炭水化物だらけなのに、コシャリは食べるほど体重が落ちやすい食事構成になっています。
コシャリとは、エジプトを代表するストリートフードで、アラビア語では「混ぜ合わせる」という意味を持ちます。ご飯・マカロニ・スパゲッティなどのパスタ・ひよこ豆・レンズ豆を一緒に盛り合わせ、スパイスを効かせたトマトソースとカリカリのフライドオニオンをたっぷりのせて、ぐちゃぐちゃに混ぜながら食べる料理です。つまり、混ぜるのが正解のエジプト料理です。
お肉を一切使わない完全ベジタリアン料理でありながら、炭水化物と豆類がぎっしり詰まっているので、驚くほどの満腹感が得られます。エジプトの街ではコシャリ専門店がいたるところにあり、カイロ市内のお店では中サイズ1杯が日本円換算でわずか100〜200円程度というリーズナブルさも魅力のひとつです。
日本でいうラーメンやうどんに近い庶民の味として定着しており、「困ったときの一皿」としてエジプト人の心と胃袋を長年満たしてきました。これは使えそうです。
| 食材 | 役割 |
|---|---|
| ご飯(米) | ベースになる主食・腹持ちの要 |
| マカロニ・スパゲッティ | 食感のアクセント・炭水化物追加 |
| ひよこ豆・レンズ豆 | たんぱく質・食物繊維源 |
| トマトソース(スパイス入り) | 酸味・旨味・香り付け |
| フライドオニオン | 香ばしさ・甘み・仕上げ |
コシャリの味付けには、クミンやコリアンダーといったスパイスが欠かせません。これらのスパイスがあることで、ただの「炭水化物盛り合わせ」ではなく、複雑でクセになる香りと風味が生まれます。本場ではさらに「ダッア(唐辛子酢ソース)」をかけて辛さを加える食べ方も定番で、辛さや酸味は好みに合わせて自由に調整できます。
コシャリは一見するとエジプト固有の料理に思えますが、実は複数の文化が交差して生まれた「国際的な一皿」です。意外ですね。
もっとも有力な説として、第一次世界大戦中にエジプトへ派遣されたインド兵が持ち込んだ「キチュリ」という料理がルーツとされています。キチュリとは、米とレンズ豆をスパイスで炊いたインドの伝統的な料理で、コシャリの骨格はここから来ています。一説には、インドからメッカへ巡礼に向かった人々がアラビア半島経由でエジプトにこの料理を広めたとも言われています。
そこへ、カイロに駐留していたイタリア人がマカロニを加えたことで、現在のコシャリのかたちへと進化したとされています。インドの豆ごはん、イタリアのパスタ、アラブのスパイスとトマトソースが融合した料理です。歴史を一皿に盛った料理、というのは比喩ではありません。
そして2025年12月、コシャリはUNESCO(国連教育科学文化機関)の「人類の無形文化遺産」リストに正式登録されました。エジプト料理としては史上初の快挙です。参考として、毎日新聞の報道もご覧ください。
エジプト固有の文化遺産といえばピラミッドや神殿が真っ先に思い浮かびますが、世界が認めたのは「街角のどんぶり料理」だったというのはとても興味深いエピソードです。
コシャリの起源については複数の説があり、エジプトのキリスト教徒であるコプト教徒が発祥とする説も存在します。コプト教の断食では動物性食品が禁止されるため、豆と穀類を組み合わせたコシャリが断食食として広まったという見方です。諸説あるのがコシャリの歴史の面白さでもあります。
炭水化物のオンパレードに見えるコシャリですが、栄養面では意外とバランスが取れています。
エスビー食品のコシャリレシピ(3〜4人分)の栄養成分によると、1人前あたりのエネルギーは約416kcalです。白米のみのご飯茶碗1杯(約160g)が約269kcalですから、コシャリ1皿はご飯1.5杯分のカロリーに相当します。そのうえで、たんぱく質が約11.5g含まれています。
たんぱく質11.5gとは、卵1個分(約6.2g)の約1.8倍に相当します。肉ゼロの料理でこれだけのたんぱく質が取れるのは、ひよこ豆とレンズ豆のおかげです。これが基本です。
さらに注目すべきは食物繊維です。
成人女性の1日あたりの食物繊維推奨量は18g以上(厚生労働省)とされていますが、コシャリ1皿でその約3分の1を摂取できます。白米だけの食事では食物繊維が不足しがちですが、コシャリなら豆類が補ってくれます。
また、ひよこ豆とレンズ豆はGI値(血糖値の上がりやすさを示す指標)が低い食品として知られており、白米のみの食事に比べて食後の血糖値が急上昇しにくい点も見逃せません。腸活や血糖値が気になる方にも取り入れやすい料理です。
お肉なしでもたんぱく質・食物繊維をしっかり確保できるのがコシャリの強みです。
▶ エスビー食品「コシャリ レシピ」栄養成分データ掲載(参考情報あり)
コシャリは工程が多そうに見えますが、炊飯器を使えば主食部分はほぼ「入れて炊くだけ」です。
以下に2〜3人前の基本的な作り方をご紹介します。
【材料(2〜3人前)】
【手順】
1. 米を洗ってザルに上げ、フライパンでバターを溶かして米を透き通るまで弱火で炒める
2. 炊飯器に炒めた米、折ったパスタ、マカロニ、水切りしたひよこ豆、レンズ豆、スパイス、塩、水を入れて早炊きモードで炊く
3. 炊いている間にトマトソースをクミン・コリアンダーと合わせてレンジで温める
4. 炊けたら全体を大きく混ぜ、器に盛ってトマトソースとフライドオニオンをたっぷりのせて完成
調理時間は炊飯時間を除けば、実作業は10〜15分程度です。
失敗しないためのポイントが3つあります。
フライドオニオンが市販で手に入らない場合は、スーパーの製菓コーナーや輸入食材コーナーを探してみてください。カルディやコストコなどにも置いてあることが多いです。レンズ豆は、乾燥のままなら下茹で不要で直接炊飯器に入れられるので手間がかかりません。
▶ キッコーマン公式「炊飯器で簡単!コシャリ(エジプト風そばめし)」レシピ詳細はこちら
コシャリはまだ日本では知名度が低いですが、実際に食べられるお店が国内にあります。
東京・錦糸町にある「コシャリ屋コーピー」は、国内でも数少ないコシャリ専門店として知られており、エジプト出身者からもお墨付きをもらっているほど本格的な味が楽しめます。「日本で海外旅行気分を味わいたい」という方にとっては絶好の場所です。
もちろん、自宅でアレンジするのも楽しみのひとつです。
本場エジプトでは各家庭やお店によってレシピが異なり、それぞれに「我が家の味」「推しコシャリ屋」があるほど自由度の高い料理です。日本でも「好みの配合」を見つけていく楽しさがあります。
スパイスにクミンやコリアンダーを使うのが基本ですが、カレー粉で代用するレシピも多く流通しています。スパイスがそろっていないときは、カレー粉少量で十分に代用できます。カレー粉があれば問題ありません。
ユネスコ無形文化遺産に登録されたのを機に、日本でもじわじわとコシャリの認知が広がっています。世界が認めた一皿を、ぜひ自宅の食卓に取り入れてみてください。
▶ Newsweekジャパン「炭水化物の祝宴 — コシャリが世界遺産になった話」(コシャリの背景・歴史が詳しく解説されています)