほしいのが「かつお出汁はOK」という点です。ベジタリアンはかつお節・煮干しを使った出汁もNGですが、ペスカタリアンは魚介由来であれば出汁も問題ありません。和食が中心の家庭では、これが非常に大きなポイントになります。
ただし、肉エキスが入ったスープや合わせだしパックには注意が必要です。成分表示で「チキンエキス」「ポークエキス」と書かれているものはNGになります。ラーメンや市販の鍋スープを使う際も、パッケージの裏面を確認する習慣をつけておきましょう。
また、卵・乳製品については「食べる人」と「食べない人」で個人差があります。一般的にはどちらもOKとしているペスカタリアンが多いですが、自分なりのポリシーで決めてかまいません。ルールは柔軟に決めるのが基本です。
「ペスカタリアン・ベジタリアン・ヴィーガン」の3つは混同されがちですが、食べられる範囲がまったく異なります。違いをシンプルに整理しておきましょう。
| スタイル | 肉 | 魚 | 卵・乳製品 | はちみつ |
|---|---|---|---|---|
| ペスカタリアン | ❌ | ✅(人による) | ||
| ベジタリアン | ❌ | ✅(種類による) | ✅(人による) | |
| ヴィーガン | ❌ | ❌(多くの場合) |
3つの中でいちばん食べられる食材の選択肢が広いのがペスカタリアンです。ヴィーガンに比べると、外食・レシピの幅が大幅に広がります。
とくに日本においては、魚介類を使った料理が豊富です。刺身・煮魚・焼き魚・海鮮丼・味噌汁のあさり・・・普段の和食メニューがそのままペスカタリアン食になるケースが多いのです。これは使えそうです。
スウェーデンの研究によると、ペスカタリアンの食事は肉食と比べて温室効果ガスの排出量が約59%少ないとされています。ヴィーガンの73%削減には及ばないものの、肉食からの切り替えとしては非常に大きな環境効果が期待できます。
また、ベジタリアンと違いかつお出汁や煮干しが使えるため、和食の味付けをほぼそのまま維持できる点も、日本の主婦にとって大きなメリットです。「家族には普通の料理を出しながら、自分だけペスカタリアンを意識する」という柔軟な実践スタイルがとりやすいのが特徴です。
参考:ヴィーガン・ベジタリアン・ペスカタリアンの詳細な違いについて
ペスカタリアンとは?注目される理由やメリット・デメリットを紹介 | PATCH THE WORLD
ペスカタリアンの食生活が健康に良いとされる理由は、「肉を減らす」と「魚を増やす」という2つの効果が同時に働くからです。単に肉を食べないだけでなく、良質な栄養素を魚介類でしっかり補えるのがポイントになります。
まず注目したいのが糖尿病リスクの低減です。菜食主義に関する研究(米国国立医学図書館掲載)によると、ペスカタリアンが糖尿病を発症するリスクは約4.8%で、肉を食べる人の7.6%と比較して約37%も低いことが報告されています。これは決して小さな差ではありません。
また、心臓病に関しても、肉を食べる人に比べて死亡リスクが22%低いとのデータがあります。その理由のひとつとして挙げられるのが、サーモン・マグロ・いわしなどに豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)の存在です。オメガ3脂肪酸には血中コレステロールを下げ、血圧を安定させる働きがあることが多くの研究で示されています。
さらに、肉の赤身や加工肉に多く含まれる飽和脂肪酸を減らすことで、肥満・高血圧・動脈硬化のリスクも下がりやすくなります。結論は「魚中心の食事は複合的に体を守る」ということです。
日本人はもともと魚を食べる文化が根付いており、腸内環境もこうした食事スタイルになじみやすいとされています。欧米人がペスカタリアンを実践するより、日本人には導入のハードルが低いともいわれています。
参考:ペスカタリアンと糖尿病リスクに関する研究論文
Type of vegetarian diet, body weight, and prevalence of type 2 diabetes | PubMed(英語)
メリットが多いペスカタリアンですが、注意しなければいけない点もあります。特に「魚をたくさん食べる=体に良い」とだけ思い込んでいると、思わぬ健康リスクを招くことがあります。
⚠️ デメリット1:水銀の過剰摂取リスク
魚には種類によって「メチル水銀」と呼ばれる有害物質が蓄積していることがあります。メチル水銀を過剰に摂取すると、脳機能障害や高血圧などのリスクが高まります。とくに食物連鎖の上位にいる大型魚(マグロ・メカジキ・サメ・金目鯛など)に多く含まれています。
厚生労働省の指針では、妊婦は金目鯛を「1回約80g(切り身1切れ程度)として週1回まで」に制限するよう求めています。メカジキも同様で週1回まで。つまり、ペスカタリアンだからといって毎日マグロやサーモンを食べ続けるのは要注意です。
一方で、サバ・アジ・イワシ・白身魚・エビ・貝類などは水銀量が少ないため、日常的に食べても問題ありません。魚の種類を意識して選ぶことが原則です。
⚠️ デメリット2:鉄分不足になりやすい
赤身肉には「ヘム鉄」という吸収率の高い鉄分が多く含まれています。肉を食べないペスカタリアンは、鉄分を植物性食品(ほうれん草・豆腐・ブロッコリー・ナッツなど)から補う必要があります。植物性の「非ヘム鉄」はヘム鉄に比べて吸収率が低めです。
鉄分不足を防ぐためには、ビタミンCが豊富なトマト・柑橘類・ブロッコリーなどと一緒に食べると吸収率が上がることが知られています。「ほうれん草の炒め物にレモンを絞る」といった簡単な工夫で対策できます。
⚠️ デメリット3:漁業・養殖業の環境負荷
肉食に比べると環境負荷は小さいですが、乱獲・養殖場の建設・薬品使用による生態系への影響は存在します。環境にも配慮したいという場合は、天然水産物に与えられるMSC認証(青いラベル)や養殖水産物のASC認証がついた商品を選ぶと安心です。スーパーの魚売り場でも目にすることが増えてきています。
参考:妊婦向け魚介類の水銀に関する厚生労働省の注意事項
妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項 | 厚生労働省(PDF)
「なんか難しそう」「家族の食事も作らないといけないのに…」。そう思う方も多いはずです。でも実は、日本の主婦こそペスカタリアンと相性がいいといえます。
その理由のひとつは、日本の食文化そのものです。日本は古来から魚を中心とした食生活が根付いており、焼き魚・煮魚・刺身・味噌汁のあさりなど、毎日のご飯にすでに魚料理が自然に組み込まれています。欧米の人が「魚中心に切り替える」のとはスタート地点が違います。
またベジタリアンと違い、かつお出汁・煮干し出汁が使えるので、みそ汁・煮物・うどんなど和食の基本メニューが普通に作れます。家族向けには普通の料理を出しながら、自分の夕食のたんぱく源を「鶏肉→鮭の塩焼き」に変えるだけでも、十分ペスカタリアン的な食事になります。
🌱 主婦が無理なく始める3ステップ
完全に肉を排除しなくてもかまいません。「週の半分以上を魚中心にする」だけでも、糖尿病・心臓病リスクの低減効果が期待できます。
魚料理のバリエーションを増やしたいときには、NHKの「きょうの料理」サイトや、魚介レシピ専門のレシピアプリを活用するのがおすすめです。「鮭」「アジ」「鱈」で検索するだけで、和洋問わず豊富なレシピが出てきます。
「和食中心の食卓をそのまま続けながら、肉の日を少し減らす」。これがペスカタリアンを長続きさせるコツです。ルールは緩やかに、自分のペースで取り入れるのが一番です。