牛乳をやめるとカルシウム摂取量が1日推奨量の半分以下に落ちる人が続出しています。
カルシウムといえば牛乳、と多くの方が思い浮かべます。確かに牛乳コップ1杯(200ml)には約220mgのカルシウムが含まれており、手軽に摂取できる優秀な食品です。しかし、それだけに頼ると1日の推奨量(成人女性で650〜800mg)を安定して確保するのは難しくなります。
食品カテゴリ別に代表的なカルシウム含有量(可食部100gあたり)をまとめると、次のようになります。
| カテゴリ | 食品名 | カルシウム量(100gあたり) |
|---|---|---|
| 乳製品 | パルメザンチーズ | 約1,300mg |
| 乳製品 | プロセスチーズ | 約630mg |
| 乳製品 | ヨーグルト(全脂) | 約120mg |
| 魚介類 | 干しエビ | 約7,100mg |
| 魚介類 | 煮干し(いわし) | 約2,200mg |
| 魚介類 | しらす干し | 約520mg |
| 魚介類 | サンマ(骨ごと缶詰) | 約320mg |
| 野菜・海藻 | ひじき(乾燥) | 約1,000mg |
| 野菜・海藻 | 切り干し大根 | 約500mg |
| 野菜・海藻 | 小松菜 | 約170mg |
| 野菜・海藻 | チンゲン菜 | 約100mg |
| 大豆食品 | 木綿豆腐 | 約93mg |
| 大豆食品 | 厚揚げ | 約240mg |
| 大豆食品 | 納豆 | 約90mg |
| 種実類 | ごま(乾燥) | 約1,200mg |
| 種実類 | アーモンド | 約250mg |
注目してほしいのは干しエビや煮干しの数値です。干しエビ100gには7,100mgものカルシウムが含まれており、牛乳と比べると約32倍になります。
もちろん干しエビを一度に100g食べることはありませんが、大さじ1杯(約6g)でも約426mgと、牛乳コップ1杯に匹敵します。これは使えそうです。
小松菜もほうれん草の約5倍のカルシウムを含んでいて、炒め物や味噌汁の具として毎日取り入れやすい食材です。ほうれん草と小松菜を混同しがちですが、カルシウム摂取の観点では小松菜が基本です。
カルシウムを多く含む食品を食べても、体への吸収率が低ければ意味が半減します。吸収率は食品の種類によっても大きく違います。
牛乳・乳製品のカルシウム吸収率は約40〜50%、魚類(骨ごと食べる場合)は約33%、野菜・大豆食品は約19〜20%と言われています。乳製品が吸収効率でトップクラスです。
では、吸収率を上げるにはどうすればいいでしょうか? 最も効果的なのがビタミンDとの組み合わせです。ビタミンDは腸でのカルシウム吸収を助けるホルモンのような働きをしており、ビタミンDが不足すると、どれだけカルシウムを摂っても骨に届く量が減ってしまいます。
ビタミンDを多く含む食品には、鮭・サンマ・いわしなどの青魚、干ししいたけ、きくらげ、卵黄などがあります。しらす干しとじゃこは「カルシウム+ビタミンD」を同時に含む数少ない食品で、つまり一石二鳥です。
クエン酸(レモンや酢)もカルシウムの吸収を助けます。小松菜のソテーにレモン汁を絞る、酢を使ったマリネにちりめんじゃこをトッピングするといった工夫は、吸収率アップに理にかなっています。
一方で気をつけたいのがシュウ酸・フィチン酸との組み合わせです。ほうれん草に多いシュウ酸はカルシウムと結びついて「シュウ酸カルシウム」となり、腸から吸収されにくくなります。ほうれん草を茹でてから食べることで、シュウ酸の一部を除去できます。茹でこぼしに注意すれば大丈夫です。
また、過剰な食物繊維や加工食品に多く含まれるリン酸も、カルシウムの吸収を妨げることがあります。インスタント食品や加工食品を毎日大量に食べている場合は、見直しのきっかけにしてみてください。
国立健康・栄養研究所|国民健康・栄養調査の結果(カルシウム摂取量の傾向に関する公式データ)
「どのくらい食べればいいの?」という疑問は多くの方が持っています。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、成人女性(18〜74歳)のカルシウム推奨量は1日650mgです。50歳以降は骨粗しょう症予防の観点から積極的な摂取が推奨されています。
1日650mgをどう達成するか、具体的なモデル献立で考えてみましょう。
| 食事タイミング | メニュー例 | カルシウム摂取量の目安 |
|---|---|---|
| 朝食 | ヨーグルト(100g)+牛乳(100ml) | 約230mg |
| 昼食 | 厚揚げの煮物+小松菜の味噌汁 | 約200mg |
| 夕食 | 鮭のソテー+ひじきの煮物(小鉢1皿) | 約180mg |
| 間食 | ごまを大さじ1かけたおにぎり | 約70mg |
このように組み合わせれば、1日の合計は約680mgとなり推奨量をほぼ達成できます。特別な食材を使わなくても十分に届きます。
注意点として、カルシウムは一度に大量摂取しても、腸が吸収できる量に限りがあります。1回の食事で500mg以上を一気に摂るよりも、3食にわけて少しずつ摂る方が効率的です。3回に分けるのが基本です。
一方で、1日1,000mg以上を長期間摂り続けると、泌尿器系への負担や便秘のリスクが高まるという報告もあります。サプリメントと食事を組み合わせる場合は上限摂取量(2,500mg)を超えないよう注意してください。
厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)—カルシウムの推奨量・上限量の公式根拠として参照)
一般的なカルシウム食品一覧にはあまり登場しないものの、意外に活用できる食材があります。これは意外ですね。
その代表が「桜エビ(素干し)」です。可食部100gあたり約2,000mgのカルシウムを含み、しらす干しの約3.8倍。チャーハンや卵焼きに大さじ1杯(約5g)加えるだけで約100mgが補えます。スーパーで安価に手に入り、常備しやすい点も主婦の味方です。
もう一つが「切り干し大根」です。100gあたり約500mgのカルシウムを含み、乾物なので保存が効いて経済的です。煮物1皿(乾燥15g使用)に換算すると約75mgのカルシウムが摂れます。
一方で、調理によってカルシウムが失われるケースも知っておく必要があります。野菜を大量の湯で長時間茹でると、水溶性のミネラルが溶け出して20〜30%程度のカルシウムが失われることがあります。小松菜やチンゲン菜は、サッと短時間茹でるか炒め物にするのが効率的です。茹で汁を味噌汁に活用する方法も、損失を最小限にする実践的なコツです。
また、缶詰の魚(サンマ・いわし・サバ)は骨ごと食べられるため、カルシウム補給の優秀な選択肢です。骨が柔らかく調理済みなのでそのまま使えて時短にもなります。サンマ缶1缶(約190g)の可食部には300mg前後のカルシウムが含まれており、夕食の一品としてとても優秀です。
カルシウムが特に重要になるライフステージは2つあります。子どもの成長期と、女性の更年期以降です。
子どもの場合、骨が最も形成されるのは12〜17歳の思春期です。この時期の推奨量は男女ともに1日約1,000mg(男子)・800mg(女子)と成人よりも高く設定されています。給食でカバーできる量は1食あたり約400mg程度で、残りは家庭の食事で補う必要があります。
子どもが牛乳を苦手とする場合、シチューやグラタンに混ぜ込む方法が有効です。また、チーズは加熱しても栄養素が大きく失われないため、グラタンやトーストにプラスするだけでカルシウム量を底上げできます。納豆ご飯にちりめんじゃこを混ぜるのも手軽な方法です。
更年期以降の女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の減少により骨密度が急激に低下します。閉経後の女性では骨粗しょう症のリスクが男性の約3倍とも言われており、50代以降は意識的なカルシウム補給が健康維持のカギになります。
食事からの摂取に加え、ビタミンDを補うために1日15〜30分程度の日光浴も有効です。屋外での軽い散歩は骨への刺激にもなります。食事・日光・適度な運動の3つがそろって初めてカルシウムが骨に定着しやすくなるということですね。
カルシウム補給が食事だけでは難しいと感じる場合は、カルシウム+ビタミンD配合の市販サプリメントを活用する方法もあります。ただし選ぶ際は、第三者機関による品質試験を受けた製品や、「カルシウム:マグネシウム=2:1」のバランスに近いものを選ぶと安心です。薬局やドラッグストアで成分表示を確認するのが一つの目安になります。
国立長寿医療研究センター|骨粗しょう症と栄養に関する参考資料(更年期以降のカルシウム需要の根拠として参照)