このレンズ豆スープ、実は水に浸けずに20分で作れて鉄分は牛赤身肉の約2倍です。
トルコ語で「メルジメッキ・チョルバス(Mercimek Çorbası)」と呼ばれるこのスープは、「メルジメッキ」がレンズ豆、「チョルバス」がスープを意味します。トルコでは日本のお味噌汁のように日常の食卓に欠かせない一杯で、大衆食堂(ロカンタ)に行けば必ず出てくる定番中の定番スープです。
その歴史は驚くほど古く、旧約聖書にまで遡ります。アブラハムの孫・エサウが長男としての相続権を、このレンズ豆のスープ一杯と引き換えにしたという逸話が残っているほど。つまり、このスープは数千年前から人々を魅了してきた料理だということですね。
また、起源前5500年頃のトルコの遺跡からもレンズ豆が発見されており、メソポタミア地域(現在のトルコ南東部からイラク周辺)が原産地とされています。世界三大料理のひとつに数えられるトルコ料理の中でも、このスープはオスマン帝国時代から脈々と受け継がれてきた、まさに歴史の重みを感じられる一品です。
現地には「100家庭があれば100通りのレシピがある」と言われるほど、家庭ごとに味付けや具材が異なるのも特徴のひとつ。クミンを入れる家庭もあれば、乾燥ミントを使う家庭もあり、それぞれに個性があります。つまり正解は一つではない、自由なスープです。
参考:トルコの国民食レンズ豆スープ「メルジメッキ・チョルバス」のレシピと情報が詳しくまとめられています。
公益財団法人 日本豆類協会 / レンズ豆のスープ(メルジメッキ・チョルバス)
このスープの最大の魅力は、その手軽さにあります。他の乾燥豆のようにひと晩水に浸ける必要が一切なく、買ってきてすぐに作れるのが赤レンズ豆の特徴です。
これは便利ですね。
赤レンズ豆(皮なし)は、皮がないぶん水分が浸透しやすく、わずか20〜30分の加熱でとろとろのポタージュ状に仕上がります。皮付きのグリーンレンズ豆やブラウンレンズ豆と違い、15分前後という短時間で煮崩れてくれるのが大きな利点です。
| 材料 | 分量(4人分) |
|---|---|
| 赤レンズ豆(乾燥) | 200g |
| 玉ねぎ | 1個 |
| にんじん | 1本 |
| じゃがいも | 1個 |
| トマトペースト | 小さじ1/2〜1 |
| バター | 20g |
| サラダ油 | 大さじ2 |
| 水 | 1ℓ |
| 塩・こしょう | 各適量 |
| 粉唐辛子(仕上げ用) | 小さじ1 |
| レモン・クミン・乾燥ミント | 各お好みで |
作り方はシンプルな5ステップです。
食べる際はレモンをぎゅっと絞るのが現地流です。これが全体の味を引き締め、さっぱりとした後味に仕上げてくれます。お好みでクミンや乾燥ミントを加えると、より本格的なトルコの香りが楽しめます。ブレンダーがない場合は、木べらで豆をつぶしながら混ぜるだけでも十分とろみが出るので、道具がなくても問題ありません。
参考:スープジャーを使ったトルコ流アレンジレシピを含む、詳しい解説が載っています。
トルコには、基本のメルジメッキ・チョルバスの派生版として「エゾゲリン・チョルバス(Ezogelin Çorbası)」という名のスープがあります。日本語では「花嫁のスープ」と呼ばれ、これも人気の高い定番スープです。
この2つのスープ、何が違うのでしょうか?
基本の違いを整理すると、メルジメッキ・チョルバスは赤レンズ豆のみをベースにしたシンプルなポタージュ系で、エゾゲリン・チョルバスはそれに加えてブルグル(デュラム小麦の挽き割り)や米、ドライミントや唐辛子フレークが入ったより香り高いスープです。食感も少し異なり、エゾゲリンはブルグルのプチプチした食感が楽しめます。
「花嫁のスープ」という名の由来も面白い話があります。トルコ南東部のガズィアンテプ地方に実在した「エゾ」という名の花嫁が、病弱な義父のために心を込めて作り続けたスープだという説が有力です。一杯のスープに家族への思いが込められているというストーリーは、日本の主婦にも共感しやすいですよね。
家庭でアレンジを楽しむなら、基本のスープにドライミントとトマトペーストを少し多めに加えてみてください。ブルグルはカルディや輸入食材店で購入でき、200〜300円前後で手に入ります。これが手に入らない場合は、もち麦や押し麦で代用することも可能です。もち麦での代用は、食物繊維がさらにアップするというメリットもあります。
このスープが長く愛されてきた理由は、美味しさだけでなく、その栄養の豊富さにもあります。
主役の赤レンズ豆(乾燥)は100gあたり鉄分9.0mgを含みます。これは鉄分が多いことで知られる大豆(6.8mg)をも上回る数字で、豆類の中でもトップクラスの含有量です。女性の1日あたりの推奨鉄分摂取量が10.5mg(月経ありの成人女性)とされているので、スープ一杯でかなりの量を補える計算になります。
鉄分が気になるなら、レンズ豆は最適な食品です。
さらに注目したいのが葉酸の含有量です。ゆでたレンズ豆100gに約22µgの葉酸が含まれており、これは赤血球の生産を助ける「造血ビタミン」として知られています。妊娠中や妊娠を計画している方にとっても、積極的に摂りたい栄養素のひとつです。
食物繊維も見逃せません。調理済みのレンズ豆1カップには約16gの食物繊維が含まれており、1日の推奨摂取量(25〜30g)の半分以上をこれだけでカバーできます。腸内環境を整える効果があり、便秘解消にも役立つと言われています。これは腸活を意識している方には嬉しい数字ですね。
鉄分の吸収率を上げたいときは、食べる際にレモンを絞るのが効果的です。ビタミンCが非ヘム鉄の吸収を助けるため、トルコ式のレモンを添えるスタイルは、栄養学的にも理にかなった食べ方ということですね。
参考:レンズ豆の栄養成分と健康効果について管理栄養士が解説したページです。貧血対策としての豆類の活用方法も詳しく紹介されています。
「作ってみたいけど、赤レンズ豆はどこで買えばいいの?」という疑問は多くの方が持つはずです。実は、思っているよりずっと身近な場所で手に入ります。
まず、カルディコーヒーファームは赤レンズ豆を定番商品として取り扱っており、200〜250gパックが300円前後で販売されています。輸入食材を扱うTIRAKITAなどのオンラインショップでも購入可能で、1kgのまとめ買いをすると1回の調理コストをさらに抑えられます。Amazonや楽天市場でも簡単に検索できるので、近くに専門店がない方にも便利です。
これは使えそうです。
豆の保存も簡単で、乾燥状態なら密閉容器に入れて常温で1〜2年保存が可能です。まとめ買いをしておいて、「もう一品欲しいな」というときに20〜30分でスープが作れるという安心感は、日々の料理の心強い味方になります。
日本の食卓への取り入れ方として、いくつかのアレンジを試してみるのもおすすめです。
1回の使用量は乾燥豆で50g程度が目安で、これが約130円(カルディ価格)に相当します。スープ4人分のコストとして考えると、非常にコスパの高い食材です。栄養価が高く、時短で作れて、食費も抑えられる。まさに一石三鳥のスープといえるでしょう。
参考:赤レンズ豆の種類・選び方・調理法を丁寧に解説。購入できる店舗の情報も参考になります。