病院の産後食は「なんとなく体にいいもの」ではなく、退院後の母乳量が約30%変わることがある栄養設計がされています。
出産直後から始まる産褥期(さんじょくき)は、母体が最も栄養を必要とする時期のひとつです。日本の産科病院では、この時期に合わせた「産褥食(さんじょくしょく)」と呼ばれる特別な献立が提供されます。一般的な入院食とはまったく別物です。
産褥食の栄養設計は、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」の授乳期版に基づいています。授乳中の女性は、通常の成人女性と比べてエネルギーを1日あたり約350kcal、鉄分は推奨量の約2倍(1日8.5mg以上)、カルシウムは1日700mgを摂取することが求められます。
つまり、病院の産後食はこうした数値を満たすように意図して設計されているということです。
具体的には、白米や消化のよい軟飯、良質なタンパク質源となる魚や大豆製品、鉄分を含むほうれん草やレバーを使った小鉢、カルシウム補給のための牛乳や乳製品といった構成が多く見られます。産後2〜3日は消化器官の負担を減らすためにやや柔らかめ・薄味の食事が続き、経過が順調であれば徐々に通常の食事に近づいていきます。
これが基本です。
一方で、施設によって食事の内容にはかなりの差があります。栄養士が常駐しているか、調理スタッフのレベル、予算規模などにより、産褥食のクオリティは変わってきます。入院先を選ぶ際には、食事内容についての見学や口コミも参考にすることで、回復の質に差が生まれることを覚えておいてください。
参考として、厚生労働省が公開している授乳期の栄養摂取に関する指針が役立ちます。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」妊婦・授乳婦の食事摂取基準(PDF)
産後の体がもっとも必要とする栄養素は、大きく3つに絞ることができます。それが鉄分、カルシウム、そしタンパク質です。
まず鉄分について説明します。出産時の出血によって体内の鉄分は大幅に減少します。鉄分が不足すると産後貧血になりやすく、倦怠感・頭痛・めまいなどの症状が続くことがあります。日本産科婦人科学会の資料によると、産後の女性の約30〜40%が貧血気味であるとされています。病院の産後食では、ほうれん草・小松菜・ひじき・赤身肉・あさりなど、非ヘム鉄とヘム鉄の両方が意識的に使われています。
鉄分の吸収を助けるためにはビタミンCを同時に摂ることが有効で、病院の献立にはブロッコリーやトマトが副菜に入ることが多いのはそのためです。これは使えそうです。
次にカルシウムです。授乳中はカルシウムが母乳に多く使われるため、摂取が足りないと母体の骨からカルシウムが溶け出します。この状態が続くと将来的な骨粗しょう症リスクが高まることもわかっています。牛乳200ml(コップ1杯)で約220mgのカルシウムが摂れるため、産後食には牛乳や乳製品・豆腐・小魚が積極的に使われます。
タンパク質は、出産で傷ついた組織の修復や母乳の生成に不可欠な栄養素です。体重50kgの授乳中女性の場合、1日に必要なタンパク質量は約70g以上とされており、これは鶏むね肉の300gほどに相当します(はがき1枚分の厚みで約100gと覚えると便利です)。
栄養素ごとの目安量が理解できると、退院後の自炊にも応用しやすくなります。
「母乳の出が悪い」と悩む産後ママは少なくありません。母乳の分泌量は、授乳の頻度はもちろんのこと、食事内容にも大きく影響されます。
母乳の約87%は水分で構成されており、授乳中の1日の水分補給目安量は通常より約500〜700ml多い2〜2.5L程度です。水分が不足すると母乳の量が減りやすいことが知られています。病院の産後食にお茶や汁物が必ず付いているのは、こうした理由があります。
また、タンパク質・脂質・炭水化物のバランスが偏ると母乳の質にも影響します。特に炭水化物を極端に抜く食事(いわゆる糖質制限)を産後すぐに始めると、母乳に必要なエネルギー源が不足し、分泌量が落ちる可能性があります。これは意外ですね。
産後ダイエットを早く始めたいという気持ちはよくわかりますが、少なくとも産後6〜8週間(産褥期)の間は体の回復を最優先に考えることが原則です。病院の産後食は「回復のために食べるべき量が設計されている」ので、食べ残しが続くと栄養不足につながります。食べきれないときは、献立を参考に退院後の食事に活かすという方法もあります。
母乳育児を希望している場合は特に、入院中の食事を積極的に完食することが結論です。
入院中に「このご飯、体に合ってる気がする」と感じた産後ママは多いはずです。それは偶然ではなく、管理栄養士が設計した献立が産褥期の体にフィットしているからです。
退院後に自宅で産後食を再現する際、最も意識すべきポイントは「薄味・消化のよさ・鉄分とカルシウムの補給」の3点です。
たとえば、以下のような献立が自宅でも取り入れやすいです。
自炊の余裕がない日のために、産後ミールキットや産褥食宅配サービスも近年は充実しています。例えば「コープデリ」の産後向けミールセットや、産後ケア特化の宅配食サービスでは管理栄養士監修の献立が届くものもあります。体力がないときほど、こうしたサービスを検討する価値があります。
料理を作る余力が戻ってきたら、前述の献立をベースに少しずつバリエーションを増やしていくのがスムーズな方法です。
ここからは、検索上位の記事にはあまり書かれていない視点をお伝えします。
産後は腸の動きが著しく低下することが知られており、「産後便秘」に悩む女性は非常に多いです。出産後1〜3日間は、ホルモンバランスの変化・会陰部の痛みによる排便回避・水分不足などが重なり、腸内環境が急激に乱れることがあります。
実は、腸内環境の悪化は母乳の質にも関係すると一部の研究で示されています。腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が免疫機能を支えており、それが母乳成分にも反映されるという考え方です。まだ研究途上ではありますが、産後の腸ケアは見逃せない視点です。
病院の産後食でも食物繊維の補給は考慮されていますが、退院後は食事が不規則になりがちで腸内環境が乱れやすくなります。これが盲点です。
対策として意識したいのが、食物繊維と発酵食品の積極的な摂取です。納豆・みそ・ヨーグルト・キムチなどの発酵食品を1日1品以上取り入れることで、腸内フローラを整える助けになります。食物繊維は、ごぼう・大麦・オートミール・きのこ類などから摂ることができます。
腸の回復に注目すると、産後食全体のクオリティが上がります。
また、産後に腸内環境が整うと、精神的な安定にもつながることがわかっています(腸と脳の相関関係「腸脳軸」という概念)。産後うつの予防という観点からも、腸内環境への意識は重要です。
食事だけでは難しいと感じる場合は、産後ママ向けのプロバイオティクスサプリメントも市販されています。ただし、サプリを検討する前に、まず食事で摂れるものを整えることが優先です。使い始める際は、かかりつけの産婦人科医か助産師に一言確認しておくと安心です。
入院中は体力的に余裕がなく、食事について積極的に質問しにくいというのが現実です。しかし、産後の栄養管理は退院後の生活の質にも直結します。聞けるうちに確認しておくことが大切です。
以下は、栄養士・助産師・産科医に確認しておくと役立つ質問の例です。
入院中は「ゆっくり聞ける時間」が意外にあります。
特に経産婦の場合は「前回の経験でなんとなくわかる」という思い込みから、今回の自分の体の状態を見落としがちです。同じ母体でも、出産のたびに体の状態は変化します。一人ひとり条件が違うということです。
病院のスタッフへの質問は遠慮なく行うことが、産後回復の近道です。
産後の栄養管理について、国立成育医療研究センターのウェブサイトにも実用的な情報が掲載されています。

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